82話 スキル『名字が田中になる』。
「次に、ダンジョンポイントを使って、彼と融合してください」
ユウガは、次の指示を、淡々と出してくる。
「センエースという負荷を受けることで、トウシのポテンシャルが強化されます」
「……俺って負荷なんだ……」
「ちなみに、ここでいう融合は、対等なものではなく、ネ〇ルとピッ〇ロのやつです」
「もちろん、俺がピッ〇ロだよな」
「いえ、トウシがピッ〇ロです」
「……俺、こいつの強化パーツになるんかい……」
まあ、いいけどね。
俺、そもそも、メインキャラって柄じゃねぇし。
「融合するのは最後で結構。まずは、トウシに、『自分の知性が異常に高いということにも気づけない呪い』もあたえてください。強化値とデメリットのバランス的に、これが最善なんです」
「……よくわからんが……まあ、もう、全部言うとおりにするよ」
言われるがまま、呪いを付与する。
眠ったままの少年の眉が、ほんのわずかに、ぴくりと動いた。
「さらに、先ほど、彼から奪い取った『田中』を改造して、スキルを作成してください。その名前であれば、とんでもないチートスキルができるはずです」
「よくわからんけど……まあ、いいや」
【スキルを作成する】を購入する。
目の前に、半透明の入力画面のようなものが浮かび上がった。
「スキルの内容は、自由になるのか……」
「強力なスキルをつくって、それを、トウシにぶちこんでください」
「……強力なスキルねぇ……」
しばらく考えてから、
「そうだな、たとえば……『名字が田中になる』なんてどうだ?」
「それはすばらしい!」
「すばらしいわけねぇだろ。渾身のボケだぞ」
女神は、俺のツッコミを、完全に無視した。
「初期効果は、『近くに田中がいると元気を分けてもらえる能力』にでもしましょう。さらに、『レベルが上がらなくなる』ぐらいのデメリットをつければ……そのスキルの進化した先が、とんでもないことになります」
「……そうなの?」
ボケで言ったものが、採用されてしまった。
しかも、やべぇデメリットまで盛られて。
レベルが上がらない。
俺が、裏面で、どれだけ必死にレベルを上げてきたと思ってんだ。
それを、最初から捨てさせるとは。
――けど、ここまでくると、もう、文句を言う気力も失っていた。
もはや好きにしてくれという心境。
その後も、ユウガの指示のもと、色々と、スキルや、トウシの肉体を調整していく。
正直、途中から、自分が何をいじっているのかも、よくわかっていなかった。