ステータスに竜人って言われました。は?人間だが?   作:鋼色

12 / 12
矜持と資格

生まれてから13年。挫折らしい挫折がなかったんじゃないかと思う。

 

運動神経いいくせに変なところで不器用だったり、テストで記号問題をわざわざ文字で書いたりしてしまう普遍的な失敗はあった。

 

けど、違う。「失敗したこと」事態を「挫折」と定義するのならそうかもしれないが、俺はそうとは思わない。

 

俺が思う「挫折」とは「絶望」だ。本気で心の底から悔しがったりすることも人によっては「挫折」なのかなって思うけど。

 

……俺にとっては、それは「挫折」じゃない。本気で悔しがることは今まであったけど、つい下や後ろを見たくなるほどのものではなかったからだ。

 

この前のオーク戦だってそうだ。負けて、惨敗して、逃走して。確かにアレはショッキングだったけど、どちらかと言うと負けん気の方が強かった。

 

だから、俺はこれまでの人生に「絶望」を経験していないし、「挫折」っぽい「挫折」も経験していない。

 

だからこそ、俺は現(いま)挫けそうになっている。

 

「……っ!」

 

・マジかよ……

・新スキルが…

・ありゃ結構魔力こもってたのにな

・やべえな、今のでダメか

 

……分かる。

 

今、メンタルがマイナスに偏っていることが伝わってくる。

 

俺の頭じゃこんな状況を覆す作戦なんて思いつけるわけない。そして、今あるスキルで変わり種を出せるわけでもない。

 

どうしようもない現実と、相沢を巻き込んでしまったことへの後悔が募るばかり。

 

そんなものを積み重ねたとして、相手は決して待ってはくれない。だから「余計な思考は捨てるべき」なんてことは分かってる。

 

けど、そう簡単に捨てられるほど人生初めての「挫折」は甘くはない。苦しく、辛く、膝が折れそうになる。

 

そろそろこの形態キープすんのも辛なってきたし、敗北を認めたいなんて気持ちも出てきた。

 

実際、俺一人だけならとっくに折れてる。そもそも俺はメンタル的に強い人間じゃないし、周りに誰もいないってなったらボッコボコやでな。

 

でもさあ、俺一人じゃないからさ。勝利を届けるって誓った美兎ちゃんもいるし、こんな俺の戦いに付き合ってくれる相棒もいるしさ。

 

それに、あンのクソ竜王をぶち飛ばすとも決めちゃったからな。

 

ならこんなとこで折れて、挫けて、負ける方が恥ずかしい。

 

俺の竜性よ、そろそろ覚醒しろ。いつまで人間としての貌(かたち)に拘ってんだよ。

 

俺という存在が俺である限り、俺は間違いなく人間。この世界で朝倉奏多の存在証明こそが朝倉奏多の人間としての証明。

 

絶望は先で食い飽きた。食うならクソ美味い希望と勝利が欲しい。

 

覚悟はできてる。現状維持(いま)なんていらない。ただ俺さ、未来(しんか)が欲しい!

 

「もう一度だ!《真性種足る本能の刃(バス・トラ・バース)》!」

 

再度、槍が射出され、ドラゴンブレスによってかき消される。先刻の再放送に過ぎないイマに、リスナーは飽き果てる。

 

・だからそれじゃ無理だって!

・おい現実見ろよ!

・もっと考えろって、別の!

・別のって何があんだよ!

・いやそりゃ分かんねえけど!

 

「……」

 

「まあ、知ってますとも。お前にはそれが通じない。だから、視野が縮まると思った」

 

聖槍とブレスが相殺される中、超至近距離……懐に潜り込み、拳を構える。

 

拳には……いや、体全体に。聖槍と同系統のエネルギーがまとわれていることにゾンビワイヴァーンは気付く。

 

けど、もう遅い。準備は完璧(レディーパーフェクト)、既に舞台の装飾は終わってんのさ。

 

「肉弾一閃“神嵐”」

 

竜種と比べたら矮小な、人としても竜としても半端者な腕が巨体を吹き飛ばす。

 

「ごめんなすって。俺ァ初心者だからよ、基本的な戦闘スタイル(キホン)なんてもんはねえのさ」

 

「やると思ったけど、まさかここまでなんて……。てか、朝倉くん挫折ターン短過ぎでしょ!1分もってなくない!?」

 

「んー?そりゃ俺一人なら挫折してるけど、俺にはみんながいるからな。視野にうつるのは未来しかないわけですよぉ」

 

「……こわぁ。どんなメンタルしてたらそんなことは思えるわけ?意味わかんないんだけど」

 

「そりゃ、ドラゴンですので」

 

「……そうだったね。それじゃ、行こうか」

 

「応!」

 

《真性種足る本能の刃(バス・トラ・バース)》の能力は、〈竜王の意見(ドライサー)〉から発展したスキルだから、主なものは異常なまでの勘の発達。

 

さっきみたいな聖槍とか、身体強化はあくまでも副産物。だから魔力消費量も高い。

 

でも、その異常な勘の鋭さがあるだけで大分変わるけどね。

 

そして、相沢の《我らが饗宴は現、幕を開く(グレイヴ・エスカタンターロ)》は多分事象の確定。

 

格下相手には必殺だし、格上にも案外効く。そして、フィジカルに対して頭脳が伴っていないゾンビワイヴァーンなんかにも効く。

 

でも、慣れてないからこそ三発が限度ってところ。だったらこの作戦の主柱とするべきは《我らが饗宴は現、幕を開く(グレイヴ・エスカタンターロ)》で仕留めること。

 

そのためには無駄遣いはできない。最悪を超えた最悪に備え、一発で終わらせる。

 

けど、それには一発で倒せる自然的致命弱点(ポイント)を探し当てなきゃだな。

 

ふふっ……《ドライグ・パンサー》と《真性種足る本能の刃(バス・トラ・バース)》で当ててやるからな!

 

「魔法演奏(マジックタクト)・煌々竜道(ドミニネイトロード)・黒性薔薇(ブラックローズ)」

 

地面に咲き誇る黒い花はゾンビワイヴァーンの足を貫通することはもちろんとして、貫通した近辺の探知をも行う。

 

少なくとも四肢あたりには反応が感じれない。ということは、胴体部分に急所があることはほぼほぼ確定だろう。

 

喉あたりにあってはブレスをする際に邪魔になるだろうし……。

 

じゃあ、胴体をまさぐりますかね。

 

「竜式・超天音砕き(エコーチェンバー)」

 

猫騙しをするようなカタチで手のひら同士を強く当てる。轟音とともに探知は開始し、どこに弱点部位があるのか把握できる。

 

そんじゃ分かったことですし、仕上げといきますか!!

 

俺が目覚めた《真性種足る本能の刃(バス・トラ・バース)》はエネルギーとして射出する、身体を強化する……だけじゃねえ。

 

エネルギーを物体として構築することも可能なんだぜ?それも、アンデット系が弱点とする聖遺物をな!

 

「聖天を以て邪悪を封ず(グレイプニル)!!」

 

胸部にある弱点コアを縛る鎖が地に刺さる。動作の停止と相棒に対して弱点部位を主張する、両方の役割を担う鎖。

 

練度的に長くは持たないが、今の相沢に長くはいらない。頼むぜ、一発で片付けてくれよ?

 

「《我らが饗宴は現、幕を開く(グレイヴ・エスカタンターロ)》!!!」

 

聖も、魔も、関係ない。ただ目の前にある物体を貫き、滅するスキルは強敵の肉を啄み、食い破る。

 

貫かれた瞬間、ゾンビワイヴァーンの肉体が光の塵となりはじめる。温暖器具よりは冷たく、しかし雪や雨などよりは暖かい。

 

言うなれば、祝福。竜王の血族など関係なく、ただひたすらに自身を打ち倒した強者へと祝う。

 

竜王の思考など入る余地はなく、すべてゾンビワイヴァーンの意思と断ずるしかない。

 

・まじか

・勝ったぞ!勝ったぞ!?

・やっぱ普通じゃねえよコイツら……

・うおー!強すぎるぞ!!

 

……つい、瞬きしてしまった。

 

ゾンビワイヴァーンを倒したことによって、降り落ちた祝福ではない。

 

リスナーたちの反応でもない。

 

ステータスと念じてもいないのに、浮かび上がってきたステータス。そして、「種としての進化」……その見慣れない言葉に驚いた。

 

「……なるほど、ドラゴンらしい」




《我らが饗宴は現、幕を開く(グレイヴ・エスカタンターロ)》

このスキル名でルビなしに普通で読むと、「われらがきょうえんはいま、まくをひらく」です。

現は「いま」です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【完結】能力が〈生体改造〉だから能力作って売ることにした(作者:弐哉)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

転生者のアドルムが持って生まれたのは〈生体改造〉という、生物の身体を自由に作り変えることができる能力だった。▼〈生体改造〉で出来ることは多い。▼身体能力の調整。▼治療では治せないような傷の再生。▼ギフトの付与。▼魔具擬きの作製。▼アドルムは仕事を兼ねた趣味として〈生体改造〉を使った店をやろうと考える。▼手伝ってくれる仲間は、幼馴染の探索者セルネ。▼店の名前は…


総合評価:1511/評価:7.52/完結:41話/更新日時:2026年06月28日(日) 17:20 小説情報

白亜紀からこんにちわ(作者:VISP)(原作:超かぐや姫!)

白亜紀に転生してしまったとある転生者は発狂した後にチートはそのままに完全に人外へと変じてしまった。▼得たチートはあの怪獣王ゴジラのボディ。▼古代の地球で生き続けるある日、永い時を生きる彼の元に怪しげなタケノコが現れてから本当の物語が始まった。▼徒然なる中·短編集より独立しました。


総合評価:6042/評価:8.75/連載:46話/更新日時:2026年08月28日(金) 19:59 小説情報

転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ(作者:水色の山葵)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

人より道のりは長いが、ダンジョン中毒の彼にはあまり関係がない。▼カクヨムにも投稿してます。▼https://kakuyomu.jp/works/2912051601499000526


総合評価:8180/評価:7.93/連載:44話/更新日時:2026年09月26日(土) 15:49 小説情報

若返った老騎士、落ちこぼれ公爵令嬢の使い魔になる(作者:ですわお嬢様スキー)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

王国唯一の独立騎士にして、騎士の中の騎士と謳われた男、ラングリッド・ラントブルグ・フォン・エシュタール。▼ 七十年の生涯を祖国に捧げ、最後は王国へ迫る竜を討ち果たした彼は、確かにその人生を終えたはずだった。▼ だが次に目を覚ました時、ラングリッドは最盛期の肉体を取り戻し、見知らぬ世界に立っていた。▼ 彼を喚び出したのは、赤髪赤目の公爵令嬢レティシア。▼ 気位…


総合評価:2710/評価:8.68/連載:16話/更新日時:2026年08月14日(金) 10:37 小説情報

義務レットは自由に生きてみる(作者:POTROT)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

義務と責務に追われて死んで、転生しても義務と責務に追われる日々。▼そんなある日、全てが嫌になったギムレットは義務を捨て、レットになった。


総合評価:3395/評価:8.43/連載:9話/更新日時:2026年07月26日(日) 15:56 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>