宙に舞って戻しようもなかった
でもまだ愛おしかったんだ
有耶無耶にしないで穢れを残していて
急いでいても、列は守ってくださいね
https://www.youtube.com/watch?v=MyMIdgSWSvY
目を覚ますと、ピンク色の霧に覆われた場所にいた。
霧だけでなく、全てのものが薄くてもピンクで、これまた不思議な場所だった。
起き上がると、ベッドで寝ていたことに気付く。
周りを見渡すと、寝ていたベッドも含めて幾つかの家具や棚が視界に入る。
空間の端はまるで見えない。
家具や棚の並びは見える限りどこまでも続いていた。
どこか、ホームセンターを思わせる光景。
幼い頃にお母さんに連れられて行ったホームセンターを思い出した。
「……商品はないんだね」
商品は棚に1つも置かれておらず、見渡す限り空の棚、棚、棚。
大音響で流されているBGMがどこか心地よい。
よく耳を澄ませると、バーコードリーダーの音が聞こえてくる。
聞こえてくる方向に向けて、私はゆっくりと歩き始めた。
「……ぬいぐるみが動いてる…」
大きなクマのぬいぐるみが、ピンクのハート型の風船を1つ取っていた。
思えば、空間中にピンクの風船がある。
そしてそれは全部ハート型をしている。
本当ならかなり不思議な光景だったけど、
私の思考は、”ぬいぐるみぐらい動くよね”だった。
随分とこのセカイに居すぎた気がする。
体感では1ヶ月半ぐらいはここにいるような、別に2日程度しか経っていないような……
……時間感覚も大分正常ではなくなっているようだった。
「ん、レジかな」
しばらく歩いて、レジが見えてきた頃、
棚に小さなハートのぬいぐるみが置かれるようになってきた。
他にもテディベアも少し置かれている。
そのまま直進していくと、レジにはどうやら何かが並んでいるようだった。
目を凝らすと、白いシーツのようなものを被った何かで、足はなさそう。
お化けみたい。
「あ、ぬいぐるみが店員さんだったんだ」
レジに立っていたのはクマのぬいぐるみさんで、お化けたちはカゴに入れてたり、
はたまた手で持っていたり、各々の方法でハートのぬいぐるみを持っていた。
お化けたちはレジに並んでハートに貼られたバーコードのシールを読み取ってもらっていた。
読み取ってもらった後、ハートを渡されたお化けたちは消えていく。
私はお化けたちの列に並んでみた。
気付いたら手に薄いピンクの風船の付いた紐を握っていた。
風船にはバーコードが貼られている。
少し気になったので、髪の先端を視界に持ってきた。
真っ白な髪だった。
鏡がないから分からないけど、ミクと同じ見た目なんだろうか、と思った。
「次の人どうぞ」
急に声が聞こえた。
無意識に歩みを進めて風船を手渡した。
髪を触りながらふと、視線がバーコードリーダーに行った。
ぬいぐるみの手だったはずのそれは、人の手になっていた。
そして、バーコードリーダーを握るその手は妙に見覚えがあった。
特に水色の上着の袖。
どこかでよく見たことがあるような……
私の視線が上へ行く。
白い服を上着の下に着ているようだった。
更に上に行く。
肘のあたりが真っ赤だった。
同じく、胸の辺りも真っ赤に染まっている。
更に上にいく。
首元も真っ赤だった。
髪が黒いことにようやく気付く。
長くて、綺麗な髪だった。
更に上にいく。
灰色っぽい青色の目。
なんで……
「どうぞ」
風船を手渡される。
風船に目をやる。
風船ではなく、赤いハートのぬいぐるみだった。
顔を上げると、そこにいたのはさっきの少女じゃなかった。
白いワンピースを着た、白い髪の少女だった。
でも、真っ赤に染まった場所は変わらずで、そして私は……
「頑張って」
白い髪の少女はそう言い残して、向こうに歩き去っていく。
「ま、待って!」
手を伸ばす。
視界が真っ暗になった。
そして元に戻る。
お化けたちも、少女も、クマのぬいぐるみさんもいなかった。
後に残ったのは、ピンク色の空間と、少女から渡されたハートと、”私”だけだった。
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