42話 税金がかからない2000万、マジでもらったぁあああ!
『本来ならもう少し時間のかかる稟議《りんぎ》ですが、あなたとの交渉を優先し、異例の速さで決裁《けっさい》を通しました。すでに振り込まれているはずですので、ご確認を』
「マジっすか」
通話を切った瞬間、俺は、慌ててスマホの銀行アプリを開いた。
「はいってる……イエェイ!」
俺の通帳の残高が、8桁以上になっている。
人生初体験!
しかも、これは、税金がかからない丸々残る2000万。
「これは……えぐすぎるだろ……」
思わず、独り言が漏れる。
教師をしていた時、月の給料は28万程度。
額面ベースで見れば、さらに、そこから10万以上、税金だの保険だの諸々の維持費だので消えていた。
それを踏まえて考えると、この金は……命より重いっ!
★
元教え子にちょっと伝言するだけで、毎年2000万もらえるなら、
もう、人生あがりみたいなもの……
だが、
「最強ってのにも、興味があるんでね……」
最強……甘美な響きだ。
今の最強はジュリアだが……その座をかすめとってやりたい。
それが今の俺の目標。
あと……まあ、もしかしたら、この前の『強すぎるモンスター』みたいなのが、時空旅団のメンバーや、その他の連中に襲い掛かるってことも、普通にありえる話。
その時に、『何もできません』となるよりは、
『鍛えていたおかげで助けられました』となった方が、
色々と都合はいいだろう。
俺は、あいつらが目の前から消えた時のことを思い出す。
自分が雑魚すぎるせいで、何もできなかった、あの無力感。
俺に、最強の力があれば、あの時、女神をぶっ飛ばして、教え子たちを回収することもできただろう。
――というわけで、俺は今日もダンジョンにむかった。
今の俺は、まだ『杖』が必要な状態だ。
ダークリングの後遺症で、体は芳《かんば》しくない。
だが、レベルが50とかなり高いおかげで、低層のC級やB級ぐらいなら、杖をついたままでも、なんなく倒せる。
「――苦手属性のA級に、遠距離攻撃重視で攻められると……だいぶダルいけどなぁ」
接近できなければ、閃拳も、剣の一閃も、活かしようがない。
ちなみに、医者が言うには――
神経障害の右足は、しっかりリハビリすれば、いずれ動けるようになるとのこと。
「足が治るなら、正直、問題ないな」
ただ、視力が落ちたのと、頻繁に頭痛がするのは、治るかどうか、今のところわからないらしい。
視力低下は、まあいい。
完全に見えなくなったわけじゃないんだから、多少不便な程度で済んでいる。
問題は――
「……頭痛は、だるいな」
マジで、ずっと、左の目の奥あたりが、ずきずきと疼《うず》いている。
「これはしんどい……けど、まあ、しゃーない」
小さく息を吐きながら、俺は、ダンジョンの奥へと、杖をつきながら歩いていった。
★
いったん、裏面をのぞいておこうかと思い、足を運んでみた。
――すると、思っていたよりも、大きな変化があった。
なんと、『裏面3』が増えている。
「お、また新しい施設解禁ですか……たかまりますなぁ。今度はいったい、何ができるようになるんでしょうねぇ……スキルを強化する施設とかキボンヌ」
裏面2の奥に、これまでなかったはずの道が続いている。
その先に進んでみると、そこには、なんとも、おどろおどろしい石造りの台座と、その上に置かれた本が一冊。
表紙には、こう書かれていた。
――『予言の書』
「もしかして、今度は未来がわかる的な? 未来がわかって、過去にタイムリープできたら無敵なんですけどぉ」
などとつぶやきつつ、試しに開いてみると、最初のページに、一文だけ。
『この世界はもうすぐ終焉《しゅうえん》を迎える』
そんなことが書かれていた。
俺は天を仰ぎ、
「……ぇえ……」
思わず、声を裏返してしまう。