9話 タイムリープしても経験値は維持される!!
朝の光がカーテンの隙間から差し込んでくる。
目を覚ますと、キッチンの方から何かを炒《いた》める匂いが漂《ただよ》ってきた。
昨日から、ユウガはこの家で暮らしている。
手続き関係は、すべて、昨日のうちにすませた。
彼女の両親が亡《な》くなっていて、親類も少ないということもあり、話は早かった。
家庭裁判所への申し立てから未成年後見人《みせいねんこうけんにん》の選任まで、区役所の担当者が段取りを組んでくれた。
受付のオバハンが、イヤな口調で『赤の他人が若い娘さんを育てられるの?』などと言ってきた際、
ユウガは、
「じゃあ、あなたが育ててくれるんですか? 覚悟もなしに、赤の他人以下のあなたが、口だけはさむのはやめてください。こっちは人生がかかっているんです」
と切り捨てた。
正直、痛快だった。
……ちなみに、もちろん寝室は別だ。
ユウガが寝室を使い、俺はリビングの隅《すみ》に布団を敷《し》いて寝ている。
『保護者が居間で雑魚寝《ざこね》というのも締まらない』とユウガは言ったが、さすがにね……
この共同生活がいつまで続くか知らんけど、
タイムリープを駆使《くし》して、さっさと金を稼いで、
寝室が二つある部屋に引っ越さないとな……
台所を覗くと、ユウガがフライパンを振っていた。
「おはようございます」
「……おはよう」
制服姿のまま、危なげない手つきで卵を焼いている。
昨日から、さっそく、家事全般を掌握《しょうあく》されている。
言っておくが、やらせているわけではない。
『そのぐらいはさせてもらいます』と、あまりにしつこかったから根負けしただけ。
「今日は、ダンジョンに行かれるんですよね」
「ああ……うん」
軽い言葉で返しながら、俺は身支度《みじたく》を整える。
玄関先で靴を履いていると、後ろから声がかかった。
「いってらっしゃい」
「……いってきます」
少し照れくさい響きに、俺はそっけなく答えて家を出た。
誰かに見送られる生活なんて、いつぶりだろうか。
★
ダンジョンに向かう道すがら、俺はずっと考えていた。
ギャンブルはダメだ。
長期的に安定して稼げる財源としては失格。
何かしら、うまいことやれば、継続的に稼げるかもしれないが、それができる頭が俺にはない。
――というわけで、俺はダンジョンで稼ごうと決意した。
うまくいっていないだけで、ダンジョン配信が本業と言えば本業。
せっかくタイムリープという特権があるなら、
これをダンジョン攻略に使えないだろうかと真剣に考えた。
ちなみに、今のところ、あまりいい手は思いついていない。
だから、とりあえず、色々と実験しようと思う。
★
調べた結果、記憶だけじゃなく、経験値も持ち越せることが分かった。
試しに数体のモンスターを倒して、
レベルを1上げてからタイムリープしてみたところ、
ちゃんとレベルは維持されていたのだ。
「……これは、でかいねぇ」
次に気づいたのは、モンスターの出現位置だった。
3日ほどかけ、何度かタイムリープを繰り返して同じ日を周回するうち、あることに気づいた。
モンスターの出現は基本ランダムなんだが、
一日単位だと、同じ階層の、同じ場所に出現している。
それも、完全に固定。
競馬や宝くじのように変動したりしない。
「……経験値は持ち越しできる……モンスターの位置も固定……これなら……」
★
ダンジョンの各階層を駆《か》けずり回り、目的のモンスターを探す。
目当ては、メタ〇スライムじみたレアモンスター。
――名前は『レインボール』
倒せば経験値効率が段違いにいいが、出現頻度がかなり低い。
出会えたとしても、逃げ足がはやいので倒しづらい。
普通のダンジョン配信者なら、月に1回、倒せればいい方。
俺は、この半年で1回も倒せていない。
だが、タイムリープを駆使すれば話は別だ。
何度もタイムリープしたことで、俺は、
レインボールが姿を現す正確な場所と時間を完全に割り出した。
さらに、ダンジョン対策協会から、『レインボールに特攻《とっこう》となる黄金のナイフ』も購入した。
50万かかった。
高ぇよ。
でも、これなら……