センエース   作:閃幽零

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52話 勝利?

 

 52話 勝利?

 

 倒れたクロノスを見て、猛田がご満悦な顔で、叫んだ。

 

「よっしゃ、クリアだぁ! やっぱ、オレ、ハンパねぇ!」

 

 調子に乗んな、性格ブス……と、叫びそうになったが、グっとこらえる。

 

 現状は、世界の命運がかかっている緊急事態だからな。

 ……活躍したのがお前でも、涙をのんで目をつぶろう。

 俺に許してもらえて、ありがたく思えよ、猛田ぁ!

 

 ――などと、心の中でふざけていた。

 

 すると、そこで……

 

 倒れたクロノスの死体が、ブブブブ……と、震えだした。

 

「ん?」

 

 全員が、その違和感に気づいて身構える。

 周囲の空気が、一瞬で張り詰めた。

 

『え、なに?』

『死んだんじゃないの?』

 

 何が起こるのか――誰もが息を呑んで注視した、その瞬間だった。

 

 

 クロノスの死体が、カッと光り――大爆発を起こした。

 

 

「うぁあ!」

「きゃあ!」

 

 すさまじい勢いの爆風が、神殿全体を揺らし、この場にいる全員を包み込む。

 視界が真っ白に染まり、肌がびりびりと痺れるような衝撃が、体の芯まで貫いた。

 

「……な、なんだ、これ」

 

 体が、思うように動かせない。

 まるで、全身の関節に、目に見えない重石を乗せられたような感覚。

 

 周囲を見渡すと、他のメンバーたち全員、まるで時でも止まったみたいに、その場でぴたりと固まっていた。

 

「まさか、爆風にあたったやつの時間を止める――そういう類の効果なのか……」 

 

 正直、分からない。

 ただ、みんな、ピクリとも動かず、完璧に静止している。

 

 猛田なんか、剣を構えたままの姿勢で、口を半開きにしたまま、瞬きすらしていない。

 

 ――しかし、なぜか俺だけは、

 力を込めれば、指先を、ほんの少しだけ動かすことができた。

 

「これ、もしかして、俺だけ、ちょっと耐性があった……みたいな感じなのか」

 

 理由は分からない。

 だが、これは、ものすごく重要なアドバンテージなんじゃないかという予感だけはあった。

 

 この状況、どうしたものかと悩んでいると、

 そこで、神殿の奥の方から、静かな声が響いた。

 

 

 

「ガーディアンが一人だけだと……いつから錯覚していました?」

 

 

 

 薄暗い通路の奥から、本を片手に持つ、人型のモンスターが、ゆっくりと姿を現す。

 黒衣に身を包み、背筋を伸ばしたその立ち姿は、まるで、どこかの図書館の司書のようだった。

 

「誰も聞こえていないでしょうけれど……一応、自己紹介をしておきましょうか。私の名はソロモン。この8階層を守護するガーディアンの一人です」

 

 そう言って、動かないメンバーたちに向かって、丁寧に頭を下げる。

 

 俺は、それを、息を殺して、慎重に見つめていた。

 なるべく動かないように。

 視線だけを、そっと動かす。

 

 俺だけはちょっとだけ動ける……そのことがバレるわけにはいかない。

 

「申し訳ないのですが……皆様には死んでいただきます。それが、戦いに敗れた者のさだめですので」

 

 感情の見えない、平坦な声で、ソロモンはそう告げた。

 

 そして――その右手を、最前線に立ち尽くしたままの猛田に、静かに向けた。

 

 俺は必死になって考えた。

 しかし、どう考えても、

 

 これ以外に方法がなかった。

 

 俺は、ダークリングをソっと装着する。

 そして、発動させると同時、

 人影や物陰に隠れつつ、音を殺して、

 ギュギュギュっと高速で、ソロモンの背後まで近づき、

 

 

「閃拳!!!」

 

 

 がら空きの背中に、思いっきり拳を叩き込んだ。

 

「がっはぁあ!!」

 

 血を吐き出したあとで、

 ぎろりとこちらをにらみ、

 

「な……なぜ……」

 

 などとつぶやいているソロモン。

 だが、その疑問の相手をする余裕はなかった。

 

「ぐぎぎぎ……痛ぇ……ダークリング使っている間、体、バキバキになるんだよなぁ……あーあ、またどっか後遺症残るぜ、これ……くっそ……」

 

 俺は自分の体の痛みに耐えるので精いっぱいだった。

 

 ソロモンが、血を吐きながら、

 

「なぜ……クロノスの……『タイムバースト』を受けて動ける……な、なぜ、それほどまで時間耐性が……」

 

 さぁな、知らんよ。

 タイムリープしまくったからじゃない?

 もしくは……この『朧月華《おぼろげっか》』の隠し効果?

 

 知らんけど……

 あ、だめだ……

 気絶する……

 

「ぐ……ぁ……」

「無念……」

 

 そのまま相打ち。

 俺達は、お互いに、ほぼ同じタイミングでばたりと倒れた。

 

 

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