奥のセカイ   作:がくしゃ気取り

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↓そして、彼女は最善を選ぶ↓
https://www.youtube.com/watch?v=hOdQKfQsKpM


music!: 赤い結末

私が黄色い部屋に入ると、ミクさんは私の肩をポン、と叩いて消えた。

 

私は眼前の少女に声をかけた。

 

「ねぇ、大丈夫——」

——————————

 

停電した時に浴槽に潜ると次の場所に行けるよ

 

あっチカチカし始めた!

 

行くよ!

 

——————————

 

あの電車って動くの?

 

うーん、私は動いてるところは見たことないけど……

 

あ、でも今動いたら線路の上歩けなくなっちゃうから動かないでほしいなぁ…

 

……ふふ、確かに

 

——————————

 

うわびっくりした! 心臓止まるかと思った……

 

ふふ、びっくりするよね

私も最初はびっくりしたなぁ

 

なんでマネキンが吊られてるの……うぅ

 

大丈夫だよ、私もついてるからさ

 

——————————

 

……ここで、お別れ?

 

うん、現実世界に帰れるんだよ

 

そっか……嬉しいけど、ちょっと寂しいや

 

? なんで—

 

ミクちゃんと、離れちゃうのが、ちょっと寂しいなって…

 

……それじゃあ、今度、現実世界で、また会おう?

私もここを頑張って出るからさ

 

…! ほんと!?

 

うん、ほんと

約束だよ

 

——————————

 

「それで、その女の子を助けた後、こういう風にこのセカイに迷い込んだ人たちを助けたいなって

 思って、今までミクさんとして振る舞ってきたんだ」

 

ミクは全部を話し終わった時、どこか懐かしそうな、それでいて寂しそうな顔を浮かべていた。

きっと、話の中で出てきた約束だったり、それに関係なく現実に帰りたいっていう感情が

強くなってきてるんだろうな、と思った。

 

「……ミク、その…」

 

「大丈夫だよ、一歌」

 

私はミクに何か言おうと思ったが、ぴったりな言葉は見つからなかった。

代わりに、ミクは再び話を始めた。

 

「ここから出ると、人によって違う出方をするんだ」

 

「どういうこと?」

 

「ミクさんに教えてもらったんだけどね」

 

 

1つ目は、このセカイに来る前に、1人でいた且つ誰にも見られずにここに来た人で、

このセカイに来る前に最後にいた場所に、今の状態で戻る

 

2つ目は、このセカイに来る寸前まで誰かに見られていた人で、

このセカイに来る前に最後にいた場所に、このセカイに来る直前の状態で戻る——

 

「だって」

 

「……」

 

私は、そんなミクの言葉で、”ある1つの結末”を悟った。

 

「……私が出たらさ、ミクはどうするの?」

 

「私?

 私は一歌が出たら、出口の左にあるドアから最初の黄色い部屋に戻るよ」

 

「一緒に出なくていいの?」

 

私の質問に、ミクは首を横に振った。

 

「私は、やることがあるからさ」

 

「やること?」

 

「うん」

 

ミクはそう言うと、その”やること”を告げた。

 

「一歌が出るときに、私が残ってないといけないんだ」

 

「……そっ、か」

 

一応、理由を聞いてみたけど、ミクは後で分かるよ、と言って別の話題に切り替えた。

 

——————————

 

「さぁ、もうすぐ出口だよ」

 

「あ、ほんとだ」

 

50mほど奥に、”EXIT”と書かれた赤く光る非常灯が目立つドアがあった。

その左にある黄色いドアが、さっきミクの言っていた戻るためのドアだろう。

 

……

 

「じゃあ一歌、ここでお別れだね」

 

「うん……そうだね」

 

「あの扉を通ったら、しばらく待っててね。

 私が黄色い部屋に戻ったら、一歌も戻れるから」

 

「ありがとう」

 

私は少し息を吸って、決意を固めた。

 

ドアを開けて、少し考えるように止まった。

 

「ねぇミク」

 

「ん、なぁに?」

 

私は首にかけていたカメラをミクに渡した。

 

「私がそのドアの前に立つからさ、それを撮ってほしいんだ」

 

「分かった。

 それじゃあいくよ……」

 

私はカメラに向かって、罪悪感に満ち溢れたピースサインを向けた。

 

“パシャッ”

 

「結構上手く撮れたよ」

 

「ほんと?なら良かった」

 

私はミクの元へ歩いていく。

ゆっくりと、でも確実に。

 

「それじゃあ一歌——」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はミクをドアの向こうに押し出してドアを閉めた。

 

「えっ……」

 

最後に見えたミクの顔は、驚いていたようにも、泣きそうにも見えた。

 

「一歌……?何をしてるの…?」

 

「……ミクをこのセカイから出す」

 

「何言ってるの!?

 私よりも一歌が先に——」

 

「私、ここに来る直前にトラックに轢かれたんだ」

 

「えっ…?」

 

「このセカイでは全然大丈夫だけど、多分、もう死んでてもおかしくないと思うんだ」

 

「そんな……」

 

「でもさ、ミクには約束があるし。

 私と違って、このセカイを出た後も何事もなく過ごせるし。」

 

「でも!」

 

「それに!」

 

「…!?」

 

私は思いっきり叫んだ。

ミクの声を掻き消す勢いで。

 

「私が、こうしたいの」

 

「……一歌……」

 

ミクの声は震えていて、泣いてることなんてすぐに分かった。

罪悪感で満たされた心が重くて、それでも、私は、この選択を選ぶ。

 

「ミク」

 

「……なに…?」

 

「カメラ、持っててほしいな」

 

「……言われなくても、持ち続けるよ」

 

「ありがとう」

 

私は、ドアから離れると、黄色のドアを開ける。

入ろうとした時。

 

「一歌!」

 

ドア越しに声が聞こえた。

 

「一歌もいつか必ずここから出て!

 そして私とまた……歩こうよ。

 色んな場所をさ」

 

「……!

 うん!」

 

私はドアの奥へと足を踏み出した。

 

レオニの皆と、

 

そして、ミクと。

 

また、会うためにも。

 

「私、絶対に諦めないよ。

 ミク」




music!→music”0”

A fictional work—or the genre itself—produced using a mockumentary (pseudo-documentary) style, framed as unedited footage (such as from videotapes, smartphones, or surveillance cameras) left behind at the scenes of accidents or by missing persons.
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