海を失った世界に、暁は来る   作:ぶるぶるメタボ

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第二十九章 ゲームの外側

深海鎮守府。

 

提督室。

 

そこには。

 

誰も座っていない。

 

提督の椅子が。

 

あった。

 

その前。

 

暁。

 

響。

 

雷。

 

電。

 

四人の話を。

 

聞き終えた。

 

深海棲艦たちは。

 

しばらく。

 

誰も。

 

口を開かなかった。

 

「……本当なのか?」

 

最初に。

 

声を出したのは。

 

戦艦棲姫だった。

 

もう。

 

片言ではない。

 

暁が。

 

頷く。

 

「うん」

 

響も。

 

「嘘じゃない」

 

雷。

 

「嘘なんかついてないわ!」

 

電。

 

「本当なのです……」

 

「…………」

 

戦艦棲姫。

 

顔を。

 

伏せる。

 

周囲。

 

巨大な航空艤装を持つ女。

 

黒い航空兵装を従える女。

 

飛行場そのものを思わせる。

 

異形艤装を持つ女。

 

そして。

 

深海の気配を纏った女。

 

誰も。

 

何も。

 

言わない。

 

人間が。

 

契約する。

 

存在を。

 

失う。

 

家族から。

 

忘れられる。

 

記録から。

 

消える。

 

その代わりに。

 

艦娘の力を得る。

 

そんな仕組み。

 

知らない。

 

自分たちが知っている。

 

世界には。

 

存在しない。

 

「……だったら」

 

暁が。

 

小さく。

 

言った。

 

戦艦棲姫。

 

顔を上げる。

 

「お姉さんたちのことも」

 

「教えて」

 

「…………」

 

「ゲームって何?」

 

響。

 

「提督って?」

 

雷。

 

「鎮守府ってここにもあるけど」

 

「何のための場所なの?」

 

電。

 

少し。

 

怖そうにしながら。

 

「艦娘って」

 

「何なのです?」

 

そして。

 

暁。

 

「艦隊これくしょんって」

 

「なに?」

 

沈黙。

 

戦艦棲姫は。

 

目を閉じた。

 

やがて。

 

深く。

 

息を吐く。

 

「……分かった」

 

四人。

 

見る。

 

「今度は」

 

「私たちが」

 

「話す番だな」

 

戦艦棲姫。

 

提督の。

 

空席を見る。

 

「まず」

 

「ゲームっていうのは」

 

少し。

 

考える。

 

「……遊びだ」

 

暁。

 

「遊び?」

 

「ああ」

 

「人間が」

 

「決められたルールの中で」

 

「勝ったり」

 

「負けたりする」

 

雷。

 

「鬼ごっこみたいな?」

 

戦艦棲姫。

 

少し。

 

止まる。

 

「……まあ」

 

「すごく簡単に言えば」

 

「そんな感じだ」

 

響。

 

「でも」

 

「鬼ごっこには」

 

「戦争はないよ」

 

「そうだな」

 

戦艦棲姫。

 

苦い。

 

顔。

 

「私たちがいたゲームは」

 

「戦争をする遊びだった」

 

四人。

 

黙る。

 

「名前は」

 

一拍。

 

「艦隊これくしょん」

 

暁。

 

「あ」

 

「昨日」

 

「聞かれたやつ」

 

「そうだ」

 

戦艦棲姫。

 

「人間たちは」

 

「艦これ」

 

「そう略していたらしい」

 

雷。

 

「それに」

 

「お姉さんたちが出てるの?」

 

「ああ」

 

「私たちは」

 

その言葉。

 

一瞬。

 

詰まる。

 

「敵役だ」

 

暁。

 

「悪者?」

 

「……そういうことに」

 

「なっている」

 

雷。

 

眉。

 

寄せる。

 

「なっている?」

 

戦艦棲姫。

 

暁たちを見る。

 

「私たちは」

 

「人間を憎む」

 

「艦娘を憎む」

 

「海を奪う」

 

「現れた艦娘と戦う」

 

「それが」

 

「私たちに」

 

「与えられた役だった」

 

電。

 

「役……?」

 

飛行場のような。

 

艤装を持つ女が。

 

静かに。

 

口を開く。

 

「お芝居の」

 

「悪役に近い」

 

雷。

 

「あっ」

 

「それなら分かる!」

 

戦艦棲姫。

 

少し。

 

頷く。

 

「近い」

 

「私たちは」

 

「敵として」

 

「作られた」

 

「だから」

 

「人類を襲った」

 

暁。

 

表情。

 

固くなる。

 

「……じゃあ」

 

「最初から?」

 

「ああ」

 

「五年前」

 

戦艦棲姫。

 

ゆっくり。

 

話す。

 

「私たちが」

 

「この世界に現れた時」

 

「最初にやったのは」

 

「海を奪うことだった」

 

四人。

 

息を呑む。

 

「ゲームでも」

 

「そういう始まりだ」

 

「深海棲艦が」

 

「海を脅かす」

 

「人類は」

 

「通常の兵器では」

 

「対抗できない」

 

響。

 

「……同じだ」

 

「そう」

 

戦艦棲姫。

 

「そこまでは」

 

「全部」

 

「私たちの知る通りだった」

 

「そして」

 

「次に」

 

「艦娘が出てくる」

 

暁。

 

「それが」

 

「暁たち?」

 

「……違う」

 

即答。

 

暁。

 

目を。

 

丸くする。

 

「え?」

 

戦艦棲姫。

 

四人を見る。

 

「少なくとも」

 

「私が知っている」

 

「艦娘は」

 

「お前たちみたいに」

 

「人間が契約して」

 

「なるものじゃない」

 

響。

 

「じゃあ」

 

「どうやって?」

 

「艦艇の名を持って」

 

「現れる」

 

「最初から」

 

「その艦の力を」

 

「持っている」

 

「戦い方も」

 

「知っている」

 

戦艦棲姫。

 

少し。

 

顔をしかめる。

 

「だから」

 

「天龍と龍田を見た時」

 

「おかしいと思った」

 

暁。

 

「先生たち?」

 

「ああ」

 

「力は」

 

「天龍と龍田だ」

 

「でも」

 

「戦い方が」

 

「素人だった」

 

「本来なら」

 

「あり得ない」

 

雷。

 

少し。

 

むっとする。

 

「先生たちは」

 

「頑張ったもん!」

 

「知ってる」

 

戦艦棲姫。

 

意外なほど。

 

素直に。

 

「今は」

 

「馬鹿にしてるわけじゃない」

 

「ただ」

 

「その時は」

 

「ゲームのルールから」

 

「外れて見えた」

 

電。

 

「それで」

 

「提督という人は?」

 

戦艦棲姫。

 

空席。

 

見る。

 

「艦娘を」

 

「指揮する人間だ」

 

「艦隊を作って」

 

「出撃させて」

 

「私たちと戦う」

 

「ゲームでは」

 

「中心にいる人間」

 

暁。

 

「先生みたいな人?」

 

「……違う」

 

「もっと」

 

「軍隊の司令官に近い」

 

響。

 

「かいしょうさん?」

 

戦艦棲姫。

 

少し。

 

考える。

 

「役割だけなら」

 

「近いかもしれない」

 

暁。

 

「じゃあ」

 

「鎮守府は?」

 

「提督と」

 

「艦娘が」

 

「いる場所だ」

 

「住んで」

 

「補給して」

 

「修理して」

 

「出撃する」

 

雷。

 

辺り。

 

見る。

 

「ここみたいに?」

 

「そうだ」

 

「ここは」

 

「それを真似た」

 

「深海側の本拠地だ」

 

響。

 

「ドロップ艦は?」

 

戦艦棲姫。

 

「敵を倒したり」

 

「海域を進んだりすると」

 

「新しい艦娘が」

 

「仲間になることがある」

 

「それを」

 

「ドロップと呼ぶ」

 

雷。

 

「人が」

 

「落ちてくるの?」

 

「そういう意味じゃない」

 

「じゃあ何?」

 

「……説明が難しい」

 

暁。

 

「大型建造!」

 

「それは?」

 

「大量の資材を使って」

 

「艦娘を作る」

 

四人。

 

固まる。

 

電。

 

「……作る?」

 

「ああ」

 

「人を?」

 

「違う」

 

戦艦棲姫。

 

すぐ。

 

否定。

 

「少なくとも」

 

「私の知る艦娘は」

 

「普通の人間を」

 

「材料にはしない」

 

「…………」

 

四人。

 

顔を。

 

見合わせる。

 

戦艦棲姫たちも。

 

同じ。

 

だから。

 

おかしい。

 

暁。

 

「じゃあ」

 

「お姉さんたちは」

 

「ゲームをするために」

 

「五年前」

 

「みんなを襲ったの?」

 

戦艦棲姫。

 

「……そうだ」

 

暁。

 

顔。

 

曇る。

 

「なんで」

 

「五年間」

 

「海だけで」

 

「何もしなかったの?」

 

戦艦棲姫。

 

しばらく。

 

黙る。

 

そして。

 

「待っていた」

 

「何を?」

 

「お前たちを」

 

暁。

 

「暁たち?」

 

「艦娘と」

 

「提督を」

 

戦艦棲姫。

 

少し。

 

遠い目。

 

「海を奪った」

 

「なら」

 

「次は」

 

「艦娘が現れる」

 

「そう」

 

「思っていた」

 

「一年」

 

「待った」

 

「…………」

 

「二年目も」

 

「待った」

 

雷。

 

「……うん」

 

「三年目」

 

戦艦棲姫。

 

少し。

 

顔。

 

嫌そう。

 

「さすがに」

 

「おかしいと」

 

「思い始めた」

 

響。

 

「それでも待った?」

 

「ああ」

 

「四年目」

 

「待った」

 

「五年目」

 

「…………」

 

戦艦棲姫。

 

顔。

 

逸らす。

 

「キレた」

 

沈黙。

 

雷。

 

「……キレた?」

 

「キレた」

 

暁。

 

「だから」

 

「街を攻撃したの?」

 

「…………」

 

戦艦棲姫。

 

答えない。

 

雷。

 

じっと。

 

見る。

 

「それは」

 

「ダメでしょ!」

 

戦艦棲姫。

 

「…………はい」

 

雷。

 

目。

 

丸くなる。

 

戦艦棲姫。

 

小さく。

 

「今は」

 

「そう思う」

 

暁。

 

「じゃあ」

 

「お姉さんたちは」

 

「本当に」

 

「人間が嫌いなの?」

 

戦艦棲姫。

 

止まる。

 

周囲の女たち。

 

互いに。

 

見る。

 

そして。

 

「……正直に言えば」

 

戦艦棲姫。

 

「どうでもいい」

 

暁。

 

「え?」

 

「人間も」

 

「艦娘も」

 

「本当の私には」

 

「特に」

 

「恨みはない」

 

「好きでも」

 

「嫌いでもない」

 

飛行場型の女。

 

静かに。

 

「できることなら」

 

「戦いたくもない」

 

黒い航空兵装の女。

 

「深海で」

 

「静かに」

 

「眠っていられれば」

 

「それでよかった」

 

雷。

 

「じゃあ」

 

「なんで戦ったのよ!」

 

戦艦棲姫。

 

「役だからだ」

 

「それしか」

 

「知らなかった」

 

「私たちは」

 

「深海棲艦だから」

 

「敵でなければならない」

 

「人類を憎まなければならない」

 

「艦娘と戦わなければならない」

 

「そういう存在として」

 

「ここに来た」

 

暁。

 

「嫌ってなくても?」

 

「ああ」

 

「戦いたくなくても?」

 

「そうだ」

 

響。

 

戦艦棲姫。

 

じっと。

 

見る。

 

「……お姉さんも」

 

「役をやめられないの?」

 

「…………」

 

戦艦棲姫。

 

返事。

 

しない。

 

それだけで。

 

答え。

 

十分だった。

 

電。

 

「それなら」

 

「死ぬのは」

 

「怖くないのです?」

 

戦艦棲姫。

 

「死ぬ?」

 

不思議そうな。

 

顔。

 

「私たちには」

 

「死というものが」

 

「ほとんどない」

 

四人。

 

「…………?」

 

「轟沈しても」

 

「しばらくすれば」

 

「海の底で」

 

「また戻る」

 

暁。

 

「……生き返るの?」

 

「ああ」

 

「イ級も?」

 

「戻る」

 

「ヌ級も?」

 

「同じだ」

 

雷。

 

「じゃあ」

 

戦艦棲姫。

 

指差す。

 

「前に」

 

「お姉さんが」

 

「イ級とかヌ級を」

 

「吹き飛ばしてたのは?」

 

戦艦棲姫。

 

少し。

 

気まずい顔。

 

「あれは」

 

「異常が出ていたからだ」

 

「異常?」

 

「あいつらが」

 

「逃げた」

 

響。

 

「逃げたらダメなの?」

 

「本来は」

 

「ゲームに」

 

「そんな行動はない」

 

戦艦棲姫。

 

続ける。

 

「それに」

 

「恐怖していた」

 

「私たちには」

 

「本来」

 

「そんな感情が」

 

「設定されていない」

 

四人。

 

黙る。

 

「壊れた」

 

「そう思った」

 

「だから」

 

「一度」

 

「轟沈させた」

 

「再び」

 

「海底から戻れば」

 

「元に戻る」

 

「そう」

 

「考えた」

 

暁。

 

少し。

 

顔。

 

引きつる。

 

「……壊れたおもちゃ」

 

「直すみたいに?」

 

戦艦棲姫。

 

「…………」

 

「そうだ」

 

響。

 

「それで」

 

「戻った?」

 

戦艦棲姫。

 

少し。

 

表情。

 

曇る。

 

「……完全には」

 

「戻っていない」

 

「今でも」

 

「一部は」

 

「お前たちを」

 

「恐れている」

 

「…………」

 

戦艦棲姫自身。

 

その事実。

 

気にしている。

 

本来ない。

 

恐怖。

 

本来ない。

 

逃走。

 

そして。

 

本来ない。

 

自分自身の。

 

疲労。

 

本来ない。

 

「もう終わってほしい」

 

という。

 

願い。

 

ゲームの。

 

駒。

 

それだけ。

 

だったはずなのに。

 

何かが。

 

変わっている。

 

暁。

 

しばらく。

 

黙っていた。

 

雷も。

 

響も。

 

電も。

 

そして。

 

雷。

 

突然。

 

「でも!」

 

大きな。

 

声。

 

戦艦棲姫。

 

見る。

 

雷。

 

拳。

 

握る。

 

「知らなかったって」

 

「それで」

 

「全部いいの!?」

 

「…………」

 

「お姉さんたちが」

 

「ゲームだと思ってても」

 

「街は壊れたのよ!」

 

暁。

 

「幼稚園も」

 

小さな。

 

声。

 

「なくなった」

 

電。

 

目。

 

潤む。

 

「いっぱい」

 

「人が」

 

「死んじゃったのです……」

 

響。

 

静か。

 

「知らなかったとしても」

 

「起きたことは」

 

「なくならない」

 

部屋。

 

静まり返る。

 

上位の。

 

深海棲艦たち。

 

誰も。

 

反論。

 

しない。

 

戦艦棲姫。

 

暁たち。

 

見る。

 

「…………」

 

雷。

 

「何とも」

 

「思わなかったの?」

 

戦艦棲姫。

 

目。

 

伏せる。

 

「……思っていなかった」

 

暁。

 

「どうして?」

 

「人間のことを」

 

「知らなかった」

 

「…………?」

 

戦艦棲姫。

 

言葉。

 

選ぶ。

 

「ゲームでは」

 

「一般の人間は」

 

「ほとんど」

 

「出てこない」

 

「人間として」

 

「はっきり存在するのは」

 

「提督くらいだ」

 

「だから」

 

「この世界の人間も」

 

「私たちと」

 

「同じだと思っていた」

 

暁。

 

「同じ?」

 

「死んでも」

 

「戻る」

 

「新しく」

 

「補充される」

 

「建造や」

 

「何かで」

 

「また」

 

「現れる」

 

「そういう」

 

「存在だと」

 

四人。

 

固まる。

 

暁。

 

戦艦棲姫を。

 

見る。

 

「……人は」

 

声。

 

震える。

 

「生き返らないよ」

 

「…………」

 

戦艦棲姫。

 

目。

 

動く。

 

「何?」

 

「死んだら」

 

暁。

 

涙。

 

「おしまいなの」

 

戦艦棲姫。

 

動かない。

 

雷。

 

「お父さんが死んだら」

 

「もう会えないの!」

 

電。

 

「お母さんも」

 

「先生も」

 

「一度死んじゃったら」

 

「戻ってこないのです!」

 

響。

 

戦艦棲姫。

 

真っ直ぐ。

 

「人間には」

 

「復活なんて」

 

「ない」

 

部屋。

 

空気。

 

止まる。

 

「……ない?」

 

戦艦棲姫。

 

小さく。

 

「ないよ!」

 

暁。

 

泣きながら。

 

「死んだ人は」

 

「ずっと」

 

「いなくなるの!」

 

戦艦棲姫。

 

頭の中。

 

何かが。

 

つながる。

 

沈めた。

 

船。

 

海へ。

 

落ちる。

 

人間。

 

爆撃した。

 

街。

 

炎。

 

逃げる。

 

人々。

 

倒れる。

 

人間。

 

戻って。

 

こなかった。

 

当たり前。

 

そう。

 

思っていた。

 

次の。

 

人間が。

 

出てくる。

 

ゲームだから。

 

でも。

 

違う。

 

あれは。

 

一人。

 

一人。

 

それぞれ。

 

別の。

 

人間。

 

一度。

 

失えば。

 

二度と。

 

戻らない。

 

「……じゃあ」

 

戦艦棲姫。

 

声。

 

掠れる。

 

「私たちは……」

 

続かない。

 

周囲。

 

女たちも。

 

同じ。

 

空母型の女。

 

顔。

 

青ざめる。

 

飛行場型。

 

目。

 

閉じる。

 

深海の女。

 

俯く。

 

五年間。

 

自分たちは。

 

何人。

 

殺した?

 

何隻。

 

沈めた?

 

何人。

 

海へ。

 

落とした?

 

何都市。

 

焼いた?

 

その全てが。

 

戻らない。

 

ゲーム。

 

ではない。

 

やり直し。

 

できない。

 

「……知らなかった」

 

誰か。

 

呟く。

 

雷。

 

涙。

 

「知らなかったからって」

 

「死んだ人は」

 

「戻ってこないのよ……」

 

「……そうだな」

 

戦艦棲姫。

 

初めて。

 

その言葉。

 

受け入れる。

 

「そうだ」

 

暁。

 

泣く。

 

大きな。

 

涙。

 

「だったら」

 

戦艦棲姫。

 

見る。

 

「もう」

 

「やめてよ……」

 

戦艦棲姫。

 

「……え?」

 

「ゲームなんでしょ?」

 

暁。

 

涙。

 

拭く。

 

「だったら」

 

「もう」

 

「終わりにしてよ」

 

雷。

 

「海を」

 

「返して」

 

電。

 

「街を」

 

「元に戻してほしいのです……」

 

響。

 

「もう」

 

「誰も」

 

「襲わないで」

 

戦艦棲姫。

 

何も。

 

言えない。

 

暁。

 

一歩。

 

前。

 

「それから」

 

「死んだ人たちも」

 

「元に戻して」

 

戦艦棲姫。

 

息。

 

止まる。

 

「暁の」

 

「幼稚園も」

 

「先生たちの」

 

「前のことも」

 

「お父さんも」

 

「お母さんも」

 

「みんな」

 

「前みたいに」

 

「戻してよ……」

 

四人。

 

泣いている。

 

戦艦棲姫。

 

目。

 

逸らせない。

 

できる?

 

自分たち。

 

何度でも。

 

戻る。

 

イ級も。

 

ヌ級も。

 

自分たちなら。

 

海底から。

 

帰ってこられる。

 

でも。

 

人間。

 

戻せない。

 

自分たちには。

 

そんな。

 

力。

 

ない。

 

「……ごめん」

 

暁。

 

顔。

 

上げる。

 

戦艦棲姫。

 

もう。

 

片言。

 

完全に。

 

消えていた。

 

「できない」

 

暁。

 

「…………」

 

「私たちには」

 

「死んだ人間を」

 

「生き返らせる力は」

 

「ない」

 

雷。

 

「……なんで?」

 

戦艦棲姫。

 

答えられない。

 

「ゲームなんでしょ?」

 

雷。

 

「お姉さんたちは」

 

「生き返るんでしょ?」

 

「だったら」

 

「どうして」

 

「みんなは」

 

「生き返らないの……?」

 

戦艦棲姫。

 

拳。

 

握る。

 

「……分からない」

 

それしか。

 

言えない。

 

ゲーム。

 

だから。

 

自分たちは。

 

戻る。

 

でも。

 

この世界は。

 

ゲームではない。

 

少なくとも。

 

人間にとって。

 

そうではない。

 

戦艦棲姫。

 

空席の。

 

提督席を見る。

 

本来。

 

いるはずの。

 

提督。

 

いない。

 

本来。

 

存在するはずの。

 

鎮守府。

 

ない。

 

本来。

 

ルール通りに。

 

現れるはずの。

 

艦娘。

 

現れなかった。

 

代わりに。

 

人間が。

 

自分の存在を。

 

代償にして。

 

艦娘になった。

 

本来。

 

恐怖しない。

 

深海棲艦。

 

恐怖。

 

覚えた。

 

本来。

 

ただの敵役。

 

自分。

 

今。

 

罪悪感を。

 

感じている。

 

何も。

 

合わない。

 

「……ここは」

 

戦艦棲姫。

 

呟く。

 

「私たちの」

 

「知っている世界じゃない」

 

響。

 

涙。

 

拭きながら。

 

聞く。

 

「じゃあ」

 

「どこなの?」

 

戦艦棲姫。

 

ゆっくり。

 

四人を見る。

 

答え。

 

ない。

 

ただ。

 

分かる。

 

自分たちは。

 

ゲームの中で。

 

決められた。

 

役。

 

演じていた。

 

だが。

 

今いる。

 

この世界。

 

そのルール。

 

通じない。

 

ここは。

 

ゲームの。

 

中ではない。

 

少なくとも。

 

自分たちが。

 

知っている。

 

ゲームではない。

 

「……分からない」

 

戦艦棲姫。

 

正直に。

 

答える。

 

「でも」

 

提督の。

 

空席。

 

見る。

 

「私たちは」

 

「たぶん」

 

一拍。

 

「ゲームの外側に」

 

「来てしまったんだ」

 

誰も。

 

言葉を。

 

返せなかった。

 

その瞬間。

 

深海鎮守府で。

 

初めて。

 

深海棲艦たちは。

 

理解した。

 

自分たちが。

 

敵役として。

 

何気なく。

 

行ってきた。

 

その全て。

 

この世界では。

 

取り返しのつかない。

 

現実だった。

 

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