37話 レベルが100も上がるアイテムをゲットぉおお!
ATMに表示された文字を見て、
俺の頭は、一瞬、真っ白になった。
『ハズレ!』
「どえぇ……ハズレぇ?! えぇえええ! うぁ……うそだよぉおおお!」
俺は膝から崩れ落ちて、頭を抱える。
これまでは、ずっと当たりだったから、余計にしんどい。
まさか、ここに来て『ハズレ』を引くとは。
「……うわ……うぅわ……レベル32も注いだのに……普通に痛すぎる……心臓が……砕け散る……ハゲちゃうぅ……」
落胆しながらも、
「ん?」
目の前に浮かび上がった物体に、俺は視線をやった。
黒い『天使の輪』のような形をしたリング。
手に取ると、頭の中に、情報が流れ込んでくる。
――名前:『ダークリング』
効果:使用すると、一時的にレベルが100上昇する。ただし、使えば使うほど、『SAN値(正気度)』が低下する。
「レベル、100あがる……?!」
思わず、声が跳ねる。
「え? やばくない?」
一瞬、テンションが振り切れそうになる。
だが、すぐに、冷静な部分が水を差してきた。
「これは……すごいけど……大丈夫か? レベル100アップは、確かにすごいけど、正気じゃなくなったらダメじゃない? 海外のドラマとかで、精神病院にいる発狂した人を何度か見たことあるけど……ようは、あれになるってことだろ? デメリット、えぐくない?」
SAN値が下がるらしいが、だが、具体的にどこまで下がれば、どんな状態になるのか――そこまでは、実際に試してみないとわからない。
「こわいなぁ……」
『使うと頭おかしくなります』と言われて無邪気に使用できるやつが、この世にどれだけいるだろうか。
俺は、とりあえずダークリングをアイテムボックスにしまい込んだ。
「……ガチャでレベルが32減って……現在レベル50、か」
震える指で、自己鑑定を開く。
――レベル50。
「となると……ダークリングを使っている間は、俺レベル150になるのか……」
その数字を、頭の中で反芻《はんすう》する。
「この数字は……猛田や暁宮を、超えるなぁ」
教え子の中でも、飛び抜けた実力を誇る二人。
現状における人類の最高峰。
もし、この指輪を装着すれば、
俺は、一時的にとはいえ、その二人すら上回る。
「うーむ……」
あまりの現実感のなさに、実感が追いつかない。
色々と考えを巡らせながら、俺はいったん家に帰ろうと、裏面から外に出た。
と、そこで、
「うおっ……」
どこか遠くから、
ドガァアアアン!
と、盛大な『破壊音』が響いてくる。
鼓膜を震わせるほどの重低音。
何かが激しく衝突するような、地響きに近い音だった。
気になって、音のする方へ駆け寄ってみると――
視界に飛び込んできたのは、教え子たちの姿だった。
「おぉ……すげぇ状況……」
思わず、足が止まる。
でっかい鬼みたいなモンスターが、金棒を横薙ぎに振るった。
二メートルを優に超える体軀《たいく》。
赤黒く焼けただれたような肌には、太い筋が幾重にも浮かび上がり、呼吸のたびにどくどくと脈打っているのが遠目にもわかる。
時空旅団のメンバーが、その一撃を四方に散ってかわし、間髪入れずに斬りかかる。
だが、剣も魔法も、あの巨躯の表面を撫《な》でるだけで、まるで通っている気配がない。
それを見て、俺のこめかみに汗が浮かぶ。
「……これ……やばくね?」
いつもは圧倒的な強さを誇る時空旅団のメンバーが、明らかに、押されていた。
あの妙な鬼が、異常に強すぎる。
今まで見てきたモンスターの中で、ぶっちぎりの強さ。
「ぁああああっ!!」
猛田の腕が、鈍い音とともに折れ曲がる。
バギィという、彼女の骨の折れる嫌な音が、ここまで聞こえてきた。
『女子高生』の腕がへし折れている姿……正直、見ていられない……
「じゅ……ジュリアぁ……たすけろ!」
猛田の絶叫が響く。
彼女はいつも自信満々な『俺様系女子』だが、さすがに目に涙が浮かんでいる。
ジュリアが飛び込んで、彼女を助けようとするが、
「うぁっ!!」
その体が、次の瞬間には吹き飛ばされ、瓦礫《がれき》の山に叩きつけられた。
土煙が上がり、しばらく、その中から動く気配がない。