夜。
海軍基地。
その近く。
海岸。
小さな。
焚き火。
ぱち。
ぱち。
乾いた音。
火の粉。
夜空へ。
舞う。
その周り。
四人。
天龍。
龍田。
長門。
翔鶴。
訓練。
終わったばかり。
全員。
疲れていた。
「……で?」
天龍。
焚き火。
棒で。
つつく。
「今日の」
「評価は?」
長門。
腕。
組む。
「聞きたいか?」
「聞かなきゃ」
「やってられねぇだろ」
龍田。
隣。
「天龍ちゃん」
「さっきから」
「ずっと文句ばっかりねぇ」
「お前は」
「余裕ありすぎなんだよ!」
翔鶴。
小さく。
笑う。
長門。
少し。
考える。
「まず」
「天龍」
「おう」
「最初より」
「周囲を」
「見られるようになった」
天龍。
少し。
目。
見開く。
「……褒めてんのか?」
「褒めている」
「ほう」
天龍。
少し。
胸。
張る。
長門。
続ける。
「敵一体を」
「追いすぎなくなった」
「龍田の位置も」
「意識している」
「砲撃後の」
「姿勢も」
「かなり良くなった」
天龍。
にや。
「やっぱ俺」
「才能あるんじゃ――」
「ただし」
天龍。
止まる。
長門。
「熱くなると」
「正面から行く癖は」
「まだ直っていない」
天龍。
「最後」
「余計だろ!」
長門。
「事実だ」
龍田。
くすくす。
「天龍ちゃんらしいわねぇ」
「お前」
「笑ってるけど」
「次」
「お前だぞ」
龍田。
「はぁい」
長門。
龍田を見る。
「龍田は」
「状況判断が早い」
「敵に」
「攻撃させて」
「隙を作るのも」
「上手い」
龍田。
「まあ」
「嬉しい」
「ただ」
長門。
「自分が」
「避けられると」
「思いすぎる」
龍田。
笑顔。
少し。
止まる。
「危険域へ」
「入りすぎだ」
「一度の」
「判断ミスで」
「死ぬぞ」
龍田。
しばらく。
黙る。
そして。
「……気をつけます」
珍しく。
素直。
翔鶴。
二人を見る。
「でも」
「連携は」
「かなり良くなっていますよ」
天龍。
「ほんとか?」
「ええ」
翔鶴。
「互いが」
「見えない位置にいても」
「次に」
「どう動くか」
「かなり」
「予測できています」
龍田。
天龍を見る。
天龍も。
龍田を見る。
何故か。
それが。
普通。
そんな気が。
している。
「昔から」
「そうだったのかもな」
天龍。
小さく。
龍田。
「そうねぇ」
「覚えてないけど」
二人。
少し。
笑う。
長門。
その様子。
見る。
何も。
言わない。
しばらく。
焚き火。
音だけ。
龍田。
ふと。
長門を見る。
「ところで」
「長門さん」
「何だ?」
「あなた」
「元は軍人さんだったんじゃない?」
空気。
少し。
止まる。
天龍。
長門を見る。
「お」
「俺も」
「ちょっと思ってた」
長門。
「何故だ」
龍田。
指。
一本。
立てる。
「訓練の付け方」
二本。
「指示の出し方」
三本。
「戦場での」
「状況判断」
笑顔。
「どう考えても」
「普通じゃないですよぉ?」
長門。
焚き火を見る。
「さてな」
天龍。
「はぐらかした!」
翔鶴。
少し。
首を傾げる。
「私は」
「違うと思いますよ」
天龍。
「翔鶴は?」
「軍人だった感覚は」
「ありません」
翔鶴。
自分の。
手。
見る。
「弓を」
「どうして」
「扱えるのかも」
「艦載機を」
「どうやって」
「飛ばしているのかも」
「分からない」
少し。
不思議そうに。
「でも」
「できるんです」
天龍。
「俺たちも」
「似たようなもんだな」
龍田。
「そうねぇ」
また。
沈黙。
焚き火。
ぱち。
ぱち。
四人とも。
思っていた。
暁。
響。
雷。
電。
今。
どこにいる。
無事か。
泣いていないか。
怖がっていないか。
天龍。
拳。
握る。
長門。
口を。
開く。
「そういえば」
天龍。
「ん?」
「四人が」
「連れ去られる前」
「あの人型個体は」
「妙な言葉を」
「いくつも」
「口にしていたな」
龍田。
「ええ」
翔鶴。
「提督」
「でしたね」
長門。
頷く。
「他にも」
「鎮守府」
「建造」
「大型建造」
「近代化改修」
「ドロップ艦」
「デイリークエスト」
「期間限定海域」
「羅針盤」
「ケッコンカッコカリ」
そして。
「艦娘」
「艦これ」
「艦隊これくしょん」
天龍。
顔。
しかめる。
「改めて聞くと」
「意味不明だな」
龍田。
「暗号かしら?」
翔鶴。
「でも」
「いくつかは」
「普通の言葉ですよね」
長門。
「ああ」
焚き火。
見ながら。
「提督」
「海軍における」
「高位の指揮官」
天龍。
「うん」
長門。
「鎮守府」
「艦隊や」
「海軍施設を」
「統括する」
「拠点」
龍田。
目。
細める。
長門。
続ける。
「建造」
「艦艇を」
「造ること」
「大型建造」
「言葉通りなら」
「大型艦の建造」
「近代化改修」
「既存艦を」
「改装して」
「性能を」
「現代化すること」
天龍。
長門を見る。
「……やっぱ」
「アンタ」
「元軍人だろ」
長門。
無視。
「問題は」
「残りだ」
天龍。
「露骨に」
「無視したな」
長門。
思案。
「艦娘」
翔鶴。
「おそらく」
「私たちのこと」
龍田。
「でしょうねぇ」
長門。
「あの女は」
「我々を」
「そう呼んだ」
天龍。
「艦」
「娘」
「まあ」
「見た目通りっちゃ」
「見た目通りか」
長門。
視線。
焚き火。
「そして」
「艦隊これくしょん」
「これが」
「分からない」
龍田。
「これくしょん」
「収集」
翔鶴。
「集める」
長門。
頷く。
「艦隊」
「これくしょん」
一度。
言葉。
分ける。
「艦隊を」
「集める?」
天龍。
「艦隊なんて」
「集めるもんだろ」
長門。
「いや」
「待て」
顔。
上がる。
「艦隊を」
「集めるのではない」
「艦娘を」
「集める?」
三人。
長門を見る。
長門。
頭の中。
単語。
並べる。
提督。
鎮守府。
艦娘。
建造。
大型建造。
ドロップ艦。
近代化改修。
深海棲艦。
戦闘。
そして。
艦隊。
Collection。
「……まさか」
小さく。
天龍。
「何だよ」
龍田。
「何か」
「分かったんです?」
翔鶴。
長門を見る。
長門。
少し。
迷う。
そして。
「例えば」
「だ」
「提督という」
「人間が」
「鎮守府にいる」
「そこで」
「艦娘を」
「集める」
「建造」
「あるいは」
「ドロップ」
「そういう手段で」
「仲間を増やす」
天龍。
「……うん」
「その艦娘たちを」
「編成して」
「艦隊を作る」
「そして」
「深海棲艦と」
「戦わせる」
龍田。
表情。
変わる。
翔鶴も。
真剣。
長門。
最後。
「それを」
「一つの」
「遊びとして」
「成立させる」
一拍。
「つまり」
「艦隊これくしょんとは」
「提督が」
「鎮守府で」
「艦娘を集め」
「深海棲艦と戦う」
「ゲーム」
「……なのではないか」
沈黙。
海。
波。
焚き火。
ぱち。
天龍。
「…………」
長門。
自分で。
言った後。
顔。
しかめる。
「いや」
「まさかな」
天龍。
「だよな」
即答。
「五年間」
「世界中が」
「こんな目に遭って」
「全部ゲームですって?」
鼻。
鳴らす。
「馬鹿馬鹿しい」
長門。
「ああ」
「私も」
「そう思う」
「だが」
龍田。
声。
低い。
「私は」
「もしかしたら」
「合ってるかもって」
天龍。
振り返る。
「は?」
翔鶴。
静かに。
「私もです」
天龍。
「翔鶴まで!?」
龍田。
焚き火。
見る。
「あの人」
「私たちを」
「初めて見たのに」
「艦娘って」
「呼びましたよねぇ」
天龍。
止まる。
「それに」
龍田。
「私たちの」
「戦い方を見て」
「本当に戦艦から」
「生まれた艦娘なのかって」
「言った」
長門。
目。
細める。
「確かに」
翔鶴。
自分の弓。
見る。
「私も」
「ずっと」
「不思議でした」
「どうして」
「翔鶴という」
「名前を」
「自分で知っているのか」
「どうして」
「この弓を」
「使えるのか」
「どうして」
「航空機を」
「飛ばせるのか」
「もし」
一度。
言葉。
止める。
「私たちに」
「元になる」
「何かが」
「最初から」
「存在していたとしたら」
長門。
無言。
天龍。
何か。
言おうとする。
「それは――」
その瞬間。
ぐら。
地面。
揺れる。
「……ん?」
天龍。
立ち上がる。
ぐら。
ぐら。
焚き火。
炎。
揺れる。
翔鶴。
姿勢。
低く。
龍田。
辺り。
見る。
「地震?」
長門。
「いや」
揺れ。
止まらない。
ぐぐぐぐぐぐ……。
低い。
地鳴り。
海の底。
何か。
動いているような。
「長ぇな」
天龍。
「普通の地震じゃ」
「ねぇだろ」
長門。
顔。
険しい。
「ああ」
「何か」
「おかしい」
翔鶴。
その時。
海。
見る。
「……待ってください」
三人。
翔鶴。
見る。
「どうした?」
翔鶴。
指。
遥か。
沖。
「海面が」
全員。
見る。
夜。
暗い。
海。
だが。
月明かり。
その下。
泡。
ぼこ。
ぼこぼこ。
一ヶ所。
ではない。
広い。
範囲。
海面。
泡立つ。
「何だ……?」
天龍。
艤装。
瞬時。
展開。
龍田。
同じ。
長門。
主砲。
向ける。
翔鶴。
弓。
構える。
そして。
海面。
盛り上がる。
「来るぞ」
長門。
全員。
身構える。
だが。
出てきたもの。
深海棲艦。
ではない。
轟――。
海。
割れる。
巨大な。
黒い。
影。
最初。
屋根。
「……は?」
天龍。
次。
塔。
壁。
窓。
建物。
「建物……?」
龍田。
目。
見開く。
さらに。
さらに。
海から。
浮かぶ。
巨大な。
施設。
正門。
庁舎。
通路。
砲台。
工廠。
軍港。
まるで。
海の底。
そのものが。
一つの。
基地を。
押し上げている。
そんな。
光景。
天龍。
口。
開いたまま。
「何だ」
「あれ……」
翔鶴。
言葉。
ない。
長門。
じっと。
見る。
建物。
配置。
形状。
入口。
指揮施設。
そして。
先ほど。
自分たちが。
話していた。
単語。
「……まさか」
龍田。
「長門さん?」
長門。
海から。
浮上してくる。
巨大建造物。
目。
離さない。
「いや」
「そんな」
「はずは……」
天龍。
「何だよ」
「分かるのか?」
長門。
一歩。
海へ。
近づく。
そして。
呟く。
「……あれは」
一拍。
「鎮守府」
天龍。
「……は?」
その頃。
海の底。
いや。
既に。
海面へ。
向かっている。
深海鎮守府。
提督室。
暁。
響。
雷。
電。
四人。
眠っていた。
話し疲れて。
泣き疲れて。
ソファ。
寄り添い。
眠っていた。
誰も。
座らなかった。
提督席。
その前。
古い。
端末。
静か。
だった。
だが。
突然。
ピッ。
一つ。
光。
《認証対象確認》
機械音。
戦艦棲姫。
顔。
上げる。
「……何?」
周囲。
人型深海棲艦。
一斉。
端末。
見る。
《初期艦存在確認》
戦艦棲姫。
表情。
固まる。
《個体数――四》
「……四?」
《規定値不一致》
《再認証》
暁。
寝返り。
手。
机。
触れる。
響。
その手。
重なる。
雷。
眠ったまま。
指先。
端末。
触れる。
電。
最後。
その上へ。
手。
置く。
四人。
無意識。
ピ――――。
《四個体同時認証》
《初期艦権限統合》
《提督権限再構成》
戦艦棲姫。
「……待て」
《認証》
「待て!」
《承認》
部屋。
光。
走る。
床。
壁。
天井。
鎮守府。
全体。
低い。
振動。
「おい!」
戦艦棲姫。
端末へ。
手。
伸ばす。
遅い。
《提督権限》
一拍。
《認証完了》
戦艦棲姫。
動かない。
周囲。
誰も。
声。
出ない。
《鎮守府》
《休眠状態解除》
《全機能起動》
轟――。
深海鎮守府。
海底。
離れる。
《浮上開始》
暁。
目。
覚ます。
「……んぅ?」
響。
雷。
電。
次々。
目。
開く。
「何……?」
雷。
「揺れてる?」
戦艦棲姫。
四人。
見る。
そして。
端末。
表示。
見る。
もう一度。
四人。
見る。
「…………」
暁。
眠そう。
「お姉さん?」
戦艦棲姫。
返事。
できない。
画面。
そこ。
たった。
一つ。
表示。
《提督》
その下。
四つの。
認証反応。
戦艦棲姫の。
顔。
青ざめる。
五年間。
待った。
提督。
来なかった。
いない。
そう。
思った。
だが。
いた。
いや。
生まれた。
今。
しかも。
四人。
艦娘。
幼い。
子供たち。
戦艦棲姫。
口。
開く。
「……うそだろ」
深海鎮守府。
海面。
突き破る。
夜。
巨大な。
水柱。
人類側。
天龍。
龍田。
長門。
翔鶴。
四人。
その光景。
見上げる。
月明かり。
照らす。
巨大な。
鎮守府。
そして。
その内部。
誰も。
まだ。
知らなかった。
ゲームを。
終わらせるために。
深海棲艦が。
五年間。
待ち続けた。
最後の条件。
提督。
その座へ。
暁。
響。
雷。
電。
四人。
同時に。
選ばれてしまったことを。