「チーン」
「自ら言う人いませんよ、それ」
俺は死んでいる、死んでいるのだ。死んでいることにしておいてください*1
別に美兎ちゃんとのダンジョン知識勉強会が嫌なわけじゃない。そこだけで言うのなら便利だ。ステータスが開花してから物覚えが異常に良い。
だが、問題はそこじゃない。竜人の種族特性、無意識的魔力循環の身体能力向上。それにより、力加減がとてつもなく難しくなっている。
基本的に循環してるのは最低出力だが、それでも馬鹿みたいな力だ。ステータスの獲得、竜人の身体能力、無意識強化。こんなのが合わさったらさ、物壊すよね。
直属探索者だから大目に見てもらえているが、今の破壊スピードはまずい。直属探索者が解任されて金払ってって言われるかもしれないぐらいまずい。
そんな事があったからですね。日常生活では美兎ちゃんのスキルでステータス封印をかけられてます。妥当以外の何者でもない。
これだけならまだ良かった。けど、待っているのは終わりじゃないという悲しい現実だ。
〈
「竜性飛行」
翼や尻尾が上手く動かせないのにどう飛べと?がち無理案件。
「竜性魔法」
人間が使う魔法とロジックが違いすぎる。いや確かに書かれてたけども。さすがに入り口までは一緒にしてくれ。いやほんまに。
「竜性式魔力操作」
無意識魔力循環による身体能力の増強を何とか出来ないかと頼ってみたが、暴れ馬だ。俺のガバガバ翻訳によれば、「竜性種は常に強者であるべき」だそうだ。イカれてやがる。
そんな難易度がクソなスキルたちで埋まっている。ポテンシャルがあるのは分かっているが、今の俺にとってはオーバースペックなのは間違いない。つか普通の人間に扱わせるべきスキルではない。
「大変ですね……。スキルはともかく、一番は身体面でしょうか。あまりにも加減が向いてなさすぎる」
「そうですよねえ。体と意識が合致してないこの感じ、不便なのもありますが、とにかく気持ち悪い。早く何とかしなければ…」
「直属探索者はあなたを監視するためのもの。そこまで急がなくても構わないのですよ?」
「いえ。このままだと日常生活がままなりません。それに、美兎ちゃ…さんの手間をこれ以上増やすわけにはいきませんので」
「今、ちゃんって呼びましたね?一応、歳上ですからね?……何か、弁明はありますか?」
「ごめんぴっ☆!」
拳骨を受けました。痛い。ステータスがある状態で人を殴るってどうかしてるぜ!まったく、困った担当さんだ!
「はぁ……どうしよう。これじゃあ探索者ができな……っ!?美兎ちゃん!美兎ちゃん!〈
「だから美兎ちゃんって呼ぶ……えっ!?本当ですか!?その名前ならもしかして…っ!今から封印を解きます!物を簡単に壊さないか確認してください!」
ステータスが戻る。あらゆる力が生まれる要因が組み合わさり、溢れそうなほどのパワーが体を巡る。
触れたもの全部を壊しそうなほどの荒ぶるパワーだが、この……「竜性式操作術」ならば、台風を抑えられる!
止まれッ!止まれッ!止まれッ!俺に、俺に従えええ!!
「はぁっ、はぁ……これで、完璧にコントロールできるはずだ」
「やりましたね!朝倉さん!」
「だな!やったぁ!美兎ちゃん美兎ちゃん美兎ちゃん美兎ちゃん!!」
「だーっ!!だから、美兎ちゃんじゃない!!せめてさんと呼びなさい!」
「あーっ!今ぶたなくてもいいでしょ!せっかくの感動シーンじゃん!」
「忠告を聞かないのが悪いっ!というか、そこまで感動シーンでもないでしょう!」
そんなわっちゃわちゃを繰り返し、結局終わったのは3時間後だった。ごめんなさいね、悪いと思っているけど楽しかったです。
目の上のたんこぶだった「身体能力高すぎて物壊しすぎ問題」を解決し、探索者になる上での大きな問題点はなくなった。
封印されずとも日常生活を送れるようになってから3日後。ようやく念願だった探索者免許を取得できた。
組合直属の探索者と言えども、ランクは最低のF。でも、それでも。ずーっと夢に見ていた探索者免許。何が何でも、奇跡でも神でも願ってもいいから、欲しかった。
それが、目の前にある。生まれながら資格を持つ者は分からない世界かもしれない。けど、だとしても。この瞬間、俺の中で一番大切な宝物になるだろう。
「うぉぉーん!!美兎ちゃんありがとぉ!!」
「だから美兎ちゃって呼ばないでくださいよ!!」
「ごめんってば!許して!」
「まったく……さっさとダンジョンに行ってきてください!」
「はい!分かりました!」
そーんな!
こーんなで!!
新人ダンジョン、『解明の摂理』に到着!!こいつは全ての初心者ダンジョンの要素を搭載されたハイスペック初心者ダンジョン!
罠、環境、魔物。Fランクダンジョンの全てが揃った超特別品の迷宮だ。『解明の摂理』以外には全搭載ダンジョンはないらしく、迷宮学者たちの頭を困らせているみたいだ。
Eランクには及ばないが、Fランクダンジョンでは無双する探索者にピッタリのダンジョン……と言われていた。…俺はFランクダンジョンにすら挑んでいないんだがな。
美兎ちゃんが言うには、俺は「スキルと存在がおかしいから案外なんとかなりますよ」だってさ。俺は一般人なのに。
種族がただの竜人で、スキルは〈
……全く普通じゃねえな。どこが一般人やねん。
「グギ……」
「情報にある。お前はF級ダンジョンからD級ダンジョンに生息する
「グガ!」
魔力によって強化された棍棒を右片手に持ち、半歩進む。魔力の集まりからして、次の瞬間に爆発的な加速を生み出そうとしているのが見て取れる。
それを許すわけないんだが。
「
これは魔法ではない。魔力をスキルに流し込んだスキルによる魔法ではないし、事前に形作った陣に魔力を流す古典的な魔法でもない。
魔力をイメージとし、放出するだけの擬似魔法。出力は低い、魔力効率は悪い。だが、やり過ぎないための魔法なら好都合だ。
「竜性式操作術」を手に入れてから「竜性魔法」を扱えるようになったが、あまりにも被害規模がでかすぎる。
あんな化け物魔法をF級ダンジョンで放ったときには、大事故まったなしだ。
ここはあんまり人はいないが、それでもだ。それに、今回は魔物を倒しに来たわけじゃないしな。
「んし、倒せたな。魔石だけもらって先行くか」
ちょっとした確認は済んだことだし、さっさと狙いの場所へと行きますか。
開け、竜翼。
「目標は15階層、ね。初仕事、直属探索者らしいじゃないの」