転生者たちは今日も新エリー都を駆け回る   作:『 』を応援するテト

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いつの間にかお気に入りが200超えて評価も増えていました。しかもランキングに載るなんて思わず2度見しました!
( ゚д゚)… (つд⊂)ゴシゴシ (;゚д゚)…?
こんな作品を読んで評価してもらいありがとう御座います!


第23話 打ち上げと新しい仲間

 

 ヴィジョンを巡る騒動が、ひとまずの決着を迎えてから数時間後。

 

 六分街の一角にある飲食店では、ニコたち邪兎屋とアキラ、リン、ユウトの姿があった。

 

 店を選ぶ際、最も強く希望を出したのは言うまでもなく猫又である。

 

 ――サバ。あと、できればいっぱい食べたい。

 

 そんな本人の希望もあって、テーブルには焼いたものから煮付けまで、魚を使った料理がいくつも並んでいた。料理が運ばれてきてからというもの、猫又の尻尾は実に分かりやすく揺れている。

 

「はい、それじゃあ――今回は本当に色々あったけど」

 

 ニコが飲み物の入ったグラスを持ち上げる。

 

「全員無事に帰ってこられたことを祝って――乾杯!」

 

「かんぱーい!」

 

「乾杯!」

 

 リンと猫又が元気よく応じ、アキラとアンビーもグラスを掲げる。ユウトもそれに続き、ビリーも飲み物を掲げながら誰よりも大きな声を上げた。

 

「今回も俺たちの大勝利だぜぇ! 乾杯!」

 

「ビリー、声大きい」

 

「ははっ、こういう時くらいいいだろ!」

 

 グラスが触れ合い、打ち上げが始まった。

 

 真っ先に動いたのは、やはり猫又だった。

 

「いただきまーす!」

 

 狙っていたサバ料理へ迷いなく箸を伸ばす。

 

「んん~っ! おいしい!」

 

「猫又、本当に幸せそうだね」

 

 リンが笑いながら自分の料理を取り分ける。その途中、少し遠い位置にある皿へ視線を向けた。

 

「ユウト兄、それ取って」

 

「自分で取れ」

 

「ユウト兄の方が近いじゃん」

 

「ったく……ほら」

 

「ありがと」

 

「最初から礼言うなら自分で取れよ」

 

「でも取ってくれるでしょ?」

 

「そういうところだけ分かってるの腹立つな、お前」

 

「ユウト、ついでにこっちも取ってもらえる?」

 

 今度はアキラが別の皿を指す。

 

「お前までかよ」

 

「僕はちゃんとお願いしてるよ」

 

「リンも一応お願いはしてただろ」

 

「ほら。結局取ってくれる」

 

 アキラが笑いながら受け取る。

 

「ありがと、ユウト」

 

「お前ら兄妹、こういう時だけ妙に息合うよな」

 

「こういう時だけじゃないよ」

 

「ね、お兄ちゃん」

 

「うん」

 

「即答かよ」

 

 ニコがその様子を見て、呆れ半分に笑った。

 

「ユウトって、なんだかんだ2人に甘いのね」

 

「昔からだよ」

 

「リン、お前が言うな」

 

「でも否定しないんだ?」

 

 アキラまで追撃してくる。

 

「……飯食おうぜ、飯」

 

 ユウトは反論を諦め、自分の料理へ箸を伸ばした。

 

 一方、ビリーは料理には手をつけず、飲み物を片手にテーブルの上を見回している。

 

「おっ、アンビー。そっちの皿、もうなくなりそうだな。追加を取ってこようか?」

 

「お願い」

 

「任せろ!」

 

「ビリー、ついでに魚も!」

 

「了解だ、猫又!」

 

 ビリーは上機嫌で席を離れていく。

 

「ビリーって、自分は食べないのに一番動いてない?」

 

 リンがその背中を見ながら言う。

 

 戻ってきたビリーは追加の皿をテーブルへ置きながら、明るく笑った。

 

「仲間たちが美味そうに食べてるなら、俺も楽しいからな!」

 

「おお、ビリーいいこと言うじゃん!」

 

「だろ?」

 

「じゃあ、こっちの魚も食べていい?」

 

「もちろんだ! たっぷり食べろ!」

 

 猫又は嬉しそうに新しい皿へ箸を伸ばす。

 

 ほんの数時間前まで命懸けで戦っていたとは思えないほど、テーブルは騒がしかった。

 

 その光景を眺めていたユウトは、ふと思い出したようにポケットからスマホを取り出した。

 

 カメラを起動し、料理が並ぶテーブルへ向ける。

 

 猫又が魚料理を頬張り、リンが楽しそうに笑っている。その向こうではニコとアンビーが何やら話し、ビリーが追加の料理を並べていた。アキラも穏やかな表情でその輪に加わっている。

 

 ユウトはそんな賑やかな食卓を何枚か写真に収めた。

 

「ユウト、写真撮ってたの?」

 

 気づいたアキラが声を掛ける。

 

「ん? まあ、せっかくだし記念にな」

 

「なら、あとで僕にも送ってよ」

 

「私にも!」

 

「はいはい。後でな」

 

 ユウトは何食わぬ顔で答えながら、撮ったばかりの写真を確認する。

 

 そして、その中から1枚を選んだ。

 

 アキラたちへ送るより一足先に、その写真を脳内の掲示板へ共有する。

 

【転生者掲示板】

「ビデオ屋副店長(仮)」

打ち上げ開始

[スマホで撮影した食卓の写真]

ーーーーーーーーーー

「ちびリス博士」

わー!

お魚いっぱい!

みんな楽しそう!

ーーーーーーーーーー

「おっとり師範」

あらあら~

猫又さんもいい笑顔ですねぇ~

ーーーーーーーーーー

「機械執事」

先ほどまでの騒動が嘘のようだな。

ーーーーーーーーーー

「半々医者」

随分賑やかだな。

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

CEOは仕事中か

ーーーーーーーーーー

「機械執事」

そのはずだ。

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

じゃあ後で気づくな

 

 ヴァレリアからの反応はない。

 

 まだ仕事に追われているのだろう。ユウトもそれ以上待たず、目の前の食事へ意識を戻した。

 

 しばらくして、猫又がふと耳を動かす。

 

「そういえばさ」

 

「ん?」

 

「ユウトって、ヴァレリアとどういう関係なの?」

 

 一瞬、ニコの動きが止まった。

 

 次の瞬間には勢いよくユウトへ顔を向ける。

 

「そうよ、それ!」

 

「うわ、面倒くさそうな話題思い出したな」

 

「面倒くさそうじゃないわよ! あんた、レイがアークライト社のCEOだって最初から知ってたんでしょ!?」

 

「知ってた」

 

「なんで黙ってたのよ!」

 

「リアが変装して潜入してたから」

 

「それは分かるわよ! 聞いてるのは、なんであんただけ知ってたのかってこと!」

 

「しかもあの時、普通に『リア』って呼んでたよね?」

 

 猫又も興味津々で続く。

 

「アタシ、あれ聞いた時ちょっとびっくりしたよ。大企業の社長をあんな呼び方する人、初めて見たし」

 

「昔からそう呼んでるからな」

 

「昔から?」

 

 その言葉にアキラが反応した。

 

「ちょっと待って、ユウト」

 

「何だ?」

 

「じゃあ、前から時々受けてた報酬のいい仕事って……もしかしてヴァレリアさんから?」

 

「ああ」

 

 ユウトは特に隠すことでもないと、あっさり答えた。

 

「大体リアからだぞ」

 

 リンが数秒固まる。

 

「……っていうか、お得意様のレベルが違いすぎるよ!」

 

「何が?」

 

「全部!」

 

 リンが思わず身を乗り出した。

 

「私、てっきりどこかの会社のお偉いさんとか、羽振りのいい依頼人くらいだと思ってたんだけど!? アークライト社のCEO本人って何!?」

 

「俺、一度も普通のお得意様とは言ってないぞ」

 

「言ってないけど普通はそこまで想像しないよ!」

 

「それは僕も同意かな」

 

 アキラも苦笑する。

 

「今まで妙に条件のいい依頼が混ざってた理由も、これで納得したよ」

 

 少し考えてから、アキラは続けた。

 

「そういえば前に、帰ってきてからユウトが『もうあいつの無茶振りには付き合わん』ってぼやいてた仕事があったよね」

 

「あれもリア」

 

「やっぱりほとんどヴァレリアさんじゃん!」

 

「だから大体そうだって言ってるだろ」

 

 リンが額へ手を当てる。

 

「そりゃ報酬いいよ……。お得意様がアークライト社のCEOなら納得だよ……」

 

「待って」

 

 低い声がした。

 

 ニコだった。

 

「今、ものすっごく聞き捨てならない話が聞こえたんだけど」

 

「その顔やめろ、ニコ」

 

「ユウト」

 

「嫌な予感しかしない」

 

「ヴァレリア・アークライト本人から、今まで何度も報酬のいい仕事を貰ってたの?」

 

「まあ」

 

「なんで紹介してくれなかったのよ!」

 

「なんで紹介する前提なんだよ!」

 

「そんな超優良依頼人がいるなら、邪兎屋にも回してくれたっていいじゃない!」

 

「優良かどうかは仕事内容によるぞ」

 

「報酬は?」

 

「いい」

 

「超優良じゃない!」

 

「ニコ、判断が早い」

 

 アンビーが淡々と指摘する。

 

「報酬は重要よ!」

 

「そこは否定しない」

 

「でもユウト、ヴァレリアさんから仕事が来た時って、報酬がいい割にあんまり嬉しそうじゃなかったよね」

 

 今度はアキラが尋ねる。

 

「よく覚えてるな」

 

「長い付き合いだからね」

 

「報酬がいい分、面倒なのも多いんだよ」

 

「へえ~。それにしても、ずいぶん気安いんだね。相手、アークライト社のCEOでしょ?」

 

 猫又が面白そうに尋ねる。

 

「昔からの知り合いだからな」

 

 ユウトはそう言って料理へ箸を伸ばした。

 

「長い付き合いで、今でも時々仕事を回してもらってる。それだけだよ」

 

「ふーん」

 

 猫又はまだ少し気になる様子だったが、それ以上は追及しなかった。

 

 アキラとリンも同様だ。それ以上問い詰めたところで、ユウトが話す気のないことまで口にするとは思えない。長い付き合いの2人には、それもよく分かっていた。

 

「でも、これでずっと気になってたことが1つ分かったね」

 

 アキラがリンを見る。

 

「うん。お得意様の正体が想像の何倍もすごかったけど」

 

「お前ら、そんなに気になってたのか?」

 

「そりゃ気になるよ。普段は一緒にビデオ屋にいるんだから」

 

「お兄ちゃんの言う通り。ユウト兄、変なところで秘密多いし」

 

「人聞き悪いな」

 

「否定できる?」

 

 アキラが尋ねる。

 

「……飯食おうぜ」

 

「逃げた」

 

「逃げたね、お兄ちゃん」

 

「逃げてねえよ」

 

 兄妹の笑い声を聞きながら、ユウトは再び箸を動かした。

 

 その途中、掲示板へ新しい書き込みが入ったことに気づく。意識を向けてみれば、ようやく仕事の合間ができたらしい。

 

【転生者掲示板】

「シーホースCEO」

副店長

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

今やっと見た

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

私送るなって言ったよね?

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

お

やっと気づいたか

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

仕事してるんだから即レスできるわけないでしょ!

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

ちゃんと仕事してて偉い

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

誰のせいで打ち上げ行けなかったと思ってんの

ーーーーーーーーーー

「機械執事」

自分で組んだ予定のせいだな。

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

機械執事は黙ってて

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

……まあ

みんな楽しそうならいいけど

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

猫又も元気そうだし

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

素直じゃん

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

うるさい

羨ましいのは変わらないから!

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

じゃあ仕事頑張れCEO

こっちはサバ追加されたぞ

[スマホで撮影した料理の写真]

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

副店長お前ほんとに覚えてろ

 

 ユウトは何事もなかったように現実へ意識を戻し、目の前の料理を口へ運んだ。

 

     ◇

 

 食事が進むにつれて、話題は自然とデッドエンドホロウでの戦いへ移っていった。

 

「いやー、しかしデッドエンドブッチャーは強敵だったな!」

 

 ビリーが当時を思い返すように腕を組む。

 

「あそこまで追い込めるとは、俺も最初は思ってなかったぜ。最後まで油断できる相手じゃなかったけどな」

 

「確かに。かなり危なかった」

 

 アンビーも素直に同意した。

 

「でも、かなり追い込めてたのは本当だよ」

 

 アキラが口を挟む。

 

「イアスを通して見ていたけど、爆薬が届くまで持ちこたえるだけじゃなくて、途中からはこのまま押し切れるんじゃないかと思ったくらいだ」

 

「私もそう思った!」

 

 リンが頷く。

 

「最後の方なんて、こっちで見ててもかなりギリギリだったけどね」

 

「あたしも途中から、いけるんじゃないかって思ってたわよ」

 

 ニコが笑う。

 

「まあ、あそこで無理して倒し切る必要もなかったけどね。目的は住民を助けることだったんだし」

 

「そういうことだな」

 

 ユウトも頷いた。

 

「倒せそうだからって欲張って、肝心の目的を失敗したら意味ないしな」

 

「列車が来た時は、さすがにすぐ逃げたけどな!」

 

 ビリーが笑う。

 

「大量のエーテル爆薬を積んだ列車と張り合う趣味は俺にもないぜ!」

 

「そこは僕たちも来た瞬間に離れてほしいと思ってたよ」

 

 アキラが苦笑する。

 

「うん。画面越しでも怖かったからね」

 

 リンも頷いた。

 

 猫又はそんな話を聞きながら、残っていた魚料理へ手を伸ばす。

 

 先ほどまで山のように並んでいた皿も、いつの間にか随分と減っていた。

 

「はぁ~……満足満足!」

 

「猫又、本当にいっぱい食べたね」

 

「これくらい余裕だよ!」

 

「食費……」

 

 ニコが何やら遠い目をしている。

 

「ニコ、今日は打ち上げなんだから」

 

 アキラが苦笑する。

 

「分かってるわよ。でも数字が頭から離れないの」

 

「今日くらいはいいじゃん、ニコ」

 

 猫又が満足そうに腹をさする。

 

「アタシたち頑張ったんだし!」

 

「そうなんだけど……まあ、今日はいいわ」

 

「やった!」

 

「その代わり、追加するなら常識の範囲内にしなさいよ」

 

「善処しまーす!」

 

「その返事、信用できないんだけど」

 

 ニコが呆れたように言いながらも、本気で止める様子はなかった。

 

 そんな中、ふと思い出したように猫又を見る。

 

「そうだ。猫又」

 

「ん?」

 

「あんた、明日暇?」

 

「明日?」

 

 猫又が首を傾げる。

 

「まあ……特に予定はないけど」

 

「ならちょうどいいわ。仕事あるから手伝いなさい」

 

「えっ?」

 

 猫又が目を瞬く。

 

「いやいや、ちょっと待って。なんでアタシが邪兎屋の仕事手伝うことになってるの?」

 

「今回だって一緒に仕事したじゃない」

 

「それとこれとは別でしょ!」

 

「細かいこと気にしないの」

 

「さっきまでお金の細かいこと気にしてたの誰!?」

 

「それとこれとは別問題よ」

 

「横暴!」

 

「ニコ、それもう誘う順番が逆じゃない?」

 

 アキラの指摘に、ニコが振り返る。

 

「いいのよ。どうせ誘うんだから」

 

「まだ猫又の返事を聞いてないよ」

 

「アキラ、細かいわね」

 

「そこは細かくないと思うけど」

 

「お兄ちゃんに賛成」

 

「っていうか、アタシの話だからね!?」

 

 猫又が慌てて割って入り、ニコもそれ以上ごまかす気はなくなったらしい。

 

「分かったわよ。だったら話を早くしましょうか」

 

「……何の?」

 

「邪兎屋に来なさいよ、猫又」

 

「え?」

 

 猫又が固まった。

 

「今回のことで、あんたが何をしたかはちゃんと見てた。最初にあたしたちを騙してたことまで全部なかったことにするつもりはないけど――それも含めて、今のあんたでしょ」

 

「ニコ……」

 

「それに、もう明日の仕事にも頭数として入れちゃったし」

 

「最後の一言で台無し!」

 

「いいじゃない、細かいことは!」

 

「だからそれ便利に使いすぎ!」

 

 反射的に言い返した猫又だったが、その声はすぐに小さくなった。

 

 ニコが冗談だけで言っているのではないことくらい、分かる。

 

 ビリーも期待するようにこちらを見ていた。

 

 そして――アンビーも。

 

 そこで猫又の表情が少しだけ変わった。

 

「……アンビーも?」

 

「?」

 

「アタシが邪兎屋に入っても、いいの?」

 

 アンビーが猫又を見る。

 

「どうして私に聞くの?」

 

「だって……」

 

 猫又は少しだけ言いにくそうに視線を逸らした。

 

「アンビー、最初からずっとアタシのこと疑ってたじゃん。道中だって、何かあるたびにこっち見てたし。アタシも面白がってちょっかい出してたけどさ」

 

「……うん」

 

 アンビーは否定しなかった。

 

「疑ってた」

 

「やっぱりはっきり言うね……」

 

「実際、猫又は私たちに嘘をついていた」

 

「うっ」

 

 猫又の耳が少し伏せられる。

 

「赤牙組との関係も、私たちに近づいた理由も隠してた」

 

「それは……そうだけど」

 

「だから警戒した。間違っていたとは思ってない」

 

 アンビーらしい、飾り気のない言葉だった。

 

 猫又も反論しない。

 

「でも」

 

 アンビーが続ける。

 

「今は違う」

 

「……え?」

 

「もう疑ってない」

 

 猫又が顔を上げる。

 

「今回のことで、猫又が何をしようとしていたのかも分かった。住民を助けるために危険を冒したことも、自分を犠牲にしようとしたことも見た」

 

「アンビー……」

 

「それに、一緒に戦った」

 

 アンビーは少しだけ間を置いた。

 

「十分だと思う」

 

 短い。

 

 けれど、最初から自分を疑い続けていたアンビーの言葉だからこそ、猫又には重かった。

 

「……そっか」

 

 猫又は小さく笑った。

 

「じゃあもう、アタシが怪しい動きしてないか見張らなくていいんだ?」

 

「それは別」

 

「えっ?」

 

「猫又は勝手にどこかへ行きそうだから」

 

「信用してるんじゃなかったの?」

 

「信用と監視は両立する」

 

「そんな無茶苦茶な!」

 

 張り詰めかけていた空気が、その一言でほどけた。

 

 ビリーも楽しそうに笑ってから、猫又へ向き直る。

 

「もちろん俺も大歓迎だぜ!」

 

「ビリー……」

 

「スターライトナイトにも、新たな仲間との出会いから始まる熱いエピソードがあるんだ。最初は色々あっても、一緒に死線を越えた後には背中を預けられる仲間になる――今の俺たちみたいにな!」

 

 いつものように好きな作品へ話を繋げてはいるが、言いたいことは明快だった。

 

 猫又もそれが分かったのか、少しだけ目を細める。

 

「ふふっ。ビリーらしいね」

 

「だろ?」

 

「うん。でも、言いたいことはちゃんと分かったよ。ありがと」

 

「おう!」

 

 ニコ。

 

 アンビー。

 

 ビリー。

 

 3人とも、自分の返事を待っている。

 

 アキラとリンも急かすことなく見守っていた。ユウトも何も言わない。

 

 これは猫又自身が決めることだからだ。

 

 猫又は改めてニコを見る。

 

「……本当にいいの?」

 

「何回言わせるのよ」

 

 ニコは呆れたように、それでも笑って答えた。

 

「来たいなら来なさい」

 

 短い言葉だった。

 

 それで十分だった。

 

「……じゃあ」

 

 猫又の尻尾がゆっくりと揺れる。

 

「お世話になっちゃおうかな」

 

「決まりね!」

 

「おおーっ!」

 

 リンが真っ先に声を上げる。

 

「猫又、おめでとう!」

 

「ありがとう、リン!」

 

「おめでとう、猫又」

 

 続いてアキラも笑顔を向けた。

 

「今度から依頼で一緒になる機会も増えそうだね。改めてよろしく」

 

「うん! よろしく、アキラ!」

 

「ただでさえ十分賑やかな連中だけどな」

 

 ユウトが言えば、ニコがすぐに睨んでくる。

 

「何よ、文句ある?」

 

「ないない。猫又なら似合ってると思うぞ」

 

「でしょ?」

 

 なぜかニコが得意げに胸を張る。

 

「これで邪兎屋もさらにパワーアップだぜ!」

 

 ビリーも嬉しそうに頷いた。

 

「新人歓迎会も必要だな!」

 

「今やってるのが、そのまま歓迎会になったんじゃない?」

 

 リンが言う。

 

「それならちょうどいいわね」

 

 ニコが満足そうに頷く。

 

「打ち上げと歓迎会、まとめてできたってことだし」

 

「ニコ、もしかして経費のこと考えてる?」

 

 猫又が疑わしそうに目を細める。

 

「……少しだけ」

 

「やっぱり!」

 

「邪兎屋の経営者なんだから仕方ないでしょ!」

 

 猫又は呆れたように笑った。

 

「アタシ、なかなかすごいところに入っちゃったかも」

 

「今さら気づいたの?」

 

 アンビーが平然と返す。

 

「アンビーがそれ言うんだ……」

 

 猫又はそう言いながらも、楽しそうだった。

 

「そうだ!」

 

 ひとしきり笑ったところで、猫又が何かを思いついたように耳を立てる。

 

「せっかくだし、最後にみんなで写真撮ろうよ!」

 

「写真?」

 

「うん。こういうのって記念になるでしょ?」

 

「いいじゃん!」

 

 リンが真っ先に賛成する。

 

「お兄ちゃんも撮ろうよ」

 

「もちろん。せっかく7人揃ってるんだしね」

 

「俺も賛成だぜ。せっかくなら格好よく撮ろう!」

 

「普通に撮ればいいでしょ」

 

 ニコが笑いながら席を立つ。

 

「ほら、店員さんに頼みましょ」

 

 結局、近くにいた店員へユウトのスマホを渡し、撮影を頼むことになった。

 

 テーブルの周りに7人が集まる。

 

 中央ではニコが堂々と笑い、その隣で猫又が嬉しそうに身を寄せる。アンビーはいつも通り落ち着いた表情をしており、ビリーは少し悩んだ末、片手を大きく上げた。

 

 アキラとリンもその横へ並び、ユウトも少し後ろから顔を覗かせる。

 

「それじゃあ撮りますよー」

 

 店員の声に、全員がスマホのカメラへ目を向けた。

 

「はい、チーズ!」

 

 シャッター音が鳴る。

 

 数秒後、返してもらったスマホの画面には、7人全員が収まった1枚の写真が映し出されていた。

 

「おお、いいじゃん!」

 

 猫又がユウトの手元を覗き込む。

 

「ビリー、結局ポーズ取ってるし」

 

「せっかくの記念写真だからな!」

 

「でも、いい写真だね」

 

 リンの言葉に、アキラも頷く。

 

「うん。ちゃんと全員写ってる。ユウト、後で送ってね」

 

「分かってるって」

 

「アタシにも!」

 

「もちろん」

 

 ユウトも写真を眺める。

 

 数時間前まで、全員が無事にこうして食卓を囲める保証などどこにもなかった。

 

 だからこそ、この1枚には十分な価値があった。

 

 皆が再び話し始めたところで、ユウトはスマホに保存された集合写真を選ぶ。

 

 そして誰にも告げることなく、もう1か所へもその写真を共有した。

 

【転生者掲示板】

「ビデオ屋副店長(仮)」

そういや報告

猫又、邪兎屋入り

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

あと記念写真

[スマホで撮影した7人の集合写真]

ーーーーーーーーーー

「ちびリス博士」

おおー!

猫又おねいおめでとー!

ーーーーーーーーーー

「ちびリス博士」

写真もいいなー!

みんないる!

ーーーーーーーーーー

「おっとり師範」

あらあら~

おめでとうございます、猫又さん

とてもいい写真ですねぇ~

ーーーーーーーーーー

「機械執事」

猫又嬢の加入か。

それはめでたいな。

ーーーーーーーーーー

「半々医者」

いい写真だな。

 

 ヴァレリアからの反応はなかった。

 

 先ほどのやり取りの後、また仕事へ戻ったのだろう。ユウトも返事を待つことなく、目の前の食事会へ意識を戻した。

 

 残っていた料理を片付けながら、明日の予定や今回の騒動とは何の関係もない話で盛り上がる。猫又は早くも明日の仕事についてニコへ質問し、アンビーも必要な準備について話し始めていた。

 

 そんな他愛のない時間がしばらく流れた頃。

 

 ユウトは掲示板に新しい書き込みが入ったことに気づいた。

 

【転生者掲示板】

「シーホースCEO」

猫又、邪兎屋入ったの!?

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

よかった……!

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

本当によかった!

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

テンション高いなCEO

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

うるさい!

こっちは現地であの子が何しようとしてたか見てたんだから!

そりゃ嬉しいよ!

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

あと集合写真

いい写真じゃん

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

だろ

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

これは送ってくれてありがと

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

お

素直

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

茶化すな!

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

……でもやっぱり私も写りたかった!

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

結局そこかよ

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

当たり前でしょ!

私だって一緒にいたんだから!

 

 ユウトは小さく笑い、何事もなかったように意識を現実へ戻した。

 

「で、明日の仕事って結局何するの?」

 

 猫又がニコへ尋ねている。

 

「それはこれから説明するわ。新人なんだから、ちゃんと聞きなさいよ」

 

「加入したその日の打ち上げでもう明日の仕事の説明!?」

 

「当然でしょ?」

 

「邪兎屋って思ったより忙しいんだね……」

 

「大丈夫。慣れる」

 

 アンビーが淡々と言う。

 

「その言い方、全然安心できないんだけど!」

 

 リンが吹き出し、アキラも笑う。

 

「でも、猫又ならすぐ慣れそうだね」

 

「アキラまでそんなこと言うの!?」

 

「褒めてるつもりだよ」

 

「本当かなぁ?」

 

 再び賑やかな声が店内へ響く。

 

 ユウトも呆れながら、そのやり取りを眺めていた。

 

 やがてふと思い出し、スマホを手に取る。

 

 先ほど撮った集合写真をもう一度開けば、画面には7人全員が並んで笑っていた。

 

 写真の中でも。

 

 目の前の騒がしい食卓でも。

 

 猫又は、みんなと一緒に笑っていた。

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終末世界のラーメン屋台の店長さん(作者:一反木綿豆腐)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

▼ ▼ いつ壊れ、跡形もなく崩れ去ってもおかしくない終末世界。▼ 人類最後の砦となった街、新エリー都は今日も危ういながらも何とか繁栄を謳歌する。▼ そんな街を転々とする、ラーメン屋台が一軒。▼ 何やら謎の多い店主と相棒の超々高性能ボンプは、今日も今日とて店を出す。▼  ▼ 「パエトーン」の家族として、エージェントの知人友人として生きていく。▼


総合評価:3423/評価:8.88/連載:26話/更新日時:2026年10月05日(月) 03:00 小説情報

転生者達の新エリー都、二足のわらじ生活(作者:フライパンソルジャー)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

ある者はTOPSの一角▼ある者は家事代行派遣会社のメイド▼ある者はカスタムショップの雇われ。▼しかし、彼らは裏では伝説的なホロウレイダーの集団として活動していた。▼主人公達の味方陣営を新たに作りたかった。それだけである。▼――以下ファンアート――▼『ウルト兎様』▼『buzz_by様』▼『カリジャナリ099様』▼『ころんぷす様』▼『スナノハ様』▼https:…


総合評価:14144/評価:9.29/連載:57話/更新日時:2026年02月14日(土) 02:37 小説情報

お前は部品(パーツ)だ!(おかのした!)(作者:黙々睦模目)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

▼ 前世でなんやかんやあり、死んだ陰キャで口下手なオリ主…。▼ 転生した世界はゼンレスゾーンゼロの世界で…(本人は知らない)▼ いかにも…『The』軍人です!って感じの人達に同い年くらいの子供達と囲まれ…その中でも偉そうな軍人に▼ お前らは機械の部品(パーツ)だから自我を出すな!出したら殺す!▼ と言われ、機械の部品として軍人として軍用機械の一部として戦い続…


総合評価:2608/評価:7.68/連載:16話/更新日時:2026年10月04日(日) 06:41 小説情報


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