3話 競馬、勝ったぁああああ!!
競馬場に向かおうと思ったが、その前に確かめておきたいことがあった。
――『裏面』に、ちゃんと行けるかどうか。
「タイムリープしたことで『何かのフラグが消えて行けなくなっている』……なんてオチだったら、目も当てられねぇ……」
念のため、俺はダンジョンに足を運び、
――裏面に行きたい。
と、念じると、視界が歪んだ。
この独特な感覚が心地いい。
「……よし」
普通に裏面にたどり着けた。
タイムリープが問題なく使えるなら俺は無敵だ。
「やったぜ」
思わずガッツポーズが出る。
ニヤけながら看板に目をやったところで、
……俺の眉間にシワが寄る。
「タイムリープの費用……上がってんじゃねぇか」
『ここは、ダンジョンの裏面です。隣のATMに101万円を入金すると、昨日にタイムリープできます』
「おいおい……まさかタイムリープするたびにコストが増えるのか? だりぃな」
ウザかったが、
「……まあ、1回につき1万ずつの上昇なら……許容範囲かな……」
そうつぶやいてから、俺は、その足で競馬場へと向かった。
★
第一レース。
迷わず券売機に全財産30万円を突っ込む。
「第一レースはオッズ2倍……勝てば60万……」
ドキドキしながら、レースが始まるのを待つ。
数分後……スタートの合図とともに馬群が飛び出した。
俺の本命は、道中から危なげなく先頭集団につけている。
予想が外れる気配は、微塵《みじん》もない。
このまま押し切れば勝てる!
どくどくと全身の血管が沸き立つ。
握り締めた馬券が汗ばんでへしゃげる。
「行け……行け……あ、これ、行けるな……行けるなぁ……っ!」
――本命はゴール前で他馬を突き放し、危なげなく先頭でゴールした。
「よっしゃぁあああああああああ!!」
払い戻しの窓口で受け取った金額は、ちょうど倍。
30万円が、60万円になっていた。
この数分だけで、教師だったころの二か月分ぐらい稼いだ。
……手取りで18万ぐらいだったんでね。
「人生ちょろすぎて草」
だが、こんなところで満足する気はない。
俺は迷わず、その60万円をすべて第二レースに投入した。
オッズ表を見ると、俺の本命馬には『3.8倍』の数字がついている。
単純計算で、勝てば228万円。
だが、券売機に60万円を投じた瞬間、表示は『3.5倍』まで下がった。
俺の投じた金額が大きいので、オッズ《倍率》が下がったのだ。
「3.5倍それでも十分すぎる。勝てば200万以上……そして、200万を稼いだあとは、大穴の第三レースに全部つっこむ。第三レースのオッズは、なんと『15倍』! 俺は、今日3000万を稼ぐ! 一日で俺は、この星の王になる!」
皮算用をしている間に、スタートの合図が鳴った。
馬群が飛び出す。
俺の本命は、危なげなく上位につけていた。
『本来の一番人気』は調子が悪くて遅れ気味。
周りから罵声がとんでいる。
「そう……このレースでは、謎に調子がいい3番人気の『シカダアーク』が勝つ……本来、シカダアークが勝つ確率はちょっと低い……だからこそ倍率も『3.5倍』と悪くない。ここで60万を200万にして、次のレースで3000万……っ」
未来の知識は、こんなにも強い。
このまま余裕で勝つだろう。
うまくやれば、今日だけで億を稼げるんじゃないか?
――などと思っていた矢先、最終コーナーを回った直後だった。
シカダアークが突然バランスを崩した。
「……は?」
脚がもつれ、騎手を投げ出す勢いで馬体が崩れ落ちる。
歓声とどよめきが同時に沸き起こる中、
「……え……え?!」
俺の頭は真っ白になっていた。
どういうこと?
え、なんで?
え、ここからでも、シカダアークが巻き返して勝つの?
そんなわけなくない?