67話 300万で猛田のパンツが買える!
――『翌日』の昼、綾大路から電話がきた。
『ドローンの映像を確認しました』
前置きもなく、そう切り出される。
『異常な美しさと、危うさをはらむ美女が、確かに5人。ドローンは、戦闘用に開発された特殊装甲仕様でしたが……魔法一発で、破壊されました』
「……そうすか」
予想通りの結果に、乾いた声が漏れる。
『その後、やつらが9階層から出ているという報告は受けていません』
「あ、そう……まあ、基本、ガーディアンは、守護領域から出ないみたいだしな」
『これより、協会にて緊急会議を招集いたします。議題は、あなたの予知夢の内容を事実と仮定した上での、対応方針の協議です。……つきましては、あなたにも出席を要請いたします。本件は重大事案と判断されるため、猛田さん、暁宮さんにも、あわせて出席をお願いする運びとなっております』
「はい……了解」
★
19時過ぎ、協会におもむくと、大きな会議室に、すでに、多くの人間が集まっていた。
人類最強格である、暁宮と猛田も、その席に加わっている。
いつもなら、協会の会議など、鼻で笑って無視する二人だが、さすがに、今回ばかりは、危機の度合いが違うということで、参加したらしい。
暁宮は、いつものように、何を考えているかわからない顔で、背筋を正して、椅子に座っている。
猛田の方は、机に足を乗せ、椅子の背もたれに、だらしなく体を預けていた。
短いスカートを穿《は》いているので、パンツが見えそう……
と思いきや、どの角度からも決して見えない、鉄壁を誇っている。
そういう、スキがありそうで、全くないところが、
あのメスガキの、地味にキモい特徴だったりする。
ふと、この性悪ワガママ女王様の、死に際の顔を思い出す。
『せん……せい……たすけ――』
「……はぁ……」
思わず、ため息がこぼれる。
猛田は、本当、俺に対して、純度の高い嫌がらせしかしてこない。
ちなみに、猛田の隣が、俺の席だった。
椅子に腰かけると、机に足を乗せたままの、態度悪すぎな猛田が、こちらをチラ見して、
「オレのこの体勢だと、パンツ見えそうとか思ったんじゃないすか? きっしょ」
けらけらと、小馬鹿にしてきてから、
「なんなら、パンツ売ってあげましょうか? 300万ぐらいでどうです?」
「知ってるか? 300万あったら、60人ぶんの命を買えるんだぞ」
「はぁ? 何言ってんすか、相変わらず、言動、バグり散らかしてますね。まじ、キモすぎ。いくらオレに好かれたいからって、無理して変人気取らなくていいすよ」
お前に好かれたいと思ったことは一度もない。
マジで、一度も、ただの一度も。
「そんなんだから一生独身なんすよ。仕方ないから、オレがもらってあげましょうか? 家事、全部やるのと、毎日3時間はマッサージするって約束するなら、考えてあげなくもないすよ。あ、ちなみに、マッサージっていやらしい方じゃないすっよ。どうせ先生のことだから、そっちで想像したかもしれないけど――」
と、そこで、隣に座っているジュリアが、猛田に視線を向けることもなく、
「いい加減、黙れ。不愉快なことばかり口にして……あんたには、最低限の品位とかないのか」
「うっせぇ、殺すぞ。オレの下位互換が調子に乗るな」
「レベルは私の方が上だ」
「総合力ではオレの方が上だろ、頭わりぃな。……オレ、お前みたいなバカ、マジで嫌いなんだよ」
この二人は、昔から、ムチャクチャ仲が悪い。
というか、まあ……猛田と仲がいいやつなんて、そもそも、いないんだけどね。
――などと、どうでもいいことを考えていると、会議が始まった。