27話 裏面2が開いたぁあああ!
辺りを見回すと、いつもの小さな空間の奥に、薄暗い道が続いているのに気づいた。
「……へぇ……」
俺は、その道を、恐る恐る奥へと進んだ。
すると、そこにも、同じような看板とATMが、ぽつんと佇んでいた。
「……裏面2か……そそるねぇ」
看板には、こう書かれている。
『ここは、このダンジョンの【裏面2】です。隣のATMにレベル30を注ぎ込むと、ランダムでスキルかアイテムを獲得できます』
「……ほう……レベルをほかのものに変換できる施設か……もしかして、この裏面って、どんどんできることが増えていくのかね……」
などと予想しつつ、
「……レベルを30も失うのは、痛い……痛いけど……強力なスキルなら、補ってあまりあるかも……んー……」
顎に手を当てて、しばらく考え込む。
「てか、これ、もしかして……タイムリープと併用すれば、『最高レア』が出るまでリセマラできるんじゃ……」
脳裏に、ソシャゲの記憶がよぎる。
欲しいキャラが出るまで、何度も何度も引き直す、あの多幸感。
「タイムリープすれば、ここでレベル30を注いだっていうのもリセットされるはずだもんな……」
色々と考えた末に、俺は、拳を握った。
「よし……やってみるか。仮にゴミが手に入っても、リセマラできる仕様なら問題ない……頼むから、リセマラできてくれよぉ……」
祈るように呟きながら、俺はATMを操作する。
画面に、簡素な確認文が表示された。
『レベル30を注ぎますか? はい/いいえ』
「はい……と」
指先で『はい』に触れた瞬間、
――体が、ズシッと重くなった。
自分の輪郭が、内側から少しだけ縮んだような感覚。
『力』がなくなった分だけ、単純に、体が重く感じる。
「自己鑑定」
呟いて開いたステータス画面に、俺は目を落とした。
――レベル9。
「マジで下がったな……レベルを一気に失うと、こんな感じになるのか……」
しみじみと呟いていると、ATMの画面に文字が表示される。
『小当たり!』
同時に、目の前の空間が淡く光り、
――直後、一本の剣が姿を現した。
「うぉ……え、これが当たった剣……ってこと?」
疑問符を抱きつつも、そっと手に取る……
すると、剣の情報が、頭の中に直接流れ込んできた。
――名前:『注文の多い多目的室』
「……なんだ、このふざけた名前は……まさか、小当たりってのは、ハズレって意味か?」
思わず眉をひそめる。
もっと厨二病を刺激するようなカッコいいアイテムを期待していたのだが……。
続けて、効果の情報も流れ込んでくる。
『効果:空間魔法【限定空間】が使用可能』
使用条件:
・使いたい日に5分ほど祈りを捧げる。
・使いたい日に剣を磨かなければいけない。
・剣を天に掲げながら『限定空間、発動』と叫ばなければならない
・使用前に、この剣で自身の体に傷をつけなければならない(血が出ればどんな傷でもよい)
・使用時、剣に最大HPの10パーセントを注がなければならない
「……注文が多いねぇ……」
ため息交じりに、そうつぶやいてから、
「5分祈るのは……ダルいけど、まあ、5分なら。……体に傷をつけるのも、血が出る程度なら、我慢できる範囲か」
条件を一つずつ検分《けんぶん》しながら、俺は、
「空間魔法か……これ、レインボールの討伐に役立つかも。今までは、ワンミスで逃げられることもあったからなぁ……閉じ込めてしまえば、逃げられることはなくなる。地味にでかい」
『限定空間』は、何もない空間に、自分と相手を閉じ込める魔法。
配信で何度か見たことがあるが、空間系の魔法使いは、極めてレアな部類。
「これ……どうだろうなぁ……いうて、小当たりなんだよなぁ。使えそうではあるけど……うーむ……」
俺は、剣を握ったまま、しばらく唸る。
「リセマラしない方がいいかな……いや、でも、もっとえぐいのが来る可能性もあるし……」
欲が、頭の中でせめぎ合う。