「ん……新しいスキルか。えっと、《ドライグ・パンサー》?」
--《ドライグ・パンサー》
〈
「竜の本能を開花させしとき、
「……パッシブっぽいなこれ」
俺が保有するスキルは完全パッシブとは言い難い(〈
認識した瞬間に世界が広がっているようだ。まるで自分が自分じゃないかのような違和感が胸中にある。これからこの感覚に多く遭遇するんだろうが、慣れる気はしないな。
・なにその翼と尻尾
戦い以外の情報がなかったから忘れていたが、配信していたんだった。完全に忘れていた……。
まだ探索者と配信に慣れてないな。このままだと「うっかり失言」して炎上しかねないな。注意しないと。
「スキルです。自分の、ちょっと他の人とは変わってて……一部身体が変化するんです」
・めちゃユニークじゃん。普通にバレたら狙われるでしょ
「大丈夫ですよ。だって……ッ!」
コボルトが使用する魔法は主に四つ。【クロスファイア】、【ダブルウィンド】、【ツーマリン】、【ガイアコンフリクト】の火、風、水、地の四属性だ。
そのどれもが初心者魔法士とは確固たる差がある。その中でも一際格差が大きい【ダブルウィンド】。攻守ともに万能とされる魔法が今、飛んできた。
でも、【ダブルウィンド】で助かった。俺の口からとんでも情報が流れようとした。
_______だって俺、直属探索者ですから_______
って言葉が出ようとしたのが痛いほど分かる。そして、己のバカさ加減に腹も立つ。
直属探索者というのは恩恵が齎されていると同時に他の探索者からは多くの恨みを買う存在でもある。
きっと今のこの場で落ちる言葉は、他の探索者の恨みを買う代物だ。例え俺が何もしていなくても、自ずと集まるのが直属探索者だ。
まったく、己のことながら面倒くさそうなことに首を突っ込んじまったもんだ。
「今度は二体か。ウォーミングアップは終わったところだ。全力全開イケイケドンドンで行かせてもらう……!!」
二つの魔法……【ダブルウィンド】と【クロスファイア】が飛び、混ざり合って爆風となす。
肌を突き刺すほどの凄まじいエネルギーを放ちながら目眩しとなり、コボルトたちは気配を感じさせないように飛び回る。
確かに、さっきまでの
翼の動きも、完全とは言えないがある程度は戻ってきている。つまりさ、出力も操作もある程度戻ってきていることだ。
「解析……完了!」
「
爆風を吹き飛ばし、【
各々に分断されたコボルトたちは連携し直すために合流しようとする。
……俺がそれをさせると思うか?
「竜性魔法……基本其ノ伍………
スキルが語る。竜は強くあれ、他者を蹂躙しろと。圧倒的な力で敵を打ち破り、後ろを鼓舞してこそ竜だと。
その言葉通りに魔力残像を作り上げる。今よりももっと他者を蹂躙するための手段は整った。
【
「悪いな。
魔力残像を《ドライグ・パンサー》によって強化された空間把握能力をフル活用しながら操作する。
頭がピシリと痛むが、支障はない。レベルの上昇と〈竜性式魔力操作〉・〈竜性式操作術〉の熟練度が上昇したことによって負荷は低い。
「天理化」を行ってもまだ戦えてるのが証拠だ。……よくよく考えたら無茶な策だったな。
「…反省は今じゃないか。
ゴブリンは瞬殺できた擬似魔法だが、コボルトには効き目が薄い。痛いじゃなくて、うざったいものを直接当てられたみたいだ。
事実、その通りだろうな。今の俺の出力じゃ、擬似魔法をコボルトにまで倒せるようにはならない。
別に良いんだけどな。本来の目的は【
「
コボルトに当たらなかった【
……今の俺にゃあ魔力残像は三体が限度だが、残像を作り替える器用なことならできるんだぜ?
「クォォ!!」
「…魔力が外に出しにくくなったな。魔力妨害か?だったら、こういうのはどうだ?」
竜系統にのみ宿る特殊な自然外装「竜鱗」。魔力を込めたら強化される当然の摂理もあるし、しっかりイメージを込めたらそれが発揮する。
「うん、良い爆発。ちと火力が強すぎたかもしんないけど」
魔力の消費が馬鹿げてることを除けば完璧な「竜鱗」。利便性があるのかないのか分かんねえよ。
「んじゃ、もう一発」
四肢をもがれたコボルトたちに繰り出すのは更なる爆発。先ほどよりも魔力を込め、緻密なイメージを持って相手に打ち出す。
この魔力消費だけで3割も持っていかれたのは気のせいとしておきたい。
「……俺の勝ちだな」
・……えぐ、見入ってた
「あざます!そんなに良かったですか?」
・初心者レベルだけど、初心者レベルじゃないな
・なんかこう、魔力効率とか徒手空拳の技術が初心者から逸脱してる。スキル練度や魔力量は間違いなく初心者なんだけど
・多分ユニークなスキルにそれ、ちょっと怖いね君
魔力効率に関しては「竜性式魔力操作」と「竜性式操作術」のダブルコンボによるスーパー強化。
徒手空拳は……うん、あれだ。魔力の操作が可能となるまで先輩直属探索者にボコボコにされながら叩き込まれたからだろう。
上手いように力を扱えない中でフルボッコにされる感覚、最悪だったぜよ。
「もう少し優しくなんない?」って聞いたときに速攻で「ならない」って言われた時の絶望感は大きかったよ。
・罠の解除とかは分かるの?
「はい。みっちり教わりましたから」
「みっちり教わった、ねえ」
目の前の罠を解除している少年を見つめる眼は金色に輝く。
「南雲真也、神田美兎、飯田龍弥」
銀髪の髪を靡かせ、左目には黒の眼帯をつけている笄年は人の名を口ずさむ。
それは朝倉奏多が教わった人であり、そのどれもが「武王」、「魔王」、「天王」と称されるほどの傑物たち。
そして、元同僚たちが鍛え上げようとしている遺産に目を向ける。
「こわいね」
コメントに溢したことそのまま、独り言が落ちる。
しかし、意味が一つ加わった。彼の境遇を遡れば分かってしまう、そんな情報を添えて。
見るまで、信じられなかった。信じられなかった。
日本にとっては厄ネタそのものの朝倉奏多を処分しないのは、バックにいる者のことを考えたら手を出せない、ということだろう。
だからと言って本気で強化しまくるのはどうかと思うが。
「終焉の息子が人類に利となるか、害となるか……」
震える指先で眼帯に触れる。彼の父親に抉られたこの目が熱く訴えるのを抑えるように。