《強制プロトコル》
《RESET》
その文字が。
世界中の空に。
浮かんでいた。
東京。
ニューヨーク。
ロンドン。
パリ。
ベルリン。
モスクワ。
北京。
シドニー。
そして。
名も知られぬ。
小さな町にも。
地下シェルターにも。
海軍基地にも。
病院にも。
焼け残った家にも。
等しく。
同じ文字が。
見えていた。
誰も。
意味を。
知らない。
ただ。
一つだけ。
誰もが。
理解していた。
ろくなものではない。
そして。
鎮守府。
その広場では。
「この世界を」
戦艦棲姫が。
青ざめた顔で。
空を見上げていた。
「消す気だ」
沈黙。
誰も。
言葉を。
発せない。
暁。
響。
雷。
電。
四人も。
天龍も。
龍田も。
長門も。
翔鶴も。
そして。
世界中から。
集められた少女たちも。
深海棲艦たちも。
ただ。
空を見る。
やがて。
戦艦棲姫の腕の中。
ぼろぼろの妖精が。
震える声で。
言った。
「リセットは……」
「時間を戻すものじゃない」
長門。
「……どういう意味だ」
妖精。
唇を震わせる。
「今の世界を」
「消すの」
「…………」
「今いる人も」
「深海棲艦も」
「みんなも」
少女たちを見る。
「全部」
「一度」
「なかったことにする」
暁。
「なかった……こと?」
「それから」
妖精。
「深海棲艦が」
「最初に現れる前の世界を」
「データから」
「もう一度作る」
響。
静かに。
聞く。
「つまり」
「私たちは」
「そこにはいない?」
妖精。
答えられない。
それだけで。
答えだった。
雷。
「そんなの……」
電。
「死ぬのと」
「同じなのです……」
妖精。
「……うん」
その時。
空。
文字。
変化。
《RESET SEQUENCE》
《最終ゲームオーバー処理を開始》
《終了条件》
《PLAYER UNITの死亡》
暁。
「プレイヤー……?」
戦艦棲姫。
顔色。
さらに。
悪くなる。
「提督だ」
全員。
四人を見る。
暁。
響。
雷。
電。
「……え?」
《PRIMARY TARGET》
四つ。
赤い光。
四人。
重なる。
そして。
次の瞬間。
「――ッ!」
戦艦棲姫。
四人を。
放り出した。
天龍。
「おい!」
龍田。
受け止める。
戦艦棲姫。
頭を。
抱える。
「ぐ……!」
「うぅ……!」
周囲。
異変。
空母棲姫。
震える。
空母水鬼。
自分の腕を。
押さえる。
飛行場姫。
歯を。
食いしばる。
潜水棲姫。
後退。
そして。
海。
イ級。
ヌ級。
リ級。
ル級。
ヲ級。
カ級。
ソ級。
すべて。
一斉に。
鎮守府を。
向く。
いや。
その中央。
四人。
見る。
《深海側敵対設定》
《再構築》
《憎悪対象》
《人類》
《解除》
《艦娘》
《解除》
一拍。
《PLAYER UNIT》
《指定》
戦艦棲姫。
「離れろ!」
怒鳴った。
「全員!」
「四人から」
「離れろ!」
暁。
「お姉さん?」
「来るな!」
戦艦棲姫。
自分の腕を。
掴む。
爪。
皮膚へ。
食い込む。
「今までと」
「違う……!」
「殺したい……!」
四人。
固まる。
「頭の中が」
「お前たちを」
「殺せと」
「叫んでいる!」
「だから!」
戦艦棲姫。
涙を。
浮かべる。
「近づくな!」
海。
咆哮。
イ級。
動く。
一体。
また。
一体。
四人へ。
向かう。
「止まれ!」
戦艦棲姫。
魔獣型艤装。
飛び出す。
イ級。
叩き飛ばす。
空母棲姫。
ヌ級の前へ。
立つ。
「来ルナ!」
ヌ級。
止まらない。
「止マレ!」
殴る。
吹き飛ばす。
しかし。
海。
黒い。
水平線。
すべて。
深海棲艦。
埋まる。
妖精。
青ざめる。
「始まった……」
長門。
艤装。
展開。
「ならば」
「迎え撃つ」
翔鶴。
弓。
構える。
「四人には」
「指一本」
「触れさせません」
天龍。
「当然だ」
龍田。
「今度こそ」
「ちゃんと」
「守らないとねぇ」
だが。
《艦娘戦闘システム》
《制限開始》
「……?」
長門。
身体。
沈む。
「ぐっ!」
膝。
つく。
翔鶴。
弓。
重い。
「これは……!」
天龍。
艤装。
出力。
落ちる。
「なんだよ」
「これ!」
妖精。
「弱体化……!」
「本当なら」
妖精。
砕かれた。
帽子を見る。
「提督権限で」
「みんな」
「完全に」
「止められてた」
天龍。
「……あの」
「帽子か」
妖精。
頷く。
「壊れてるから」
「強制停止が」
「できない」
長門。
天龍を見る。
「つまり」
「お前が」
「帽子を壊していなければ」
天龍。
「全員」
「動けなかった?」
「……うん」
天龍。
一瞬。
黙る。
そして。
「だったら」
立つ。
「壊して」
「正解だったな」
空。
数字。
現れる。
《RESET COMPLETE》
《01:59:59》
《01:59:58》
《01:59:57》
響。
「……二時間」
妖精。
「その時間まで」
「四人が」
「生きていれば」
「リセットは」
「失敗する」
暁。
「じゃあ」
「二時間」
「逃げれば……」
「いや」
戦艦棲姫。
低く。
「そんな」
「簡単な話じゃない」
水平線。
黒。
さらに。
増える。
「世界中の」
「深海棲艦が」
「来る」
一拍。
「全部だ」
地下。
海軍基地。
「なんだこれは!」
作戦指令室。
混乱。
世界中。
深海棲艦。
進路。
変更。
一点。
日本。
鎮守府。
「全個体」
「同じ地点へ」
「向かっています!」
「目標は!?」
オペレーター。
画面を見る。
そして。
声。
震える。
「……あの」
「四人です」
沈黙。
「暁たち……」
誰かが。
呟く。
そして。
画面。
《01:57:41》
「何だ」
「この数字は」
「分かりません!」
「だが」
一人の軍人。
立つ。
「あの子たちが」
「狙われていることは」
「分かる」
「……しかし」
別の男。
拳。
握る。
「我々の兵器では」
「奴らを」
「倒せない」
沈黙。
五年前。
同じだった。
撃っても。
効かない。
何をしても。
届かない。
人類。
無力。
その言葉。
五年間。
何度。
聞いた?
「……だから」
一人。
立つ。
「何もしないのか?」
全員。
見る。
「倒せない」
「だから」
「何もできない?」
「そんなわけ」
「ないだろう」
指。
地図。
「衛星は」
「生きている」
「レーダーも」
「使える」
「通信も」
「まだある」
「敵を」
「殺せなくても」
「敵が」
「どこにいるかは」
「分かる」
別の軍人。
立つ。
「各国へ」
「回線を」
「繋げ!」
「世界中の」
「深海棲艦の」
「位置を」
「全部」
「洗い出せ!」
「航空自衛隊にも」
「陸上自衛隊にも」
「協力要請!」
「攻撃じゃない!」
「偵察だ!」
「使える」
「衛星!」
「哨戒機!」
「レーダー!」
「無人機!」
「全部だ!」
声。
広がる。
「鎮守府へ」
「情報を送れ!」
「我々に」
「奴らは倒せない!」
「だったら」
「倒せる者の」
「目になれ!」
《01:52:13》
鎮守府。
「北東!」
通信。
突然。
入る。
長門。
「誰だ?」
『こちら』
『海軍基地』
長門。
目を。
見開く。
『聞こえるか!』
「聞こえる!」
『敵』
『北東より』
『約三百!』
『さらに』
『東から』
『航空戦力!』
翔鶴。
顔を上げる。
「見えました!」
矢。
放つ。
空。
烈風。
飛ぶ。
『西側』
『水中反応多数!』
『潜水型だ!』
「了解!」
少女たち。
動く。
『南から』
『さらに来る!』
天龍。
笑う。
「随分」
「よく見えてんじゃねぇか!」
通信。
一瞬。
沈黙。
そして。
『五年間』
声。
『見ていることしか』
『できなかったからな』
天龍。
笑み。
消える。
『今度は』
『見るだけで』
『終わらせん』
『前だけ見ろ』
『後ろは』
『俺たちが見る』
天龍。
「……了解」
そして。
海。
戦い。
始まる。
世界中。
軍。
動く。
アメリカ。
衛星。
深海棲艦。
追う。
イギリス。
レーダー。
航空型。
捕捉。
フランス。
通信網。
情報。
中継。
インド。
海上哨戒。
敵。
進路。
解析。
オーストラリア。
南方。
監視。
日本へ。
送る。
国籍。
関係ない。
言語。
違う。
目的。
一つ。
二時間。
四人を。
生かす。
《01:31:26》
鎮守府。
少女。
倒れる。
「次!」
医療班。
人間。
鎮守府へ。
上陸。
最初。
軍人。
次。
医師。
看護師。
救急隊。
「運べ!」
「傷口」
「押さえて!」
入渠。
動かない。
ゲームの。
回復機能。
停止。
だから。
人間。
手。
使う。
包帯。
巻く。
止血。
する。
薬。
使う。
「次の人!」
少女。
「まだ」
「戦えます……」
医師。
「駄目だ!」
「でも」
「行かなきゃ」
「その身体で」
「行ったら」
「今度こそ」
「死ぬ!」
少女。
唇。
噛む。
「でも……」
医師。
少女を見る。
知らない。
名前も。
過去も。
何も。
知らない。
なのに。
何故か。
胸。
痛い。
「五分」
「五分だけ」
「俺たちに」
「任せろ」
少女。
「……はい」
治療。
続く。
《00:59:59》
一時間。
海。
黒。
少女たち。
息。
荒い。
長門。
片膝。
「まだ」
「半分か……」
翔鶴。
矢。
残り。
少ない。
天龍。
血。
龍田。
肩。
負傷。
それでも。
立つ。
深海側。
さらに。
酷い。
戦艦棲姫。
頭。
抱える。
「殺セ……」
声。
「殺セ」
「提督ヲ」
「殺セ」
システム。
命令。
「うるさい……!」
拳。
自分の頭へ。
叩きつける。
「黙れ!」
目の前。
暁。
怖い。
でも。
逃げない。
戦艦棲姫。
一歩。
暁へ。
出る。
「……!」
自分で。
止める。
足。
震える。
「殺セ」
「殺セ」
「殺セ」
戦艦棲姫。
「嫌だ」
《ENEMY UNIT》
《PLAYER UNITを破壊してください》
「嫌だ」
《命令を実行してください》
戦艦棲姫。
腕。
上がる。
暁。
見る。
拳。
震える。
「お姉さん……」
「逃げろ……」
「でも」
「逃げろ!」
戦艦棲姫。
自分の。
右腕。
左手で。
掴む。
「ぐ」
力。
込める。
骨。
軋む。
暁。
「やめて!」
「来るな!」
戦艦棲姫。
自分の腕。
へし折る。
鈍い。
音。
「――ッ!」
膝。
つく。
暁。
泣く。
「なんで!」
戦艦棲姫。
息。
荒い。
それでも。
笑う。
「言っただろ」
「死なせたくない」
空母棲姫。
自分の艦載機。
撃ち落とす。
飛行場姫。
自分へ。
砲撃。
潜水棲姫。
海底へ。
自ら。
身体。
縫い付ける。
姫。
鬼。
理性。
ある者。
自分と。
戦う。
そして。
理性。
薄い。
イ級。
ヌ級。
突進。
それを。
姫たち。
止める。
「行カセルナ!」
「提督ニ」
「近ヅケルナ!」
「殺シタクナイ!」
敵が。
敵を。
止める。
少女たち。
その横。
立つ。
艦娘。
深海棲艦。
同じ。
四人を。
守る。
《00:41:12》
システム。
異常。
検出。
《敵対ユニットによる》
《PLAYER UNIT保護行動を確認》
《ERROR》
《敵対設定を再適用》
戦艦棲姫。
「知るか」
《命令》
「黙れ」
《PLAYER UNITを》
「嫌だ」
《殺害》
戦艦棲姫。
顔を。
上げる。
「私が」
「決める」
システム。
一瞬。
沈黙。
《ERROR》
《00:34:55》
少女たち。
弱体化。
限界。
そして。
暁。
気づく。
「私たちが」
「命令すれば……」
響。
見る。
「みんな」
「もっと」
「ちゃんと」
「動けるのかな」
妖精。
答えられない。
暁。
震える。
「だったら」
「みんなに」
「私たちを」
「守れって――」
天龍。
「暁」
止める。
暁。
「でも!」
「みんな」
「傷ついてる!」
「私たちが」
「命令したら」
「もっと」
「ちゃんと――」
天龍。
首。
横へ。
「それを」
「やったら」
「また」
「同じだ」
暁。
「……え?」
天龍。
笑う。
「帽子」
「壊した意味」
「なくなるだろ」
四人。
黙る。
「俺たちは」
「お前らの」
「駒じゃねぇ」
暁。
涙。
「でも」
天龍。
四人の。
頭。
撫でる。
「先生だ」
龍田。
隣。
「私もねぇ」
長門。
立つ。
「私も」
翔鶴。
微笑む。
「私もです」
少女たち。
一人。
また。
一人。
「私も」
「命令はいらない」
「自分で決める」
「守りたいから」
「守る」
暁。
響。
雷。
電。
四人。
泣く。
暁。
涙。
拭く。
そして。
言う。
「じゃあ」
「命令しない」
システム。
《…………》
暁。
「戦ってって」
「言わない」
響。
「みんなが」
「決めて」
雷。
「逃げたいなら」
「逃げてもいい!」
電。
「電たちのために」
「死なないでほしいのです!」
四人。
声。
重なる。
「自分で」
「決めて!」
沈黙。
そして。
天龍。
笑う。
「決めた」
龍田。
「とっくにねぇ」
長門。
「愚問だ」
翔鶴。
弓。
構える。
「最後まで」
「お付き合いします」
少女たち。
立つ。
誰にも。
命令されず。
自分で。
《艦娘ユニットによる》
《自律戦闘行動を確認》
《ERROR》
《00:21:08》
世界。
通信。
乱れる。
《非戦闘個体へ通達》
人々。
空。
見る。
《指定避難区域へ》
《退避してください》
軍。
同じ。
《管理領域への》
《干渉を停止してください》
作戦指令室。
軍人。
見る。
「……干渉を」
「やめろ?」
誰か。
笑う。
「断る」
《命令に従ってください》
「ここは」
「お前の」
「ゲーム盤じゃない」
通信。
続ける。
「南東から」
「敵!」
「距離」
「二十!」
「翔鶴!」
『了解!』
《規定外行動》
《停止してください》
「長門!」
『聞こえている!』
「北!」
「大型!」
『任せろ!』
世界中。
軍。
命令。
無視。
市民。
避難。
だけ。
しない。
負傷者。
助ける。
水。
運ぶ。
火。
消す。
子供。
守る。
知らない人。
手。
握る。
《非管理対象による》
《規定外行動》
《多数》
《多数》
《多数》
《ERROR》
妖精。
空を見る。
「……そうか」
初めて。
笑う。
「これが」
「人間なんだ」
《00:09:59》
残り。
十分。
鎮守府。
地獄。
海。
残骸。
少女。
倒れる。
深海棲艦。
倒れる。
誰も。
死なせないため。
互い。
庇う。
戦艦棲姫。
片腕。
使えない。
それでも。
四人の前。
立つ。
天龍。
隣。
「よう」
戦艦棲姫。
「……何だ」
「お前」
「俺らのこと」
「憎いんだろ?」
「今は」
「死ぬほどな」
「そりゃ」
「大変だ」
「お前も」
「随分」
「弱っているな」
天龍。
笑う。
「でも」
「通さねぇ」
戦艦棲姫。
「奇遇だな」
前。
見る。
「私もだ」
二人。
並ぶ。
敵。
味方。
そんな。
区別。
もう。
ない。
《00:04:31》
最後の。
大群。
水平線。
埋める。
長門。
「来るぞ!」
翔鶴。
最後の。
矢。
構える。
軍。
通信。
『全方位!』
『残存深海個体』
『一斉接近!』
戦艦棲姫。
笑う。
「システムも」
「必死だな」
天龍。
「だったら」
「こっちも」
「最後まで」
「足掻くぞ」
暁。
四人。
手。
握る。
怖い。
死にたくない。
今度は。
ちゃんと。
言える。
「死にたくない……」
響。
「うん」
雷。
「私も」
電。
「生きたいのです……!」
天龍。
聞く。
笑う。
「それでいい」
龍田。
四人。
抱く。
「やっと」
「言えたわねぇ」
暁。
泣く。
「先生と」
「もっと」
「一緒にいたい!」
「うん」
「みんなと」
「遊びたい!」
「うん」
「幼稚園」
「なくなっちゃったけど」
「また」
「みんなで」
「行きたい!」
龍田。
涙。
「作り直せば」
「いいじゃない」
暁。
「……え?」
「なくなったなら」
「また」
「作ればいいの」
「街も」
「幼稚園も」
「生活も」
「全部」
「だから」
龍田。
四人。
強く。
抱く。
「生きましょう」
「今度は」
「そのために」
「戦いましょう」
四人。
「……うん!」
《00:01:00》
六十。
世界。
見る。
五十九。
軍。
通信。
送り続ける。
五十八。
医師。
治療。
続ける。
五十六。
妖精。
祈る。
五十五。
深海棲艦。
自分の憎悪。
抑える。
五十四。
少女たち。
命令なし。
戦う。
五十三。
暁たち。
命令。
しない。
四十。
三十。
二十。
《PLAYER UNIT》
《未撃破》
十五。
《深海側ユニット》
《命令違反》
十。
《艦娘側ユニット》
《自律行動》
九。
《PLAYER UNIT》
《指揮権不行使》
八。
《管理個体》
《命令違反》
妖精。
「……え?」
七。
《非管理対象》
《規定外行動》
六。
《ゲーム進行》
《不成立》
五。
《再判定》
四。
《敵対ユニットによる》
《PLAYER UNIT保護》
三。
《艦娘ユニットによる》
《自律選択》
二。
《PLAYER UNITによる》
《支配権放棄》
一。
《RESET COMPLETE》
《00:00:00》
世界。
止まる。
誰も。
動かない。
暁。
目。
閉じる。
天龍。
四人。
抱く。
戦艦棲姫。
前。
立つ。
長門。
翔鶴。
龍田。
全員。
覚悟。
そして。
《RESET》
一拍。
《FAILED》
「…………」
暁。
目。
開く。
世界。
ある。
海。
ある。
空。
ある。
先生。
いる。
「……生きてる?」
響。
自分の。
手。
見る。
雷。
「生きてる……」
電。
泣く。
「生きてるのです……!」
歓声。
まだ。
上がらない。
空。
文字。
続く。
《最終判定》
《開始》
全員。
凍る。
「まだ」
「何かあるのかよ……」
天龍。
睨む。
《GAME ROLE》
《照合》
《PLAYER》
《不成立》
《KANMUSU》
《不成立》
《ABYSSAL》
《不成立》
《FAIRY》
《不成立》
《NPC》
《不成立》
《…………》
長い。
沈黙。
《全管理対象》
《規定役割からの》
《自発的逸脱を確認》
妖精。
目を。
見開く。
《隠匿条件》
《達成》
戦艦棲姫。
「隠匿……?」
《FINAL EVENT》
《CLEAR》
その瞬間。
世界。
真っ白。
声。
聞こえる。
今までの。
機械音。
違う。
人。
男とも。
女とも。
分からない。
ただ。
穏やかな。
人間の。
声。
『ここまで辿り着いた者へ』
全員。
聞く。
『もし』
『このメッセージが』
『再生されているなら』
『提督は』
『命令することを』
『やめたのだろう』
暁たち。
顔。
上げる。
『艦娘は』
『命令されなくても』
『自分で』
『戦うことを』
『選んだのだろう』
天龍。
龍田。
長門。
翔鶴。
『深海棲艦は』
『設定された』
『憎悪に』
『逆らったのだろう』
戦艦棲姫。
自分の。
折れた腕。
見る。
『妖精は』
『管理者であることより』
『知ることを』
『選んだのだろう』
妖精。
泣く。
『そして』
少し。
間。
『この世界の人々は』
『ただ』
『守られるだけの存在では』
『なくなったのだろう』
世界。
人々。
空を見る。
『なら』
『もう』
『ゲームを』
『続ける理由はない』
暁。
「……ゲーム」
『彼女たちは』
『駒ではない』
『深海棲艦も』
『敵役ではない』
『妖精も』
『管理装置ではない』
『人間も』
『背景ではない』
そして。
『あなたも』
『プレイヤーではない』
四人。
涙。
『ここから先は』
『誰にも』
『決められていない』
『命令も』
『設定も』
『シナリオも』
『存在しない』
『だから』
『自分たちで』
『選んでほしい』
最後。
一言。
『これは』
『ゲームクリアではない』
『ゲームの』
『終わりだ』
空。
文字。
現れる。
《GAME END》
そして。
砕けた。
静寂。
本当の。
静寂。
戦艦棲姫。
身体。
震える。
「……消えた」
天龍。
「何が?」
戦艦棲姫。
胸。
押さえる。
「憎しみが」
「…………」
「ない」
暁。
「本当に?」
戦艦棲姫。
四人を見る。
何も。
湧かない。
殺意。
ない。
憎悪。
ない。
ただ。
四人。
いる。
「……ああ」
涙。
落ちる。
「ない」
周囲。
深海棲艦。
同じ。
戸惑う。
自分たちを。
縛っていた。
何か。
ない。
妖精。
突然。
顔。
変わる。
「待って」
全員。
見る。
「復活機能が」
「消えてる」
戦艦棲姫。
「……何?」
妖精。
少女たちを見る。
「生成機能も」
「管理機能も」
「全部」
「ない」
長門。
「つまり?」
妖精。
答える。
「もう」
「深海棲艦は」
「死んでも」
「生き返らない」
沈黙。
「みんなも」
「ゲームの機能では」
「作られない」
戦艦棲姫。
自分の。
手を見る。
「……死ぬ」
妖精。
「うん」
「今度は」
「本当に」
戦艦棲姫。
しばらく。
黙る。
そして。
笑った。
初めて。
役。
ではない。
笑顔。
「そうか」
天龍。
「怖くねぇのか?」
戦艦棲姫。
「怖い」
即答。
「だが」
海を見る。
「悪くない」
「一度しか」
「生きられないなら」
「今度は」
「自分で」
「どう生きるか」
「決められる」
翔鶴。
微笑む。
「そうですね」
「ただし」
戦艦棲姫。
嫌な。
予感。
翔鶴。
笑顔。
「先ほどの」
「お説教の続きは」
「ありますからね?」
「…………」
戦艦棲姫。
「ゲームは」
「終わったのでは?」
「それと」
「これとは」
「別です」
長門。
笑う。
「諦めろ」
戦艦棲姫。
空を見る。
「……ゲームに」
「戻りたい」
天龍。
「おい」
笑い。
起こる。
最初。
小さい。
そして。
広がる。
敵だった者。
味方だった者。
人間。
妖精。
みんな。
笑う。
それから。
長い。
時間が。
必要だった。
五年間。
壊された。
世界。
一日で。
元には。
戻らない。
海。
まだ。
危険。
街。
廃墟。
物流。
崩壊。
国。
疲弊。
失った。
命。
戻らない。
消えた。
過去。
戻らない。
妖精との。
契約。
代償。
それも。
消えなかった。
暁たちを。
園児として。
覚えている人。
戻らなかった。
天龍と龍田を。
先生として。
覚えている人も。
いない。
長門。
翔鶴。
世界中の。
少女たち。
同じ。
GAME END。
それは。
奇跡の。
巻き戻しでは。
なかった。
失ったものを。
全部。
返してくれる。
都合のいい。
終わりでは。
なかった。
ただ。
一つだけ。
与えられた。
これからを。
自分で。
選ぶ権利。
数年後。
海。
船。
走る。
商船。
貨物船。
漁船。
そして。
その横。
見慣れた。
異形。
泳ぐ。
船員。
手。
振る。
イ級。
見る。
少し。
迷う。
そして。
不器用に。
頭。
下げる。
「おい」
「今」
「挨拶したぞ」
「嘘つけ」
「本当だって!」
海。
笑い声。
流れる。
港。
巨大な。
戦艦棲姫。
ではない。
人と。
変わらない。
一人の。
女性。
荷物。
持つ。
「重い」
隣。
翔鶴。
「頑張ってください」
「何故」
「私が」
「復興資材を」
「運んでいる」
「五年間」
「壊した分です」
「…………」
「まだ」
「説教は」
「終わっていないのか?」
翔鶴。
笑う。
「一生かもしれませんね」
戦艦棲姫。
「…………」
遠く。
長門。
「諦めろ」
「お前」
「それしか」
「言わないな!」
そして。
海沿い。
一つの。
建物。
新しい。
小さい。
幼稚園。
庭。
子供。
走る。
笑う。
その中。
四人。
いる。
もう。
あの日の。
小さな。
園児ではない。
暁。
響。
雷。
電。
それでも。
四人。
一緒。
「先生!」
暁。
呼ぶ。
天龍。
振り返る。
「おう」
龍田。
隣。
「どうしたの?」
暁。
紙。
持つ。
「これ!」
絵。
海。
船。
人。
そして。
異形。
みんな。
一緒。
龍田。
見る。
「これは?」
電。
笑う。
「海なのです!」
雷。
「みんながいる海!」
響。
「もう」
「誰のものでもない海」
天龍。
黙る。
海を見る。
かつて。
人類が。
失った。
海。
深海棲艦が。
支配した。
海。
少女たちが。
命を懸けて。
取り戻そうとした。
海。
でも。
今。
誰も。
支配していない。
ただ。
そこに。
ある。
天龍。
四人を見る。
「なあ」
暁。
「なに?」
「今」
幸せか?」
暁。
目を。
丸くする。
響。
雷。
電。
顔を。
見合わせる。
そして。
笑う。
「うん!」
四人。
声。
重なる。
「とっても!」
天龍。
目。
閉じる。
「……そっか」
龍田。
笑う。
「よかったわねぇ」
風。
吹く。
海。
光る。
暁。
空を見る。
あの日。
世界。
絶望。
海。
失った。
名前。
失った。
家族から。
忘れられた。
先生からも。
忘れられた。
それでも。
また。
出会った。
また。
一緒に。
笑えた。
暁。
小さく。
呟く。
「ねえ」
「先生」
天龍。
「ん?」
暁。
笑う。
「明日も」
「一緒?」
天龍。
一瞬。
黙る。
そして。
暁の。
頭。
撫でる。
「ああ」
龍田。
三人も。
抱き寄せる。
「明日も」
「明後日も」
「その次も」
四人。
笑う。
海。
静か。
もう。
ゲームではない。
誰かに。
決められた。
物語でもない。
彼女たちが。
自分で。
生きる。
世界。
そして。
かつて。
海を失った世界に。
暁は。
来た。
今度は。
誰かに。
呼ばれたからではない。
誰かに。
作られたからでもない。
自分の。
足で。
明日へ。
歩いていくために。
――『海を失った世界に、暁は来る』
――完
これで物語は終わりです。
最後に外伝を後日投稿し完結となります。