転生者たちは今日も新エリー都を駆け回る 作:『 』を応援するテト
連投です、転生者達の1人ちびリス博士が依頼人になります。
#依頼人はいつもの常連客?
【転生者掲示板】
**ちびリス博士**
たすけておにいたちおねいたち
**ビデオ屋副店長(仮)**
どうした
**半々医者**
怪我でもしたのか。
**おっとり師範**
何かありました~?
**機械執事**
工房で問題でも発生したか?
**シーホースCEO**
事故?
**ちびリス博士**
ボクの心が事故りそう!!
**ビデオ屋副店長(仮)**
元気そうだな
解散
**ちびリス博士**
待って副店長おにい!!
部品がないの!!
**ビデオ屋副店長(仮)**
部品?
**ちびリス博士**
二週間前に届いてるはずの部品!
ない!!
**シーホースCEO**
何の部品?
**ちびリス博士**
CEOおねいから頼まれてる例の試作品
**シーホースCEO**
は?
**ちびリス博士**
重要機器の試作品!
**シーホースCEO**
は???
**ビデオ屋副店長(仮)**
CEO二段階認証やめろ
**シーホースCEO**
いやいやいや!!
あれの部品!?
**ちびリス博士**
そうだよぉ!!
今日その部品使うところまで組み上がったから出そうとしたら、どこにもないの!
**機械執事**
納品記録は?
**ちびリス博士**
書類では二週間前に納品済み!
業者さんも「納品しました」って言ってる!
でも工房の搬入記録を調べたらおかしいの!
執事おにい、これ見て!
**機械執事**
確認する。
**半々医者**
単なる紛失ならいいが。
**おっとり師範**
そうではなさそうですね~。
**シーホースCEO**
納品書こっちにも送って
**ちびリス博士**
送った!
---
数分後。
---
**機械執事**
確認した。
納品されていない。
**ちびリス博士**
やっぱり!?
**シーホースCEO**
……は?
**機械執事**
書類上では納品済みだが、実際の物流記録と一致しない。
該当する部品が工房へ搬入された記録そのものが存在しない。
**半々医者**
虚偽報告か。
**機械執事**
その可能性が高い。
**シーホースCEO**
ちょっと待ってて
確認する
**ビデオ屋副店長(仮)**
あっ
**ちびリス博士**
CEOおねい?
**ビデオ屋副店長(仮)**
社長モード入った
**おっとり師範**
あら~……
---
さらに数分後。
---
**シーホースCEO**
確認取れた
必要数を確保できてなかったのを隠して、納品済みとして処理してた
問い詰めたら認めたわ あいつらちびリスが子供だがらごまかせると思っていたのよ
この私から手配した業務なのにね
**ちびリス博士**
ええええええ!?
**半々医者**
なめて二週間も虚偽報告を続けていたのか。
**シーホースCEO**
即取引終了よ
今、担当部署に契約打ち切りの手配させた
**ビデオ屋副店長(仮)**
はっや
**シーホースCEO**
当たり前でしょ
確保できなかったこと自体で切るんじゃないわよ
事故もミスもある
でも二週間前に正直に報告してくれてれば、こっちも別の調達先を探せたの
それを「納品しました」で誤魔化す会社とは仕事できないわ
しかもうちの子をなめてかかったのよ?
**半々医者**
当然だな。
医療でも、失敗そのものより隠蔽される方が厄介だ。
**機械執事**
妥当な判断だ。
**ビデオ屋副店長(仮)**
なんか今日のCEOちゃんと社長してるな
**シーホースCEO**
私を普段なんだと思ってんのよ!!
**半々医者**
CEO。
**機械執事**
CEOだな。
**おっとり師範**
CEOさんですね~。
**ちびリス博士**
超頼りになるCEOおねい!
**シーホースCEO**
そういう意味じゃない!!
**ビデオ屋副店長(仮)**
草
**おっとり師範**
それで、試作品の方は大丈夫なのですか~?
**ちびリス博士**
大丈夫じゃない!
納期明後日!!
**ビデオ屋副店長(仮)**
終わったな
**ちびリス博士**
終わらせないでよぉ!!
**シーホースCEO**
今回の件はこっちの調達側の問題だから、間に合わなくても責任は問わないわよ
後の試験予定も調整する
**ちびリス博士**
でもボクが間に合わせたいの!
せっかくここまで作ったし、あとちょっとなんだもん!
それに方法はあるよ!
**ビデオ屋副店長(仮)**
ほう?
**ちびリス博士**
部品そのものを今から用意してもらうのは無理だけど
材料なら手に入る!
**機械執事**
どこで?
**ちびリス博士**
ホロウ!
**ビデオ屋副店長(仮)**
でしょうね
**シーホースCEO**
自分で行くとか言わないでしょうね
**半々医者**
それなら俺も止めるぞ。
**ちびリス博士**
行かないよ!
ボクだってそこまで無茶しないもん!
だから――
パエトーンに依頼する!
**ビデオ屋副店長(仮)**
あ
俺の出勤が確定した
**ちびリス博士**
副店長おにいよろしく!
**ビデオ屋副店長(仮)**
まだアキラが受けるとは言ってないんですが
**ちびリス博士**
最近インターノットで腕がいいって評判になってきてるし
表向きも「評判のいいプロキシに素材回収をお願いした」で自然でしょ?
**半々医者**
俺たちが事情を知っていることも向こうには分からない。
確かに問題はなさそうだな。
**シーホースCEO**
私も賛成
知らないプロキシに頼むより安心できるし
今回こっちの案件なんだから報酬はこっちで出すわ
**ちびリス博士**
CEOおねいありがとー!
**シーホースCEO**
知り合い価格とかいらないから、普通に仕事として依頼しなさい
**ちびリス博士**
はーい!
**ビデオ屋副店長(仮)**
俺にも拒否権は?
**ちびリス博士**
あるよ?
**ビデオ屋副店長(仮)**
マジ?
**ちびリス博士**
アキラおにいが依頼を受けなかったら!
**ビデオ屋副店長(仮)**
それ俺の拒否権じゃねえよ
**シーホースCEO**
報酬上乗せしとくわ
**ビデオ屋副店長(仮)**
詳細を聞こう
**シーホースCEO**
チョロ
**ビデオ屋副店長(仮)**
未来の家計が俺を弱くする
**半々医者**
確か、後々この兄妹は金銭面で酷い目に遭うんだったな。
**ビデオ屋副店長(仮)**
そうです先生
だから稼げるうちに稼ぐ
貯められるうちに貯める
**シーホースCEO**
一人だけ未来の生活費と戦ってて草
**ビデオ屋副店長(仮)**
笑い事じゃねえ!
こっちは家計握ってんだぞ!
**ちびリス博士**
じゃあ今から依頼出すね!
副店長おにいよろしく!
**ビデオ屋副店長(仮)**
はいよ
アキラたちには普通の依頼として通すからな
**ちびリス博士**
ボクも知らないふりする!
**ビデオ屋副店長(仮)**
お前演技できんの?
**ちびリス博士**
できるもん!!
**機械執事**
不安だな。
**シーホースCEO**
不安ね。
**おっとり師範**
大丈夫ですよ~、きっと。
**ちびリス博士**
師範おねいだけ優しい!
**半々医者**
正体を知っていると悟られなければいい。
余計なことを口走るなよ。
**ちびリス博士**
はーい!
---
それから、しばらくして。
六分街のビデオ屋「Random Play」。
二階にいたアキラは、インターノットへ新しく届いた依頼を開いていた。
「……急ぎの素材回収か」
「どれどれ?」
リンが隣から画面を覗き込む。
依頼内容は単純だった。
指定されたホロウへ入り、特定の素材を必要量回収すること。
ただし、期限は本日中。
その緊急性もあってか、提示された報酬は通常の素材回収依頼よりかなり高い。
「お兄ちゃん、これ結構いい依頼じゃない?」
「報酬はね」
アキラは依頼文を上から確認していく。
Random Playを開店してから、しばらく。
兄妹はビデオ屋を経営する傍ら、プロキシ「パエトーン」としても少しずつ依頼をこなしていた。
まだ駆け出しではあるものの、その仕事ぶりからインターノット上でも徐々に名前が知られ始めている。
もちろん、ビデオ屋を営むアキラとリンがパエトーンであることは秘密だ。
「依頼人は工房を経営してる技術者みたい」
「工房?」
「詳しい事情は直接説明するって」
リンが報酬額をもう一度見る。
「よっぽど急いでるんだね」
「みたいだね」
アキラが考えていると、階段を上ってくる足音が聞こえた。
「何か依頼来た?」
ユウトだった。
「あ、ちょうど呼ぼうと思ってた」
リンが答える。
「急ぎの素材回収だって」
「ほうほう」
ユウトは何も知らない顔をしながら、アキラから端末を受け取った。
依頼内容。
場所。
期限。
そして報酬。
「受けよう」
「早っ!」
リンが即座に突っ込んだ。
「今絶対報酬見て決めたでしょ!」
「失礼な」
ユウトは真顔になった。
「依頼内容を総合的に判断しました」
「じゃあ何を回収する依頼?」
「…………」
「ユウト?」
「報酬が高い」
「そこしか見てないじゃん!」
アキラが思わず笑う。
「最近本当に仕事熱心になったね」
「貯金は大事だからな」
「そんなに欲しいものあるの?」
「安心できる未来」
「なんでそんなに切実なの!?」
リンには分からない。
将来、この家の貯金が盛大に消し飛び、さらに出所不明のAIによって電気代まで跳ね上がることを知っているユウトにとって、これはかなり真面目な問題だった。
「まあ、冗談は置いといて」
ユウトはアキラを見る。
「どうする?」
「事前情報を見る限り危険度はそこまで高くない。依頼人から直接事情を聞いて問題がなければ受けようと思う」
「了解」
アキラが受けるのであれば、エージェントであるユウトも同行する。
三人にとって、すでにそれは当たり前になっていた。
もっとも――。
ユウトだけは、この依頼人が誰なのか最初から知っている。
さて。
ちゃんと知らないふりができるのやら。
---
待ち合わせ場所へ着くと、リンが最初に依頼人らしき姿を発見した。
「あ、あの子かな……って」
途中で言葉が止まる。
そこにいたのは、小柄なリスのシリオンの少女だった。
大きな尻尾を揺らし、その傍らには二体のボンプ。
少女も三人に気づき、笑顔で手を振ろうとして――。
止まった。
「…………」
「…………」
リンが目を丸くする。
「え?」
そして思わず少女を指さした。
「依頼人って、あかりちゃん!?」
「ええっ!?」
あかりも目を大きく見開く。
「アキラおにいとリンおねい!?」
迫真の驚きだった。
「二人がプロキシだったの!?」
「しーっ!」
リンが慌てて人差し指を口元へ立てた。
「あかりちゃん、声大きい!」
「あっ!」
あかりは両手で口を塞ぐ。
「ご、ごめんなさい!」
アキラも少し困ったように笑った。
「驚くのは分かるけど、このことは秘密にしておいてくれる?」
「もちろん!」
あかりはぶんぶんと首を縦に振った。
「絶対誰にも言わない!」
そして。
ちらり。
あかりがユウトを見る。
「…………」
「…………」
目が合った。
ユウトは何も言わない。
ただ、その目は雄弁だった。
――盛ったなぁ。
あかりの頬が僅かに引きつる。
――しょうがないでしょ!
そんな無言の会話が成立した気がした。
「ユ、ユウトおにいまでいるんだね!」
「いるよー」
「どうして?」
「俺、エージェントだから」
「ええっ!?」
今度も驚いたあかりに、リンが笑う。
「ユウト、こう見えて結構強いんだよ」
「こう見えては余計じゃない?」
「だって普段ダラダラしてるし」
「店番はちゃんとしてるだろ」
「店番しながらソファで寝てる時あるじゃん」
「客がいない時だけですー」
「威張るところじゃないよ」
二人のやり取りを見て、あかりがくすくす笑う。
アキラも苦笑してから、本題へ戻した。
「あかりちゃん。詳しい依頼内容を聞かせてもらっていい?」
「あ、うん!」
あかりはすぐに端末を取り出した。
表示されたのは、特殊な鉱物状の素材。
「これが必要なの!」
「これを回収すればいいんだね」
「うん。これを加工して、今作ってる機械の部品にするの」
「元々は部品を仕入れる予定だった?」
アキラの問いに、あかりは頷く。
「二週間前には届いてる予定だったの。でも業者さんからは『納品しました』って言われてて……」
リス耳がしゅんと伏せる。
「今日使おうと思って探したら、どこにもなかったの」
「それは……」
リンも眉を寄せた。
「大変だったね」
「うん……。調べてもらったら、本当は納品されてなかったんだって」
あかりは少しだけ頬を膨らませる。
「部品を用意できなかったのを隠してたみたい」
「二週間も?」
アキラの表情も僅かに険しくなる。
「うん」
「それで今から別の業者へ頼んでも間に合わない、と」
「そういうこと!」
あかりの耳が再び立つ。
「だから、買えないなら材料を直接採ってくればいい!」
「急に逞しくなったね」
リンが苦笑する。
「でも、あかりちゃん自身はホロウに入らないよね?」
「入らないよ!」
あかりは傍らにいる二体のボンプを示した。
「この子たちは護衛してくれるけど、それでもボクがホロウに入るより、ちゃんとプロにお願いした方がいいもん」
「正解」
ユウトが即答した。
「十二歳が素材欲しさにホロウ突撃とか言い出したら、俺たち全員で止めるからな」
「分かってるもん!」
「ならよし」
アキラは端末へ視線を落とした。
「必要量は?」
「これくらい!」
「採取できる場所は?」
「調べてあるよ!」
「現地のエーテリアスについては?」
「分かってる範囲は全部まとめてきた!」
次々と資料を表示していく。
焦っているとはいえ、仕事に必要な準備はきっちり済ませていた。
「すごいね」
リンが感心する。
「えへへ」
あかりが胸を張る。
「ボクだって工房主だからね!」
「で」
ユウトが尋ねる。
「納期は?」
「…………」
あかりが止まった。
「おい」
「……明後日」
「近っ」
「だから急いでるのー!」
大きな尻尾がぶわっと膨らんだ。
「でも、絶対に間に合わせたいんだよ!」
先ほどまでの子供らしい声とは違う。
そこには技術者として、自分が任された仕事を完成させたいという強い意志があった。
アキラは資料をもう一度確認する。
そして頷いた。
「分かった。依頼を受けるよ」
「ほんと!?」
あかりの顔がぱっと輝く。
「うん。ただし現地の状況が事前情報と違っていたら、安全を優先する。それでもいい?」
「もちろん!」
「じゃあ決まりだね」
リンも笑う。
「任せて、あかりちゃん」
「ありがとう!」
あかりは嬉しそうに二人を見る。
「よろしくお願いします、パエトーン!」
そして最後に。
「ユウトおにいもよろしくね!」
「はいよ」
ユウトは軽く片手を上げる。
「報酬分はきっちり働きますよっと」
「またお金の話してる……」
リンが呆れる。
「大事だぞー、金は」
「はいはい」
アキラはそんな二人を見ながら小さく笑った。
「それじゃあ、準備しよう」
その言葉で空気が変わる。
ホロウ探索を導くメインプロキシ、アキラ。
それを支えるリン。
そして、二人と共にホロウへ向かうエージェントのユウト。
今回の目的はただ一つ。
あかりが必要としている素材を、納期に間に合うよう回収すること。
「じゃあ行ってくる」
「うん!」
あかりが大きく手を振る。
「お願いねー!」
三人の姿が遠ざかっていく。
やがて完全に見えなくなると――。
あかりはそっと端末を取り出した。
---
【転生者掲示板】
**ちびリス博士**
副店長おにい
**ビデオ屋副店長(仮)**
なに
**ちびリス博士**
さっき絶対笑いそうになってたでしょ
**ビデオ屋副店長(仮)**
「二人がプロキシだったの!?」
迫真の演技でしたね
**ちびリス博士**
うわああああああ!!
忘れてえええええ!!
**シーホースCEO**
草
**機械執事**
事前の懸念は正しかったようだ。
**ちびリス博士**
執事おにいまで!
**おっとり師範**
私は可愛らしくてよかったと思いますよ~。
**ちびリス博士**
師範おねいだけ優しい!!
**半々医者**
知っている相手に初めて正体を知ったふりをするんだ。
多少不自然になるのは仕方ないだろう。
**ちびリス博士**
医者おにいも優しい!
**ビデオ屋副店長(仮)**
甘やかすな先生
次またやることになったら演技力上がらんぞ
**半々医者**
お前は何を目指させているんだ。
**シーホースCEO**
女優
**機械執事**
技術者だ。
**ちびリス博士**
ボク工房主!!
---
一方、ホロウへ向かう途中。
ユウトは端末を見ながら、肩を震わせていた。
「……ユウト?」
アキラが怪訝そうに振り返る。
「なんで笑ってるの?」
「いや、なんでもない」
ユウトは端末をしまった。
「ちょっと面白いものを見ただけ」
「?」
アキラは首を傾げる。
ユウトは気持ちを切り替え、これから向かうホロウへ視線を向けた。
事情はどうあれ、依頼は正式に受けた。
ならばエージェントとしてやることは一つ。
アキラの指示に従い、依頼を完遂する。
「素材を採って帰るだけ、ねぇ……」
「ユウト?」
今度はリンが振り返る。
「変なこと言わないでよ?」
「まだ何も言ってないだろ」
「顔が何か起こりそうって言ってる」
「失礼な」
「お兄ちゃんも何か言って」
「僕もリンに同意かな」
「アキラまで!?」
二人に抗議しながら、ユウトもホロウへ向かう準備を整える。
果たして本当に、素材を採って帰るだけで済むのか。
それはまだ、誰にも分からない。
こうしてパエトーンは、いつもの常連客から舞い込んだ少々変わった依頼へ挑むことになった。