センエース   作:閃幽零

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81話 異世界から最強の超人を召喚する。

 

 81話 異世界から最強の超人を召喚する。

 

 ユウガが、ぱちん、と指を鳴らした。

 

 その瞬間、頭の中に、大量の情報が、一気に流れ込んできた。

 

 【ダンジョンの階層を増やす】

 【モンスターを生成する】

 【アイテムを生成する】

 【スキルを作成する】

 【対象の名字を奪う】

 【対象に名字を与える】

 【対象と融合する】

 【世界を改変する】

 【時間を巻き戻す】

 【異世界から最強の超人を召喚する】

 …………

 

 項目が、ずらりと並んでいる。

 スクロールしても、スクロールしても、終わりが見えない。

 

「……ダンジョン魔王って、できること多いな……」

 

「現状のダンジョンポイントなら、『異世界から最強の超人を召喚する』が買えます」

 

 ユウガは、淡々と、続けた。

 

「まずはそれを買ってください。嫌なら別にかまいません。お好きにどうぞ」

 

「……お好きにもくそも、なんにもわかっていないんだが……」

 

 ぼやきながら、俺は、目の前の女を見つめる。

 

 こいつは、あの日、教え子たちを連れ去った女神。

 俺が首になった、そもそもの原因。

 

 ――けど、同時に。

 

 毎朝、味噌汁をつくってくれた。

 俺の動画を全部見て、『よく頑張りましたね』と言ってくれた。

 病室で、綾大路の頬を張ってくれた。

 

 数秒だけ、悩むものの、

 

「……お前が俺を騙していないことに賭けるよ」

 

 そう言って、俺は、『異世界から最強の超人を召喚する』を購入した。

 

 目の前の空間が、淡く光る。

 光が、人の形を象っていく。

 

 現れたのは……一人の高校生だった。

 

 制服姿の、ひょろりとした少年。

 目を閉じたまま、眠っているように、ただ、そこに立っている。

 見た目だけなら、どこにでもいそうな、普通のガキ。

 

 ユウガが、その高校生を指さしながら、

 

「彼の名は、田中・イス・東志《とうし》。銀河一の知性を持つ天才です」

 

 言われるがまま、少年のステータスを確認する。

 

 ――息を呑んだ。

 

「……とんでもなく、異常なスペックだ……」

 

 並んでいる数字の桁が違う。

 項目の一つ一つが、俺の知っている『人間』の範疇を、軽々と飛び越えている。

 

「無能の俺とは、格が違う……」

 

「この天才を、アリア・ギアスで強化すれば、53万が相手でも、勝てる可能性があります」

 

「……どう強化すればいい?」

 

「名字をうばうことが最優先です」

 

「……なんで?」

 

「30時間ぐらいかかりますが、一から説明した方がいいですか?」

 

「……今、やるべきことだけ教えてくれ」

 

「ダンジョンポイントをつかって、彼から、田中という名字を奪ってください」

 

 確かに、そういう項目があった。

 【対象の名字を奪う】

 言われたとおりに、実行する。

 

 少年の体から、何かが、すっと抜けていくのが見えた。

 

 ステータスを確認すると、名前の欄から、『田中』が消えていた。

 ――ついでに、『イス』も消えていた。

 

「……奪ったのは田中だけなのに、ミドルネームのイスも消えたんだが……」

 

「そういうものです」

 

「意味不明だなぁ……」

 

「さらに、ダンジョンポイントを使い、彼に、『先生の想いを込めた名字』をつけてあげてください」

 

「想い……ねぇ……」

 

 しばらく、少年の顔を眺める。

 

 レベル53万の怪物と戦わされる、見ず知らずのガキ。

 こいつに負けられたら、それで終わり。

 もう、あとがない。

 

「じゃあ……最後の砦って意味をこめて……砦《とりで》トウシとかどう?」

 

「すばらしいですね。最高の呪いです」

 

「呪ったつもりはないんだが……」

 

 

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