空は。
燃えていた。
都市。
港。
基地。
道路。
人類の住む場所へ。
黒い艦載機が。
次々と。
爆弾を落としていく。
地上。
炎。
空。
黒煙。
そして。
悲鳴。
海上。
一体の。
軽母ヌ級。
その周囲を。
無数のイ級が。
取り囲んでいる。
人類が。
暫定的に。
軽母ヌ級。
そう呼び始めた。
異形。
だが。
その名など。
ヌ級には。
関係ない。
ただ。
役割を。
果たす。
艦載機を。
送り出す。
都市を。
焼く。
人類を。
陸へ。
地下へ。
追い込む。
抵抗。
無意味。
人類の航空機。
撃墜。
ミサイル。
無効。
機銃。
無効。
問題。
なし。
海上で。
六体の。
未知の敵性個体が。
確認された。
深海棲艦を。
破壊できる。
存在。
だが。
数。
六。
損傷。
多数。
戦闘継続能力。
低下。
脅威。
限定的。
ヌ級は。
再び。
口腔を。
開く。
帰還した。
艦載機。
次の攻撃へ。
再出撃。
それで。
終わる。
人類は。
滅びる。
そう。
なるはずだった。
――通信。
一つ。
途切れた。
ヌ級。
反応。
艦載機。
一機。
応答。
なし。
続いて。
二機。
三機。
五機。
音信。
不通。
ヌ級の。
赤い光が。
一度。
揺らぐ。
異常。
人類の。
航空戦力では。
ない。
既知の。
六体でも。
ない。
なら。
何が。
次の瞬間。
海面。
弾けた。
轟音。
砲弾。
一発。
イ級へ。
直撃。
黒灰色の。
外殻。
砕ける。
イ級。
沈む。
さらに。
二発。
三発。
「――!」
護衛。
一体。
また。
一体。
撃沈。
ヌ級。
旋回。
敵。
確認。
海面。
少女。
一人。
二人。
さらに。
知らない。
六体ではない。
データに。
存在しない。
少女たち。
艦艇を。
思わせる。
兵装。
海面を。
走る。
そして。
こちらへ。
砲口を。
向けている。
異常。
未知。
ヌ級。
艦載機へ。
命令。
迎撃。
だが。
応答。
なし。
既に。
艦載機は。
落とされていた。
海。
燃える。
小型機。
次々と。
墜落。
何故。
人類の。
兵器は。
効かない。
あの六体。
だけ。
例外。
そのはず。
なのに。
砲撃。
ヌ級。
被弾。
巨体。
揺れる。
外殻。
破損。
さらに。
直撃。
一発。
二発。
五発。
十。
多い。
六体の。
攻撃では。
ない。
多数。
少女たちが。
いる。
ヌ級。
理解。
不能。
いつ。
増えた。
どこから。
現れた。
何故。
その時。
一人の少女と。
目が。
合った。
ヌ級の。
赤い眼。
少女の。
眼。
怒り。
ではない。
憎悪。
でもない。
狂気。
でも。
ない。
ただ。
決まっている。
退かない。
逃げない。
何が。
あっても。
ここを。
通さない。
そんな。
眼。
ヌ級の。
内部。
何かが。
初めて。
揺れた。
未知。
それを。
もし。
人類の言葉で。
呼ぶなら。
恐怖。
砲撃。
直撃。
ヌ級の。
巨体。
裂ける。
沈む。
海面が。
近づく。
最後。
ヌ級が。
見たもの。
データに。
存在しない。
少女たち。
その。
覚悟を。
決めた。
眼。
そして。
深海へ。
沈んだ。
同じ頃。
太平洋。
別海域。
ヌ級。
撃沈。
大西洋。
艦載機。
全滅。
インド洋。
イ級群。
壊滅。
地中海。
大型深海棲艦。
沈没。
南シナ海。
人類側。
反撃。
世界中で。
同じことが。
起き始めていた。
それまで。
一方的に。
狩る側だった。
深海棲艦。
その前へ。
少女たちが。
現れる。
一人。
また。
一人。
数十。
数百。
それ以上。
誰にも。
正確な数は。
分からない。
ただ。
一つだけ。
確かだった。
六人では。
なくなった。
世界とは。
少しだけ。
違う場所。
海でも。
空でも。
陸でもない。
人間が。
見ることのできない。
場所。
そこから。
一人の妖精が。
世界を。
見ていた。
「あれ?」
首を。
傾げる。
海。
少女。
また。
少女。
「……増えた」
一人。
二人。
三人。
どんどん。
「どうして?」
妖精には。
分かっていた。
力には。
代償が。
必要。
何を。
失うのか。
人間なら。
怖がる。
普通なら。
拒む。
少なくとも。
そう。
思っていた。
最初の。
四人。
子供。
代償の意味を。
完全には。
理解していなかった。
だから。
契約した。
次。
二人。
大人。
代償を。
理解した。
それでも。
契約した。
妖精は。
あの二人が。
特別なのだと。
思った。
ところが。
声。
「……?」
誰かが。
呼んでいる。
遠く。
願い。
妖精が。
振り向く。
「また?」
声の。
方へ。
地下。
瓦礫。
一人の。
人間。
妖精が。
その前へ。
現れる。
人間。
目を。
見開く。
「……本当に」
妖精。
その人を見る。
「呼んだ?」
人間。
頷く。
「うん」
妖精。
いつものように。
説明する。
「力を」
「欲しい?」
「深海棲艦と」
「戦える力」
人間。
頷く。
妖精。
続ける。
「でも」
「代わりに」
「あなたを知っている人は」
「あなたを忘れる」
「家族も」
「友達も」
「大切な人も」
「写真も」
「記録も」
「あなたが」
「今まで」
「そこにいたことも」
「なくなる」
妖精。
相手を見る。
「それでも?」
人間。
一度。
目を。
閉じた。
そして。
頷いた。
「構わない」
妖精。
無言。
「……本当に?」
「うん」
「後悔するかも」
「すると思う」
妖精。
少し。
驚く。
「じゃあ」
「どうして?」
人間。
少し。
笑った。
「守りたいから」
それだけ。
妖精。
理解。
できない。
「契約成立」
光。
人間。
包まれる。
そして。
一人の。
少女。
艦艇の。
名。
艦艇の。
力。
新しい。
存在。
誕生。
少女。
最初に。
走った。
守りたい。
人の。
ところへ。
地下。
扉。
開く。
そこに。
家族。
少女。
足。
止まる。
家族。
少女を見る。
そして。
困惑。
「……どちら様ですか?」
少女。
動かない。
妖精。
後ろから。
見ている。
これが。
代償。
分かっていた。
聞いていた。
覚悟した。
それでも。
少女の。
目から。
涙。
一滴。
家族。
不思議そうに。
見る。
少女。
少しだけ。
笑った。
「……そっか」
それだけ。
振り返る。
妖精を見る。
妖精。
少し。
身構える。
怒る?
責める?
泣く?
でも。
少女は。
言った。
「ありがとう」
妖精。
固まる。
「……え?」
少女。
涙を。
拭く。
「だって」
家族を。
一度。
見る。
「この人たちを」
「守れるんでしょ?」
妖精。
何も。
言えない。
「だったら」
少女。
海の。
方角を見る。
「ありがとう」
そして。
走り出す。
海へ。
妖精。
その背中を。
見送る。
「……どうして?」
答え。
分からない。
その時。
また。
声。
「あ」
別の。
場所。
「お願い」
また。
別。
「もし」
さらに。
「いるなら」
声。
声。
声。
願い。
多い。
一人。
二人。
十人。
数えられない。
妖精。
また。
向かう。
説明。
代償。
「それでも?」
「構わない」
契約。
光。
忘却。
涙。
それでも。
「ありがとう」
海へ。
また。
「それでも?」
「お願いします」
契約。
また。
「それでも?」
「構わない」
また。
また。
妖精には。
もう。
数えられなかった。
誰かを。
守るため。
自分の。
名前を。
捨てる。
家族から。
忘れられる。
友人から。
忘れられる。
自分の。
人生そのものを。
失う。
それを。
理解して。
選ぶ。
妖精。
立ち尽くす。
「あの二人だけじゃ」
「なかった……」
天龍。
龍田。
特別。
だと。
思っていた。
だが。
違う。
今。
世界中。
同じことを。
人間が。
している。
「人間って」
妖精。
顔を。
しかめる。
「なんで?」
海。
かつて。
深海棲艦だけが。
支配していた。
場所。
今。
そこに。
少女たち。
以前の。
名前。
なし。
以前の。
人生。
なし。
以前の。
存在。
なし。
それでも。
前へ。
砲撃。
深海棲艦。
沈む。
艦載機。
落ちる。
都市へ。
向かっていた。
敵。
押し返される。
世界中で。
一度。
二度。
三度。
人類が。
守る。
人類が。
押し返す。
妖精。
その全てを。
見ている。
「自分が」
「いなくなるのに」
「どうして」
「他の人を」
「守ろうとするの?」
分からない。
理屈。
合わない。
損。
しかない。
帰る場所。
なくなる。
褒めてくれる人。
いなくなる。
自分が。
救ったと。
覚えてくれる人すら。
いなくなる。
なのに。
戦う。
妖精。
胸の奥。
今まで。
知らなかった。
何か。
感じる。
怖い。
のか。
驚いている。
のか。
尊敬。
なのか。
まだ。
名前を。
知らない。
「……人間って」
海を。
見る。
名を。
捨てた。
少女たち。
深海棲艦へ。
向かっていく。
誰かを。
守るため。
「なんなの?」
その時。
また。
声。
妖精が。
振り向く。
遠い。
場所。
新しい。
願い。
「……お願い」
妖精は。
しばらく。
動かなかった。
そして。
小さく。
息を。
吐いた。
「……うん」
声の。
方へ。
向かう。
世界では。
まだ。
願いが。
止まっていなかった。