奥のセカイ   作:がくしゃ気取り

14 / 14
私は、自分の部屋の布団で目を覚ました。
どこか不思議な、目覚めだった。


最終話:夢から覚める時。

練習終わりに皆んなでファミレスに寄った。

 

「そういえばいっちゃん、昨日大丈夫だった?」

 

「ん、あぁ……」

 

どうやら私は、昨日トラックに”轢かれかけた”みたいで、

咲希が心配しているのはそのことだろうな。

 

「大丈夫だよ。

 怪我もしてないし」

 

「なら良かったぁ……」

 

咲希は安心したのか、ぐでーっと穂波に寄りかかった。

 

「わっ、もう咲希ちゃんったら……」

 

「一歌、ほんとに大丈夫なんだよね?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

「それならいい」

 

志歩は相変わらずの心配性だった。

 

あ、そういえば。

 

「ちょっと昨日の夜、

 インスピレーションが湧いたから歌詞を書いてみたんだけど……」

 

—————————

 

家に戻って布団に寝転がる。

スマホを開いてみる。

 

「……気のせい…じゃないみたい」

 

私のスマホには作った記憶のない無名のプレイリストがあった。

そしてその中には無名の楽曲が1曲入っており、

再生不可になっていた。

 

布団から起き上がり、パソコンを開く。

私は曲を作り始めた。

 

あの場所の雰囲気を、景色を、感じた事を、……ミクを。

全てを一つ一つ丁寧に記憶の底から呼び覚ましながら、音を打ち込んでいく。

 

停電を繰り返す黄色の浴槽、

 

純白の美しいプール、

 

電気の消えた夜の学校、

 

赤に包まれた長い病院の廊下、

 

パソコンの並ぶオフィス、

 

懐かしさ漂うホームセンター、

 

全ての裏側、

 

そして……現実。

 

あらゆる全てを、適切に、適度に、1つの曲の中に入れていく。

そして、それを混ぜ切らないように纏める。

 

長い長い、旅をしているかのような。

 

……今思えば、私はどれぐらいの間あそこにいたんだろう。

 

たった半日だったような気もするし、

1週間以上あそこにいた気もする。

 

曲にはそんな時間を忘れてしまいそうな要素も入れることにした。

 

——————————

 

盲目的想像からすべてがすべてと乖離して

至らない壁裏掻き消す

鳴りやまないビージーエム

壊れ揺らぐ夢模様の次元

 

無彩色鋼鉄のベールに包まれ

期待感乗せ

眠るレールはプールサイドへ

9番線

無機質に閉ざされた部屋の中

僕らだけの秘密に連れ出して

 

騒々しく鳴りやまぬボーカルチェイン

創世駆り立てる本格ゲーム

衝撃掻き鳴らす洋上トレイン

仮置き懐疑的駆け上がるゲイン

肯定感頂へ放課後チェイス

存外非科学で狡猾セール

害なら尚更に分割シェイク

脈絡も無くなく考察レース

 

覆してしまえよ 喜劇ならば

振り返れば空虚に染まってゆく

次第に見えなくなってゆく

もう可能性だけを切り分けて

明日が当たることを願っている

 

ワンツーステップで踏み出す前夜

デジタルサイネージの光

抱いては腐敗するドグマ

あどけない不誠実に

対話を教えて

繰り返す▬

 

ただ見過ごしてしまった

柵の取り巻く生活の連続

ただ美化してしまった

言葉に惑ってわからないよ結局

待ち構えていた日々は

宙に舞って戻しようもなかった

でもまだ愛おしかったんだ

有耶無耶にしないで穢れを残していて

 

あなたの居た部屋の明かりが

照らし出すだけなのに

取り返しがつかないと知っても猶

触れてみたくて

 

[音声言語解析結果]

盲目的想像からすべてがすべてと乖離して

至らない壁裏掻き消す

鳴りやまないビージーエム

壊れ揺らぐ夢模様の次元

 

 

 

私の時間は、一瞬で過ぎていった。

 

——————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が奥のセカイに行ってから、4年と少しが経った。

 

Leo/needはプロとして順調に売れていた。

 

3年前には、みのりと一緒にケーキを食べながら自分たちの活動を話し合った。

 

2週間前には、こはねの歌に合わせて私がギターを弾く路上ライブをした。

 

2年前には、司さんに誘われて大きな劇を見た。

 

 

1週間前には、音楽番組で奏さんと対談した。

 

そして今。

 

私はなんの変哲もない、田舎の廃業した温泉に来ていた。

 

他には誰もいない、自分1人で。

 

昔、人々で賑わっていたであろう温泉は、

今は寂しいほどに静かだった。

 

すると、誰かの足音が近くなってきた。

 

私は持ってきた炭酸飲料を出すと、やってきた人物に視線を向けた。

 

 

「一歌、久しぶり!」

 

「ふふ、久しぶり。」




奥のセカイ、これにて完結です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

最後は少し駆け足になってしまいましたが、個人的にはそこそこ納得がいっております。

裏話をしますと、元々この物語はバッドエンドで終わる予定でした。

一歌は最終的にこのセカイの初音ミクになって誰も覚えていない存在になり、
ただ一人、永遠にここに人が来ないようにする……

そんな終わりを最初は考えていたんです。

ただ、書いてるうちにこれをバッドエンドで終わらせたくない、
ハッピーエンドで終わらせたいという気持ちが出てきまして、この終わりになったわけです。

これ以上は何も思いつかないのでそろそろ終わりとさせていただきます。
これからはこの小説枠が“白い青春”になり、逆に白い青春枠が“プロセカ×異能”になります。

それでは、また別の裏世界で。

使用楽曲コード:32003421,77185277,77923316,77923324,79154891,79914489

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

彼女が好きなのは翼では無く司(じゃないかも)(作者:初見さん)(原作:プロジェクトセカイ)

 星乃一歌。Leo/needという有名幼馴染バンドグループのギターボーカルである。▼ そんな彼女は死ぬほど好きな男がいる。天馬翼、変人ワンツーの1人である天馬司の弟にして、同じバンドの天馬咲希の兄である。▼ だが、翼はそんな一歌に対してお前が好きなのは司だと言いながら純粋好意があんまり伝わってない様子。▼ 頑張れ一歌、負けるな一歌、これは一歌が翼に愛を止めな…


総合評価:31/評価:-.--/連載:19話/更新日時:2026年10月18日(日) 10:11 小説情報

神様にはなれない私たち(作者:琴ノ葉しずく)(原作:僕のヒーローアカデミア)

▼「力は隠しなさい」▼私を地獄から救ってくれた神父様はそう言った。▼だから私は、周囲にはただの『治癒の個性』だと嘘を吐き、世界に優しくあろうとした。▼……それが、死すら手繰り寄せる悍ましい異能だとは、誰も知らずに。▼これは、私の人生の物語。▼出会って、別れて。失って、それでもまた誰かを愛して。▼何度も季節が巡り、何人もの人が私の前を通り過ぎていった。▼それで…


総合評価:79/評価:-.--/連載:73話/更新日時:2026年10月19日(月) 02:54 小説情報

黄昏職員の転生キヴォトス生活(作者:yasa aki)(原作:ブルーアーカイブ)

とある会社で働いていた職員であるアリアは、勤務中仲間を庇って死んでしまう。▼―――――――――しかし目が覚めたら青春の世界にいた。▼※作者は初投稿で文才も無いです。あと完全に自己満で書いてます。▼※最初の1~2話ぐらいはAIに書いてもらったものを手直ししたものです。▼※3話から人力で書いた物になっているので、1~2話とは書き方が違い違和感を感じるかも知れませ…


総合評価:380/評価:8.91/連載:11話/更新日時:2026年09月30日(水) 07:00 小説情報

偽良秀による青春巡礼(作者:山幸 蟹)(原作:ブルーアーカイブ)

9章終了時点の良秀になっていた主人公。▼まぁでも良秀ボディなら何とかなるだろうと思っていたのも束の間。▼銃を乱射する女子高生。それを平気に受ける機械生命体に生体施術体。▼そしてこちらは多少は食らっても大丈夫だが、対物は流石に死ぬレベル。▼頑張れ良秀!負けるな良秀!▼みたいな話を心がけます。プロムンからは主人公とアラヤもどき以外登場しない予定です。▼リンバスカ…


総合評価:303/評価:8.57/連載:7話/更新日時:2026年09月22日(火) 00:00 小説情報

何かあった才羽モモイが、異世界の廃墟の中で生きるだけの話(作者:ミレニアムのモブ:文学派)(原作:ブルーアーカイブ)

▼こんなモモイが見たいなっていう話です。


総合評価:1661/評価:8.41/連載:10話/更新日時:2026年09月08日(火) 07:31 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>