異世界帰りのTS美少女勇者、人気ダンジョン配信者に成り上がりながら、「性転換の薬」を追い求める 作:冰藍雷夏
氷室家の屋敷の一室。
窓際から朝の陽射しが俺の顔を照りつける。
ベッドの上には金髪碧眼の美少女(俺)が黒色の綺麗な下着を着けていた(愚義妹の完全趣味)。ただ下半身は有栖川が、またプレゼントしてくれたスパッツだ。どこから持ってきたんだろうな?
「…………あぁ、そうか。昨日の夜は暑かったから、パジャマ脱いじゃったんだよね」
ボーッと鏡を見つめて不意に一言。
「可愛い女の子……
自画自賛も良いところだ。いったい俺は起きたばかりの脳みそで何を考えてんだか。
「ふにぁ……氷室しゃんはわたくしのお友達でしゅわ」
そして、すぐ隣には同じく下着姿の有栖川が、俺の方へと身体を寄せてきた。
「情熱的な赤色の下着か。有栖川って、性格に反して派手な下着着けてんだな」
女の子の下着姿は義妹で見慣れている。
毎夜毎夜、風呂上がりに身体にバスタオルを巻いた状態で迫ってくるからな。
小さい頃は反応して仕方なかったが。
中学生の頃になると慣れるもので、義妹の裸体にも反応しなくな……るわけではないか。
「ドキッとはするわ…
「ふにゃ~! 眠いですわ」
有栖川の柔らかそうな頬っぺたを突っつく、起きない。
「朝の5時か。そりゃあ、まだ眠いよな」
俺のいつも起きる時間は早い。
これでもなるべく規則正しい生活を心得ているんだ。毎日のように夜更かし、身体の構成が数割りジャンクフードでできている義妹を見習っての行動。
「……まだ寝かせとくか。それよりも、早く起きたし朝のシャワーでも浴びようかな」
昨夜は「学校でできた初めてのお友達と、同じベッドで寝たいですわ」とか言うから俺は壁を背にして寝たんだが、起きたら向かい合ってたわ。
ガチャッ!
そしてベッドから起き上がると同時に開く俺の部屋の扉。
なんだこんな朝早く不法侵入でも入って来たのか? 外の警備はいったい……
「お兄、ただいま。私が居なくて寂しかっ……たでしょ……お!?」
「ま、舞香ちゃん?……お帰り」
ドレス姿の舞香ちゃんだった。
どこぞでパーティーピーポーしてきたんだろうか? 手にはお高そうなお菓子が入った袋が握られていた。
◇
そして今に至るんだが。
「お兄。なに、編入初日でナンパした女の子を連れ込んで、ベッドでよろしくやってんの?」
「よろしくやってねえよ。今の俺の姿を見てみろ。
どこからどう見ても超絶美少女だぞ。舞香ちゃん」
一瞬、鏡をチラッと見てから舞香の方を向いてポーズを取る。これで許してくれないだろうか?
「いや、可愛いけど。許すわけないよね? なんで、有栖川さんと寝てんの? 最後までヤって、初めての有栖川さんの有栖川さんを堪能しながら奪っちゃったの?」
「人聞きの悪いこと言うなよ、脳内エロ義妹。俺と有栖川は対等で、純粋なお友達な間柄だ。お前の派閥の女の子たちと一緒にするな」
「ムカッ? そんな言い方止めてくれるかな、お兄。学校で仲良くしてくれてる女の子たちは私の大切な………お、お友達なんだからね」
「おい、何だ? さっきのおかしな間は、本当にお友達か? それ?」
いつもの通りの腹の探り合い、朝から義妹様は機嫌が悪い。
「朝チュンした有罪お兄は黙って」
「うっ!……はい、舞香ちゃん」
覇気を纏って放つなよ、ビビるじゃねえか。俺が。
「フムフム。お兄は、こういう見た目は派手だけど、内向的な女の子がドストライクと。メモメモと」
「だ、誰がドストライクだ。だから、俺は女で有栖川は友達……んぉ?」
「そんなの見れば分かるよ。
「は?」
なに言ってんだ? この義妹。つうか舞香の奴、眼の中のハイライト消えてませんかね?
「は、じゃないよ。お兄は私にぞっ込んでるでしょう? それ以外は許さないからね。お兄、お兄の舞香ちゃんとの約束。分かった?」
「いや、分からん」
舞香のこんな雰囲気初めて見る。なんかヤバいんだが……
「ふゎぅ~! よく眠れましたわ~! おはようございます。氷室さん」
「お、おう。おはようございます。有栖川」
「……チィ~、おはようございます、有栖川さん」
何がチィ~、有栖川が起きた途端に、一瞬でお嬢様モードに切り替わってんじゃねえよ。舞香様よう。
だが、ナイスタイミングで起きてくれたな有栖川。お前は俺にとっての女神だ。救世主様だぞ。
「ふぇ!? 氷室舞香さん!? お、おはじゃましますぅ」
「フフフ、おはようとお邪魔が合体しちゃってますよ。有栖川さん。さぁ、朝の身支度を済ませてください。大食堂に皆で行きましょう」
「しゃ、しゃいですわ!」
舞香お嬢様の圧がスゲー、これが外面100%の舞香お嬢様か。パネェな。
有栖川が泣きそうな顔で部屋を出ていったぞ。あいつ、家の洗面所分かるのかな?
そして2人きりになる俺たち。
(お~い、お兄。私と2人きり確定の私刑執行するから覚悟しておいてね。覚悟だよ。私は今日の放課後、お兄を全力で恥ずかしい格好にするからね)
舞香はあえて俺の耳元へと顔を近づけ。
ドスの効いた小声でとんでもない事を口にした。
「……………」
俺は答えることができず。
今日の放課後は、舞香から全力で逃げることを決意した。
◇
そして放課後。
『ピロリン~! メールだよ、私のことが大大大好きなお兄。早く出てね♡』
『ピロリン~! 電話だぞ♡ 私と結婚するお兄! 早く出てね』
『ピロリン~! DMなの♡ 私の連絡には1秒以内に出るんだよ♡』
『ピロリン~! 現在、運転中のため、電話に出ることはできません。ピー!という発信音の後に、メッセージをどうぞ』
ピッ!
『おいおい、お兄。やっちゃったね? 完全に私への反抗期になっちゃったのかな? 異世界行ってて、血縁ないないの義妹舞香ちゃんの恐ろしさの賞味期限が切れちゃったのかな? ん? おい、お兄様よぉ~! 私から逃げられると思ってるの? お兄。逃がさないよ、一生ね。お兄は義妹の私と結婚して幸せになるんだよ。お兄が生き残れる人生はもうそれしかないの。毎朝、起きたら舞香にキスしてヤるんだよ。お兄♡お兄♡お兄♡お兄♡大好き、次に会ったら婚姻届に判子を押してね。そうすれば舞香はお兄が舞香に行った罪を全て許します。だって、お兄と舞香は義兄妹で結婚できるんだもん。ね、お兄♡絶対に逃がさないから♡――――ピッ!……ツー、ツー、ツー、ツー』
舞香が口から発した呪詛を聞き終えた俺は、そっとスマホをポケットにしまった。
「…………おー、我が義妹ちゃん壊れちゃった。脳内トリップしてるじゃん。舞香お嬢様、まぁ、よくあることだからスルーしとこう」
ちなみに舞香が壊れる頻度は月一くらいだった気がする。
「ひ、氷室さん。どうしましたの? 顔色が悪いですわ!」
「い、いや、なんでもないですわ。それよりも、暑いし、さっさとアルカナの事務所に行こうぜ。有栖川、案内してくれ」
「は、はいですわ!」
放課後。俺は舞香から逃げ出した。
風の魔法って便利なんだ。数秒だけなら、義妹の目を盗んで脱走に使えんのよ。
そして昨日の三つ巴のスレ論争の最後に書いてあった文章。
アルカナ代表取締役からの文章を、学校に居る時に見つけた俺は有栖川の案内で事務所までやって来た。
「はいはい、いらっしゃいなんだよ。お客様……いや、新人君なのかな? うちの事務所に入りなよ」
「………ロリータファッションの幼女?」
「あん? 誰が合法的ロリ体型だって?」
これまたキャラの強いロリっ子が現れたもんだな、おい。