海を失った世界に、暁は来る   作:ぶるぶるメタボ

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第三十三章 そんなものは、ルールじゃない

腕。

 

振り下ろされる。

 

暁。

 

目を閉じた。

 

響も。

 

雷も。

 

電も。

 

四人。

 

手を。

 

握り合う。

 

怖い。

 

死にたくない。

 

それでも。

 

これで。

 

終わる。

 

みんなが。

 

助かる。

 

先生も。

 

街のみんなも。

 

世界中の。

 

知らない誰かも。

 

もう。

 

戦わなくていい。

 

だから。

 

だから――。

 

来ない。

 

「……?」

 

痛みが。

 

来ない。

 

一秒。

 

二秒。

 

暁。

 

恐る恐る。

 

目を。

 

開く。

 

「……え?」

 

目の前。

 

腕。

 

止まっていた。

 

自分たちの。

 

命を。

 

奪うはずだった腕。

 

その手首を。

 

別の。

 

青白い手が。

 

掴んでいる。

 

「……お姉さん?」

 

戦艦棲姫。

 

だった。

 

「…………」

 

本人自身。

 

何が起きたのか。

 

分かっていない。

 

そんな。

 

顔。

 

自分の手。

 

見る。

 

掴んでいる。

 

確かに。

 

自分が。

 

止めている。

 

「……何ノ」

 

腕を。

 

止められた。

 

深海棲艦。

 

ゆっくり。

 

戦艦棲姫を見る。

 

「何ノツモリダ」

 

「…………」

 

「離セ」

 

戦艦棲姫。

 

動かない。

 

「戦艦棲姫」

 

「終了条件ハ」

 

「成立シタ」

 

「提督ヲ倒セバ」

 

「我々ハ」

 

「解放サレル」

 

分かっている。

 

誰よりも。

 

分かっている。

 

五年間。

 

待った。

 

いつ。

 

提督が。

 

現れる。

 

いつ。

 

艦娘が。

 

現れる。

 

いつ。

 

この戦いを。

 

始められる。

 

いつ。

 

終わらせられる。

 

海の底で。

 

待った。

 

待った。

 

待った。

 

そして。

 

ようやく。

 

条件が。

 

揃った。

 

殺せばいい。

 

たった。

 

四人。

 

殺せば。

 

終わる。

 

憎まなくていい。

 

戦わなくていい。

 

殺さなくていい。

 

静かな。

 

海の底へ。

 

帰れる。

 

なのに。

 

手が。

 

離れない。

 

「何故ダ」

 

聞かれる。

 

戦艦棲姫。

 

答えられない。

 

「…………」

 

「何故」

 

「止メル」

 

「…………分からない」

 

初めて。

 

弱々しい。

 

声。

 

「分からない」

 

暁。

 

戦艦棲姫。

 

見る。

 

響。

 

雷。

 

電。

 

同じ。

 

戦艦棲姫。

 

四人を見る。

 

その顔。

 

怖がっている。

 

泣いている。

 

それでも。

 

死を。

 

受け入れようとしている。

 

子供。

 

「…………」

 

胸。

 

痛い。

 

何故。

 

分からない。

 

でも。

 

嫌だ。

 

この四人が。

 

次の瞬間。

 

いなくなる。

 

それが。

 

どうしようもなく。

 

嫌だ。

 

「……死なせたくない」

 

小さな。

 

声。

 

「何?」

 

戦艦棲姫。

 

顔。

 

上げる。

 

「死なせたくない!」

 

広場。

 

響く。

 

「提督ヲ殺セバ」

 

「終ワル!」

 

「分かっている!」

 

「五年間」

 

「それを待っていた!」

 

「ずっと!」

 

「ずっと!」

 

「終わりたかった!」

 

声。

 

震える。

 

「ようやく」

 

「終われる!」

 

「ようやく」

 

「このくだらない役から」

 

「解放される!」

 

「分かっている!」

 

「全部」

 

「分かっている!」

 

それでも。

 

戦艦棲姫。

 

四人の。

 

前。

 

立つ。

 

「でも!」

 

「こいつらは」

 

「死なせたくないんだ!!」

 

沈黙。

 

艦娘。

 

深海棲艦。

 

誰も。

 

声。

 

出ない。

 

「…………」

 

腕を。

 

掴まれていた。

 

深海棲艦。

 

呆然。

 

そして。

 

次。

 

顔。

 

怒り。

 

染まる。

 

「裏切リ者メ!」

 

艤装。

 

動く。

 

殺気。

 

戦艦棲姫へ。

 

向く。

 

「深海棲艦ガ」

 

「提督ヲ庇ウダト!」

 

戦艦棲姫。

 

構える。

 

だが。

 

「…………?」

 

深海棲艦。

 

止まる。

 

戦艦棲姫。

 

頬。

 

何か。

 

流れている。

 

「……オ前」

 

「何故」

 

「泣イテイル」

 

「…………え?」

 

戦艦棲姫。

 

頬。

 

触る。

 

指先。

 

濡れる。

 

見る。

 

透明。

 

雫。

 

「…………」

 

もう一度。

 

頬。

 

触る。

 

また。

 

濡れる。

 

「……泣いて」

 

「いる?」

 

本人。

 

一番。

 

困惑。

 

「何故……」

 

呟く。

 

「私は」

 

「何故」

 

「泣いている……?」

 

答え。

 

誰も。

 

持っていない。

 

ただ。

 

一つ。

 

確かなこと。

 

ゲームに。

 

設定された。

 

憎悪ではない。

 

感情。

 

それが。

 

確かに。

 

そこに。

 

生まれていた。

 

その時。

 

「――やっと」

 

声。

 

「追いついた……!」

 

暁。

 

振り返る。

 

「……え?」

 

そこ。

 

天龍。

 

「先生!?」

 

立っている。

 

いや。

 

立っていること自体。

 

おかしい。

 

身体。

 

提督命令。

 

止まっているはず。

 

なのに。

 

一歩。

 

また。

 

一歩。

 

手。

 

血。

 

腕。

 

震える。

 

膝。

 

今にも。

 

崩れそう。

 

それでも。

 

歩く。

 

龍田。

 

隣。

 

同じ。

 

「もう……」

 

「ほんと……」

 

「世話の焼ける」

 

「園児たちねぇ……」

 

笑っている。

 

でも。

 

目。

 

泣いている。

 

「先生!」

 

四人。

 

次の瞬間。

 

天龍。

 

龍田。

 

腕。

 

伸ばす。

 

四人。

 

抱く。

 

強く。

 

強く。

 

「捕まえた」

 

天龍。

 

息。

 

荒い。

 

「もう」

 

「離さねぇぞ」

 

「馬鹿ども」

 

暁。

 

目。

 

見開く。

 

そして。

 

天龍たちの。

 

向こう。

 

「…………!」

 

長門。

 

翔鶴。

 

扶桑。

 

山城。

 

赤城。

 

加賀。

 

金剛。

 

比叡。

 

榛名。

 

霧島。

 

数え切れない。

 

少女たち。

 

全員。

 

動いている。

 

ほんの少し。

 

少しずつ。

 

身体を。

 

壊しながら。

 

それでも。

 

砲。

 

構える。

 

弓。

 

引く。

 

魚雷。

 

握る。

 

暁。

 

青ざめる。

 

「だめ!」

 

「もうやめて!」

 

響。

 

「これ以上」

 

「動いたら」

 

「本当に」

 

「死んじゃう!」

 

雷。

 

「お願い!」

 

電。

 

「止まってくださいなのです!」

 

瞬間。

 

《提督命令を確認》

 

声。

 

鎮守府。

 

全体。

 

響く。

 

《全所属艦娘》

 

《行動停止》

 

少女たち。

 

身体。

 

さらに。

 

重くなる。

 

「ぐっ……!」

 

長門。

 

膝。

 

落ちる。

 

赤城。

 

弓。

 

震える。

 

天龍。

 

「……っ!」

 

四人。

 

顔。

 

真っ青。

 

「違う!」

 

暁。

 

「そんな意味じゃない!」

 

「痛くしないで!」

 

「先生たちを」

 

「痛くしないで!」

 

《提督命令への違反を確認》

 

暁。

 

「……え?」

 

《対象艦娘》

 

《天龍》

 

天龍。

 

顔。

 

上げる。

 

《命令違反継続》

 

《行動矯正を開始します》

 

「何――」

 

天龍。

 

身体。

 

跳ねる。

 

「がっ……!」

 

「天龍ちゃん!」

 

龍田。

 

天龍。

 

膝。

 

石畳。

 

叩きつけられる。

 

腕。

 

強制的に。

 

床。

 

押し付けられる。

 

呼吸。

 

止まる。

 

視界。

 

ノイズ。

 

「せん……せい?」

 

暁。

 

震える。

 

「先生!」

 

天龍。

 

歯。

 

食いしばる。

 

立つ。

 

「やめ……ろ」

 

《命令違反継続》

 

「やめろって」

 

天龍。

 

腕。

 

立てる。

 

《ペナルティ段階を上昇》

 

艤装。

 

一部。

 

停止。

 

身体。

 

再び。

 

崩れる。

 

「ぐあっ……!」

 

「やめて!!」

 

四人。

 

絶叫。

 

「暁たちが悪かった!」

 

「ちゃんと言うから!」

 

「先生を痛くしないで!」

 

その瞬間。

 

声。

 

変わる。

 

今度。

 

四人へ。

 

向けられる。

 

《提督各位へ警告》

 

四人。

 

固まる。

 

《艦隊統率義務を履行してください》

 

《所属艦娘による》

 

《命令違反を放置した場合》

 

《矯正措置を継続します》

 

電。

 

顔。

 

青ざめる。

 

「……そんな」

 

《適切な指揮を》

 

《実施してください》

 

《艦隊統率は》

 

《提督の義務です》

 

四人。

 

震える。

 

初めて。

 

理解する。

 

提督。

 

偉い人。

 

ではない。

 

命令する。

 

人。

 

でもない。

 

自分たちも。

 

命令。

 

されている。

 

この。

 

見えない。

 

何かに。

 

「嫌……」

 

雷。

 

首。

 

振る。

 

「こんなの」

 

「嫌!」

 

響。

 

帽子。

 

触る。

 

「私たち」

 

「こんなもの」

 

「欲しいなんて」

 

「言ってない」

 

電。

 

泣く。

 

「先生たちを」

 

「傷つけるために」

 

「提督になったんじゃ」

 

「ないのです……!」

 

暁。

 

帽子。

 

掴む。

 

「返す!」

 

「こんなの」

 

「返すから!」

 

帽子。

 

取ろうとする。

 

《警告》

 

手。

 

止まる。

 

《提督装備の解除は》

 

《許可されていません》

 

「…………!」

 

天龍。

 

その光景。

 

見る。

 

暁。

 

響。

 

雷。

 

電。

 

泣いている。

 

妖精との。

 

契約。

 

存在。

 

奪われた。

 

それでも。

 

戦った。

 

今度は。

 

提督。

 

勝手に。

 

選ばれた。

 

そして。

 

先生たちを。

 

傷つけたくなければ。

 

命令しろ。

 

そう。

 

脅されている。

 

天龍。

 

顔。

 

変わる。

 

「……ふざけんな」

 

低い。

 

声。

 

「天龍ちゃん?」

 

「ふざけんなよ……」

 

立つ。

 

《対象艦娘:天龍》

 

《行動停止を命令》

 

一歩。

 

「うるせぇ」

 

《命令に従ってください》

 

一歩。

 

血。

 

落ちる。

 

《警告》

 

「うるせぇ!」

 

天龍。

 

四人。

 

抱く。

 

「先生……」

 

「お前ら」

 

「戻せって」

 

「言ってたな」

 

暁。

 

泣きながら。

 

「だって……」

 

「暁たちが」

 

「死なないと」

 

「終わらないの!」

 

天龍。

 

「馬鹿野郎!」

 

四人。

 

びく。

 

「簡単に」

 

「諦めんな!」

 

「簡単じゃない!!」

 

暁。

 

初めて。

 

怒鳴り返す。

 

「いっぱい考えた!」

 

響。

 

涙。

 

流す。

 

「みんなとも」

 

「話した」

 

雷。

 

「他に」

 

「方法がないか」

 

「いっぱい」

 

「いっぱい考えた!」

 

電。

 

「でも」

 

「なかったのです!」

 

暁。

 

天龍の。

 

服。

 

掴む。

 

「私たちだって」

 

「死にたくない!!」

 

天龍。

 

止まる。

 

暁。

 

泣く。

 

「こんな力」

 

「欲しくなかった!」

 

響。

 

「もっと」

 

「先生たちと」

 

「一緒にいたい」

 

雷。

 

「もっと」

 

「遊びたい!」

 

電。

 

「お父さんと」

 

「お母さんにも」

 

「思い出してほしいのです……!」

 

四人。

 

泣く。

 

「でも!」

 

暁。

 

叫ぶ。

 

「暁たちが」

 

「今」

 

「死ななかったら!」

 

「この後」

 

「もっと」

 

「いっぱい」

 

「人が死んじゃう!」

 

「その人たちに!」

 

声。

 

震える。

 

「なんで」

 

「あなたたちは」

 

「あの時」

 

「死ななかったんだって!」

 

「絶対」

 

「言われる!」

 

「そんなの……!」

 

「そんなの」

 

「耐えられないよ!!」

 

雷。

 

「だから!」

 

「今なら」

 

「覚悟できてるから!」

 

電。

 

「怖くても」

 

「みんな一緒なら」

 

響。

 

「だから」

 

暁。

 

「死なせてよ!!」

 

天龍。

 

四人を見る。

 

しばらく。

 

何も。

 

言わない。

 

そして。

 

「そんな覚悟は」

 

「覚悟じゃねぇ!!」

 

四人。

 

固まる。

 

「違う!」

 

「違わねぇ!」

 

天龍。

 

叫ぶ。

 

「怖くて!」

 

「苦しくて!」

 

「他に方法がねぇって」

 

「思い込んで!」

 

「自分が死ねば」

 

「全部丸く収まるって」

 

「決めつけてるだけだ!」

 

「いっぱい考えたって」

 

「言ったでしょ!」

 

暁。

 

泣きながら。

 

怒る。

 

天龍。

 

即答。

 

「だったら」

 

「最後まで考えろ!!」

 

暁。

 

「…………!」

 

「お前ら」

 

「言っただろ」

 

「ここで待ってても」

 

「死ぬだけなら」

 

「最後まで」

 

「足掻くって!」

 

暁。

 

目。

 

見開く。

 

あの日。

 

燃える。

 

街。

 

自分たち。

 

言った。

 

諦めない。

 

最後まで。

 

戦う。

 

天龍。

 

「奇跡ってのは」

 

「最後まで」

 

「諦めず」

 

「覚悟を持った奴にしか」

 

「来ねぇんだろ!」

 

「だったら」

 

「何で」

 

「自分が死ぬことだけ」

 

「そんな簡単に」

 

「正解にしてんだ!」

 

四人。

 

何も。

 

言えない。

 

「生きる方法を」

 

「探せ!」

 

「俺たちも」

 

「探す!」

 

「深海棲艦だろうが」

 

「艦娘だろうが」

 

「人間だろうが」

 

「全員で」

 

「探しゃいい!」

 

「それでも」

 

「なかったら……!」

 

天龍。

 

歯。

 

噛む。

 

「その時」

 

「また」

 

「考えりゃいい!」

 

暁。

 

「でも」

 

「ルールが……」

 

「提督が死なないと」

 

「ゲームが……!」

 

「だったら」

 

天龍。

 

暁の。

 

頭。

 

見る。

 

帽子。

 

「そんなルールを」

 

「決めてる奴を」

 

「ぶっ壊せば」

 

「いいだろ」

 

戦艦棲姫。

 

顔。

 

上がる。

 

「…………何?」

 

長門。

 

息。

 

荒い。

 

それでも。

 

口。

 

開く。

 

「天龍の」

 

「言う通りだ」

 

戦艦棲姫。

 

「何を……」

 

「そもそも」

 

長門。

 

立ち上がろうとする。

 

「提督を倒せば」

 

「本当に」

 

「全てが終わるという」

 

「保証は」

 

「どこにある」

 

戦艦棲姫。

 

「それは」

 

「ゲームの」

 

「ルールだ」

 

長門。

 

「そのゲームは」

 

「今」

 

「正常なのか?」

 

沈黙。

 

「提督は」

 

「本来」

 

「四人なのか?」

 

「…………」

 

「艦娘は」

 

「妖精との契約で」

 

「人間から」

 

「生まれるのか?」

 

「…………違う」

 

「深海棲艦は」

 

「恐怖を感じ」

 

「敵前逃亡するのか?」

 

「……違う」

 

「艦娘は」

 

「提督命令へ」

 

「逆らえるのか?」

 

戦艦棲姫。

 

天龍を見る。

 

「……違う」

 

長門。

 

「なら」

 

一拍。

 

「提督を殺せば」

 

「ゲームが終わる」

 

「その一つだけが」

 

「正常に作動するという」

 

「根拠は何だ?」

 

戦艦棲姫。

 

答え。

 

出ない。

 

「もし」

 

長門。

 

四人を見る。

 

「この子たちを」

 

「殺して」

 

「何も」

 

「終わらなかったら?」

 

暁。

 

息。

 

止まる。

 

「…………」

 

戦艦棲姫。

 

顔。

 

青ざめる。

 

考えたこと。

 

なかった。

 

ルール。

 

だから。

 

正しい。

 

そう。

 

思っていた。

 

だが。

 

既に。

 

世界。

 

ルールから。

 

外れている。

 

「……そんな」

 

戦艦棲姫。

 

呟く。

 

その時。

 

《警告》

 

全員。

 

顔。

 

上げる。

 

《提督による》

 

《艦隊統率義務の不履行を確認》

 

四人。

 

震える。

 

《直ちに》

 

《所属艦娘へ》

 

《適切な命令を実施してください》

 

天龍。

 

帽子。

 

見る。

 

四つ。

 

提督帽。

 

《警告》

 

《命令してください》

 

天龍。

 

目。

 

細める。

 

「……お前か」

 

暁。

 

「先生?」

 

天龍。

 

手。

 

伸ばす。

 

暁の。

 

帽子。

 

掴む。

 

取る。

 

《警告》

 

響。

 

帽子。

 

取る。

 

《提督装備の無断解除を確認》

 

雷。

 

《直ちに返還してください》

 

電。

 

最後。

 

四つ。

 

全部。

 

天龍の。

 

腕。

 

《警告》

 

天龍。

 

帽子。

 

見る。

 

「お前が」

 

「こいつらを」

 

「提督にしたのか」

 

《提督装備を》

 

《直ちに返還してください》

 

「嫌だね」

 

《艦娘による》

 

《提督権限への干渉を確認》

 

天龍。

 

主砲。

 

ゆっくり。

 

向ける。

 

《重大な規律違反です》

 

暁。

 

「先生……?」

 

天龍。

 

四人。

 

見る。

 

泣いている。

 

怖がっている。

 

たった。

 

四、五歳。

 

子供。

 

身体だけ。

 

少し。

 

大きくなった。

 

でも。

 

中身。

 

あの日。

 

幼稚園にいた。

 

園児。

 

《警告》

 

天龍。

 

砲口。

 

帽子へ。

 

向ける。

 

《直ちに》

 

《提督へ返還――》

 

「子供に」

 

天龍。

 

低く。

 

「人殺しの命令を」

 

「させるようなもんを」

 

「俺は」

 

「指揮系統とは」

 

「呼ばねぇ」

 

《警告》

 

《警告》

 

《警告》

 

天龍。

 

笑う。

 

血だらけ。

 

ボロボロ。

 

それでも。

 

笑う。

 

「それとな」

 

「こいつらは」

 

「提督じゃねぇ」

 

暁。

 

響。

 

雷。

 

電。

 

見る。

 

「俺たちの」

 

「園児だ」

 

四人。

 

目。

 

見開く。

 

《最終警告》

 

《直ちに》

 

《提督装備を》

 

《返還してください》

 

天龍。

 

砲。

 

構える。

 

「子供を」

 

「泣かせるルールなら」

 

一拍。

 

「そんなもん」

 

「ルールじゃねぇ」

 

轟音。

 

四つの。

 

帽子。

 

砲撃。

 

直撃。

 

粉々。

 

吹き飛ぶ。

 

「先生!!」

 

《提督権限――》

 

ノイズ。

 

《認証――》

 

ザザッ。

 

《エ……ラー》

 

《提督……権……》

 

《エラー》

 

《エラー》

 

《――――》

 

消えた。

 

同時。

 

「……え?」

 

暁。

 

頭。

 

軽い。

 

ずっと。

 

何か。

 

見えないもの。

 

頭の奥。

 

押さえつけていた。

 

それ。

 

消える。

 

天龍。

 

身体。

 

自由。

 

龍田。

 

腕。

 

動く。

 

長門。

 

立つ。

 

翔鶴。

 

弓。

 

下ろす。

 

世界中から。

 

集められた。

 

少女たち。

 

一斉。

 

自分の。

 

身体。

 

見る。

 

動く。

 

誰にも。

 

強制されない。

 

自分の。

 

意思で。

 

動く。

 

暁。

 

震える。

 

「……命令」

 

響。

 

「消えた」

 

雷。

 

「もう」

 

「先生たち」

 

「痛くならないの?」

 

電。

 

「私たちが」

 

「何か言っても……?」

 

天龍。

 

四人。

 

抱き寄せる。

 

「ああ」

 

「もう」

 

「誰にも」

 

「お前らを」

 

「命令なんか」

 

「させねぇ」

 

四人。

 

泣く。

 

天龍。

 

胸。

 

顔。

 

埋める。

 

戦艦棲姫。

 

その光景。

 

見る。

 

そして。

 

地面。

 

砕けた。

 

帽子。

 

見る。

 

ゲーム。

 

絶対。

 

だった。

 

ルール。

 

壊れた。

 

たった。

 

一人の。

 

艦娘。

 

砲撃。

 

それだけで。

 

壊れた。

 

「……壊れた」

 

戦艦棲姫。

 

呟く。

 

「ルールが……」

 

長門。

 

その言葉。

 

聞く。

 

「そうだ」

 

戦艦棲姫。

 

長門を見る。

 

長門。

 

鎮守府。

 

見上げる。

 

「帽子が」

 

「提督権限を」

 

「管理していたのなら」

 

「それを」

 

「作ったものが」

 

「どこかにある」

 

翔鶴。

 

気づく。

 

「そして」

 

「それも」

 

「壊せるかもしれない」

 

戦艦棲姫。

 

目。

 

大きく。

 

開く。

 

深海棲艦たち。

 

互い。

 

見る。

 

憎悪。

 

自分たちを。

 

縛る。

 

設定。

 

艦娘。

 

命令。

 

縛る。

 

提督。

 

そして。

 

提督自身。

 

縛る。

 

システム。

 

その一部。

 

今。

 

壊れた。

 

「……なら」

 

戦艦棲姫。

 

声。

 

震える。

 

五年間。

 

一度も。

 

考えなかった。

 

いや。

 

考えることすら。

 

許されなかった。

 

選択肢。

 

「提督を」

 

「殺すのではなく……」

 

暁。

 

涙。

 

拭く。

 

戦艦棲姫を見る。

 

戦艦棲姫。

 

その先。

 

言う。

 

「ゲームそのものを」

 

「壊せるのか……?」

 

誰も。

 

答えを。

 

知らない。

 

だが。

 

初めて。

 

そこに。

 

三つ目の。

 

道が。

 

生まれた。

 

戦う。

 

でもない。

 

死ぬ。

 

でもない。

 

自分たちを。

 

戦わせている。

 

もの。

 

それを。

 

壊す。

 

暁。

 

響。

 

雷。

 

電。

 

四人。

 

天龍。

 

龍田。

 

抱かれながら。

 

砕けた。

 

提督帽。

 

見る。

 

それは。

 

小さな。

 

小さな。

 

破片。

 

けれど。

 

ゲームが。

 

初めて。

 

人の意思に。

 

負けた。

 

証だった。

 

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