32話 レベルの上がり方がえぐいぞぉおお!
10回目……この日最後のタイムリープで、俺は、
「限定空間、発動」
もう一度、ハグレインボールを仕留めにいった。
もう慣れたものだし、レベルも上がったことで、すべてが作業ゲーと化していた。
ヤツの詠唱の隙《すき》を突いて、一撃。
光の粒子となって消えていくハグレインボールを見送りながら、俺は、自己鑑定を使う。
――レベル43。
「……おお、いいねぇ……震えるねぇ」
またドーパミンの嵐に溺れる。
「モンスターを2回倒すだけで……レベル43になっちゃったよ……上がりすぎぃ!」
声が上ずる。
ここまでレベルが上がってしまえば、もはや、5階層の雑魚は相手にならない。
――その後、A級モンスターやS級モンスターも適度に狩り歩きながら、一日を終わらせた。
本日の成果、
A級を8体!
S級を1体!
結果的に、
「よし……レベル、45までアップ」
きりのいいところまで上げることができた。
ちなみに、S級を倒すところは、そのまま配信した。
タイトルは『だいぶ強くなれた! S級も正直余裕! 自分の成長速度にびっくり!』。
実際、S級との戦闘は、あっさりと終わった。
苦戦らしい苦戦もなく、危なげなく仕留める。
「どうです? むっちゃ強くなったと思いませんか?」
軽く愛想を振りまきつつ、数字を確認する。
最終的な同接数は、2000ちょっと。
数字の伸びがにぶい。
以前のS級戦(3200)と比べると、明らかに勢いがない。
コメント欄も、心なしか反応が薄い。
『この成長速度だと、余裕でS級配信者になれるんじゃない?』
『SS級配信者の時空旅団には永遠に勝てないだろうけど』
『時空旅団と比べると、やっぱ地味だね、センくんは』
ほめられてはいるし、
楽しんでもらえてもいるが……
すべての流れが、どこか緩やかだった。
「というわけで、今日の配信は以上です! 次もぜってぇ見てくれよな!」
締めの言葉で配信を切って、
……そこから俺は反省タイムに入る。
「S級を倒せると知られている俺が、S級を倒しても引きはない……もちろん、ファンは見てくれるけど、話題性としては薄い……」
苦労の末に打ち勝つ姿だからこそ、視聴者は熱狂してくれる。
余裕で勝ってしまう配信には、『見栄え』・『見ごたえ』ってものがない。
「もっと、色々と考えていかないとな……どうすれば、動画が映《ば》えるか……」
『強さそのもの』と『配信映え』は、必ずしもイコールじゃない。
時空旅団ぐらい華があって、圧倒的で、次々に世界記録を塗り替えていけば話は別だが……
「うーむ……」
悩みながら、その日はそのまま家に帰った。
★
翌日、朝はしっかりと休んで、
午後からは、ユウガと一緒に、家庭裁判所へ、財産目録を提出しに向かった。
別に俺だけでもいいらしいが、ユウガが『自分が説明した方が色々と楽な場面もあると思いますので』といって聞かなかった。
未成年後見人に選任されてから、十日ほど。
前に役所の担当者から『財産目録を、追ってご提出いただきます』と言われていたので、それを提出しにきた。
――要するに、『ユウガの財産を、ちゃんと管理してますよ』というのを、書類にして出せ、ということらしい。
……めんどくせぇ。
昔から、こういう手続き関係がマジで嫌いだ。
免許の更新だけでもゲロ出そうになるってのに……
……窓口で名前を呼ばれ、小部屋に通される。
俺が差し出した財産目録に、年配の書記官はゆっくりと目を通していく。
「現金は、ほぼ手つかずですね。使途《しと》は生活費・学費積立、と」
「はい」
支出の欄で、書記官の手が止まる。
「この『自己研鑽費』、少し金額が大きいようですが」
「装備品の購入費です……高いですよねぇ、協会の武器って、はは……」
「領収書は?」
「……ああ……えっと……どこやったかな……」
「次回までに整理をお願いします」
やんわりとした注意を受けて、手続きは終わった。
今後も、こういうことを定期的にやらないといけないらしい。
年に一度の後見事務報告。
何かまとまった額を動かす時の事前確認。
もし将来ユウガの進学先が決まれば、その学費の使い道もいちいち説明する羽目になる。
「未成年を養うの、めんどくせぇ……」
もう、疲れたよ、パトラ〇シュ……
なんだか、とっても眠いんだ……
いっそ、ユウガを殺して山にうめるか……
そうすりゃ、ちょっとは楽に……
「先生、いつも色々とありがとうございます」
そう言って、俺に頭を下げてきたユウガ。
こういう姿だけを見ると、健気で愛らしい。
仕方ない……殺して山にうめるのは勘弁してやるか……
ありがたく思えよ。
などと心の中で、テキトーなことをつぶやきつつ、俺たちは手をつないで家に帰った。
ご近所さんの目もあるのでやめなさいと注意したが、
「家族で手をつなぐことに文句をいうバカがいたら、殺して山にうめてやりますよ」
「もしかして俺の心、よめてる?」
「はい?」