43話 世界は終わります。
『終焉』とは、いったいどういうことなのか。
次のページを開いて確認しようとすると、そこには、こう書かれていた。
『ここから先が知りたければ、1000万円課金してください』
「……しょうもないネット記事みたいな、あこぎな真似すんなよ……うぜぇなぁ」
どうしようかと、しばし悩む。
「……これ、どうせ、ガチャと同じで、タイムリープしても戻らないんだろうなぁ……」
その辺の答えは、現状だとわからない。
しかし、世界が終わるとだけ言われて、無視することもできなかった。
「1000万かぁ……1000万だぜ……教師の時の何年分だよ。貯金単位で言えば数十年分だぜ……はぁ……まあ、いいや。払うよ……」
台座には、銀行のキャッシュカードを差し込むための、小さな溝があった。
「……急に口座から1000万なくなったら、不審に思われねぇかなぁ……税務署を敵にまわすのは勘弁なんだけど……個人事業主にとって税務署ほど怖い組織もねぇよ」
社会構造にビビりつつも、俺は、キャッシュカードを差し込んだ。
すると、本のページが、ひとりでに捲《めく》れていく。
『もうすぐ、異世界から、この世界に、とんでもなく強大な魔王が襲来します』
「……異世界ねぇ……そういえば、猛田たちも異世界にいって、そこで魔王を倒したんだよなぁ……」
脳裏に、教え子たちが帰ってきた日のことがよぎる。
あの子たちの帰還報告記者会見は、全部で3回くらい見た。
「猛田たちが倒した魔王とは別の……もっと強い魔王がくる……ってことなんだろうな、この予言の書が示しているのは……たぶん……おそらく……」
あいつらの異世界での冒険譚を聞いて、胸が躍ったのを覚えている。
正直、あの時、俺は『無事帰ってきてよかった』と思うのと同じぐらい『いいなぁ、何でお前らばっかり』と思ったものだ。
教師としても人としても最低だな、俺。
『ダンジョンの最深部を目指しなさい。それだけが、この世界を守るたった一つの冴《さ》えたやりかた』
「……最後の一文が不穏だな……この書き方だと……だいぶ強めの自己犠牲を求めてきそうなんだが……」
★
ダンジョンは、全部で10階層あると言われている。
もっとも、実際のところは、まだ誰も到達していないので、確定した話ではないが。
時空旅団が異世界から帰ってくるまでは、人類のダンジョン到達階層は3階層が限界だった。
だが、彼らが戻ってきてからは、破竹の勢いで攻略が進み、現在では『8階層』まで踏破している。
話を聞いてみると、どうやら、この前俺がダークリングを使って倒した鬼型のモンスターは、7階層のガーディアンだったらしい。
正式には、『7階層のガーディアンが、死に際に残した召喚獣』とのことだが、その辺の細かい話には、あまり興味が湧かなかったので、詳しくは聞いていない。
本来、ガーディアンは、特定のエリアから動かないから、逃げるのもたやすいらしいが、あの鬼は召喚獣だったので、その縛りがなく、下層に逃げても追いかけてきた……とか。
ともかく、7階層のガーディアンを突破した時空旅団の面々は、現状、8階層を順調に攻略し、すでに、『9階層へと進むための階段』と『それを守るガーディアン』を発見している。
――8階層ガーディアンのレベルは、150を超えているという。
一度、時空旅団のメンバー全員で挑んだものの、返り討ちにあった。
その戦闘動画は、死ぬほどバズっていて、俺も、当然、見ている。
あれは、正直、すごかった。
★
「もうすぐ異世界から魔王がやってくる。最深部を目指さないと世界が終わる……か」
台座の前で、俺は一人、ぼやく。
「色々と具体性にかけるから、イマイチ、ピンとこねぇな」