異世界帰りのTS美少女勇者、人気ダンジョン配信者に成り上がりながら、「性転換の薬」を追い求める 作:冰藍雷夏
〈なつめ視点〉
最近の配信エンタメ業界は、どこぞのだよだよ社長がやらかしてくれたせいで大炎上していた。
ライバル会社の不祥事。
普通なら喜ぶところだけど、そうもいかなかった。
アルカナに所属する人気配信者やVTuberたちとうちに所属する配信者たちは仲がとても良く、「箱」を越えてのコラボを毎日のように配信して数字を稼いでいた。
それがうちの目玉でもあったからね。
それを主軸に配信戦略を考えてやっていたら、あのだよだよおばさんがやらかした。
先走ったんだ。
あのおばさんが他の大手アイドル事務所よりも先んじてあの子にコンタクトを取ったんだ。
それで無理やり勧誘したんでしょう。
誘拐疑惑や所属しているアイドル配信者有栖川サラの謹慎なんてやって株価も下がってさ。
最初はざまぁ見ろ、アルカナ事務所はもう終わりだなんて配信者や会社の周りは言っていたけど。影響は些細なことだった。
有栖川サラが「金色狐の仮面」と何回もコラボ配信をし始めるまではね。
流星のように突然現れた金色狐の仮面ちゃん。
ビジュアル、キャラクター性、数値稼ぎ。
ボクの求める理想的な配信者キャラだった。
欲しいと思ったね。
連日の切り抜き動画は有栖川サラと金色狐の仮面の関連動画で埋め尽くされて。
そのせいで数日前にうちの事務所からデビューさせた新人たちの初動画は話題も万バズもせずに沈下しちゃったもの。
いったいあの子たちにどれだけ投資したと思ってるのさ。数億円だよ、数億円。
おかげでうちの事務所は大赤字。
スタジオを借りての配信にはお金がすごくかかるんだ。わざわざボク監修のグッズまで大量に作ったのに、このままじゃ売れずにゴミになる。
そうすれば全ての責任はボクに来る、甘いお汁が吸える副社長の座から下ろされちゃうじゃないか。
これもそれも全ては金色狐の仮面のせい、責任を取ってもらわないとね。
たった数回のお金も全然かけない配信で有名になるなんて許せないよ。君のせいでうちの事務所は火の車なんだ。全ては君のせいでね。
……それと気がついちゃったよボク。
この子、ボクが親友の振りをしながらずっと狙っていた異性の子だったなんてね。ねぇ、ボクのユウちゃん。
◇
〈ユウ視点〉
「風よ、振りかざせ!」
「フフフ、ユウちゃん。ボクと契約して、ボクのための人気配信者になってよ。斧斥力――――〖アックスアウト〗」
なつめの振り下げ。
剣筋も何もないただの振り下ろしだった。
ただ力任せに力んだ攻撃が俺へと襲いかかってくる。
「……遅いわ!」
「きゃああ!!? 痛い! な、何するのユウちゃん?」
「……他者を巻き込んで戦いを始めたんなら、責任と誇りをもった戦い方をしろ! そんなふぬけた一撃を俺に食らわせるなよ、なつめ!」
「ユ、ユウちゃん? ど、どうしたの? 歴戦の猛者みたいな台詞を吐いちゃってさ。らしくないよ。君、本当にボクの知ってるユウちゃんなの?」
「…………そうだ」
異質な奴には最大の警戒をしながら戦う。
そう、目の前の
口調も異世界時代に戻ってしまうってもんだろう。
そう、この対峙はまるで別世界やダンジョン内のモンスターみたいな不気味な何かと戦うような感覚。
……周りに人は居なかった。
認識阻害の魔法でも使っているんだろうか?
「お前、本当になつめか?」
「当たり前でしょう。ユウちゃんはボクのユウちゃんになるんだよ。フフフ」
「話が通じねえじゃねえか! しっかりしろ! いつもの変人に戻れなつめ!」
「ユウちゃんはボクのだよ」
駄目だ。
何かに操られている感じしか……まさか暗黒義妹に?
俺はチラッと舞香の方を見る。
「お、お、お、お、お、お兄……そこ駄目え」
短めなスカートを上から抑えてモゾモゾ両手を動かしている。
「なにやってんだあいつ。とうとうおかしく……なってんのはいつもの暗黒義妹だが。あんな状態でお得意の暗躍と悪戯はできないよな」
「ユウちゃん~! なにを余所見しているのさ。そんなじゃボクには勝てな…」
「風よ、彼の者を吹き飛ばせ」
「へ? キャアアアアアアア!!!?」
なつめを数十メートル先の駐車場まで吹き飛ばした。正気を保てない状態のなつめと戦って、もしも傷つけるようなことでもあれば百合家の関係者の逆鱗に触れるのも、面倒事が発生しそうだし。
そもそもなつめが弱すぎて勝負にすらならない。
それよりも俺はオットセイ化した義妹の方がそろそろ心配になってきたので、近づいていく。
「お、おい。舞香ちゃん、大丈夫か? 顔が蕩けてるぞ」
「お、お、お、お兄~! これ取って!!」
舞香がスカートを指差して必死に気持ち良さそうな顔で訴えかけてくる。
「なんて?」
「だから~! ママにセッティングされたお腹の紋様とク………」
「なんて?」
「ク………ク……」
クがどうしたんだろうか? なんでそこで押し黙る。
「クマさんか?」
「違うぅうぅ、お、お、お、お兄ちゃんなら、お兄が私のお兄ちゃんなら察して助けてよぉぉ、お、お、お、お兄! ここのを取って!」
「お、おい! 止めろ! 俺の右手を掴んでどこに突っ込ませる気だ?」
「こ、こ、こ、ここにあるの! お兄……あっ!」
必死の舞香の力は強かった。
俺の右手を掴むなり、舞香のスカートの中……いやパンツの中へと俺の手を突っ込ませ……何かを掴ませた?
「……なんだこれ? くっ付いてるのか?」
「くっ付いてるの!」
「取ればいいのか?」
「できれば優しく、抱き締めながら」
「分かった。なるべく無理やり取るわ」
「ここにきてのお兄の鬼畜お兄化!?」
いや、だってこんな舞香見るの初めてなんだもんよ。悪戯したくもなるというもの。
「それと紋様って……安い魔道具で施された束縛魔法じゃねえか」
「それも全部解除して!」
「……半分残しとくわ。それとこの紋様に上書きして、舞香ちゃんが俺へと危害を加えられない術式に組み換えてやるよ。風よ、上書きと機能の半数を奪え!」
「待って、待って、待って! それじゃあ、今後はお兄に私が殆んど悪戯できないってこと?」
「そうだが?」
「なんでよ! お、お、お、おんぅん!? お、お、お、お兄のバカアアアアアアンァ」
うるさいので、
舞香の鼠径部辺りに付いていた何かを無理やり取って叫ばせた。
そして左手には舞香に施されていた束縛魔法の術式を半分奪った力の根元を風の魔法で封じ込めてある。
「……そうだ。この二つを」
「お、お、お、お兄の鬼畜変態お兄様〜!」
舞香は漏らした。嬉しそうな蕩けた顔で。
「おい! 俺のスカートの中に避難するな! そしてどさくさに紛れてスパッツを脱がせるな! 止めろ!」
「や、お兄! や~!」
「なんで幼児退行してんだよ!……!」
何か変態が来る?
「ユウちゃん~! なんでボクを吹き飛ばしたのかな〜?」
変態《なつめ》だった。
「やっと解放されたんだもん! お兄にこれからやり返すよ!」
俺のスカートの中にも変態《舞香》。
「ユウ様には、一歩も近づけさせません!」
「負けないよ! あの子はうちの事務所にもらう逸材だからね」
俺を守ろうとしてくれる愛花ちゃんと、たぶん変態と思われるリリア。
この場に取り抑えないといけない変態が3人居る。
「! 氷室さん! 右手のそれは束縛魔道具です! それは迫り来る変態に使って下さい。左手のよく分からない紋様の術式は愛花さんと戦っている子に! 舞香様は、オナトケと唱えれば身動きを封じ込めます!」
キタ! 萌っちの千里眼。
数秒先の未来でも見えたんだろうか。
「舞香ちゃん。オナトケ」
「んひぃ! おに……い!? んぉ!?」
これは何かの呪文だろうか。
舞香の動きがピタッと止まり両手をお股に集中させ始めた。
つうか俺のスカートの中で何してんだ?
「ユウちゃん~!」
「……動きが遅いぞ。お前はこれでも付けとけ、なつめ」
次に俺へと迫り抱きつこうとしてきたなつめの体当たりを避けてカウンターを喰らわせる。
なつめのスカートに手を突っ込み、さっき舞香から引き剥がした束縛魔道具を同じ場所にセットした。
「んぐぅぉ!?」
「なつめ?」
するとなつめはその場でうずくまりスカートの中に手を入れ始めた。何してんだなつめ?
「ふ、副社長。どうしたの?」
「あ! 待て! 貴様! 貴様はワタシと戦っている最中なのだぞ!」
「お、チャンスか? 紋様の風よ、彼の者に取付き、命令を可能にさせよ」
そしてなつめの異変に気がついたリリアは無防備な状態でなつめへと近づき始めたので、その隙を突いて風の魔法で彼女のお腹に束縛魔法術式を叩き込んだ。
「んぉ!? 何? この感覚!? まるで支配されるみたいな!? おんぉ!?」
「……だ、大丈夫か?……舞香ちゃんに付いていた束縛術式の半分の効果でこれかよ。どんだけ強い術式なんだ?」
リリアはその場でうずくまり、ハァハァ言いながらお腹の下を抑えて大人しくなった。
「「「んぉ!? お、お、お、お」」」
「とんでもない光景だ」
オットセイの物真似をする美少女たちが3人になってしまうというとんでもない事態になっちまった。