異世界帰りのTS美少女勇者、人気ダンジョン配信者に成り上がりながら、「性転換の薬」を追い求める 作:冰藍雷夏
授業合間の休憩時間、俺はトイレに向かっていた。
この女体化した身体にもすっかり慣れたため、以前のような舞香の前でするようなことも無くなった。
「なんだかんだと最初は過保護だったが、だんだんと俺に対して甘くなるんだよな。舞香ちゃんは、攻められるとドMになるしな」
最近はユリカママにお仕置きされていて大人しくなったし、「お尻がお尻……に付けられてるのぉ」とか言うわけの分からないことは言うが、舞香の心も体も健全化しつつあるのだろう。
「後は「性転換の薬」探しだよな~! 高位ダンジョンに入るには配信者としての登録者が万単位か高位の探索者資格を有してないと駄目か。世知辛過ぎだろう」
世の中は厳しい。
舞香のように罪を犯しまくれば、それなりの因果応報で返って来る。
しかし最近のあいつは常時蕩けきった顔になっているが、ユリカママにどんなお仕置きされたんだろうな。
「まぁ、その分俺は単独行動できるからいいんだけどな……ん?」
「わ、と、と、と……め、目の前が上手く見、見えませぬ~!」
目の前に紙の束を抱えたクラスメイト?
たしか萌なんとかさんだったか。
「わ、わぁ~! こ、このままでは、ズッコケてしまいま~、キャ、キャアアアア~!!!」
すごい棒読みだ。
それにわざらしく紙の束を床にぶちまけ……
「危ない!」
「ふぇ!?」
マジで転けたので助けた。
怪我してないよな?
「大丈夫か?」
「……え? え、えぇ、大丈夫で……しゅ!?」
「大丈夫でしゅ?」
「あ、あれ? なんでわたしはドキドキして? え? いきなりなんで? わざとなのに?」
……よく分からない反応をされた。どうやら転けた時に身体のどこかを痛めて脳にダメージでも負ったんだろう。
この子は舞香の側近だしな。
おかしな話じゃない。
「念のため保健室に連れて行ってやるよ」
「え?え? でも今日最後の授業がありましゅ!」
「そんなの別にいいじゃねえか。今は萌の体調の方が心配なんだ」
「も、も、萌って、いきなり呼び捨て!? ワ、ワイルド過ぎません〜?」
◇
一方教室では――――
「はぁ、氷室さんは昔から女の子たらしですの?」
「はい、ユウ様は無自覚にモテましたね。性格が真っ直ぐな方なので、初対面の女性なんてイチコロでした。それで舞香お嬢様に何人の方が男好きから女好きにジョブチェンジされたか計り知れません」
「好みが変わりましたの? わたくしはダージリンが好きですわ」
「……いえ、紅茶の話をしていたわけじゃないのですよ。有栖川様」
◇
保健室まで萌……本名「椎名萌」を連れてきた。
「へ~! 初等部から舞香お嬢様とずっと友達なのか? ありがとうな~!」
「い、いえ、こちらこそ保健室まで運んでいただきありがとうございます」
「おう。そういえば、ポケットにチョコレート持ってたんだ。それとペットボトルのホット紅茶だぞ。飲むと落ち着くぞ。ほれ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます? あ、あのどこから取り出したんですか? それにここは保健室ですが」
異世界から持ち帰った収納魔道袋からなんて教えても信じないだろうな。
義妹に至ってはチンコあるかないか確認するまで俺の言うことなんて一切信用してなかったしな。
なんで女体化してんのに、未だに俺にチンコ付いてると錯覚してんだあいつはよう。
「ん~? メイドマジックかな。それよりもチョコレート食おうぜ。先生にはちゃんと許可貰ってるからさ」
「い、いつの間に……いただきます」
「おう! いただきます」
保健の先生もチョコレートで買収したからな。高級お菓子メーカーゴビュバの力は偉大なり、だ。
「お、美味しい……です」
「だな」
……愛花ちゃんの情報によると、舞香の側近の1人で裏工作とか得意な女の子とか言ってたけど。
つうかこの子。この間の舞香と戦ったテニスで審判してた子だよな。
あの時は暗くて嫌な子に見えたけど、普通に良い子じゃないか。
「……あ、あの」
「ん? どうした萌っち」
「も、萌っち? わたしはえっちではありません」
「ん? いや、それは知ってるけど。このアダ名嫌だったか? 嫌なら変えるぜ。萌っち」
「い、嫌ではありませんが。卑猥には聞こえるかもしれません。も、萌と呼び捨てでかまわない…です」
「おう。これからよろしく萌」
「つっ!! よ、よろしくお願いしましゅ」
よく語尾を噛む女の子だな~!
可愛いじゃん。
その後は萌の体調が良くなるまで他愛のない話で盛り上がっていた。
「え? それじゃあ、別に氷室さんは舞香様と敵対する気はないんですか? あれ? 舞香様と言っていることが違うような。あれ?」
「ん〜? 舞香ちゃ…お嬢様とは仲良しだぞ。今の俺と萌みたいにな。ほれ、お手手を繋いで仲良し同士みたいな。な?」
「は、はい。わたしと氷室さんは仲良し同士です~!……ではなくて!」
「おう、仲良しになれたし放課後どっか遊びに行くか? 軽くダンジョンに潜っても良いしな」
「ダ、ダンジョン!? わたしと氷室さんがですか?」
「おう」
よし、これで4人パーティー限定のダンジョンに入る権利を得た。
放課後は舞香の監視がないゴールデンタイム。
舞香の目をかいくぐり、「性転換の薬」の情報が眠っているとされる浅草ダンジョンに潜れるぞ。