まぁ蛍光灯交換班がアーモンドウォーターでも大量にこぼしたんだろうけど
愛されたいと願っていた
見たくないものばかり見方を覚えた
伝えたいことは一つもなかった
然れども鮮やかに奇を衒う世界観
聴こう、というか聴け↓↓↓↓(by 焼きそばパン大明神)
https://www.youtube.com/watch?v=qiMQWPI_u3Y
ここがセカイだと分かってから数分。
私はこの空間で色々してみていたんだけど、結局何も見つかっていない。
今は狭い浴槽の中に浸かって思考を纏めていた。
まずここはただの個室で、たまに停電が起きるけどすぐに復旧する。
水は濡れないこと以外は全部普通で、しっかり口に入ったしなんか天然水の味がした。
Untitledを止めることはできなくて、このセカイから出るのは現状不可能。
でもミクに会えたら何か変わる…かも?
「……どうすれば良いんだろう」
正直、現状思いつく解決策がミクに会うことしか無かった。
でもその肝心のミクに会えるのかも、いるのかも分からない。
考えに考えを重ね続けて……
「……お腹減ったな」
お腹が空いたので鞄から焼きそばパンを出した。
口を動かしながら考え事をしている内に、ふと思った。
(…みんな、心配してるだろうな)
家に連絡を入れる前にここに来てしまった。
残念ながら連絡もできなければWi-Fiも繋がっていない。
スマホで今できるのは電源を入れることぐらいかな。
考え事をしながらパンを食べていた時、電源の入っていないスマホの暗い画面にそれは映った。
「…!?」
後ろを振り返る。
そこには——
「こんにちは」
ミクが、いた。
「えっ、ミ、ミク…?」
「うん。私はこの世界の初音ミクだよ」
ミクの外見が、どことなく奏さんを想起させた。
白くて長い髪だった。
「にしても、ここに人が落ちてくるなんてね」
「? どういうこと?」
「ここは貴方が自分で言ったように、何かの想いでできたセカイなの。
ただ、その想いの持ち主が普通のセカイとはちょっと違うんだよね」
「想いの持ち主が普通と違う…?」
どういうことだろう。
失礼かもしれないけど、変な人なのだろうか?
「このセカイの想いの持ち主は、この世界なの」
…………
「え?」
話の流れから察するに、この“セカイ”の想いの持ち主が、私たちのいる“世界”、ということだろう。
「……世界の、想い?」
「私もよく分からないんだけどね」
ミクはそう言って、その場に座り込んだ。
「多分、それがこのセカイから普通の方法で出られないことにも関係してるんだと思う」
ミクは白いワンピースをひらひらしながら言った。
あ、そういえば。
「ミクはここから出る方法を知ってるの?」
「うん、知ってるよ」
「ほんとに!?」
良かった、少なくとも出られない心配はしなくても良さそう。
「だけど、ちょっと長い“旅”になるけど、大丈夫?」
「“旅”?」
ミクは頷いた。
一瞬身構えたが、出られるなら長い旅でも構わない。
「うん。
大丈夫だよ」
「よし、ならまずは初めの一歩、この部屋から出ることを済ませなきゃね」
「? 他の場所もあるの?」
「うん。
ここ以外にたくさんの場所があるんだ。
例えば……いや、これは見てからのお楽しみかな」
ミクはそう言うと、電球を指差した。
「あれが時々停電するのは知ってるよね?」
「うん」
初めて停電した時は危うくスマホを落とすところだった。
「停電した時に目を瞑って浴槽の底に潜ってみると、次の場所に行けるよ」
「……なるほど…?」
なんか不思議な移動方法だな、と思ったけど、これ以外に方法がありそうな気もしないので
実行することにした。
とは言っても停電はすぐに来るわけではないので、来るまではミクと話すことにした。
——————————
「私の他にもこのセカイに来た人はいるの?」
「……うん、いるよ」
ミクは少し暗い表情で言った。
どうしたんだろう、と思う暇もなく、ミクは続けた。
「現実で何かの条件を満たした人はここに来ちゃうみたいだね」
「条件?」
「私もよく分からないんだけどね」
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「あのシャワーって水出るの?」
高い位置にあるので手が届かないから確かめようが無かった。
「いや、出ないよ。
飾りみたいだね」
「そうなんだ」
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「他のバーチャルシンガーっているの?」
「いや、いないよ。
いつでもこのセカイにはミクだけ」
「そっか。
……寂しい?」
「…ちょっと、ね」
そう言ったミクの顔は笑っていたが、声も含めて少し暗かった。
「……なら、出た後もこのセカイに遊びに来るよ。
出た後もこのUntitledが残ってるのかは分からないけど…」
ミクは驚いたような顔をして、その後に顔を綻ばせた。
「ふふ、私はもう寂しくないよ」
「?」
ちょっとよく分からなかった。
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「それで…」
ミクが言いかけた時。
電気が消えた。
「お、今だよ、一歌」
「う、うん!」
私は深呼吸してから、浴槽に潜った。
その瞬間。
浴槽特有の狭さを感じなくなり、代わりに解放感が急に襲ってきた。
「!?」
びっくりして目を開けて顔を上げた時、私の視界に映ったのは黄色い部屋では無かった。
白い、プールだった。
Level.37