異世界帰りのTS美少女勇者、人気ダンジョン配信者に成り上がりながら、「性転換の薬」を追い求める 作:冰藍雷夏
こちらは黄金の聖剣に風の魔法を付与して中段構え。
そして有栖川サラは無刀の構え。
ただ左手に刀の鞘を持って、右手に日本刀を無造作に持っているだけ。
俺を見つめてボーッて口からよだれを垂らし始めている。
「……いや、これは違う。脱力……究極の脱力か?」
「フフフ、正解! セカンド・アクセル」
先ほどまで立っていた場所からいきなり姿を消したように見えた有栖川サラは、俺の背後へと現れ、下段から日本刀を振り上げた。
「!? またか? 有栖川サラの移動速度が格段に……2倍速になった?」
「君もあたしと一緒に裸になりなよ。切り刻んであげるからさ。その後はうちの事務所のタレントになって仲良くホテルにでも行こうね」
「行くかアホ。その前に妹の有栖川に「攻撃してごめんなさい」って土下座して謝りやがれ、風よ、吹き荒れろ!」
「すごい力だね。キンキラキンの大きな力を持って、風まで操れちゃうなんて…うきゃああ!!」
風の魔法で有栖川サラを上空へと吹き飛ばす。適切な間合いを取るためであり、あいつがどれだけスピードが速かろうと、踏ん張る足場が無ければ身体を加速する力も使えないと踏んだからだ。
「大剣豪「宮本武蔵」が編み出した脱力からの超加速。そりゃあ、そんな規格外の力を自由自在に使えれば傲慢にもなるか。風よ、我を舞い上げよ」
自身の身体を空へと舞い上がらせる。
リスクはあるが落下してくるサラへと水着を手渡すためだ。つうか、あいつ服着ろよ!
空中に髪が舞い上がって丸見えなんだよ。全てがな!
「へー、追いかけて来るんだ。それは少し悪手に見えるけどね。金色狐ちゃん。トリプル・アクセル」
「近寄んな全裸変態!……くそ、やり場にめちゃくちゃ困る戦い方しやがってよう。こんな時に昔の力があれば――――」
聖剣を風の魔法で常時浮かせている状態だが、いつまでも持つか分からない。
異世界で得た全ての経験や力は使える、使えるが……義妹いわく。
(お兄。チンポ失くなったから私以下の筋力になっちゃったね。だから筋力最弱のお兄は今夜も私のぬいぐるみさんだよ。お兄♡)
俺は女の子にして握力ゴリラの舞香よりも力が弱いらしい。
両腕プルプルしてきた。
聖剣ってこんなに重かったか?
「おやおや考えごと? そんな暇あるのかな? 襲っちゃうよ~!」
サラが先ほどよりも速度を上げて急接近してくる。
「持っていた刀に自分の足を乗せた? 意味が分からん。属性でいったい何ができるっていうんだ?」
「擬似的な足場にできるんだよ。でもよく分かったね。あたしの魔法と発動条件の1つに足場が必要なんて、すごいよ君、ご褒美に服破り斬り~!」
「それはっ!? どこから日本刀を取り出しやがった?」
聖剣が纏う風圧と日本刀が纏う斬撃は衝撃波となり、周囲へと波及する。
俺のメイド服は破れない。
……が。
「やっぱり硬いね。それだけ硬いと脱がして屈服させた時の顔は……おわぁ!?」
サラだけ後方へと吹き飛ばされた。
「流石は現代社会人戦いの先の先までは考えて行動してないだろう?……あんた」
攻撃衝突が互角で相殺されたのなら、即座に次の一手を打つ。
戦闘ではそれが常識だろう。
「痛たた…なにするのよ~!」
「いや、だから。なにもされたくなかったら、さっさと有栖川に謝れ……」
日本のトップアイドルが、自身の鼠径部を開脚させていた。
そして、俺は見てしまった……いや、魅入ってしまったんだ。
「お! 隙あり! なに、ボーッとしてんの? 戦い中って君が言ってたことだよね? 金色狐ちゃん~! とうっ!」
「へ? い、いや、ま、待て! そんないきなり動いたらバランス崩……おわぁ!?」
「はい、捕まえ……きゃあ!?」
「ぐえっ!」
無防備だった俺へとサラがいきなり突っ込んできた。あちらの方が年上のため、体格はサラの方があり組み合った状態で体勢を崩してしまった。
そう。俺はサラの内股に顔を挟まれ拘束されてしまった。
マ、マズい。
このまま拘束でもされたらなにされるか予想もつかない。こうなったら身体を激しく揺すって暴れるしかない。
「んんんんっ!!」
「フフフ、や~っとつ~かまえた! さてさて、早速、その仮面の下の可愛い姿を見せ……て」
内股で顔を抑え込まれているから周りの状況が分からん。とりあえず少し顔を上下させたら、内股の抑える力が少し緩んだ?
よし、このままもっと激しく顔を揺すってやる。
「ま、待って、お面……あた……お面……擦れてる……待って……落ち着いて……ま……だめ……」
サラの奴が何か言っているが、俺の両耳はサラの内股で塞がれているので全く聞こえない。
俺の考えたこの脱出方法。
まさか当たっているのか?
「あ、本気で止めて……あ、た……駄目……駄目……あたしそこは……妹も見ているから……本当に待って……ん」
妹という単語はなんとなく聞こえた。
いいぞ。この脱出方法はかなり彼女に効いているみたいだ。本気で続けてやる。
「お……そ……こ……駄目だってば。は、離れて……これ以上……あたしの……こ……駄目えぇぇ」
「おわぁ!? 何しやがる!?」
内股の拘束が解かれたと思えば、遠くの方へと突き飛ばされた。
「はぁ……はぁ……何しやがるはこっちの台詞だよ……はぁ……はぁ……仮面の硬い所が全部当たってるの……はぁ……はぁ……なんて攻撃してくれてんのよ。君」
疲れきっている? 何でだ?
こういう時はチャンスだ。相手の身体や表情を観察して、勝ち筋を見つけるチャンス。
「……やっぱり髪の毛は身体全体を覆って体のボディーラインを隠している? さっきから行われている日本刀の出し入れができる理由が分かるかもしれないな」
「……はぁ……はぁ……身体中ジンジンする。脚が小鹿みたいにプルプル震えて立てなくなってるし。あたしに何をしたのよ、君」
さっきまでの強者の姿はどこへやら。
俺の目の前には、全身を震わせた有栖川サラが脚を広げて座り込んでいた。
「身体中がジンジン?……まさかお前は」
「……な、何?」
「身体が超過敏体質だったりするのか?」
「!……そ、そ、そんなわけないじゃない。あたしはアルカナ事務所を背負うトップアイドルの1人。そんな弱点あるわけないじゃない。オホホホ」
うわぁ、こいつすごい分かりやすいぞ。
妹の有栖川と同じで、嘘下手くそなタイプか。
「風よ、彼の者の性質を見極めよ――――」
全てを見通せる千里眼を使えばあれだが。そうすると有栖川サラの有栖川サラが丸見えになってしまうので、あえて今回は使わない。
セクハラになるかな。
有栖川サラの能力。
『身体超過敏』
『髪細胞日本刀化』
『速度倍速』
なんとも見たこともない能力ばかりだが、サラの今の姿を見て納得はいった。
最初に会った時に水着だったのは俺の気配を完璧に察知するため。あえて裸になったのは身体のどんな部位から来る攻撃もすぐに察知して避けられるようにするためか。
「そんで、後は能力の組み合わせだろう? その長い髪の毛は、見た目を派手にするためのブラフで、絶世の美女の身体を見た相手を、対峙した最初で油断させて、速攻で仕留めるための色仕掛けの罠か」
「…………金色狐ちゃんが何を言っているか分からないね」
最初の不自然な間はなんなんだ。
答えを言っているようなもんだろうに。
「まぁ、俺もTSしてなかったら確実に引っ掛かってただろうが……今の俺は女の子なんだよ! だからさっさと教えろ! 「性転換の薬」の情報を、それとちゃんと謝りやがれ、有栖川になぁ!――――黄金の風はここから始まる。勝利の剣は暴風を生まん」
相手は全裸でも日本トップの戦闘力を誇る有栖川サラ。油断はしない、これ以上の戦闘は長引かせてはいけないと俺の本能が告げている。
だから、この一撃で全て解決させる。
「…………雰囲気が変わった? すごいね。あたしに、これ以上の大技を出させないためにここぞとばかりに攻め上げる。それで正解―――〖花鳥風月・
案の定。
こちらが躊躇なく大技を放つ準備をし始めると、さっきまで隠していたであろう本当の実力をさらけ出してきやがった。
「そんなさらけ出し、恥ずかしげもなく出し切ってる全裸姿だけにしとけよ! 有栖川の変態姉!! さっさと有栖川に謝りやがれぇぇぇ!! 風よ、暴風と化せ!!!」
俺に向かって銀色の日本刀が大量に向かって来る。
そんな小規模な攻撃に対して、俺は
「…………に、逃げるんだよ。サラ……ボクたちはアンタッチャブルな子にちょっかいをかけちゃったんだよ」
「サ、サラお姉さまお逃げ下さい! サラお姉さまでは氷室さんには勝てません!」
少し離れた所で有栖川たちが叫んでいる。
実の姉にあんな事をされたのに心配するなんてな。有栖川は本当にいい奴だ。
「この一撃は清浄の一撃なり、たらふく喰らって反省しろ。駄目姉さんよう」
「アハハハ、そうだね。反省させてもらわなくちゃね。妹のお友達に手を出して、勧誘したらボコボコにヤられるって、それとアリスの事も今度から大切にしないと……謝るよ、ちゃんとね」
「ふん、今さら気がついても遅いつうの。黄金の風よ。曇天の雲を割き、晴れ晴れとした空を仰げ! 黄金風剣―――〖エクスカリバー・テンペスト〗」
有栖川サラ、銀色の日本刀、曇天の空、俺が放った黄金の風は全てを吹き飛ばし、狐の嫁入りを晴らす、快晴の空を作り出した。
「…………勝った、楽勝だったな」
「氷室さん! 逃げて下さい! 狙われてますわ!」
「そ、そうだよ! に、逃げるんだよ! 囲まれているんだよ!」
苦戦したなんて口には出さない。今は勝利の余韻《よいん》に浸りたいから。
有栖川たちが俺の勝利を祝ってくれてるのか? 嬉しいな。
「なんたって俺は異世界帰りの勇……」
「うんうん。お兄は私と血が繋がらないお兄だよね。血の繋がらない義兄妹はなんと結婚できるんだよ。お兄」
ストンッ!と首元に微小な衝撃が走ると俺の意識は遠退《とおの》いていく。
「チクッとなんだ……爪楊枝? いや、回復針か? だ……れが?……者……な……だ?……ま、舞香ちゃ……ん?」
「お帰りお兄。お仕置き……ううん。教育の時間だよ。お兄、お家に帰ろうね。フフフ……それとお兄にちょっかいかけた女の子。有栖川サラちゃんもお持ち帰りしないと。私もお友達にならないといけないもん」
有栖川サラとの戦いは勝った。
そして、俺は義妹のとある策略に完全敗北し、どす黒い心を持った
◇
「……ん? ここは?」
「おやおや、おはようございます。浮気者の義理のお兄。さぁ、尋問の時間だよ。この全裸ちゃんとの逢い引きについて、洗いざらい話してね。お兄ちゃん」
「んんんんんんんんんん!!!!」
「お、お前……何してんの?」
ミニスカートポリスのコスプレを着た義妹様と囚人服を着た有栖川サラが人には言えないような遊びに興じていた。