「行くぞ!ワイヴァーン!」
空を駆け、生まれたてホヤホヤの傷に拳を叩き込む。
強化された身体能力は傷をえぐり、さらなるダメージを叩き込む。
ちょこまかと動き回る俺を攻撃しようとして、自爆している。
自爆で苦しんでいる瞬間、顔面に拳を叩き込む。
……!まじか!【
やっぱり竜性魔法を打ち込まないと大ダメージは与えられないな。
防御面、カッチカチすぎて嫌になるよ。さすがモノホンのドラゴンは硬さが段違いだ。俺も生えている、生えてはいるんだがなぁ……。
「でも、パワーとスピードは俺の方が上だな」
こいつはワイヴァーンの幼体種ということもあり、今の俺よりも優れているのは防御だけ。スピードとパワーは可能性覚醒した俺の方が上だ。
しかも、人工弱点が二つも作られたんだ。ここで負けたら恥ずかしいうんぬんの話じゃないぞ。
「ぬぉら!!」
・うわぁ、バグだ
・なにしてんのこの人
・ワイヴァーンを投げ飛ばしてる、夢かな()
・こいつほんまに初心者探索者なんか
初心者ですよ……ちょっと特殊な力があるけど。
「グオァ!!」
「ブレスか!!それなら俺も付き合おう!」
地面に投げられたワイヴァーンは受け身を取り、密かに口で貯めていたブレスを放つ。
俺の体ではブレスは撃たなかった……が、今は違う。可能性覚醒したおかげで体も一定時間だけランクアップした。
ブレスくらい吐けるようになってんだよ!!
・すげえ!ブレス吐いてる!
・あいつ本当に人間か!?
「……負ける」
ぼそっと呟いた相沢の言葉通り、ワイヴァーンのブレスに押し負けた。
火力もそうだが、持久力が圧倒的に足りていなかった。そりゃ生まれてから身についていた力と今身についた力を比べたらそうだわな!!
あぁクソ、テンション上がってたから油断してた……。
「もう、ブレスなんて使わん。未来はともかく、今は!」
片手で擬似魔法【
逃れられない攻撃。それを認識して、目を閉じる。どうしようもないと理解して、諦める感情が伝わる。
直撃した彼は_____何とも悔しそうに眠っている。
そんな彼の顔が、どうしてか気になった。つい歩き、つい手を延ばし、触れた。急速に冷えていく体から伝わるのはこれまでの軌跡。
膨大な情報から伝わる、こいつが俺の魂の身内として判断した者の悪徳。許せる、許せない。そんなちっぽけな話じゃない。
こいつは、そういう次元じゃない。散々ステータスで伝えられてきた「竜王」とは、巨悪だ。
前々から受け入れることができなかった「竜王」は、彼の兄を惨殺し、親を洗脳させた。
彼の者が言うには、「我が息子のため」と。本当に相容れない。覚悟をしろよ、クソ竜王。
俺はお前を許さない。
「ちゃんと弔ってやるよ。お前も、兄も、親も」
「朝倉くん?」
「悪い、相沢。もうちょっとだけ長引く」
空間が裂け、来訪するは彼よりも二回りほど大きいワイヴァーン。大きな傷を抱え、瞳は生気を感じさせない。
言うなれば動く屍、ゾンビワイヴァーン。ずいぶんと趣味の悪い仕掛けに苛立ちが募る。
「後で色々と説明してよね?」
「あぁ、分かってる。全部言うさ」
幼体種がD -。こいつは、Dランク以上あるのは分かる。ゾンビな分、高い頭脳がないからCランク帯には届かないと思うから、よくてD+か。
まあ、パワーやスピードはCランク帯なんだろうが。
「グォガァァァ……!!」
「初っ端ブレスかよ!!」
あのワイヴァーンよりも何段階も上回る火力のドラゴンブレス。直撃したら火傷どころの話じゃねえな。
さっすが成長したワイヴァーンさまはレベルが違うね!
「そんな君にプレゼント。
迫り来る爆風には鱗を傷つける威力はない。けど、うざってぇ妨害役なら役立ってくれるんだぜ?
「エスト……パズル!!」
魔力感知は魔法の爆発で機能しない。だから翼で煙を振り払おうとして、背中に一つの剣筋が降りかかる。
流れ出るのは鮮血ではなく、ゾンビが出そうな緑色の血だ。本当に生きていないのだと感じて、クソ竜王への怒りが募る。
「グォォオオ!!」
唸り、背中に斬撃を浴びせた相沢を振り落とす。そして、尖りに尖った尻尾で突き刺そうとしている。
「
尻尾に向かって灼熱の聖矢を射る。聖属性が含まれており、アンデット特攻がある【
クソっ……危なかった!魔法が少しでも遅れていたら死んでいた……。
俺も、相沢も見誤ってた。成体に近いワイヴァーンのフィジカルってのはイカれてるんだ。
そりゃ簡単には攻略できねえよなぁ。
「HEY!HEY!HEY!お前の尻尾を撃ち落としたのは俺だぜ?こっちに来いよドラゴンゾンビ!」
竜翼と【
たかったなぁクソが!!
こンの……っ!!バカみたいにデカい巨大でここまで素早いかよ…!そりゃ竜種なんだからそうか!
しかも力が強いから抜け出せない!!このままじゃ骨が折られるぞ…!
「《
剣が飛来し、ゾンビワイヴァーンの瞳に突き刺さる。痛みで悶えてくれたおかげで力が少し緩まった。
これなら抜け出せる!
「
本来エネルギーを竜のカタチとして飛来させるはずの【
「ごほっ……ドラゴン、脚力集中……!!」
自爆をしつことで体が痛むが、そんなのを気にしている場合じゃない!!
ドラゴンとしてのパワーを右足に集中させて、思いっきり顎を蹴り上げる。
「すまん!助かった!」
「それはこっちのセリフだよ。さっきはありがとう。本当に死ぬかと思った……」
「俺もだよ。やっぱ一筋縄じゃいかない……っな!」
痛みを負ってなお、暴れ回るドラゴンの攻撃を避けつつ、ちょこちょこ竜性魔法で攻撃を与える。
「さっきのッ、……何回か使えるか!」
「《
「ダメじゃん!」
「ダメだってば!そっちは何か使えそうなスキル生えてないの!?」
「そう簡単に生えてたら……生えてるわ!《
「大体分かった……けど、微調整ができてない!」
「良いよ、私がカバーするから。思いっきり、信じて…!」
「わァったよ…行くぜ、《
空間から溢れ出た光が聖となり、ゾンビワイヴァーンに向かって聖槍として射出される。
そして、その聖槍は……破裂した。ベストタイミングで放たれたブレスによって。
「……!まじ、か……」
「うそでしょ……?」