異世界帰りのTS美少女勇者、人気ダンジョン配信者に成り上がりながら、「性転換の薬」を追い求める 作:冰藍雷夏
眼下に桃源郷が広がっている。
「その下着素敵です」
「いえいえ、そちらのきめ細かい刺繍が入った柄も素敵ですわ」
制服を脱ぎ始め、下着姿の可愛らしい淑女たちが楽しい会話に花を咲かせている。
あーもう、目のやり場に困るんだよ。
……それにしても、この学校の女の子は皆可愛いって噂は本当だったんだな。
目の前の光景をまじまじと見れば分かる。あらゆる意味で育ちの良さを感じるもんな。
こんなの立つ……わけねんだよ。もう無いんだよ! こんちくしょう!
なんで、こんな状況になってんだ? 俺はただ異世界から帰ってきただけなのに、なんで女体化してお嬢様学校に通ってんのよ?
「やっぱり「性転換の薬」がいる。しかし、あるのかそんな薬。異世界でも幻の……」
「あらあらあら、優羽さんどうしたんですか? 早く着替えないと体育の授業に遅れてしまいますよ。早く脱ぎましょう、メイド服……ブフゥッ!」
「ブフゥッ! じゃねんだよ。舞香ちゃ…様。まったく、昔から俺を追い詰めるのに生き甲斐を感じやがって、この状況どうしてくれ……」
舞香の方を勢いよく振り向いた。
可愛らしいピンク色の下着姿で腹を抱えて笑っている……笑っているんだが。
なんかエッチだ。
「ん?……だから……プフゥ……早くノーパンを皆に……見せ……? お兄。なんで、私を見つめて固まってるの?」
「い、いや、舞香ちゃんの下着姿に興奮…いや、素敵な身体付きだと思っただけでございます。舞香お嬢様」
義妹のエチ、エッチな姿に興奮したなんて言うと、家に帰ったら何をされるか分からないのでメイド口調に切り替える。
これで、なんとか乗り越え……
「は、はぁ? な、何を言ってんの? お兄のスケ……こほんっ! 優羽さん。放課後、お家に帰ったら覚えておいて下さいね。お仕置きです」
舞香は恥ずかしそうに身体を捩らせると、俺から目を逸した。なんでやねん。俺が何したっていうんだよ。
「は!? ちょ、なんだよ。その理不尽! そんなのまかり通るわけ…な…い……」
ついつい声を荒げたのがよくなかった。クラスメイトたちの視線が一斉に俺たちに向けられていたんだ。
「優羽さん。体調でも悪いのでしょうか?」
「お腹でも痛めていらっしゃるのでしょうか? 心配です」
う~ん、流石はお嬢様学校、お優雅《ゆうが》な反応ですわ。皆が俺を心配そうに見てくる。
この学校の子達は本当に優しい子ばかりなんだろう。1人の腹黒義妹を除いて。
(馬鹿お兄……素を出し過ぎだし。自重しなよ)
(誰のせいだ、アホ。全てはお前のせいだろうが)
ひそひそと俺の耳元に話しかけてくる義妹。
舞香の奴、自分のどす黒い本性を学校内の関係者に知られるのはマズいと思ったんだろうな。
なんという腹黒行動。普段から俺への悪戯を模索してないで、クラスメイトの様に清く正しく生きろってんだ。
「あ、あの、氷室 優羽さん。お腹が痛いんですの? 宜しかったら、おトイレにお連れいたしますわ」
「「へ?」」
ついつい義妹とハモってしまった。
俺たちが小声で兄妹喧嘩をしている間に割って入ってきたクラスメイトか。
いったい誰だ?
「えっと……貴女は? 最近どこかで会ったことあります?」
銀髪をポニーテールに結んだ可愛らしい女の子だった。
つうか、この子。どこかで会ったことがあるような……ないような?
「はい? え、ええと。言っている意味がよく分かりませんが。お腹が痛いのでしたら。わたくし、下剤を常備しておりますので、お一つ差し上げますわ」
なんでお嬢様が下剤を常備してあるのか知らんが、これは、この舞香が支配する
「あ、痛、痛たたたた。本当になんだかお腹が痛くなってきました。舞香お嬢様、俺はトイレに行って来ますので、先に体育の授業に行っていただけますか?」
「は? おに…優羽さん。何を勝手なことを言っているんですか? それなら、私も一緒におトイレに付いて行きますよ」
「いえいえ、舞香お嬢様は現在下着姿のままです。そして俺は、もう我慢できない程の腹痛ですので、この方にトイレをご案内して頂きます」
「……あらあらあらあら、そうですか。それでは仕方ありませんね。有栖川さん、申し訳ありません。
「い、いえ、なんの問題もありませんわ。それでは、優羽さん。後程お仕置き……ではなくお会いしましょう。楽しみに待ってます」
「りょ、了解しました。舞香お嬢様」
にこやかな満面の笑顔をこっちに向けんな。恐怖しか感じんわ。
いや、それよりもだ。これで俺は……
人生で初めて義妹の悪戯を掻い潜ることができたんだ。
嬉しい。いつもはやられっぱなしの負けっぱなしだったからな。
「それでは、トイレに参りましょう。…えっと有栖川様」
「は、はいですわ!…あら? この手の形?……どこかで触ったことがあるような」
その嬉しさのあまり、俺はトイレに案内してくれるという女の子の手を取り、体操服袋を持って教室から脱出した。
「……フフフ、やっちゃったね。大切な妹の前で他の女の子とイチャイチャするなんて。私刑確定だよ、お兄」
「舞香~! 早く着替えなよ。さっさと外に行こう」
「あらあら、ごめんなさい。静さん。急ぎます」
◇
「勝った! ハハハ、ざまあ見ろ。恐ろしき腹黒義妹よ。いつも騙されて追い詰められる俺と思うなよ」
「お、お待ち下さいまし。わ、わたくし、運動はあまり得意ではありませんの。それに廊下は走ってはいけませんわ。氷室優羽さん」
俺は浮かれていた。有頂天だったんだ。
人生で初めて義妹に勝利し、
そのせいだろうか?
そのせいで俺の秘密が、彼女にバレてしまうことになるなんて思いもしなかった。
「よし、後はトイレで体操服に着替えて体育の授業に出るだけだ」
「お、お待ち下さい。学校のルールは守らなくてはいけません。廊下を走っちゃ駄目ですわ! 止まるのですわっ!」
「へ? ちょ、なんでそんなに力が強……うわぁ!?」
「ふわぁですわ!?」
手を握っていた女の子に、おもいっきり服を引っ張られた。その反動だろうか? 俺はその子と共に床へと転がってしまったんだ。
幸いお互いに受け身は取れたんだが。いきなり転んだせいでスカートは捲れ上がって、身体を密着させる形で床に倒れてしまった。
「痛たた……すみません。転んでしまって。えっと、有栖川さん、大丈夫ですか?……あれ? なんで目の前に黒のスパッツ?」
「…………ツルツルですわ。何も着けていませんの? どうしてですの? 最近のメイドさんは下着を履かないんですの?」
有栖川さんは、俺の鼠径部の辺りに顔を埋めていた。
そう。何も履いていなかった部分に。
「は、いや……これは……あの? え?」
「………氷室優羽さん。貴女、まさか痴女ですの?」
「ち、違う! つうか、まじまじと見るな! 恥ずかしい! 変態か!」
しかも触り始めやがって、興味津々じゃねえか。俺は男だ……い」女体化してたわ。
「まぁっ! 淑女がなんてお下品な言葉を使いますの! それよりも、まずは何故下着を履いていないかの説明を求めますわ! 変態はそちらですわ!」
「ぐっ! それは……その」
こいつ、赤面しながら、まじまじと俺のここを見ながら説明を求めるな。つうか、お前だってお下品な言葉を平気で使ってるじゃねえか。
「つうか、スカートから手を離せ、隠させろよ!」
「駄目ですわ! これは事件ですの! 事件の流れがハッキリするまでは、現場は荒らさずに、保管して検証をしなければなりませんの」
「ただ、お前が見たいだけだろう。いいから手を離せ、馬鹿力か?」
「それならば、早く、なぜ履いていなかったのかの質問に答えて下さいまし。離してあげるのはそれからですわ」
「くっ! こいつ……くぅぅ~」
この有栖川って奴、じつはムッツリさんか?
廊下にはまだ、俺たちしかいない。
お互いのスカートは捲れて丸見え状態だ。
もしも、こんな光景を第三者に見られでもしたら俺の人生は間違いなく終わる。ノーパンメイドとして、残りのお嬢様学校生活を強いられることになる。
そんなことになれば、俺は……俺は……
「あのな。有栖川…さん。じつは……」
俺は話した。義妹の本当の性格やら、知られるとめんどくさそうなこと以外のことを、俺は有栖川にちゃんと説明した。
「まぁ、お家の仕来たりで、下腹部に下着を着用してはいけませんの?」
「あ、あぁ、その通りだわ。そうそう」
嘘は言っていない……はず。俺にとってお家の……義妹の命令は絶対遵守なのだ。
「そうだったのですね。わたくしはてっきり、氷室優羽さんはノーパン好きの変態さんかと思っていましたわ」
「変態じゃねえわ。全然違うわ」
説明も終わり、やっとスカートから手を離してくれたわ。良かった、これで最悪のケースは免れたわ。
「……体育の授業中もノーパンでは、スースーしますわね」
「ん? あぁ、でも
下着なんて着けてたら、家で何されるか分からんからな。
つうかトイレ前で何やってんだ俺たち。
「それは仕方ないですわね……少しお待ちを」
「お、おい! なんでいきなりトイレに? さっき、腹痛なのは嘘だって教えたろう……行っちまった。そろそろ、体育の授業始まるぞ」
しかし、1分もしないうちに有栖川は戻って来た。なぜだか顔を赤くしながら。
「スパッツなら下着に含まれませんわ。どうぞ、先日のお礼も込めて差し上げますわ。今後は、スパッツを履いて学校生活をお過ごし下さいまし」
「お、マジで? スパッツって下着じゃないのか?」
「スポーツ用の衣服ですわ……たぶん。それよりも早くスパッツを履いてきて下さいまし。それと、貴女の体操服姿も早く見たいんですの」
「お、おう。了解した」
握り締めていた黒色のスパッツを有栖川から受け取った。少し生暖かかった。
そして、急かされるままに、トイレの個室に入って着替え始める。
「有栖川って、本当は良い奴なんだな。それにあいつってたぶん……ん?」
有栖川から受け取ったスパッツを履いた。やはり少し湿り気があるのは気のせいか?
つうか、このスパッツどこかで見たことあるスパッツなんだが。
「とか気にしている場合じゃないか。さっさと体育の授業行かねえと。急げ急げ」
メイド服を綺麗に畳み袋の中に入れ、体操服に着替え終えた。
そして、有栖川の元へと戻ると、彼女はスマホを凝視しながら青ざめた顔になっていた。
「ど、ど、どうしましょう。氷室優羽さん! 今日の体育の授業、テニスですの! ですのにわたくしは学校でお友達がいないボッチですの。地獄が確定してしまいましたわ」
「お、おう。それは……ドンマイ」
有栖川はどうやら学校ではボッチらしい。
「……! なら俺とペアになってくれよ、有栖川。俺もこの学校に無理やり編入させられてボッチだしな」
「へ? ボッチ仲間ですの?」
このまま義妹の元に戻れば、間違いなく体育の授業中に悪戯《いたずら》されるに決まってるからな。そうはいかんぞ舞香ちゃんよ。フハハハ!
「あぁ、だからよろしく。有栖川」
「は、はい! よろしくお願いしますわ! 氷室優羽さん!」
これがいけなかった。
このアホな俺の決断が、義妹の逆鱗に触れるとは、この時の俺は予想だにしていなかったんだ。
◇
『それでは、これより。有栖川、氷室優羽ペアと、氷室舞香、静ペアの試合を始めます』
兄妹対決になった。
「……どうしてこうなった?」
「フフフ、覚悟して下さいね。おに…いえ、優羽さん。ノーパンの貴女を蹂躙してあげます」
俺を社会的に殺る気MAXの義妹が不気味に微笑んでやがる。
だが、舞香は知らなかった。
俺はノーパンじゃない、しっかりと履いている。
もはや動き回れるんだ。義妹からの縛りもなくな。
「ふっ! 今日の試合、俺が勝ってやるよ。舞香お嬢様」
「…………お兄、本気? そう、なら容赦しないよ。羞恥心で悶えさせながら遊んであげる。覚悟」
『試合開始っ!』
今日2度目の兄妹対決がこれから始まった。
………それにしても今履いてるスパッツ。なんでこんなに吸い付くんだ? 誰か俺が履く前に履いてたんだろうか?