海を失った世界に、暁は来る   作:ぶるぶるメタボ

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第二十一章 覚悟の目

空は。

 

燃えていた。

 

都市。

 

港。

 

基地。

 

道路。

 

人類の住む場所へ。

 

黒い艦載機が。

 

次々と。

 

爆弾を落としていく。

 

地上。

 

炎。

 

空。

 

黒煙。

 

そして。

 

悲鳴。

 

海上。

 

一体の。

 

軽母ヌ級。

 

その周囲を。

 

無数のイ級が。

 

取り囲んでいる。

 

人類が。

 

暫定的に。

 

軽母ヌ級。

 

そう呼び始めた。

 

異形。

 

だが。

 

その名など。

 

ヌ級には。

 

関係ない。

 

ただ。

 

役割を。

 

果たす。

 

艦載機を。

 

送り出す。

 

都市を。

 

焼く。

 

人類を。

 

陸へ。

 

地下へ。

 

追い込む。

 

抵抗。

 

無意味。

 

人類の航空機。

 

撃墜。

 

ミサイル。

 

無効。

 

機銃。

 

無効。

 

問題。

 

なし。

 

海上で。

 

六体の。

 

未知の敵性個体が。

 

確認された。

 

深海棲艦を。

 

破壊できる。

 

存在。

 

だが。

 

数。

 

六。

 

損傷。

 

多数。

 

戦闘継続能力。

 

低下。

 

脅威。

 

限定的。

 

ヌ級は。

 

再び。

 

口腔を。

 

開く。

 

帰還した。

 

艦載機。

 

次の攻撃へ。

 

再出撃。

 

それで。

 

終わる。

 

人類は。

 

滅びる。

 

そう。

 

なるはずだった。

 

――通信。

 

一つ。

 

途切れた。

 

ヌ級。

 

反応。

 

艦載機。

 

一機。

 

応答。

 

なし。

 

続いて。

 

二機。

 

三機。

 

五機。

 

音信。

 

不通。

 

ヌ級の。

 

赤い光が。

 

一度。

 

揺らぐ。

 

異常。

 

人類の。

 

航空戦力では。

 

ない。

 

既知の。

 

六体でも。

 

ない。

 

なら。

 

何が。

 

次の瞬間。

 

海面。

 

弾けた。

 

轟音。

 

砲弾。

 

一発。

 

イ級へ。

 

直撃。

 

黒灰色の。

 

外殻。

 

砕ける。

 

イ級。

 

沈む。

 

さらに。

 

二発。

 

三発。

 

「――!」

 

護衛。

 

一体。

 

また。

 

一体。

 

撃沈。

 

ヌ級。

 

旋回。

 

敵。

 

確認。

 

海面。

 

少女。

 

一人。

 

二人。

 

さらに。

 

知らない。

 

六体ではない。

 

データに。

 

存在しない。

 

少女たち。

 

艦艇を。

 

思わせる。

 

兵装。

 

海面を。

 

走る。

 

そして。

 

こちらへ。

 

砲口を。

 

向けている。

 

異常。

 

未知。

 

ヌ級。

 

艦載機へ。

 

命令。

 

迎撃。

 

だが。

 

応答。

 

なし。

 

既に。

 

艦載機は。

 

落とされていた。

 

海。

 

燃える。

 

小型機。

 

次々と。

 

墜落。

 

何故。

 

人類の。

 

兵器は。

 

効かない。

 

あの六体。

 

だけ。

 

例外。

 

そのはず。

 

なのに。

 

砲撃。

 

ヌ級。

 

被弾。

 

巨体。

 

揺れる。

 

外殻。

 

破損。

 

さらに。

 

直撃。

 

一発。

 

二発。

 

五発。

 

十。

 

多い。

 

六体の。

 

攻撃では。

 

ない。

 

多数。

 

少女たちが。

 

いる。

 

ヌ級。

 

理解。

 

不能。

 

いつ。

 

増えた。

 

どこから。

 

現れた。

 

何故。

 

その時。

 

一人の少女と。

 

目が。

 

合った。

 

ヌ級の。

 

赤い眼。

 

少女の。

 

眼。

 

怒り。

 

ではない。

 

憎悪。

 

でもない。

 

狂気。

 

でも。

 

ない。

 

ただ。

 

決まっている。

 

退かない。

 

逃げない。

 

何が。

 

あっても。

 

ここを。

 

通さない。

 

そんな。

 

眼。

 

ヌ級の。

 

内部。

 

何かが。

 

初めて。

 

揺れた。

 

未知。

 

それを。

 

もし。

 

人類の言葉で。

 

呼ぶなら。

 

恐怖。

 

砲撃。

 

直撃。

 

ヌ級の。

 

巨体。

 

裂ける。

 

沈む。

 

海面が。

 

近づく。

 

最後。

 

ヌ級が。

 

見たもの。

 

データに。

 

存在しない。

 

少女たち。

 

その。

 

覚悟を。

 

決めた。

 

眼。

 

そして。

 

深海へ。

 

沈んだ。

 

同じ頃。

 

太平洋。

 

別海域。

 

ヌ級。

 

撃沈。

 

大西洋。

 

艦載機。

 

全滅。

 

インド洋。

 

イ級群。

 

壊滅。

 

地中海。

 

大型深海棲艦。

 

沈没。

 

南シナ海。

 

人類側。

 

反撃。

 

世界中で。

 

同じことが。

 

起き始めていた。

 

それまで。

 

一方的に。

 

狩る側だった。

 

深海棲艦。

 

その前へ。

 

少女たちが。

 

現れる。

 

一人。

 

また。

 

一人。

 

数十。

 

数百。

 

それ以上。

 

誰にも。

 

正確な数は。

 

分からない。

 

ただ。

 

一つだけ。

 

確かだった。

 

六人では。

 

なくなった。

 

世界とは。

 

少しだけ。

 

違う場所。

 

海でも。

 

空でも。

 

陸でもない。

 

人間が。

 

見ることのできない。

 

場所。

 

そこから。

 

一人の妖精が。

 

世界を。

 

見ていた。

 

「あれ?」

 

首を。

 

傾げる。

 

海。

 

少女。

 

また。

 

少女。

 

「……増えた」

 

一人。

 

二人。

 

三人。

 

どんどん。

 

「どうして?」

 

妖精には。

 

分かっていた。

 

力には。

 

代償が。

 

必要。

 

何を。

 

失うのか。

 

人間なら。

 

怖がる。

 

普通なら。

 

拒む。

 

少なくとも。

 

そう。

 

思っていた。

 

最初の。

 

四人。

 

子供。

 

代償の意味を。

 

完全には。

 

理解していなかった。

 

だから。

 

契約した。

 

次。

 

二人。

 

大人。

 

代償を。

 

理解した。

 

それでも。

 

契約した。

 

妖精は。

 

あの二人が。

 

特別なのだと。

 

思った。

 

ところが。

 

声。

 

「……?」

 

誰かが。

 

呼んでいる。

 

遠く。

 

願い。

 

妖精が。

 

振り向く。

 

「また?」

 

声の。

 

方へ。

 

地下。

 

瓦礫。

 

一人の。

 

人間。

 

妖精が。

 

その前へ。

 

現れる。

 

人間。

 

目を。

 

見開く。

 

「……本当に」

 

妖精。

 

その人を見る。

 

「呼んだ?」

 

人間。

 

頷く。

 

「うん」

 

妖精。

 

いつものように。

 

説明する。

 

「力を」

 

「欲しい?」

 

「深海棲艦と」

 

「戦える力」

 

人間。

 

頷く。

 

妖精。

 

続ける。

 

「でも」

 

「代わりに」

 

「あなたを知っている人は」

 

「あなたを忘れる」

 

「家族も」

 

「友達も」

 

「大切な人も」

 

「写真も」

 

「記録も」

 

「あなたが」

 

「今まで」

 

「そこにいたことも」

 

「なくなる」

 

妖精。

 

相手を見る。

 

「それでも?」

 

人間。

 

一度。

 

目を。

 

閉じた。

 

そして。

 

頷いた。

 

「構わない」

 

妖精。

 

無言。

 

「……本当に?」

 

「うん」

 

「後悔するかも」

 

「すると思う」

 

妖精。

 

少し。

 

驚く。

 

「じゃあ」

 

「どうして?」

 

人間。

 

少し。

 

笑った。

 

「守りたいから」

 

それだけ。

 

妖精。

 

理解。

 

できない。

 

「契約成立」

 

光。

 

人間。

 

包まれる。

 

そして。

 

一人の。

 

少女。

 

艦艇の。

 

名。

 

艦艇の。

 

力。

 

新しい。

 

存在。

 

誕生。

 

少女。

 

最初に。

 

走った。

 

守りたい。

 

人の。

 

ところへ。

 

地下。

 

扉。

 

開く。

 

そこに。

 

家族。

 

少女。

 

足。

 

止まる。

 

家族。

 

少女を見る。

 

そして。

 

困惑。

 

「……どちら様ですか?」

 

少女。

 

動かない。

 

妖精。

 

後ろから。

 

見ている。

 

これが。

 

代償。

 

分かっていた。

 

聞いていた。

 

覚悟した。

 

それでも。

 

少女の。

 

目から。

 

涙。

 

一滴。

 

家族。

 

不思議そうに。

 

見る。

 

少女。

 

少しだけ。

 

笑った。

 

「……そっか」

 

それだけ。

 

振り返る。

 

妖精を見る。

 

妖精。

 

少し。

 

身構える。

 

怒る?

 

責める?

 

泣く?

 

でも。

 

少女は。

 

言った。

 

「ありがとう」

 

妖精。

 

固まる。

 

「……え?」

 

少女。

 

涙を。

 

拭く。

 

「だって」

 

家族を。

 

一度。

 

見る。

 

「この人たちを」

 

「守れるんでしょ?」

 

妖精。

 

何も。

 

言えない。

 

「だったら」

 

少女。

 

海の。

 

方角を見る。

 

「ありがとう」

 

そして。

 

走り出す。

 

海へ。

 

妖精。

 

その背中を。

 

見送る。

 

「……どうして?」

 

答え。

 

分からない。

 

その時。

 

また。

 

声。

 

「あ」

 

別の。

 

場所。

 

「お願い」

 

また。

 

別。

 

「もし」

 

さらに。

 

「いるなら」

 

声。

 

声。

 

声。

 

願い。

 

多い。

 

一人。

 

二人。

 

十人。

 

数えられない。

 

妖精。

 

また。

 

向かう。

 

説明。

 

代償。

 

「それでも?」

 

「構わない」

 

契約。

 

光。

 

忘却。

 

涙。

 

それでも。

 

「ありがとう」

 

海へ。

 

また。

 

「それでも?」

 

「お願いします」

 

契約。

 

また。

 

「それでも?」

 

「構わない」

 

また。

 

また。

 

妖精には。

 

もう。

 

数えられなかった。

 

誰かを。

 

守るため。

 

自分の。

 

名前を。

 

捨てる。

 

家族から。

 

忘れられる。

 

友人から。

 

忘れられる。

 

自分の。

 

人生そのものを。

 

失う。

 

それを。

 

理解して。

 

選ぶ。

 

妖精。

 

立ち尽くす。

 

「あの二人だけじゃ」

 

「なかった……」

 

天龍。

 

龍田。

 

特別。

 

だと。

 

思っていた。

 

だが。

 

違う。

 

今。

 

世界中。

 

同じことを。

 

人間が。

 

している。

 

「人間って」

 

妖精。

 

顔を。

 

しかめる。

 

「なんで?」

 

海。

 

かつて。

 

深海棲艦だけが。

 

支配していた。

 

場所。

 

今。

 

そこに。

 

少女たち。

 

以前の。

 

名前。

 

なし。

 

以前の。

 

人生。

 

なし。

 

以前の。

 

存在。

 

なし。

 

それでも。

 

前へ。

 

砲撃。

 

深海棲艦。

 

沈む。

 

艦載機。

 

落ちる。

 

都市へ。

 

向かっていた。

 

敵。

 

押し返される。

 

世界中で。

 

一度。

 

二度。

 

三度。

 

人類が。

 

守る。

 

人類が。

 

押し返す。

 

妖精。

 

その全てを。

 

見ている。

 

「自分が」

 

「いなくなるのに」

 

「どうして」

 

「他の人を」

 

「守ろうとするの?」

 

分からない。

 

理屈。

 

合わない。

 

損。

 

しかない。

 

帰る場所。

 

なくなる。

 

褒めてくれる人。

 

いなくなる。

 

自分が。

 

救ったと。

 

覚えてくれる人すら。

 

いなくなる。

 

なのに。

 

戦う。

 

妖精。

 

胸の奥。

 

今まで。

 

知らなかった。

 

何か。

 

感じる。

 

怖い。

 

のか。

 

驚いている。

 

のか。

 

尊敬。

 

なのか。

 

まだ。

 

名前を。

 

知らない。

 

「……人間って」

 

海を。

 

見る。

 

名を。

 

捨てた。

 

少女たち。

 

深海棲艦へ。

 

向かっていく。

 

誰かを。

 

守るため。

 

「なんなの?」

 

その時。

 

また。

 

声。

 

妖精が。

 

振り向く。

 

遠い。

 

場所。

 

新しい。

 

願い。

 

「……お願い」

 

妖精は。

 

しばらく。

 

動かなかった。

 

そして。

 

小さく。

 

息を。

 

吐いた。

 

「……うん」

 

声の。

 

方へ。

 

向かう。

 

世界では。

 

まだ。

 

願いが。

 

止まっていなかった。

 

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