異世界帰りのTS美少女勇者、人気ダンジョン配信者に成り上がりながら、「性転換の薬」を追い求める 作:冰藍雷夏
ここは日本屈指のお嬢様学校『
そして俺は今、TSアルトリア式髪型+ヴィクトリアンメイド服で、舞香お嬢様に付き添って校門の前を歩いている。
どうしてこうなった?
はい、全ては義妹の暗躍です。ありがとうございます。
俺は超絶美少女なこの素顔を晒さないように、認識誤認の掛かった眼鏡を着用。
主人よりも目立つ可愛い過ぎるメイドなど居ては駄目とかなんとかで、強制的に掛けさせられた。
それを見て口元をニマニマさせて嬉しそうにしやがって、許さないからな。こんなコスプレさせやがって。
………だが今の俺は逆らえない。俺にとっては舞香が“ご主人様”だ。それに義妹の舞香ちゃんはこの学校のスターの1人なんだからな――――
「ご機嫌よう、氷室様。」
「おはようございます、氷室さん」
「氷室様、今日もお美しいです!」
次々と取り巻きの皆さんに挨拶される自慢の義妹。
大和撫子という言葉を体現したような美しい所作と姿。艶やかな黒髪と人形のような整った顔立ちで皆を魅了する。
「おはようございます、皆さん。今日も晴れ晴れとした、良いお天気ですね」
「「「きゃあああ! 素敵ですわ〜! 氷室舞香様〜!」」」
いや、誰だこいつ? どんなお嬢様キャラだよ。お前、家だと大概《たいがい》だらしなく自堕落な生活してるだろう。
なんなら普段の服装なんて、ラフなTシャツに短パンで、へそを出しながらソファーでいつも寝てやがるじゃねえか。
「フフフ、これから楽しい学校生活になりそうですね。おに……
「……そうですね、
くそぉ、お優雅な立ち振る舞いしやがって、「私に逆らったら容赦しないからね、お兄」って言われているもんじゃねえか。
ダンジョン配信の後、あんなことにならなければ俺はこんな状況にならずに済んだのによう。
そう、あれはゴブリンたちを倒して、助けた女の子たちから逃げるようにしてマンションに帰って来た時のこと――――
▽
▽
▽
「あ、あの! 助けていただきありがとうございました……ですわ!」
「ありがとうね〜! 本当にありがとう〜!」
「……借りはいつか出世して返す。ありがとう」
助けた女の子たちに、ハグをされながらお礼を言された。
「あ、いや、無事で良かったです。つうか、そろそろ離れてくれません? かれこれ10分以上この状態なんで」
俺は男だ!
こんなに可愛い女の子たちにずっと抱きつかれていては立つ可能性が……もうないな。
『黄金髪の狐仮面? 誰? 誰なの? 早速、切り抜き動画つくらなきゃ! 情報集めなきゃ!』
『【速報】推しアイドルたちに救世主キター!! いや、助けてくれて本当にありがとう、
『……つうか、俺は分かる。雰囲気で確信できる。あの仮面の下……絶対に超絶美少女だわ。ゴブリンたちも興奮するくらいの超絶美少女だ』
ゴブリン殲滅後の配信画面は大盛り上がりしていた。同接数は……5000人以上!?
な、なんでこんなに集まってんだ?
「す、すごいよ! 新人アイドルの配信なのにどんどん視聴者さんが増えてる」
「……バブル来た? ウチらの時代来た?」
助けたアイドルさんたちは、俺にお礼を言った後、放心状態で天井を見つめて自分たちの配信中継を見ているな。つうか意識飛びかかってないか? あの娘たち。
『素顔見たいね……どこの事務所所属なんだろう? うちに欲しいかな』
『へ? 大手アイドル事務所『アルカナ』のサキちゃん? 本物!?』
『サキ様? サキ様ご本人降臨!?』
『サキには悪いけど、“狐仮面ちゃん”はこっちがもらうよ。有識者さんたち、情報求むよ』
なんか、大物配信者たちまでコメント欄に現れ始めたな。
マズい、大事になってきたし、そろそろ退散しないとな。
「えっと、それじゃあ俺はこの辺で……さようなら!」
美少女たちの雁字搦めの抱擁からなんとか抜け出し、俺はここからの脱出を図る。
つうかなんでこの娘たち、こんなに力が強いのよ? 全員の隙ができるまで全然抜け出せなかったんだが。
「ふわぁっ! す、素晴らしい抱き心地が失われましたわ。い、いえ、それよりも、お待ち下さい! わたくしたちを救っていただいた貴女のお名前だけでも教えて下さいまし」
「え?……えっと、金色狐の……ユウです……あっ」
あ、やべえ、つい下の名前をそのまま言っちまった。逃げないと。
「さ、さようなら〜!」
「お、お待ち下さいー! お礼を! 貴女様にお礼をさせて下さいまし! 金色狐のユウ様〜!」
生配信中に俺の名前を大声で言うんじゃない。
世間に知れ渡るだろうが、お嬢様系アイドルさんよう。
そんなわけで、逃げるように自宅へと帰還した俺なのだが、話はまだ終わっていなかった。
義妹との決闘である。
『エクスカリバー!!! パシャッ!パシャッ!――――』
「やだ……いーやーだ」
「消せよ! 消せって、なんでスカートが捲れ上がった下アングルで撮影してんだ、舞香ちゃん」
「やだやだ、これは私の家宝にする。一生のネタに使えるもん。新鮮なネタだもん。今晩にでも使うもん」
「何する気だ!? いいから早く消せ!」
「いーや、やだやだ」
現在、リビングのソファーで兄妹喧嘩中。
こいつ、さっきの配信で俺のハレンチな姿を写真と動画で記録してやがった。
「ふ、くっきりとお兄のここが見える動画を消すなんて不作法というもの。最大限に有効活用させてもらうよ、お兄」
「お前なぁ、つうか力強くね? 舞香ちゃん。こんなにパワフルだったか?」
「それはお兄が雑魚過ぎるだけです。それよりも選んで、今後のお兄の明るい未来の末路」
①義妹の私が記入済みの婚姻届けにサインする。
②今後の人生で、私の許可なく一生パンツが履けない。
③兄を捨てて、私の専属メイド“ユウちゃん”として、四六時中一緒にいる。
舞香が俺に渡してきたのは、どれもお馬鹿なことが書かれた3枚の紙だった。
「舞香ちゃん、何これ?」
「んー? お兄が選べる未来だよ。好きな未来を選んでね。私のオススメは勿論①。どうぞどうぞ、どれか1つ選び取れば、お兄のこのエロ動画は消してあげる」
「どうぞどうぞ、じゃねえよ。それにエロ動画でもねえ、何考えてんだ? お前」
「ん〜? いいの? お兄、私に逆らって? 私に逆らったらどうなっちゃうと思うの? お兄……ふぁ、お兄良い匂い、最高の抱き心地。高性能〜!」
「や、止めろ! 俺はお前のぬいぐるみじゃない。抱き締めるな。③だ、③! それしか俺にまともな未来はねえ」
「む?……なんたる言い方。それじゃあ、メイド服着ている時はノーパンね。これが条件、これだけは譲れないからね、お兄」
なんてとんでもないことを言われたのが三日前だった。
▽
▽
▽
「というわけで、皆さん。今日から編入されます、氷室舞香さんの遠い遠いご親戚の氷室ユウさんです。ユウさん、皆さんにご挨拶を」
「はい! 皆さま。初めまして、俺は氷室ユウと申します。氷室舞香お嬢様の専属メイドをしております」
気品に満ちた女の子しかいねえ。
なんで教室で俺だけメイド服なんだよ。
舞香は一番窓際の席で、机に顔を突っ伏して大爆笑してんじゃねえよ。見えてんだよ!
「お、れ?……変わった一人称ですね」
「ワ、ワイルドなお方ですわ」
「……で、でも、一つ一つの所作はお美しい方ですの」
おっと……やらかしたか? 俺。
「はいはい、お喋りはその辺にしましょうね。一人称も大切な個性ですよ。ユウさん、何か分からないことがあったら委員長の氷室さんに聞いて下さいね。席も彼女の隣にしてあります」
絶対に嫌だ。授業中、いたずらされる未来しか見えないじゃねえか!
「は、はい、ありがとうございます。先生、皆様、改めまして、俺をよろしくお願いいたします」
「「「は〜い」」」
クラスの皆、良い子そうだな。1人を除いてだが。
バンッ!バンッ!バンッ!
「プフッ!……お兄。一人称、私やわたくしじゃなくて俺……プフッ!……フグフゥ!!」
あのアホ義妹。俺の恥体を堪能して、机を叩きまくってやがる。絶対に許せん。
「? どうしました? 氷室さん。大丈夫ですの?」
「へ? は、はい。ご心配頂きありがとうございます、有栖川さん」
◇
初ダンジョン配信の終わり。
義妹による強制専属メイド化。
突然のお嬢様学校への編入と、怒涛の展開が終わり、やっとゆっくりできるかと思ったのも束の間―――
「はい! 今日の3時間目は体育です。
「「「はいっ! 氷室委員長」」」
義妹の悪魔の声が教室内に響き渡り。
教室内の同級生たちは、俺の前で制服を脱ぎ始めやがった。
(おいおいおいおいおいおいおいおい! 俺は今、ノーパンなんだぞ! どうしてくれんだ! このアホ義妹はあぁぁ!!)
(良いじゃん別に。お兄は女の子なんだからね?)
(いや、なんで疑問形なんだよ! つうか、どさくさ紛れて尻触んな。スースーするわ!)
最大の味方であるはずの義妹が、最大の敵として、次なる試練という名の爆弾を俺に放り込んできやがった。
随分と楽しそうな笑みを浮かべながら……