『解明の摂理』……あらゆる初級ダンジョンの特徴が備わっている異常極まるダンジョンであり、他ランクのダンジョンを見ても『解明の摂理』と同じタイプはない。
だが、今まではそこまで問題視されてこなかった。どんなに特性を兼ね備えようとも、所詮はFランクダンジョン。何が起こっても対処できるようになると考えていたんだ。
だが……一年ほど前。B級探索者である安藤啓司が『解明の摂理』に挑戦し、103階層で敗走した。
あれは、俺も見ていた。魔法も、物理も、スキルも。その全てが通じず、敗走するしかなかった。絶望があるとしたら、あぁいうことを言うんだろうな。
そこからだ。『解明の摂理』がF級探索者に最適と言われなくなった。
人で埋め尽くされていたと言われるこのダンジョンは、今は空いてばっかりだ。高いランクを持つ探索者はもっと旨味のあるダンジョンはと行く。下の探索者は恐怖で足を進ませない。
そうしてほとんど人がいなくなったとき、特大のイレギュラーが起きる。蛮勇によって『解明の摂理』へと訪れたF級探索者は15階層にて目撃したのだ。
本来はD級ダンジョンから生まれるとされる魔物、オークを。基本的にこのダンジョンはF級で生まれる魔物を強化されている。
というか、他のダンジョンも大体そうだ。だからD級から生まれるオークがいるのは明らかにおかしい。
これが他のダンジョンなら上は信じなかった。だが、報告されたのは『解明の摂理』。ほとんどの探索者が「あれはおかしい」と認定されているダンジョン。
信じないわけにはいかなかった。そうして派遣されたのが俺だ。本当にオークがいるのか。その確認。
俺は飛行能力があるから見つかっても簡単に逃げれるだろうし、最悪範囲の広い「竜性魔法」をブッパして解決するからだろうな。
「さてはて、オークはいる、か……っ!?」
ぇ、あ?……はァ!??オークはいた…!そして、同族である魔物を、仲間を食い荒らしている…ッ!?
そんな馬鹿な話があるか!俺たち探索者みたいに倒したら魔力が増えるわけじゃないッ!なのに、なのにどうして……!?
「グコ……グコガァァァ!」
なんてパワーだ…!ただの咆哮でここまでのパワーを感じるなんて…!オークにしては強すぎるぞ!!
「異常なのは分かった!何故かは知らないが、お前はただのオークじゃない!なら、ここで仕留めさせてもらう」
右手に魔力を集め、魔力の集合体を「竜性魔法」に向かって流し込む。「竜性式操作術」と「竜性式魔力操作」がなけりゃ暴発してそうな超エネルギー……。
やっぱり汎用性はないが、こういう場合のとっておきとしては大いに役に立つ!腹の芯から弾け飛べ!!
「
竜を形取ったエネルギーがオークへと迫り、直撃する。幸い、あのオークは魔力感知的なスキルを持ち合わせてはいない。
だから魔法に気づかれる前に思いっきりぶっ放せた。これで倒せるとは考えていないが、四肢の一本や二本は持っていって欲しいところだ。
さてはて。どこまでダメージが出たか……。
「……ッ!
【
本能が警鐘を鳴らし、咄嗟の判断で避けたからちょっとした火傷しかない。……直撃した場合のことを考えたら背筋が冷えるな。
…あんな魔法をオークが使えるなんて聞いたことがない。イレギュラーのオークだとは予想していたが、まさかこれ程までとは…。
ただのランクバグで出現した魔物かと思っていたが、まさか強さの方のバグも含まれているとはな。
バグとバグ。完全なるイレギュラーか。そんなものなんて聞いたことがねえよ。
Fランクダンジョンにこんな化け物オークがいるなんて想定外だ。こりゃ話を真剣に聞いてよかったかもな。
「無傷……ね。
「
先ほどよりも出力を上げた魔法。【
魔力を操作できるギリギリの魔法がこれだ。これでダメなら、俺に抗う手段は残されていない。
「はっ、はぁ、はっ……?嘘、だろ……。アレで顔にかすり傷一つって、イカれてる……!」
「竜性魔法」は実力の差を覆せる手段だった。美兎ちゃんにまでそう言われ、有頂天になっていた。どんな敵でも何とかなるだろう、なんて夢を見ていた。
こいつ、相当やばい。火力だけならD級なんて微塵も残らない。だが、こいつはまだ生きている。なんてやつだ……。
喧嘩売った手前逃げるのは屈辱だが、情報を持ち帰る以外に選択肢はない。直属探索者として、さっさと帰るしかない!
逃げようとし、背中を向けた次の瞬間。強烈な衝撃波が襲う。竜人としての肉体と、無意識魔力循環がなければ耐えられなかった一撃だろう。
それでもなお、言い表しようのない激痛が襲う。翼で飛ぶという能力が消し飛ばされたかのように。
竜翼は一切動かず、地面へと墜落する。
「っ、はは……こりゃ折れてるな。なんつーオーク。あーあ、自尊心がグッチャグチャのボッコボコだ。竜が猪に負けるなんて、なんて事態だ」
「覚悟しろよ、クソオーク。今度会ったら絶対にぶっ倒す!」
決意の表明として叫ぶ俺氏だが、意識にいれなかったことがある。
オークが同類を食い漁っているとは言え、ここはダンジョン15階層。
魔物が気づかないわけがない。
「ギガ…グギ……」
「ゴブリンか……。体は痛むが、お前ら程度の相手、手こずるとでも思ったか?全くもって、問題なし!」
ピコン
……格好つけてたらステータスから通知が来たんだけど。
------
スキル:
〈
〈
〈
------
--〈
覚悟、実績を鑑みて、大いなる者・大衆が讃頌した言葉が力になる。どれだけ傷を負っても、勝つために揺らがない。竜としての誇りは捨てない。その覚悟を身にまとう姿は大衆の心を焼き付け、最高の英雄へと至るだろう。
……精神的ピンチ時「精神不変状態」、肉体的ピンチ時「雑魚滅殺」、「身体機能・魔力機能底上げ」を付与。精神and肉体的ピンチ時、「
「不退転、ねえ。どう考えても俺は不退転じゃないだ……ろっ!」
先ほどよりも知能が上がったゴブリンたちによる遠距離攻撃が迫る。魔法だけではなく、弓矢、魔力で強化した石のナイフ。
確かに避け切るのは難しい弾幕だが、避ける必要はない。魔法も、弓矢も、石ナイフも。避けきれないのなら叩き落とせば解決する話。
「グギ……!?」
「全部、弾け飛べ。
さっきのオークには通用しないだろうが、この程度の魔物なら簡単に吹き飛ばせれる。
〈
ここから地上に戻るのは面倒くさいなぁ……。まあ、戻る以外の選択肢なんてミリもないんだが。
「いっつつつ、やっぱ翼いてぇ……。さっさと帰って治してもらお」