6話 競馬で、2000万も勝ったぁああああ!!
さすがに数千万ゲットのチャンスは捨てられないよねぇ……
なんてことを考えつつ、俺は券売機の前に立った。
――が、そこで気づく。
マークシート一枚に書ける金額は、最高で75万円。
券売機に一度に入れられる紙幣も100万円が上限らしい。
「222万、一発じゃ買えねぇのか……めんどくせぇ」
仕方なく、何枚かのマークシートに金額を分けて書き込み、機械に何度も紙幣を通す。
舌打ちしながらも、なんとか222万円分の馬券を買い切った。
普通なら、高額のギャンブルに足が震えるところだろうけど、
余裕で面倒くささが勝った。
「まあ、負けてもやり直すだけだからね。それに、タイムリープがあれば、数百万ぐらい、簡単に稼げるし」
ちなみに、222万を入れたことで、オッズが『15倍』から『9.1倍』まで下がった。
それでも十分!
★
スタートの合図とともに、馬群が飛び出す。
俺の本命『シカダスペシャル』が上位につけている。
5番人気のくせに、異常な速さ。
……この荒れたレース展開に、周囲の賭博師たちが阿鼻叫喚《あびきょうかん》。
最終コーナーに差し掛かる。
どくん、どくん、と、心臓が痛いくらいに脈打つ。
いくらでもやり直せるといっても、2000万が目前なので、
――さすがにふるえてきた。
「……前の時みたいに、また足がもつれるんじゃないだろうな……バタフライエフェクトの野郎が、『俺に大金は稼がせないぞぉ』って感じで邪魔してきそう。……この世界、俺のこと嫌ってそうだもんなぁ……」
アホみたいな独り言をぶつぶつ言ってしまう。
この年まで、いいことがほとんど無かったので、
『自分の人生はどうせ何してもうまくいかない』という思考におちいりがち。
正直、『どこかで落馬するんだろう』、
『なんで俺の人生はこんなに終わってんだ』
と、勝手な疑心暗鬼で暗くなっていた……が、
「……あ」
シカダスペシャルは……
そのまま、危なげなく先頭でゴールした。
「――あ……勝った……にせんまん……うそだろ……マジで? いいの?」
声と足が震えてきた。
脳汁が止まらない。
「へ、へへ……ひひひ……ひひひひひ!」
あまりにうれしくて、俺は、その場で転がって、ごろごろしてしまった。
「げひゃひゃひゃひゃひゃ! やったぁああ!」
★
払い戻し窓口、
……第三レースの馬券を握りしめたまま向かうと、案内された自動精算機は、途中で止まった。
液晶画面に浮かんだのは、無機質な一文。
『係員をお呼びください』
しばらくすると、係員に連れられて、有人の窓口へと通される。
「おめでとうございます。当たり馬券、確認させていただきますね」
窓口の男は、丁寧な手つきで馬券を読み取り機に通す。
画面に表示された数字を見て、
「恐れ入りますが、1000万円を超えるお支払いとなりますので、こちらの用紙にご住所とお名前、マイナンバーのご記入をお願いできますでしょうか」
ボールペンと記入用紙を差し出される。
震える手で、住所と名前を書き込んでいく。
マイナンバーなんか覚えてないから、財布からマイナンバーカードを取り出して確認してから記入する。
書き終えた用紙を渡すと、男はそれを一瞥《いちべつ》し、奥に引っ込んでいく。
「なんか……現実感がねぇな……ほんとにもらえるのかな……」
待つこと数分。
戻ってきた係員の手には、ずっしりとした厚みの現金の入った袋があった。
「こちら、2020万2000円でございます。お確かめください」
袋の中身を見て、俺は言葉を失った。
「……マジで2000万。……この額が手元にあるのは人生初めてだ……」
しばらく、その重みを抱えたまま動けなかった。
やがて、じわじわと笑いがこみ上げてくる。
「いける、これ……完全に同じじゃないから、確実な無限勝ちはできない……けど、俺は、起こりやすい未来を先に知ることができるし……失敗しても、やり直せる……最強っ……!」
……そう思った直後だった。
「――失礼。少々、よろしいですか」
黒いスーツを着たイカつい男が二人、俺の両脇に立っていた。