29話 ハグレインボールを撃破したぞぉおおお!
ハグレインボールの魔法、魔力を溜める時間が結構長い。
撃つ前に殺してやる。
最短距離で懐に飛び込み、渾身の一撃を、ナイフごと叩き込む。
「――ギィッ!!」
甲高い音とともに、ハグレインボールの表面に亀裂が走り、
「……ガ……」
そのまま、光の粒子となって崩れていく。
火力はそれなりだったが、耐久力は、レインボールと大差なかったな。
俺は、その場にへたりこみながら、
「はぁ……はぁ……勝った……あー、痛ぇ……」
膝をつきながら、自己鑑定を使う。
――レベルは18に上がっていた。
「……うん、レインボールより経験値は多いな……でも、まあ、正直、もっと劇的にレベルアップしてほしかったなぁ、とも思うけれどねぇ……だいぶ美味いんだけどねぇ……」
つぶやいてから、俺は、『注文の多い多目的室』に視線を向ける。
「この魔剣……便利だな……リセマラしない方がいいかな……」
まだ迷いながら、
「……いや、でもなぁ……」
俺は、地面に刺していた魔剣を抜いて、限定空間を解除する。
白い空間が消え、視界が元の景色に戻った瞬間、五体のレインシュバリエが、一斉にこちらを見た。
「……あ」
リセマラのことで頭がいっぱいで、こいつらのことを忘れていた。
俺はどんだけアホなんだ……
護衛対象を俺にさらわれたということを理解しているのかしていないのか知らんけど、やつらは、殺気立った視線をこちらに向けてくる。
「……このまま裏面に逃げてもいいんだけど……せっかくだし、ちょっと戦ってみるか……レベル18でAに勝てるかどうか……」
ダメ元で、俺は、
「ふんぬらばぁああ!!」
レインシュバリエの一体に思いっきり斬りかかった。
ガキィンと弾き飛ばされて、腕がしびれる。
――硬い。
この魔剣は、あくまで限定空間を発動するための道具であって、剣としての火力は、正直、大したことがない。
その後、『黄金のナイフ』や、『30万で買った伝説の聖剣』に持ち替えて挑んでみるが、無駄だった。
渾身の『閃拳』で殴ってみても……まあ、微妙。
ダメージは与えられているけど、相手の防御力が高いので、この感じだと、10発は叩き込まないと死んでくれないだろう。
そんな悠長《ゆうちょう》なことをしている間に、確実に殺される。
「レベル18で、今の装備だと……A級には勝てないかぁ……」
じりじりと押されながら、俺はぼやく。
いったん防御に徹して攻撃パターンを観測してみるも、五体分の攻撃をうまくさばききれるはずもなく、あっという間に体力が削られていく。
タイマンなら、ギリいけそうな感じだけど、5体同時の相手はねぇ……
「――ちっ……ここまでかな……」
致命傷を負う寸前で、俺は裏面へと逃げ込んだ。
★
小さな空間に転がり込み、そのままへたり込む。
「……はぁ……はぁ……レベル30ぐらいあれば……5体同時でもいけそうかな……」
肩で息をしながら、俺は、天井をぼんやりと見上げた。
「……さて、リセマラどうしようかねぇ……魔剣は便利だけど……まあ、でも」
独り言が、ぽつりと漏れる。
「……『小当たり』でこれだけ便利ってことは……中当たりや大当たりなら、もっとえぐいってことだろ。リセマラできるかどうかも……試してみたいしな」
そう結論づけて、俺は、迷わずタイムリープを実行した。