48話 どうやら俺は上級国民らしい。
一応、共有しておいた方がいいかなぁ。
しばらく迷ったすえ、俺は、口を開いた。
「実は、ダンジョン探索中に……ぇっと……一枚の紙を拾いましてね」
「紙?」
「ええ。で、そこには『ダンジョンの最深部に到達しないと世界が滅びる』『魔王が異世界から襲来してきて世界が滅びる』みたいなことを書いてあったんですよねぇ」
「そ、その紙はどこに?!」
綾大路が、珍しく身を乗り出してきた。
「俺が拾って読んだら勝手に燃えたんですよねぇ。スパイ映画の密書みたいな感じで。あれって、どういう仕組みなんすかねぇ」
「……」
綾大路が、無言でこちらを見つめてくる。
その目には、明らかに疑いの色が浮かんでいた。
「ちなみに、この情報を1000万円で買ってもらえたりします?」
「……はぁ?」
意味不明という顔をされてしまった。
マジで1000万した情報なんだけどなぁ……
結局、タイムリープしても、あの情報課金代は戻ってこなかったし。
できれば、回収したかったけど……
「証拠もなし、事実かどうかもわからない……そんな情報に1000万を出せと? 正気ですか?」
「えっと……忘れてください」
綾大路は、そこで、一度セキ払いをして、居住《いず》まいを正した。
「古文書の情報は、協会幹部と、時空旅団のメンバー全員……そして、あなたのような一部の上位ダンジョン配信者のみにお伝えしている極秘情報です。配信などでみだりに情報をばらまいて、世間を混乱させるような真似はしないでいただきたい」
「……まあ、しない方がいいですね……世界が終わる可能性がマジである……と認識した民衆の一部が、変な暴動を起こしかねないし」
『どうせ世界が終わるなら、好きに暴れてやれ!』とか言い出すバカが絶対に出てくる。
ノストラダムスの大予言の時も、そういうやつがいたっぽいし。
「世間を混乱させてもいいことはない。どのみち、この問題は、我々のようなごく一部の選ばれた上級国民しか対応できないのですから、黙っておくに限ります」
「え、俺も上級国民枠にはいってんすか?」
「当然でしょう。あなたは人類最高クラスのレベルを誇る公式S級ダンジョン配信者ですよ」
「……炎上してバカにされて、闇金をはしごしていた俺が……上級国民……なんていい響きなんだ。小市民ども、俺のクツをなめながら、こうべをたれてつくばえ」
思わず、感慨深げに呟いてしまう。
「闇金?」
綾大路の眉が、わずかに動いた。
「あなたに借金の記録は、非合法のものを含めて一切ないはずですが」
「あ、えっと……行ったことはあるんすけど、断られたんすよ。70万貸してって言ったら、無職には無理っていわれて、はは」
「……今後は、そのような軽率な行動は控えるように」
「はい、さーせん」
一度、素直に頭を下げてから、俺は、話を本題に戻した。
「それで、その……俺は、その情報を聞かされて、何をすればいいんですかね?」
「正直、情報の共有だけが目的だったのですが……あなたから得た情報が事実だった場合は……また色々と話が変わってきます」
綾大路は、指先で、机の上のファイルをとんとんと叩きながら、続けた。
「あとで、上に相談し、会議を行います。おそらく、あなた方配信者には……『最深部を目指せ』というミッションが通達されると思います。そして、それをなした者に、莫大な賞金なども出るかと思われます」
「莫大な賞金……」
ガチで世界の危機かもしれないからな。
一部の金持ちたちが、十分な額を出すだろうな。
金で買えないものはいっぱいあるが、金でしか手に入らないものも結構ある。
いくら愛や真心や友情を振りかざしたところで、学費や医療費はタダにならねぇ。
仮に、最深部に行ったら人生変えるぐらいの大金をもらえる、というのであれば、
もちろん、それも最大級の原動力の一つとして、必死に頑張らせてもらうつもりだ。