41話 2000万分の仕事。
協会専属になったからといって、協会本部に付きっ切りというわけではない。
基本的には、呼ばれたら行って、時空旅団のメンバーとの間に入って、調整をする、
――そんな立ち位置。
調整、と言えば聞こえはいいが、実際のところは、協会が時空旅団のメンバーにやってもらいたいことを、俺が伝言するだけの仕事だった。
協会の連中は、綾大路を筆頭に、どうにも偉そうな態度のやつが多い。
だから、プライドの高い元教え子たちは、彼らを煙たがっているところがある。
そこで、命の恩人である俺の出番、というわけだ。
元担任かつ命の恩人である俺が間に入れば、時空旅団のメンバーも、渋々ながらも話を聞く……という寸法。
実際、俺が間に入れば、みんな、ある程度は言うことを聞いた。
ワガママ女王様の『猛田』なんかは、
「いやっすよ。オレの命令をなんでも聞くなら話は別っすけど。まずはそうっすね。オレの部屋を掃除してもらって……メシつくってもらって……マッサージもしてもらって……」
と、だいぶウザイ感じで断ってくるが。
……ただ、あのクソ生意気なメスガキは、正直、例外中の例外なので、カウントにいれていない。
プライドが高い時空旅団のメンバー中でも、猛田は、特に扱いづらいやつで、異世界に転生する前から、生粋のエゴイストだった。
むちゃくちゃな女王様体質で、何かにつけて教師の俺をパシリにしようとするイカれたサイコクレイジー。
「あ、先生、もしかして、マッサージで変なこと想像した?」
「していない」
「きっしょ」
「耳ないんか。していないと言っている」
「マジでなんでつかまってないんすか。38歳で女子高生を狙うとかないわぁ」
「あ、もういいです」
こうやって、あいつとの交渉は毎回、俺が投げる形で終了する。
ちなみに、協会も、教え子たちに無茶な要求をするわけじゃない。
『CMに出てくれ』とか、『配信でこういう演出を挟んでくれ』とか、そのぐらいの、ちょっとした注文程度。
「時空旅団のメンバーに、今度、企業案件のCM撮影に来てほしいと伝えてくれませんか。10人ほどきてくれたら問題ありません。できれば、暁宮ジュリアと猛田カルマには来てほしいんですが……」
「あいよ、伝えとく」
そのまま、扱いやすい坂田か、委員長の琥珀に電話をすれば後はオールオッケー。
「――というわけで、10人ぐらいつれてCM撮影にいってくれ」
『だるいっすよ、先生』
「社会貢献《しゃかいこうけん》もしておけ。あと、お前らが撮影に協力すれば、俺の株があがる。お前らにも相当な金が入る。ウィンウィンでいこうぜ」
『……わかりました』
「ちなみに、猛田かジュリアのどっちかに来てほしいんだけど……無理かな?」
『厳しいんじゃないっすかね。どっちも性格終わってるし……ま、一応聞いてみますが』
「坂田くん、あざーっす」
その後、俺からの依頼ということで、ジュリアが渋々《しぶしぶ》参加してくれた。
猛田は『めんどい』の一言で断ったらしい。
一応、仕事なので、俺も直接あいつのところに交渉にいったが、
いつものように、
「先生が一生オレの命令を聞くと誓うならいいっすけど、どうします?」
「あ、はーい、ノーサンキューでーす」
という形で交渉は決裂した。
仕事じゃなかったら、一生かかわりあいたくない。
★
契約金だが、交渉の末、前金でもらうことになった。
ただ、上の許可がでるまで少しだけ時間がかかるとか言われて、しばらくじらされている。
「組織がでかい場合、金一つ払うのにも、無駄に時間がかかるんだよなぁ……」
などと思っていると、綾大路から電話がかかってきて、
『あなたに監督を依頼してよかった。おかげで、多くの仕事がスムーズに進んでおります』
「そいつはどうも。ただ、あまり、あいつらを、便利に使いすぎるなよ。強さは世界最強でも、年齢的には、ただの高校二年生だ。大いなる力には大いなる責任が伴うから、あいつらを社会貢献に駆り出すのに文句は言わないが……必要以上にコキ使うのは自重しろ。あと、報酬は絶対にピンハネするな。あいつらが働いた分は色付けて渡せ」
『……あなたが担任だったら、私の学生時代も、少しは違っていたかもしれませんね』
「お前の学生時代なんか知るか。伏線みたいなこと言ってんじゃねぇよ」
『そんなつもりはありませんよ。クソな教師にしか出会えなかった学生時代を懐かしんだだけです。それでは』
「あ、そう。ところで、2000万はいつ振り込まれるのかな? これだけ働かせておいて、実は嘘でした、なんて言われたら、俺、ブチ切れちゃうぜ。具体的には時空旅団をたきつけて、この世界を終わらせちゃうぜ。我ら時空旅団を甘く見るなよ」