28話 ハグレインボールのイオ〇ズンは痛すぎる!
リセマラすべきか、しないべきか。
欲とのせめぎ合いをつづけたまま、俺は、とりあえず結論を保留することにした。
「……考えるのは後だ。まずは、いつも通りレアを探そう……一応、レベルを上げたあとのことも考えて、AやSも探しておこうかね……」
剣を腰に差し直し、俺はダンジョンを歩き始めた。
レインボールを探しつつ、ついでにA級やS級なんかもいないか、目を光らせながら進む。
しばらく歩き回っていると、地下5階の開けたエリアで、俺は足を止めた。
「……ん?」
視界の先、いつものレインボールとは、明らかに様子が違う個体がいた。
バリアのような薄い輝きが幾重《いくえ》にも重なった、金属質の球体。
周囲には、それを守るように、鎧をまとった騎士型のモンスターが五体、隊列を組んで立っている。
「――あれは、まさか……噂のハグレインボールか」
レインボールの上位互換……ようするに、はぐ〇メタルだ。
そして、それを囲む護衛たちはレインシュバリエ。
レインボール系を護衛している、厄介なA級。
時空旅団の配信で『やつらを撃退しているところ』は何度か見たことがあるが……実際に、この目で見たのは初めてだ。
「レベル9じゃ、A級五体と戦いながら、すばしっこいハグレインボールを倒すなんて、絶対に無理」
ぼやきながらも、俺は、剣の柄《え》を握る手に力を込めていた。
「……だが、こいつがあれば……」
――限定空間。
自分と『指定した相手』だけを、何もない空間に閉じ込める魔法。
「……よし……」
俺は、覚悟を決め、護衛の陣形へ、まっすぐに突っ込む。
レインシュバリエたちが、一斉にこちらへ視線を向けた瞬間、俺は、剣先を、あの金属質の球体だけに向けた。
ロックオン完了!
領域展開!
「限定空間、発動ッ!」
そのまま剣を天に掲《かか》げ、叫ぶ。
そのほかの条件は事前にクリア済み。
5分祈るのは、瞑想のついでだと思えば楽だったよ。
――視界が、一瞬にして白く塗り替わった。
気づけば、周囲には何もない、真っ白な空間にいた。
目の前には、驚いたようにこちらを見つめる、ハグレインボール。
「――よし、成功……」
護衛の五体は、外に締め出されている。
ばっちり、タイマン。
今の俺はレベルが激減しているが、炎龍や地属性精霊との闘いを経たことで、戦闘力が、以前とは比べ物にならないほど上がっている。
俺は、注文の多い多目的室を地面に突き刺して、装備を、黄金のナイフに切り替えた。
このナイフも、使い込まれてきて、手になじんできている気がする。
これに関しては、気がするだけかもしれんけど……
「くらえ!」
俺は、迷わず斬りかかった。
どうせ、『レインボール』と同じで逃げ回るんだろ……と思いきや……
「――ッ!?」
球体の表面に、いくつもの光の線が走る。
そして、その光を圧縮するように、ハグレインボールは、
「……広域爆裂《こういきばくれつ》ランク3!!」
と叫んだ。
モンスターどもは、言葉はしゃべらないけど、詠唱《えいしょう》だけはしっかりしてくる。
――次の瞬間、視界いっぱいに爆炎が広がった。
「うぉおおおおおおっ!!」
直撃を受け、俺は吹き飛ばされる。
「くそ……いてぇ……」
地面に倒れ込んだまま、しばらく震えていた。
痛みで体が動かしづらい。
……だが、視線だけは、ハグレインボールから外さなかった。
戦場で敵から目をそらすのは自殺志願者。
わずかな動きも見逃すまいと、必死に睨《にら》んでいると、
ハグレインボールの球体の表面に、
……再び光の線が走り始める。
――また撃ってくる気か。
ナメんなよ。
「……そんな隙だらけの魔法、何度も食らうかぁあああ!」
痛みを押し殺し、俺は地面を蹴った。