センエース   作:閃幽零

8 / 9
8話 300万もらって、美少女中学生を引き取ることになりました。

 

 8話 300万もらって、美少女中学生を引き取ることになりました。

 

 俺の困惑を置き去りにするように、少女は淡々と自己主張を続ける。

 

「迷惑はかけません。どうか、よろしくお願いします」

 

「……いや、えぇ」

 

 朝一番で聞かされるには、あまりにも重すぎる話だった。

 

 彼女は続けて、矢継ぎ早に、

 

「閃先生……あなた以外に、頼れる人がいません。あなたに見捨てられたら終わりです。いいんですか、私が終わっても」

 

「……いや、あの……俺、君とは今日が初対面なんだけど……」

 

「父が、もし自分に何かあったらあなたを頼れ、と言っていました」

 

「俺、あいつとも、そこまで仲良くなかったけど……」

 

 困惑を隠せないまま、俺は素直な疑問を口にした。

 だが、少女は表情ひとつ変えずに続ける。

 

「父には、あなた以外に知人が一人もいませんでした」

 

「……どういうやつなんだよ、あいつ……てか、すげぇモテそうなやつだったけど……」

 

 なんとも言えない気持ちになりながら、俺は、

 

「ちなみに、いつ亡くなったの?」

 

「二週間ほど前です。ずっとお葬式の対応に追われていて、ようやく片付いたところです。ちなみに母は、私が生まれてすぐに亡くなっています」

 

 二週間。

 その間、この少女はたった一人で、父親の死という現実と向き合い続けていたということか。

 

 ……朝っぱらから、きつい話を聞かせんなよ。

 そういう重い話、嫌いなんだよ……

 心がキューってなるんだよ……

 

「……だからって……引き取れってのは……なかなかぶっ飛んでないか?」

 

「このままだと、私は遠い親戚に引き取られることになっています」

 

 少女は淡々と続けた。

 

「噂によれば、あまり素行のよくない人だそうです。あちらに行けば、私はおそらく、夜のお店に売られることになると思います」

 

「えぇ、いや、それは考えすぎじゃ……その親戚のことなんか知らんから、テキトーなこと言えないけど」

 

 そこで少女はカバンから一通の封筒を取り出し、俺に差し出した。

 

「これは、父の遺言《ゆいごん》と、香典《こうでん》などをまとめた全財産です」

 

 受け取った封筒はずっしりと重い。

 中を確認すると、便箋《びんせん》一枚と、帯封《おびふう》のついた札束が入っていた。

 便箋には、たった一行だけ。

 

 ――娘をどうかよろしく。信頼できる人は、あなたぐらいなのです。どうか、お願いします。

 

 俺は、しばらく無言でその文字を見つめた。

 ここまで信頼されるようなことは絶対にしていないんだが……

 あと、お前、娘いるなら、生命保険ぐらい入っておけや……

 

 封筒の中身を数えてみると、ちょうど300万円。

 

「……300万か」

 

 『他人の子供をあずかる額』としては話にならない安さだが……

 ちょうど今、ノドから手が出るほど、まとまった金が欲しかった。

 

 この金があれば、いちいち闇金を回らなくてすむ。

 

 ……正直、女学生の世話なんか、自分にできる気がしないが……

 失敗したときは、タイムリープしてやり直せばいいし……

 うん、まあ、なんとかなるかも……

 タイムリープ最強だし。

 

 とにもかくにも、この300万は絶対にほしい。

 

「……んー……よし、わかった。君の保護者になろうじゃないか」

 

 俺は封筒を力強く抱きしめながら、頷いた。

 

「……ありがとうございます」

 

 ユウガは、小さく頭を下げる。

 

 こうして、俺は思いがけない形で、一人の少女を引き取ることになった。

 

 俺の人生、だいぶ変な方向に向かってダッシュしているが……まあいい。

 とりあえず、軍資金はできた。

 これで心置きなくタイムリープできる。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。