海を失った世界に、暁は来る   作:ぶるぶるメタボ

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第二十七章 深海鎮守府

暗い。

 

どこまでも。

 

暗い。

 

暁は。

 

戦艦棲姫の腕の中から。

 

周囲を見ていた。

 

上も。

 

下も。

 

全部。

 

海。

 

それなのに。

 

息が。

 

できる。

 

苦しくない。

 

身体も。

 

潰れていない。

 

「……ねえ」

 

暁。

 

小さく。

 

「降ろして」

 

戦艦棲姫。

 

歩いたまま。

 

「嫌ダ」

 

「なんでよ!」

 

雷。

 

「私たち」

 

「自分で歩けるわ!」

 

響も。

 

「その方が」

 

「楽じゃない?」

 

電。

 

「重くないのです?」

 

戦艦棲姫。

 

止まる。

 

四人を見る。

 

そして。

 

少しだけ。

 

口元。

 

歪める。

 

「降リタイナラ」

 

「降リロ」

 

暁。

 

「ほんと?」

 

「アア」

 

戦艦棲姫。

 

周囲。

 

指差す。

 

「ココガ」

 

「深海ノ底デ」

 

「水圧ガ」

 

「ドレダケアルカ」

 

「知ッテルナラナ」

 

「…………」

 

四人。

 

固まる。

 

雷。

 

恐る恐る。

 

「……降りたら」

 

戦艦棲姫。

 

淡々。

 

「潰レルゾ」

 

電。

 

「…………」

 

響。

 

「このままでいい」

 

暁。

 

「暁も」

 

雷。

 

「わ、私も!」

 

電。

 

「お願いしますなのです……」

 

戦艦棲姫。

 

小さく。

 

ため息。

 

「最初カラ」

 

「ソウシテロ」

 

再び。

 

歩く。

 

いや。

 

海中を。

 

歩いている。

 

足元。

 

海底。

 

黒い。

 

砂。

 

岩。

 

沈んだ。

 

船。

 

何年前のものか。

 

分からない。

 

残骸。

 

それら。

 

過ぎていく。

 

やがて。

 

前。

 

影。

 

「……?」

 

暁。

 

目を。

 

細める。

 

何か。

 

ある。

 

近づく。

 

そして。

 

四人。

 

同時。

 

目を。

 

丸くする。

 

「……おうち?」

 

深海。

 

その底。

 

そこに。

 

建物。

 

あまりにも。

 

不釣り合い。

 

地上に。

 

あるはずの。

 

建造物。

 

正門。

 

塀。

 

大きな。

 

庁舎。

 

木造と。

 

コンクリート。

 

混じったような。

 

古い。

 

軍港施設。

 

窓。

 

ある。

 

屋根。

 

ある。

 

通路。

 

街灯。

 

ある。

 

なのに。

 

その外。

 

全部。

 

深海。

 

「変なの」

 

雷。

 

「海の中なのに」

 

「普通の建物がある」

 

響。

 

戦艦棲姫。

 

「普通?」

 

暁。

 

「だって」

 

「お家みたいじゃない」

 

戦艦棲姫。

 

少し。

 

首。

 

傾げる。

 

「コレガ」

 

「普通ダ」

 

四人。

 

「…………」

 

戦艦棲姫。

 

建物を見る。

 

「深海鎮守府」

 

暁。

 

「ちんじゅふ?」

 

「私タチノ」

 

「本拠地ダ」

 

四人。

 

また。

 

顔を。

 

見合わせる。

 

鎮守府。

 

さっき。

 

戦艦棲姫に。

 

聞かれた。

 

知らない言葉。

 

「これが」

 

「ちんじゅふ……」

 

電。

 

戦艦棲姫。

 

一瞬。

 

電を見る。

 

そして。

 

また。

 

嫌な顔。

 

「……本当ニ」

 

「知ラナカッタノカ」

 

誰も。

 

答えない。

 

正門。

 

開く。

 

中。

 

さらに。

 

普通。

 

廊下。

 

部屋。

 

階段。

 

掲示板。

 

工廠。

 

倉庫。

 

食堂。

 

それら。

 

全部。

 

地上。

 

同じ。

 

ただ。

 

窓の外。

 

真っ暗な。

 

深海。

 

ときどき。

 

イ級。

 

ヌ級。

 

泳ぐ。

 

暁たち。

 

身体。

 

固くなる。

 

戦艦棲姫。

 

気づく。

 

「襲ワン」

 

暁。

 

「ほんと?」

 

「私ガ」

 

「連レテイル」

 

「今ハ」

 

「敵扱イサセン」

 

「今は?」

 

響。

 

戦艦棲姫。

 

「余計ナ所ヲ」

 

「拾ウナ」

 

暁。

 

少しだけ。

 

頬。

 

膨らませる。

 

だが。

 

戦艦棲姫。

 

そのまま。

 

歩く。

 

やがて。

 

一つの。

 

扉。

 

上。

 

文字。

 

『入渠ドック』

 

戦艦棲姫。

 

「先ニ」

 

「ソノ身体ヲ」

 

「何トカスル」

 

「え?」

 

「話ハ」

 

「ソレカラダ」

 

中。

 

広い。

 

複数の。

 

入渠槽。

 

人間から見れば。

 

巨大な。

 

風呂。

 

湯気。

 

水面。

 

暁。

 

目。

 

少し。

 

輝く。

 

「お風呂?」

 

雷。

 

「ほんとだ!」

 

電。

 

「暖かそうなのです」

 

響。

 

「……入りたい」

 

戦艦棲姫。

 

「ソノタメニ」

 

「連レテキタ」

 

四人を。

 

床へ。

 

下ろす。

 

「わっ」

 

久しぶり。

 

自分の。

 

足。

 

暁。

 

ふら。

 

戦艦棲姫。

 

腕。

 

伸ばす。

 

支える。

 

「無理スルナ」

 

「……ありがと」

 

戦艦棲姫。

 

一瞬。

 

止まる。

 

「…………」

 

そして。

 

何も。

 

言わない。

 

戦艦棲姫。

 

四人から。

 

傷んだ。

 

艤装。

 

破れた。

 

衣服。

 

治療の。

 

邪魔になるものを。

 

手早く。

 

外す。

 

その動き。

 

妙に。

 

慣れている。

 

「はい」

 

「入れ」

 

雷。

 

「急に普通に喋った!」

 

戦艦棲姫。

 

「……今ソコ」

 

「気ニスルノカ?」

 

響。

 

「ちょっと」

 

戦艦棲姫。

 

ため息。

 

「イイカラ」

 

「入レ」

 

四人。

 

入渠槽へ。

 

ちゃぷん。

 

「……あ」

 

暁。

 

「あったかい……」

 

雷。

 

「気持ちいい!」

 

電。

 

「生き返るのです……」

 

響。

 

肩まで。

 

沈む。

 

「……これは」

 

「いい」

 

四人。

 

ようやく。

 

少し。

 

力。

 

抜ける。

 

今日。

 

朝から。

 

ずっと。

 

戦っていた。

 

痛かった。

 

怖かった。

 

泣いた。

 

それでも。

 

休めなかった。

 

だから。

 

温かい。

 

湯。

 

それだけで。

 

四人。

 

目。

 

とろん。

 

戦艦棲姫。

 

その姿。

 

見る。

 

そして。

 

上。

 

表示盤。

 

見る。

 

「…………?」

 

何も。

 

出ない。

 

通常。

 

入渠。

 

開始。

 

損傷度。

 

修復資材。

 

入渠時間。

 

表示。

 

出る。

 

でも。

 

今。

 

空欄。

 

「……何ダ?」

 

操作。

 

反応。

 

なし。

 

もう一度。

 

なし。

 

「壊レタカ?」

 

別の。

 

端末。

 

確認。

 

正常。

 

隣。

 

試験。

 

正常。

 

戦艦棲姫。

 

四人を見る。

 

暁。

 

湯。

 

手で。

 

すくう。

 

雷。

 

ぷか。

 

浮く。

 

響。

 

目。

 

閉じる。

 

電。

 

「ふわぁ……」

 

戦艦棲姫。

 

眉。

 

寄る。

 

「……オイ」

 

暁。

 

「なに?」

 

「傷」

 

四人。

 

見る。

 

腕。

 

脚。

 

身体。

 

痣。

 

擦り傷。

 

包帯。

 

そのまま。

 

戦艦棲姫。

 

近づく。

 

「出ロ」

 

雷。

 

「もう?」

 

「出ロ」

 

四人。

 

しぶしぶ。

 

上がる。

 

戦艦棲姫。

 

大きな。

 

タオル。

 

四人。

 

包む。

 

水分。

 

拭く。

 

そして。

 

傷。

 

見る。

 

変化。

 

なし。

 

「…………」

 

暁。

 

「どうしたの?」

 

戦艦棲姫。

 

答えない。

 

頭。

 

思考。

 

入渠。

 

効かない。

 

なら。

 

こいつらは。

 

通常の。

 

艦娘ではない。

 

当然。

 

既に。

 

分かっていた。

 

だが。

 

どこが。

 

違う?

 

人間。

 

その可能性。

 

元が。

 

人間。

 

そこへ。

 

艦娘の。

 

力だけ。

 

無理矢理。

 

取り付けた。

 

「……?」

 

戦艦棲姫。

 

四人を見る。

 

見た目。

 

少女。

 

身体。

 

傷。

 

疲労。

 

人間。

 

近い。

 

なら。

 

あり得る?

 

だが。

 

すぐ。

 

否定。

 

無理だ。

 

人間の。

 

身体へ。

 

艦艇級の。

 

火力。

 

速度。

 

耐久。

 

艤装。

 

そんなものを。

 

そのまま。

 

押し込めば。

 

骨。

 

筋肉。

 

血管。

 

臓器。

 

神経。

 

全部。

 

耐えられない。

 

内側から。

 

壊れる。

 

なら。

 

身体そのものを。

 

作り替える。

 

強化する。

 

だが。

 

そこまで。

 

変えれば。

 

それは。

 

もう。

 

人間ではない。

 

艦娘とも。

 

違う。

 

もっと。

 

別。

 

例えば。

 

自分たちのような。

 

「……深海棲艦?」

 

小さく。

 

口から。

 

出た。

 

暁。

 

「え?」

 

戦艦棲姫。

 

首。

 

振る。

 

「違ウ」

 

即座。

 

否定。

 

四人。

 

見る。

 

深海棲艦。

 

ではない。

 

匂い。

 

違う。

 

力。

 

違う。

 

でも。

 

艦娘。

 

とも。

 

違う。

 

「……何ナンダ」

 

誰へ。

 

聞くでもなく。

 

呟く。

 

少し。

 

後。

 

食堂。

 

四人。

 

椅子。

 

座る。

 

目の前。

 

皿。

 

そして。

 

補給物資。

 

戦艦棲姫。

 

「食エ」

 

暁。

 

「…………」

 

雷。

 

「…………」

 

響。

 

「…………」

 

電。

 

「…………」

 

戦艦棲姫。

 

「何ダ」

 

暁。

 

指差す。

 

「これ」

 

鋼材系。

 

補給食。

 

「食べ物なの?」

 

「ソウダ」

 

雷。

 

別。

 

燃料系。

 

補給資材。

 

見る。

 

「こっちは?」

 

「補給用燃料」

 

響。

 

ボーキサイト系。

 

航空資材。

 

「これは?」

 

「航空資材」

 

四人。

 

顔。

 

見合わせる。

 

そして。

 

暁。

 

「……おにぎり」

 

戦艦棲姫。

 

「何?」

 

「おにぎりないの?」

 

戦艦棲姫。

 

沈黙。

 

雷。

 

「普通のご飯がいい!」

 

電。

 

「電もなのです」

 

響。

 

「同意」

 

「…………」

 

戦艦棲姫。

 

額。

 

押さえる。

 

「艦娘ダロ」

 

暁。

 

「だから」

 

「その艦娘って何なのよ!」

 

戦艦棲姫。

 

「…………」

 

言い返せない。

 

厨房。

 

向く。

 

「人間用ニ近イ」

 

「食料ハ?」

 

奥。

 

深海棲艦。

 

一体。

 

ごそ。

 

ごそ。

 

しばらく。

 

皿。

 

握り飯。

 

味噌汁。

 

漬物。

 

四人。

 

目。

 

輝く。

 

「おにぎり!」

 

暁。

 

一つ。

 

持つ。

 

ぱく。

 

「おいしい!」

 

雷。

 

「ほんと!」

 

電。

 

「ほっとするのです……」

 

響。

 

静かに。

 

食べる。

 

でも。

 

二口目。

 

少し。

 

速い。

 

戦艦棲姫。

 

見る。

 

四人。

 

普通。

 

あまりにも。

 

普通。

 

鋼材。

 

食べない。

 

燃料。

 

欲しがらない。

 

ボーキサイト。

 

興味。

 

なし。

 

握り飯。

 

喜ぶ。

 

味噌汁。

 

ふーふー。

 

冷ます。

 

雷。

 

漬物。

 

少し。

 

苦手そう。

 

暁。

 

「レディーは」

 

「好き嫌いしないのよ!」

 

その本人。

 

少し。

 

顔。

 

しかめる。

 

戦艦棲姫。

 

「…………」

 

嫌な。

 

予感。

 

確信へ。

 

近づく。

 

自分の知る。

 

艦娘では。

 

ない。

 

だが。

 

なら。

 

何だ?

 

食事。

 

終了。

 

戦艦棲姫。

 

四人。

 

再び。

 

連れていく。

 

今度。

 

歩ける。

 

鎮守府内。

 

廊下。

 

暁。

 

戦艦棲姫の。

 

少し。

 

後ろ。

 

雷。

 

左右。

 

きょろ。

 

きょろ。

 

響。

 

静か。

 

電。

 

暁の。

 

服。

 

少し。

 

掴む。

 

廊下。

 

その先。

 

一つの。

 

扉。

 

文字。

 

『提督室』

 

暁。

 

止まる。

 

「……ていとく」

 

戦艦棲姫。

 

「アア」

 

雷。

 

「でも」

 

扉。

 

見る。

 

「提督って」

 

「誰なの?」

 

戦艦棲姫。

 

答えない。

 

ただ。

 

扉。

 

見る。

 

何度。

 

この部屋を。

 

見ただろう。

 

用意。

 

されている。

 

机。

 

椅子。

 

海図。

 

作戦室。

 

でも。

 

提督。

 

いない。

 

五年間。

 

ずっと。

 

「……入ルゾ」

 

扉。

 

開く。

 

四人。

 

中。

 

そして。

 

固まる。

 

広い。

 

部屋。

 

中央。

 

大きな。

 

机。

 

その奥。

 

椅子。

 

誰も。

 

座っていない。

 

そして。

 

その周囲。

 

人。

 

いや。

 

人ではない。

 

女たち。

 

一人。

 

巨大な。

 

航空艤装。

 

冷たい。

 

瞳。

 

一人。

 

さらに。

 

異様な。

 

黒い。

 

航空兵装。

 

一人。

 

飛行場。

 

そのものを。

 

背負ったような。

 

巨大な。

 

異形艤装。

 

そして。

 

もう一人。

 

水。

 

深海。

 

その気配を。

 

纏う。

 

女。

 

世界の海。

 

少女たちを。

 

圧倒した。

 

存在。

 

その全員。

 

ここ。

 

いる。

 

暁。

 

「…………」

 

雷。

 

暁の。

 

腕。

 

掴む。

 

電。

 

響へ。

 

寄る。

 

響。

 

顔。

 

強張る。

 

「怖いお姉さん」

 

「いっぱい……」

 

戦艦棲姫。

 

「聞コエテルゾ」

 

暁。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

一人の女。

 

少し。

 

笑う。

 

別の女。

 

興味。

 

薄そう。

 

飛行場のような。

 

異形。

 

四人を。

 

観察。

 

水の気配。

 

女。

 

何も。

 

言わない。

 

戦艦棲姫。

 

部屋。

 

中央へ。

 

「連レテキタ」

 

航空艤装の女。

 

四人を見る。

 

「……コレガ?」

 

「アア」

 

「最初ニ」

 

「現レタ」

 

「四人ダ」

 

黒い航空兵装。

 

女。

 

「幼イナ」

 

戦艦棲姫。

 

「見タ目ヨリ」

 

「モット幼イ」

 

暁。

 

少し。

 

むっと。

 

「暁は」

 

「一人前のレディーよ」

 

部屋。

 

少し。

 

沈黙。

 

戦艦棲姫。

 

「……ソウカ」

 

何故か。

 

否定。

 

しない。

 

そして。

 

四人。

 

見る。

 

「話シテモラウ」

 

暁。

 

「何を?」

 

戦艦棲姫。

 

誰も座っていない。

 

提督席。

 

一瞬。

 

見る。

 

「全部ダ」

 

「オ前達ガ」

 

「何者ナノカ」

 

「何処カラ」

 

「来タノカ」

 

「ドウヤッテ」

 

「ソノ姿ニナッタノカ」

 

「コノ世界デ」

 

「何ガ起キタノカ」

 

一拍。

 

「最初カラ」

 

「全部」

 

暁。

 

響。

 

雷。

 

電。

 

顔。

 

見合わせる。

 

怖い。

 

敵。

 

しかも。

 

ものすごく。

 

強い。

 

お姉さんたち。

 

でも。

 

さっきまで。

 

殺そうとしていた。

 

戦艦棲姫。

 

今。

 

殺気。

 

ない。

 

ただ。

 

知りたがっている。

 

暁。

 

小さく。

 

息。

 

吸う。

 

そして。

 

話し始める。

 

「……暁たちは」

 

一度。

 

言葉。

 

止める。

 

「幼稚園に」

 

「いたの」

 

人型深海棲艦たち。

 

誰も。

 

動かない。

 

戦艦棲姫。

 

目。

 

細める。

 

暁。

 

続ける。

 

「先生が」

 

「二人いて」

 

「みんなで」

 

「一緒にいたの」

 

深海鎮守府。

 

提督室。

 

本来。

 

艦娘と。

 

深海棲艦。

 

敵と。

 

敵。

 

絶対に。

 

同じ場所へ。

 

座るはずのない。

 

存在。

 

その両者が。

 

今。

 

誰もいない。

 

提督の部屋で。

 

一つの。

 

世界の真実を。

 

知ろうとしていた

 

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