海を失った世界に、暁は来る   作:ぶるぶるメタボ

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第十五章 邂逅

車が。

 

止まった。

 

「着きました」

 

運転手の声。

 

暁が窓の外を見る。

 

「ここ?」

 

「ああ」

 

天龍も外を見る。

 

「みたいだな」

 

海上自衛隊基地。

 

その中枢。

 

大きな建物が。

 

六人の目の前にあった。

 

「おっきいのです……」

 

電が呟く。

 

「幼稚園よりずっと大きいわ!」

 

雷が言う。

 

「比べるものじゃないと思うよ」

 

響が冷静に返す。

 

「でも大きいじゃない!」

 

「それはそうだけど」

 

天龍が苦笑する。

 

龍田も。

 

「元気が戻ってきたみたいね~」

 

車の扉が開いた。

 

天龍が先に降りる。

 

周囲を見る。

 

武装した隊員。

 

何人もいる。

 

だが。

 

誰一人。

 

こちらへ銃口を向けていない。

 

第十三章で交わした約束。

 

それは。

 

守られている。

 

「大丈夫そうだ」

 

天龍が言う。

 

続いて。

 

龍田。

 

そして。

 

暁。

 

響。

 

雷。

 

電。

 

四人も。

 

地面へ降りる。

 

「……っ」

 

暁が少しよろめく。

 

「おっと」

 

天龍が支えた。

 

「無理すんな」

 

「大丈夫よ!」

 

「はいはい」

 

響も。

 

雷も。

 

電も。

 

疲れている。

 

治療は受けた。

 

包帯も巻かれた。

 

だが。

 

傷が消えたわけではない。

 

四人の身体は。

 

艦娘となったことで。

 

以前より大きく変化している。

 

見た目だけなら。

 

十代前半ほど。

 

幼稚園児だった頃よりも。

 

ずっと背は伸びていた。

 

だが。

 

その心まで。

 

同じだけ成長したわけではない。

 

窓へ張り付いて目を輝かせる姿。

 

天龍や龍田の服を掴む仕草。

 

知らない場所を前にした時の不安そうな目。

 

疲れを隠そうとして。

 

妙に意地を張るところ。

 

そこには。

 

まだ。

 

かつて園児だった頃の幼さが。

 

色濃く残っていた。

 

六人が。

 

玄関へ向かう。

 

その時だった。

 

ざわ。

 

「……?」

 

ざわざわ。

 

建物の中から。

 

声。

 

「何だ?」

 

天龍が足を止める。

 

すると。

 

玄関付近にいた隊員たちが。

 

突然。

 

動いた。

 

一人。

 

また一人。

 

左右へ。

 

綺麗に。

 

整列していく。

 

背筋を伸ばす。

 

空気が変わった。

 

「……龍田」

 

「ええ」

 

天龍と龍田が。

 

僅かに身構える。

 

だが。

 

敵意ではない。

 

むしろ。

 

緊張。

 

そして。

 

敬意。

 

隊員たちの間。

 

一人の男が。

 

歩いてきた。

 

年齢は。

 

六人より。

 

遥かに上。

 

制服。

 

制帽。

 

階級章。

 

天龍には。

 

それが何を意味するのか。

 

正確には分からない。

 

しかし。

 

周囲を見れば。

 

分かる。

 

「……偉い奴だな」

 

天龍が小声で言った。

 

「かなり、でしょうね~」

 

龍田も。

 

笑顔のまま。

 

男を見る。

 

暁が首を傾げる。

 

「偉い人なの?」

 

「たぶんな」

 

「どれくらい?」

 

雷が聞く。

 

「それを今聞こうとしてんだよ」

 

天龍が。

 

運転手を見る。

 

「なあ、あの人――」

 

そこで。

 

止まった。

 

「…………」

 

運転手の顔が。

 

引きつっていた。

 

「おい?」

 

運転手は。

 

答えなかった。

 

いや。

 

答える余裕が。

 

なかった。

 

慌てて姿勢を正す。

 

そして。

 

敬礼。

 

「海将!」

 

「…………」

 

天龍。

 

停止。

 

龍田も。

 

笑顔が。

 

一瞬だけ止まった。

 

「…………は?」

 

対して。

 

「かいしょう?」

 

暁。

 

「何?」

 

雷。

 

「……分からない」

 

響。

 

「偉い人なのです?」

 

電。

 

四人。

 

きょとん。

 

天龍が。

 

四人を見る。

 

そして。

 

もう一度。

 

男を見る。

 

「……すっごいどころじゃねぇよ」

 

「そうなの?」

 

「たぶん、この基地で俺たちが最初に会うような相手じゃねぇ」

 

龍田も。

 

少し困ったように笑った。

 

「お出迎えにしては、豪華すぎますねぇ」

 

海将は。

 

運転手の前で止まった。

 

「君が」

 

静かな声。

 

「六名をここまで?」

 

「はっ!」

 

運転手の背筋が。

 

さらに伸びる。

 

「所属と階級、氏名を」

 

「はっ!」

 

運転手が答える。

 

海将は。

 

一度。

 

頷いた。

 

「そうか」

 

そして。

 

「ご苦労だった」

 

「…………!」

 

運転手の目が。

 

僅かに見開かれる。

 

「い、いえ!」

 

「自分は任務を遂行しただけであります!」

 

「それでもだ」

 

海将は。

 

六人を見る。

 

「彼女たちを」

 

「ここまで無事に連れてきてくれた」

 

もう一度。

 

運転手を見る。

 

「ありがとう」

 

「…………っ」

 

運転手の喉が。

 

動いた。

 

自分より。

 

遥か上。

 

普段なら。

 

言葉を交わす機会すら。

 

ほとんどない人物。

 

その人物から。

 

直接。

 

ありがとう。

 

「……恐縮です!」

 

精一杯。

 

それだけ。

 

答えた。

 

だが。

 

疑問が。

 

残っている。

 

何故。

 

何故。

 

この人が。

 

ここにいる?

 

そして。

 

つい。

 

「海将」

 

「ん?」

 

「何故……こちらへ?」

 

言った瞬間。

 

しまった。

 

「……失礼しました!」

 

運転手が。

 

すぐに頭を下げる。

 

だが。

 

海将は怒らなかった。

 

「構わない」

 

そして。

 

六人を見る。

 

天龍と龍田。

 

そして。

 

その後ろ。

 

四人の少女。

 

外見だけなら。

 

十代前半ほどに見える。

 

だが。

 

知らない軍人たちに囲まれ。

 

天龍と龍田から離れようとしない姿には。

 

外見以上の幼さがあった。

 

海将は。

 

その様子を見て。

 

答えた。

 

「大勢で迎えれば」

 

「怖がらせるかもしれないと思ってね」

 

「…………」

 

運転手が。

 

四人を見る。

 

確かに。

 

この四人は。

 

人類初の。

 

深海棲艦撃破者。

 

だが。

 

同時に。

 

まだ。

 

あまりにも幼い。

 

「ここからは」

 

海将が言った。

 

「私が案内する」

 

「……海将ご自身がですか!?」

 

思わず。

 

声が大きくなる。

 

「そうだ」

 

「でしたら!」

 

運転手が。

 

反射的に。

 

「自分も同行いたします!」

 

海将は。

 

少しだけ。

 

目を細めた。

 

「いや」

 

「しかし――」

 

「十分だ」

 

穏やかな声。

 

だが。

 

拒絶ではない。

 

「君は」

 

「もう十分に役目を果たしてくれた」

 

「…………」

 

「休んでくれ」

 

「ですが」

 

運転手は。

 

六人を見る。

 

「万一の際には――」

 

「問題ない」

 

海将は。

 

即答した。

 

そして。

 

六人を見る。

 

「それに」

 

少しだけ。

 

口元を緩めた。

 

「これ以上」

 

「人類の英雄を」

 

「玄関先で待たせるわけにもいかんだろう」

 

「…………」

 

運転手は。

 

何も言えなくなった。

 

やがて。

 

「……はっ」

 

敬礼。

 

海将も。

 

小さく頷いた。

 

そして。

 

海将は。

 

六人の前へ。

 

歩いてきた。

 

天龍が。

 

僅かに前へ出る。

 

龍田も。

 

その横へ。

 

自然と。

 

二人が。

 

四人の前へ立つ形になった。

 

海将は。

 

それを見た。

 

だが。

 

何も言わない。

 

数歩手前。

 

止まる。

 

「初めまして」

 

天龍が。

 

男を見る。

 

「海上自衛隊」

 

海将が。

 

自らの氏名を名乗る。

 

そして。

 

「階級は、海将です」

 

「…………」

 

天龍は。

 

やはり。

 

少しだけ。

 

顔を引きつらせた。

 

本当に。

 

海将。

 

龍田も。

 

小声で。

 

「天龍ちゃん」

 

「ああ」

 

「思ってたよりずっと偉い人ですねぇ」

 

「俺も今それ考えてた」

 

「?」

 

暁たちは。

 

相変わらず。

 

よく分かっていない。

 

海将は。

 

六人へ。

 

敬礼しようとした。

 

右手が。

 

上がる。

 

だが。

 

途中で。

 

止まった。

 

目の前。

 

天龍。

 

龍田。

 

そして。

 

その後ろ。

 

包帯を巻いた。

 

四人の少女。

 

十代前半ほどに見える身体。

 

だが。

 

その身体に残る傷は。

 

あまりにも痛々しい。

 

これは。

 

違う。

 

海将は。

 

そう思った。

 

彼女たちは。

 

部下ではない。

 

同僚でもない。

 

軍人ですら。

 

ない。

 

それなのに。

 

自分たちの代わりに。

 

戦った。

 

上げかけた手を。

 

下ろす。

 

そして。

 

海将は。

 

六人へ。

 

深く。

 

頭を下げた。

 

「この街を」

 

静かな声。

 

「守ってくれたこと」

 

六人が。

 

目を見開く。

 

「海上自衛官としてではなく」

 

「一人の日本人として」

 

さらに。

 

深く。

 

「心から感謝します」

 

そして。

 

「ありがとう」

 

沈黙。

 

天龍は。

 

海将を見ていた。

 

いや。

 

頭を下げている。

 

海将を。

 

基地へ来るまで。

 

天龍には。

 

一つ。

 

心配があった。

 

軍。

 

国家。

 

上層部。

 

自分たちの力を知れば。

 

どうする?

 

「その武器を渡せ」

 

「我々の指揮下に入れ」

 

「命令に従え」

 

そう言われる可能性。

 

考えなかったわけではない。

 

それだけなら。

 

まだいい。

 

だが。

 

もし。

 

四人に。

 

そんな言葉を。

 

投げつけるなら。

 

その時は。

 

「……天龍ちゃん」

 

龍田が。

 

小さく呼ぶ。

 

天龍は。

 

龍田を見る。

 

龍田も。

 

同じことを考えていたのだろう。

 

そして。

 

二人とも。

 

同じ結論になった。

 

少なくとも。

 

目の前の男は。

 

違う。

 

海将が。

 

顔を上げる。

 

天龍は。

 

少しだけ。

 

肩の力を抜いた。

 

「……天龍だ」

 

海将が見る。

 

「天龍改二――」

 

そこで。

 

止まる。

 

「…………」

 

天龍。

 

少し考える。

 

「いや」

 

頭を掻く。

 

「天龍でいい」

 

龍田が。

 

くすくす笑う。

 

「龍田です~」

 

そして。

 

「私も龍田でお願いしますね」

 

海将は。

 

一瞬だけ。

 

「改二」という言葉に。

 

何かを感じた。

 

だが。

 

今は聞かない。

 

「天龍さん」

 

「龍田さん」

 

「よろしくお願いします」

 

「ああ」

 

「よろしくお願いしますね~」

 

そして。

 

天龍が。

 

後ろを見る。

 

四人。

 

天龍と龍田の後ろから。

 

海将を見ている。

 

「ほら」

 

「?」

 

「お前らも」

 

「え?」

 

「自己紹介」

 

四人が。

 

顔を見合わせる。

 

そして。

 

「あっ!」

 

何かを思い出したように。

 

動いた。

 

一列。

 

暁。

 

響。

 

雷。

 

電。

 

綺麗に。

 

横一列。

 

「…………」

 

天龍が。

 

目を瞬いた。

 

龍田も。

 

何故だろう。

 

その並び方が。

 

妙に。

 

自然に見えた。

 

暁が。

 

一歩。

 

前へ。

 

胸を張る。

 

「暁よ!」

 

そして。

 

「一人前のレディーとして扱ってよね!」

 

次。

 

「響だよ」

 

静かに。

 

「よろしく」

 

雷。

 

「雷よ!」

 

笑顔。

 

「困ったことがあったら、私を頼ってね!」

 

そして。

 

電。

 

少し緊張しながら。

 

「電なのです」

 

ぺこり。

 

「よろしくお願いしますなのです」

 

「…………」

 

天龍が。

 

四人を見る。

 

胸の奥。

 

何かが。

 

疼いた。

 

知らない。

 

この四人とは。

 

今日。

 

出会った。

 

そのはず。

 

なのに。

 

――前にも。

 

こんなふうに。

 

四人が並んでいるところを。

 

見たことがあるような。

 

「天龍ちゃん?」

 

龍田を見る。

 

龍田も。

 

四人を見ていた。

 

笑っている。

 

でも。

 

その目は。

 

少しだけ。

 

遠い。

 

「……なんでもねぇ」

 

「そう」

 

龍田も。

 

それ以上は言わなかった。

 

海将は。

 

四人を見た。

 

暁。

 

響。

 

雷。

 

電。

 

映像では。

 

何度も見た。

 

海の上を走る姿。

 

砲を撃つ姿。

 

敵を沈める姿。

 

泣く姿。

 

倒れる姿。

 

それでも。

 

立ち上がる姿。

 

だが。

 

目の前で見ると。

 

また違う。

 

見た目は。

 

十代前半ほどの少女たち。

 

決して。

 

幼児の姿ではない。

 

だが。

 

それでも。

 

軍人には見えなかった。

 

あまりにも。

 

幼い。

 

そして。

 

身体のあちこちには。

 

包帯。

 

傷。

 

疲労。

 

海将の目が。

 

四人の姿へ向く。

 

一瞬。

 

表情が。

 

険しくなりかける。

 

だが。

 

暁が。

 

不安そうに。

 

こちらを見ている。

 

海将は。

 

気付いた。

 

そして。

 

すぐに。

 

表情を改める。

 

怒りでも。

 

憐れみでもない。

 

柔らかな。

 

大人の顔へ。

 

ゆっくり。

 

しゃがむ。

 

四人と。

 

同じ高さまで。

 

「暁君」

 

「はい!」

 

「響君」

 

「うん」

 

「雷君」

 

「なに?」

 

「電君」

 

「はいなのです」

 

海将は。

 

四人を。

 

一人ずつ。

 

見た。

 

「君たちが」

 

「頑張ってくれたから」

 

少し。

 

声を詰まらせそうになる。

 

だが。

 

続ける。

 

「今日」

 

「この街で」

 

「たくさんの人が」

 

「家へ帰ることができる」

 

四人の表情が。

 

変わる。

 

「怖かっただろう」

 

「…………」

 

暁が。

 

俯く。

 

響も。

 

雷も。

 

電も。

 

怖かった。

 

本当に。

 

怖かった。

 

「それでも」

 

海将は言う。

 

「逃げずに」

 

「守ってくれた」

 

そして。

 

「ありがとう」

 

大きな手。

 

それが。

 

暁の頭へ。

 

優しく。

 

ぽん。

 

「…………!」

 

暁の目が。

 

大きくなる。

 

響。

 

雷。

 

電。

 

一人ずつ。

 

優しく。

 

頭を撫でる。

 

「本当に」

 

「ありがとう」

 

暁の目に。

 

何かが。

 

溜まる。

 

「…………」

 

泣かない。

 

街の人から。

 

ありがとうと言われた。

 

軍人さんからも。

 

ありがとうと言われた。

 

そして。

 

よく分からないけれど。

 

ものすごく偉いらしい人からも。

 

ありがとう。

 

「……っ」

 

でも。

 

泣きたくない。

 

だって。

 

暁は。

 

一人前の。

 

レディーだから。

 

くるっ。

 

「?」

 

海将が。

 

目を瞬く。

 

暁が。

 

天龍の後ろへ。

 

隠れた。

 

「おい?」

 

天龍が振り返る。

 

「どうした?」

 

「……なんでもないわ」

 

「いや」

 

「なんでもないの!」

 

声。

 

少し。

 

震えている。

 

すると。

 

雷も。

 

「わ、私もなんでもないわ!」

 

龍田の後ろへ。

 

電も。

 

「電も……大丈夫なのです……」

 

龍田の服を。

 

ぎゅっ。

 

響は。

 

少しだけ。

 

海将を見て。

 

「……ありがとう」

 

小さく言って。

 

天龍の後ろへ。

 

結局。

 

四人全員。

 

天龍と龍田の後ろ。

 

「…………」

 

天龍は。

 

自分の服を掴んでいる。

 

暁を見る。

 

響を見る。

 

龍田を見る。

 

龍田の服にも。

 

雷と電。

 

そして。

 

また。

 

あの感覚。

 

懐かしい。

 

知らないはずなのに。

 

この四人が。

 

自分たちの後ろへ隠れる。

 

この感覚を。

 

自分は。

 

知っている。

 

龍田が。

 

電の頭へ。

 

そっと。

 

手を置いた。

 

その動きも。

 

考えてやったものではなかった。

 

自然に。

 

身体が。

 

そうした。

 

「…………」

 

海将は。

 

その六人を。

 

黙って見ていた。

 

何か。

 

普通ではない。

 

だが。

 

今は。

 

まだ。

 

分からない。

 

天龍が。

 

海将を見る。

 

「悪いな」

 

「いや」

 

海将は。

 

立ち上がる。

 

「私の方こそ」

 

「少し緊張させてしまったようだ」

 

「いや……」

 

天龍が。

 

暁を見る。

 

「たぶん」

 

少し笑う。

 

「逆だ」

 

「?」

 

「まあ、いい」

 

天龍が言った。

 

「ここでいつまでも立ってんのも」

 

「こいつらにはキツい」

 

海将の表情が。

 

すぐに変わる。

 

「すまない」

 

「こちらの配慮が足りなかった」

 

「いやいや」

 

天龍が慌てる。

 

「そこまで謝んなくていいって」

 

龍田が笑う。

 

「それじゃあ」

 

「中へ案内していただけますか?」

 

「もちろん」

 

海将が。

 

建物を見る。

 

「こちらへ」

 

六人は。

 

歩き始めた。

 

基地内部。

 

廊下。

 

「わぁ……」

 

暁が。

 

きょろきょろ。

 

「広いのです」

 

電も。

 

「迷子になりそうね」

 

雷。

 

「雷ならなると思う」

 

響。

 

「ならないわよ!」

 

少し前まで。

 

泣きそうだったのに。

 

もう。

 

いつもの四人。

 

天龍と龍田が。

 

後ろから見守る。

 

その前を。

 

海将が歩く。

 

すれ違う隊員。

 

全員。

 

海将を見る。

 

そして。

 

その後ろの。

 

六人を見る。

 

驚き。

 

好奇心。

 

敬意。

 

様々な視線。

 

だが。

 

誰も。

 

近づいてこない。

 

海将が。

 

自ら案内している。

 

それだけで。

 

今は。

 

近づくべきではない。

 

そう。

 

全員が理解していた。

 

やがて。

 

一つの扉。

 

海将が開ける。

 

「どうぞ」

 

六人が。

 

中へ。

 

「…………」

 

暁たちの目が。

 

輝いた。

 

「すごい!」

 

広い部屋。

 

大きな机。

 

棚。

 

地図。

 

そして。

 

応接用の。

 

大きなソファ。

 

雷が。

 

ソファを見る。

 

「座っていいの?」

 

「もちろん」

 

海将が答える。

 

雷。

 

そっと。

 

座る。

 

ぼふっ。

 

「わっ!」

 

身体が。

 

沈む。

 

「ふかふか!」

 

「本当なのです!」

 

電も。

 

座る。

 

ぼふ。

 

「わぁ……」

 

響も。

 

静かに座る。

 

「……これは」

 

少しだけ。

 

「いいね」

 

そして。

 

暁。

 

「ふ、ふん!」

 

胸を張る。

 

「レディーはこういう椅子には慣れてるのよ!」

 

天龍。

 

「絶対初めてだろ」

 

「なっ!」

 

「顔に書いてあるぞ」

 

「書いてないわよ!」

 

龍田が。

 

笑う。

 

「ふふふ」

 

そして。

 

海将も。

 

ほんの少し。

 

笑った。

 

戦場では。

 

見ることのできなかった。

 

少女たちの姿。

 

外見だけなら。

 

十代前半。

 

けれど。

 

その無邪気な反応には。

 

どうしても。

 

もっと幼い子供のような。

 

何かが見え隠れしていた。

 

海将は。

 

それを。

 

まだ。

 

言葉にはできなかった。

 

六人が。

 

ソファへ座る。

 

天龍と龍田。

 

その間と隣に。

 

四人。

 

自然と。

 

家族のような。

 

並び方になった。

 

海将も。

 

向かい側。

 

ただし。

 

大きな机の向こうではなく。

 

同じ応接用のソファへ。

 

腰を下ろした。

 

一度。

 

深く。

 

息を吐く。

 

「改めて」

 

六人を見る。

 

「今日は」

 

「本当にありがとう」

 

天龍が。

 

少し困ったように。

 

「もう何回目だよ」

 

「何度でも言わせてくれ」

 

海将は。

 

少し笑った。

 

「五年間」

 

一瞬。

 

声が止まる。

 

「言いたくても」

 

「言える相手がいなかった言葉だからな」

 

天龍は。

 

何も言えなくなった。

 

龍田も。

 

笑顔を少しだけ。

 

弱める。

 

そして。

 

海将の表情が。

 

変わった。

 

優しさは。

 

残っている。

 

だが。

 

軍人の顔。

 

「さて」

 

六人も。

 

それを感じた。

 

暁たちも。

 

少しだけ。

 

姿勢を正す。

 

海将は。

 

ゆっくりと。

 

口を開いた。

 

「君たちのことを」

 

「聞かせてもらっても」

 

「いいだろうか」

 

六人が。

 

顔を見合わせる。

 

天龍。

 

龍田。

 

暁。

 

響。

 

雷。

 

電。

 

そして。

 

天龍が。

 

海将を見る。

 

「……何から聞きたい?」

 

海将は。

 

少しだけ。

 

考えた。

 

聞きたいことは。

 

山ほどある。

 

あの武装は。

 

何なのか。

 

何故。

 

深海棲艦を。

 

傷つけられるのか。

 

何故。

 

海の上を。

 

走れるのか。

 

どこから来た。

 

誰が作った。

 

何のために。

 

だが。

 

その全てより。

 

先に。

 

聞かなければならない。

 

ことがある。

 

海将は。

 

六人を見る。

 

そして。

 

人類が。

 

初めて。

 

彼女たちへ。

 

その問いを。

 

投げかけた。

 

「君たちは――」

 

一拍。

 

「何者なんだ?」

 

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