異世界帰りのTS美少女勇者、人気ダンジョン配信者に成り上がりながら、「性転換の薬」を追い求める 作:冰藍雷夏
「ボクと契約して魔法少女のコスプレをしてよ。」
「誰が魔法少女だ。俺はユウだ。うるさいボケロリっ子」
「違うよ。コスプレするキャラはホムホムなんだよ」
「うるさい、さらにうるさい。魔法少女のコスプレ写真見せんな……いやいやいやいや、実物のコスプレ衣裳なんて持ってくるな。着ないわ、アホ」
「な、なんでなんだよ〜?」
会ってすぐの人間にするような話じゃないだろうに……この人からは義妹と同じ雰囲気をプンプン感じる。
アイドルプロデュース、大手プロダクション『アルカナ』。主な事業はコスプレイヤー、アイドル、配信者のサポートマネージメントらしい。
そこの代表取締役が、目の前に居る合法的ロリっ子の姿をした大人な女性、
有栖川の母方の遠い親戚らしい。
(遠い叔母さんですの)
(マジで!?)
(よろしくなんだよ、美少女君)
有栖川の案内で大きなビルの中へと入り、ロビーでアポイントを取ったらヒョイッと出てきたのが、有鹿ナナさんだった。
その後はビルの最上階へと案内された後、俺の勧誘祭りのスタートとなった。
ちなみに、ビルの中へ入る時、「金色狐の仮面」を装着した。素顔がバレて、誰かにストーカーされ、切り抜き動画でもネットの海に流されたら終わりだからな。
「いいねぇ、いいねぇ。その警戒心も大事なんだよ。ますます気に入ったんだよ。だから、うちのアルカナ事務所に入りなよ、雰囲気美少女くん」
「いや、だから入らねえわ。しつこいわ」
豪華絢爛な社長室に案内されて、かれこれ2時間。ずっとこんな感じで凄まじい勧誘を受けている。
このロリなおば様、強引だし粘りが凄い。
「ちなみに、アリスはうちの子会社に所属している新人配信者だよ。新人だけど厚待遇で在籍してもらってるんだよ」
「アリス? 誰だ?」
「わたくしですわ」
「はい? 有栖川の下の名前が?」
「はい、有栖川アリスですの」
お優雅な所作でお紅茶を飲む有栖川アリス。友達になって数日。
有栖川の下の名前を初めて知ったわ。それまで全然知らなかったわ。びっくりした。
「……それでも君達は友達なんだよ? まぁ、昔から人が苦手な姪に、友達ができたのは大変喜ばしいことなんだよ。ボクも昔はボッチちゃんだったから、気持ちが凄く分かるんだよ……はぁ~」
「はい、ユウさんは、わたくしの人生で初めてできた友達なので、嬉しいですわ……はぁ~ですわ」
社長室の空気が重い。
2人のトラウマスイッチが勝手に押されて、勝手に落ち込み始めた。空気が重い。
おー、この2人多分同じ一族の血を引いてるわ。落ち込んだ時の反応がそっくり過ぎる。
「……それじゃあ、早速契約書にサインして、今から素顔を全世界に晒して水着デビュー生配信をするんだよ」
「しねえわ! どさくさに紛れて、人の手に朱肉付けるな! 怖いわ!」
いつの間に俺の隣に立ってたんだよ。全然気づかなかったぞ。このロリおば様。
「む、むぅ~! そう言えるのも時間の問題なんだよ。サラちゃんさえ戻って来れば、君なんて近づくだけでアルカナ事務所からのデビュー決定なんだからね。だから今日しよう! 君の水着エチエチデビュー」
「サラ? あぁ、昨日の三つ巴配信者の人か。数年前に動画配信は見たことあるな。モンスターを笑いながら、ぶっ殺してたよな」
「……ボクの言葉は無視なんだよ? 悲しいんだよ。エロコンテンツで絶対に才能を開花させる逸材君、君に水着を着てほしいんだよ! アリスも説得してほしいんだよ。ユウ君だっけ? この子のエッチな水着姿見たいよね?」
完璧に私欲にまみれた言葉を発するなよ。どんだけ俺の水着姿見たいんだ。需要なんて皆無だろう。
「紅茶が美味しいですわ。はふぅ」
そして有栖川はロリの話など聞かずに、紅茶とお菓子を食べるのに集中していた。あぁ、お優雅ですわ。
有栖川は見てるだけで癒されるのに、この合法ロリときたらよう。愚義妹と同じ系統の匂いがしてきたぞ。
「こほんっ! これまで散々ツッコミいれたけど、そろそろ本題に入りましょう。「性転換の薬」の情報くれませんか? 俺と会ったら、情報をくれるって書き込んでましたよね? アルカナ代表取締役」
「いやいや、そんな風には書き込んでないんだよ。ボクはただ、『――――〖性転換の薬〗の情報が欲しいのですか? それでしたら、1度うちの事務所に見学に来ませんか?……』ってしか、書き込んでないんだよ、ユウ君。それよりも、ちゃんと礼儀作法もできるんだね。ますます君のことが欲しくなっちゃったよ。だから水着着よう。すぐに着よう。アルカナ事務所に入るんだよ」
……あ、やっぱりだ。
このロリおば様、舞香と同じ、腹の内はどす黒いわ。
「入るかアホ。これ以上、人生に束縛されたら死ぬわ、そんなのアホの義妹だけで充分だわ」
舞香一人でキャパオーバーだ。
こんな状態でアイドル事務所なんて入ってられるか。
「えー、ただ所属するだけなんだよ? ボクが呼び出したら朝まで返さないけど……撮影とかでね」
「なんの撮影だよ、なんの」
「んー、まぁ、冗談はここら辺にして、うちのアルカナ事務所に籍を置くだけでもメリットはかなり大きいんだよ。資料見て納得させてあげるんだよ」
なんか膨大な資料を胸元から出してきたぞ。
どっから取り出したんだ、おい?
「……有栖川。今日、ここに連れてきてくれたお礼にクレープ奢ってやるよ。そろそろ帰ろうか」
「クレープですの!? 放課後にお友達と一緒に買い食いイベント発生ですの?」
「そうですの、クレープ食べて帰りますの」
嬉しそうに有栖川が俺の両手を握ってくれる。
純粋な反応に、俺の心はポカポカする。
「うちのアルカナ事務所は、基本的に自由配信なんだよ。エロコンテンツ以外なら、配信表現は自由。それに、イベントやグッズの収益の9割は所属タレントにいくようにしてるんだよ。これは広告収入や公式切り抜き動画で、うちが儲かり過ぎてるからできる荒行なんだよ。凄いでしょう? それに会社の経費で、海外旅行や必要な物は買い揃えてあげられるし、所属タレント1人1人に合ったマネージャーを付けて、メンタルケアーもしてるんだよ~!」
……うん。確定だ。義妹と同じ分類だわ、この人。
「「性転換の薬」の情報もなんとなく掴めたし、帰ろう有栖川」
「へ? まだ、ナナおば様のお口から聞いていませんのに? よいのですわ?」
「あぁ、よいのですわ……なんとなく、ロリおば様の反応で察《さっ》したわ」
「?……そうなんですの?」
ここまで俺が行動してしつこく聞いたのに、ロリおば様は「性転換の薬」を全然教えてくれなかった。
つまり、「性転換の薬」は大手アイドル事務所の大金持ちでも知らないような代物。
今日は、それだけ分かっただけでも充分収穫だ。手がかりが掴めた。
今後は、アルカナ事務所以外の日本三大アイドル事務所の残り2社の関係者にコンタクトを取って、「性転換の薬」について調べていく。
「アルカナ事務所は駄目だったが、別の事務所に行く。多分だが、そこの事務所の偉い人に聞けば近づけるだろうよ。「性転換の薬」に」
「!……そ、そうなんですのね。アルカナは氷室さんにはお気に召さなかったのですわね。少し残念ですが仕方ありませんわ。わたくしは子会社ですが、同じグループ会社の所属タレントになれることを少しだけ期待してましたもの」
有栖川が悲しげに笑った。
あぁ、そうか。
有栖川はアルカナ事務所に所属してるから、俺が同じ事務所の仲間になることを望んでたのか。
言葉には全然してなかったから気がつかなかった……まずったな。
「有栖川。なんかごめん」
「フフフ、大丈夫ですわ。氷室さんとは、今後も学校や放課後一緒に居られますもの。安心ですわ、それよりも早く帰りましょう。クレープ、氷室さんとクレープが食べたいです。放課後クレープタイムですの」
「あ、あぁ、帰ろうか。クレープ食べたいわね」
……あれ? 今、俺。女の子みたいな喋り方してた?
「ちょっとちょっとなんだよ。どこに帰る気なのさ? 君は、この後水着姿になって、ヌルヌルヌメヌメのプロモーションビデオを、ボクが一生懸命撮るんだよ! サラ~!出番なんだよ!」
ロリおば様が低重音ロリボイスを社長室で叫ぶ。
ガチャッ!
すると社長室の入り口扉が開き―――
「はいはい、社長。交渉決裂、やっぱりこうなったじゃん。最初から、約束通りの報酬をあげればいいのにさ。そして、こんにちわ。″金色狐の仮面″ちゃん」
その人気アイドル配信者は、黄金のような長髪と美しい中性的な顔立ちだった。そして服装はハイレグなシマシマ水着だった。
左手には日本刀を持っている。
そんな綺麗なお姉さんが、俺を優しそうな目で愛でるように見つめている。
「おいおい、なんの冗談だ。合法傲慢ロリおば様よう。なんで、ここに日本のトップが現れるんだ?」
「サ、サラさんがなんでこんな所にいますの? 今はハワイで撮影中では?」
「ん〜? スカウトできなかった時の用心棒なんだよ。サラちゃん、サラっとユウ君を勧誘しちゃうんだよ。社長命令なんだよ」
興奮気味に言うな! 傲慢ロリ。
「だってさ。本当は、もっとスマートに勧誘したかったんだけどね。別の大手アイドル事務所に行かれるのも困るのよ。あたしたちは君が欲しいの、超逸材の貴女がね。金色狐の仮面のユウさん。仲間になろうよ」
そう言って、サラは日本刀の鞘から静かに刀を抜いた。