75話 変身、強ぇえええ!!
そのまま、突撃した。
全身に纏った雷が、バチバチと音を立てて弾ける。
いつもより、はるかに速い。
凄まじい勢いで、ハグレインボールへと肉薄していく。
視界が間引かれたように粗くなる。
それでいて、自分の体だけは驚くほど正確に、思い通りに動いてくれる。
「閃拳!!」
俺は、深く腰をいれて、拳を突き出した。
着弾の瞬間、レインボールの全身がバチバチと音を立てて焦げていく。
そのまま勢いよく吹っ飛び、壁に激突した。
あっさりと死に絶えた、その姿を見て、
「おぉ……」
思わず、間の抜けた声が漏れる。
「特攻武器の黄金のナイフ以外だと、ほぼダメージが入らないことでお馴染みの、あのレインボールを……ただの、グーパンで倒せた……変身、強ぇ……あと、かっけぇ……」
そのまま、護衛のレインシュバリエを粉砕していく。
いつもなら、倒すのに多少の時間がかかるのだが、
変身中は、
「ふははははは! 豆腐みたいに、ぐしゃぐしゃ潰せるぜぇ! おらおらぁ!!」
すさまじい速度で抹殺することができた。
ちょっと拳を振るうだけで、ポンポン吹っ飛んで死んでいく。
「俺、最強ぉおお!!」
といったんは、図に乗ったものの、
「……あ……」
――ぐらり。
視界が、大きく揺れた。
どうやら、限界がきたらしい。
俺は、そのまま崩れ落ち、片膝をついた状態で、息を切らしながら、
「……これ、めっちゃ、疲れるじゃねぇか……」
荒い息を繰り返す。
全身の関節という関節が、酸欠のランナーみたいに悲鳴をあげていた。
「そういえば、HPとMPを消費して変身するって、言っていたな……こ、こんな、消耗すんのか……」
乾いた笑いが漏れる。
「なんか、俺の切り札って、こういう代償があるやつばっかりだな。もっと、こう……『ノーコストで、1億のダメージをだせる剣』とか、手に入らないものかね。ゲームバランスとか、ガン無視してくれていいからさぁ」
誰に向けたものでもない、独り言。
しばらく、そのままの体勢で、体を休める。
★
体力がある程度回復したところで、俺は立ち上がった。
そのまま日が沈むまで、ほかのハグレインボールを探してダンジョンを歩き回る。
効率よくレベルを上げるためには、一体でも多く狩っておきたい。
途中、足を伸ばして7、8階層にも寄ってみた。
「伝説の『レイン暴君《ぼうくん》』が、いたりしないかなぁ……」
誰にともなく、そう呟いてみる。
――レイン暴君。
これまで誰一人として、遭遇したことがない幻の個体。
だが、昔から『存在するらしい』という噂だけは絶えなかった。
「あのうわさって、どこから流れてんのかねぇ……」
などと、つぶやきつつ、
俺は薄暗い通路を、一歩ずつ進んでいった。
その道中で、A級やS級のモンスターにも遭遇したので、出現場所を頭に叩き込みつつ、
時折、変身しながら、サクサクと処理していく。
「……攻撃する瞬間だけ変身する……みたいなコトもできるな。これなら、消耗はかなり抑えられる……」
その夜は、通路の窪みに身を寄せて仮眠をとり、日が昇るとすぐに狩りを再開した。
★
翌日の20時まで探し回ったが、
「ちっ……結局、レイン暴君どころか、普通のレインボールすら見つからなかった」
A級は7体、S級は18体見つけた。
8階層は、やはり上位個体がゴロゴロしている。
「もう、いい時間だし……そろそろ狩るか」
スマホで時間を確認してから、俺は、そのまま9階層に向かった。
目的はもちろん、傾国部隊+アシュラ。
「変身可能になった今の俺がどこまで通用するか、試させてもらう」