転生者たちは今日も新エリー都を駆け回る   作:『 』を応援するテト

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第31話 研究者たちの意地

 

白祇重工の依頼を終えてから、数日が経った。

 

あの日、フライデーたち3台の知能重機を介して確認された、長らく行方不明だった《プロトタイプ》からの信号。

 

白祇重工にとっても、クレタにとっても簡単に割り切れる話ではない。それだけにパエトーンたちも結論を急かすことはせず、白祇重工からの連絡を待っていた。

 

その間、あかりも《クルクル・アカリン工房》で、3台の論理コアを調べた際に得たデータを使い、何度もシミュレーションを繰り返していた。

 

そして数日後、Random Playへ白祇重工から連絡が入った。

 

クレタが、プロトタイプを探すことを決めたのだ。

 

再び黒雁街跡地へ向かったユウトと、アキラが遠隔操作するイアスを待っていたのは、白祇重工の面々だった。

 

ただし、以前とは少々様子が違う。

 

クレタはプロキシに仕事を任せると告げてから、グレースとはほとんど目を合わせようとしない。グレースも怒っているわけではないと言いながら、今日はあくまで技術的な問題を処理するために来ただけだと、聞かれてもいないことまで強調していた。

 

イアスが2人を交互に見た。

 

『……リン。これ、僕の気のせいじゃないよね?』

 

Random Playでは、アキラのすぐそばにいるリンもモニター越しに2人の様子を見ている。

 

『うん。たぶん気のせいじゃないと思う』

 

『だよね……』

 

『お兄ちゃん、どうする?』

 

『下手に触らない方がいい気もするけど……ユウトはどう思う?』

 

突然話を振られたユウトが、面倒そうに片眉を上げた。

 

「俺に振るなよ。……まあ、仕事の話してるうちに少しは落ち着くだろ。今はそれでいいんじゃねえか?」

 

『やっぱりそうなるよね』

 

「ンナ」

 

イアスまで同意するように頷いた。

 

そこへ、あかりとツイッギーも合流した。

 

あかりの足元には、長いうさぎ耳型のセンサーを備えた《ぴょこ》と、背中を丸い甲羅状の装甲で覆った《のそのそ》が付き従っている。

 

「みんな、お待たせー!」

 

「ンナンナ!」

 

「ンナァ!」

 

2体もそれぞれ挨拶する。

 

「今日はそいつらも一緒か」

 

「うん! ホロウに入るんだもん。ぴょことのそのそも一緒だよ!」

 

名前を呼ばれ、ぴょこが元気よく跳ねる。その横では、のそのそがゆっくりと両腕を上げた。

 

『相変わらず分かりやすい名前だね』

 

「かわいいでしょ?」

 

『うん。どっちがどっちか絶対に間違えないのはいいと思う』

 

『お兄ちゃん、それ褒め方がちょっと変じゃない?』

 

『褒めてるよ』

 

「えへへー。じゃあいいや!」

 

そんなやり取りをしている間にも、ツイッギーは端末を操作し、フライデーたちの状態を順番に確認していた。

 

「雑談はそれくらいにしておきなさい。仕事で来たんでしょう?」

 

「はーい」

 

グレースが考えた捜索方法は、前回発見したプロトタイプからの信号を利用するものだった。

 

フライデー、ハンス、グレーテル。

 

3台の知能重機をホロウ内部の異なる地点へ配置し、それぞれから探索信号を送る。プロトタイプから返ってくる返信信号を3地点で受信できれば、そのデータを利用して居場所を絞り込める。

 

「3台とも状態は問題ないわ。少なくとも、探索信号を送る分には支障はなさそうね」

 

ツイッギーが端末を閉じると、あかりも大きく頷いた。

 

「こっちも同じだよ!」

 

「さすがだね。2人にも来てもらって正解だったよ」

 

グレースが満足そうに笑う。

 

「これなら安心して子供たちに働いてもらえる」

 

「それはいいけど、あなたまで問題を起こさないでちょうだい。面倒を見る相手が増えるでしょう?」

 

「もちろんさ」

 

あまりにも迷いのない即答だった。

 

ツイッギーが無言でグレースを見る。

 

あかりも同じように見上げた。

 

「……グレースおねい?」

 

「どうして2人ともそんな目で見るんだい?」

 

「信用ってのは日頃の積み重ねだからな」

 

ユウトが肩をすくめる。

 

『僕も今回はユウトに同意かな』

 

『私も』

 

「プロキシ兄妹まで酷いなあ」

 

そんなやり取りを挟みながら、一行はホロウ内部へ入った。

 

先頭近くをぴょこが軽快に進み、ときおり長い耳型センサーを動かして周囲を確認する。一方、のそのそはあかりのすぐ近くを離れない。ツイッギーも周囲を警戒しながら、その2体とあかりの歩調に合わせて進んでいた。

 

◇

 

3台を配置する地点へ向かう途中、ユウトは周囲に気づかれないよう秘密掲示板の共有機能を起動し、自分の視界に近い現地映像と音声を流し始めた。

 

【転生者掲示板】

「ビデオ屋副店長(仮)」

配信開始っと

これからプロトタイプ捜索始めるぞ

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

来たわね

こっちは見えてる

ーーーーーーーーーー

「機械執事」

映像は問題なし

音声も拾えている

ーーーーーーーーーー

「ちびリス博士」

ボク現地にいるんだけどー!

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

知ってるよ

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

画面にも映ってるしね

ーーーーーーーーーー

「ちびリス博士」

じゃあ言わなくても分かるでしょ!

ーーーーーーーーーー

「機械執事」

自分から言ったのは

ちびリス博士だけどね

ーーーーーーーーーー

「ちびリス博士」

むー!

 

思わずユウトの口元が緩む。

 

そのまま作戦が始まり、一行は3台の配置に合わせて分散した。

 

アンドーたちがそれぞれの知能重機を所定の地点へ誘導し、ユウトとイアスも別地点の安全確保を担当する。

 

グレースのもとにはフライデーが残り、その状態と探索信号を監視するため、あかりとツイッギーも同行していた。当然、ぴょことのそのそも一緒だ。

 

やがて3台すべての配置が完了する。

 

『こっちは準備できたよ』

 

イアスを通じてアキラの声が届いた。

 

続いて、Random Playで受信状況を確認しているリンが応じる。

 

『私の方でも3台とも確認できたよ。お兄ちゃん、いつでもいける』

 

『うん。グレースさん、そっちは?』

 

「いつでもいけるよ」

 

『じゃあ始めよう。細かい調整はお願いする』

 

「任せて。それじゃあ子供たち、先輩に呼びかけてみようか」

 

グレースが発信機を起動した。

 

フライデーを経由して探索信号が送出され、ホロウ内部へ広がっていく。

 

数秒が過ぎたところで、端末上に小さな反応が現れた。

 

「来た!」

 

あかりの耳がぴんと立つ。

 

別地点に配置されたハンスとグレーテルからも受信データが転送され、ツイッギーの端末上へ3本の波形が並んでいった。

 

「3台とも拾ってる。発信源も同じ……プロトタイプからの返信信号と見てよさそうね」

 

『こっちでも確認できたよ!』

 

リンの声にも喜びが混じる。

 

『うん。このままデータを取ろう。グレースさん、続けられる?』

 

「もちろんさ」

 

長らく行方不明だったプロトタイプは、今もこのホロウのどこかにいる。その事実がようやく確かなものになった。

 

だが、遠くから耳障りな咆哮が響き、ぴょこの長い耳型センサーが跳ね上がる。

 

「ンナッ!」

 

ほぼ同時に、ツイッギーも顔を上げた。

 

「……何か来るわ」

 

崩れた建物の隙間から、エーテリアスが姿を現した。1体ではない。

 

その直後、Random Playからリンの警告が飛んでくる。

 

『お兄ちゃん、グレースさんたちの周りにエーテル反応が集まってる!』

 

アキラはイアス越しの映像を確認しながら、すぐに答えた。

 

『見えてる。グレースさん、発信機が原因かもしれない。一度止めて、そこから離れよう』

 

「なるほど。この周波数、プロトタイプだけじゃなくてエーテリアスにも随分と刺激的らしいね」

 

グレースはそう言いながらも、探索信号の送出を止めようとはしなかった。

 

そこへ、別地点にいるクレタから音声回線が割り込んだ。

 

『グレース! 聞こえてんだろ! 発信を止めろ! フライデーと一緒にそこから離れろ!』

 

「それはできないよ、おチビちゃん」

 

『はあ!?』

 

グレースは端末へ視線を戻す。

 

プロトタイプから返ってくる返信信号。その間隔が、最初に比べて明らかに長くなっていた。

 

「返信が遅くなってる。たぶん、向こうの通信モジュールはもう限界に近いんだろうね。ここで探索信号を止めたら、次も返事をしてくれる保証はない。せっかく見つけたんだ、この機会を逃したくない」

 

『だからって、お前がそこに残る理由にはならねえだろ!』

 

「ここで諦めたら、またプロトタイプを見失うかもしれない。それは避けたいんだ」

 

『そういう問題じゃねえ!』

 

アキラも2人のやり取りへ入る。

 

『グレースさん。続けたい理由は僕も分かる。でも、このままそこに残るのは危険だ』

 

『お兄ちゃん、また反応が増えた!』

 

リンの声に緊張が走る。

 

『しかも大きいのが1つ、そっちへ向かってる!』

 

アキラの判断は早かった。

 

『位置を送って。ユウト、僕たちも向かう』

 

「ああ!」

 

ユウトが即座に駆け出し、イアスもその後を追う。

 

『グレースさん、僕たちが着くまで絶対に無茶しないで!』

 

しかし3台を離れた地点へ配置した以上、すぐに合流できる距離ではない。

 

クレタからの音声回線には、焦りを隠そうともしない声が飛び込んでくる。

 

『グレース! 今すぐ切れ!』

 

「悪いけど、おチビちゃん。エーテリアスの相手をしながら言い争ってる余裕はないんだ」

 

グレースはクレタたちとの音声回線だけを切った。

 

探索信号の送出は続いている。

 

回線が途切れる、その直前。

 

『姉貴ッ!!』

 

ノイズ混じりの叫びが、僅かにグレースの耳へ届いた。

 

彼女の表情が一瞬だけ動く。

 

「……ごめんね、おチビちゃん」

 

そう小さく呟くと、グレースは迫ってくるエーテリアスへ向き直った。

 

その前へツイッギーが出る。

 

「探索を続けるなら、あなたはここを動けない。そういうことね?」

 

「……そうなるね」

 

「分かったわ」

 

ツイッギーは腰の左右から2本の短刀を抜いた。

 

「あかり。グレースから離れないこと」

 

「うん!」

 

「ぴょこは私についてきなさい。のそのそは2人を守って」

 

あかりもすぐに端末を構える。

 

「ぴょこ、ツイッギーをお願い! のそのそ、グレースおねいの前!」

 

「ンナッ!」

 

「ンナァ!」

 

2体が同時に動く。

 

ぴょこは跳ねるような足取りでツイッギーの横へ。のそのそはあかりとグレースの前へ移動すると、背中の甲羅状装甲を展開し、半透明の簡易エーテルシールドを形成した。

 

最初のエーテリアスが迫る。

 

ツイッギーは真正面から受けず、振り下ろされた腕を右手の短刀で横へ逸らした。その勢いを利用して懐へ潜り込み、左手の刃でエーテル結晶部を斬りつけると、深追いせずにすぐ距離を取る。一撃で倒せるほどの威力はなく、そこへ別の個体が横から迫った。

 

「ぴょこ、左!」

 

あかりの指示に応じ、ぴょこが飛び出す。射出されたワイヤーがエーテリアスの脚へ絡みつき、踏み込みを一瞬だけ鈍らせた。

 

その隙にツイッギーが側面へ回り込み、左右の短刀を続けざまに振るう。結晶部へ亀裂が走った。

 

自分で戦況を判断するツイッギーと、その要求に合わせて2体を動かすあかり。あかり自身が前へ出ることはなく、のそのその後ろから周囲の反応と2体の状態を確認し、必要な指示だけを飛ばしていく。

 

その間もグレースは探索信号を送り続け、プロトタイプから返ってくるデータを逃さず記録していた。

 

「いいね……もう少しだ」

 

「グレースおねい、急いで!」

 

「ああ、分かってるよ」

 

だが、探索信号が続くほど周囲のエーテリアスも増えていく。

 

ツイッギーの脇を抜けた1体が発信機へ向かって突進すると、のそのそがすぐさま前へ出た。甲羅状装甲から展開したシールドを斜めに構え、真正面から受け止めるのではなく突進の軌道を横へ逸らす。

 

巨体がシールド表面を滑って瓦礫へ突っ込み、のそのその機体も反動で地面を滑った。

 

「のそのそ、出力上がってる! 一旦シールド切って!」

 

「ンナ!」

 

シールドが解除され、発生器が冷却へ移る。損傷はないものの、強い攻撃を連続して受け続けられるわけではない。

 

『あかり!』

 

アキラの声が飛んでくる。

 

『僕たちももうすぐ着く! そのままグレースさんのところにいて!』

 

「うん!」

 

『お兄ちゃん、さっきの大きい反応もすぐそこまで来てる!』

 

『分かった。ユウト!』

 

「こっちからも見えた!」

 

別地点から走るユウトの視界にも、遠方で動く巨体が入る。

 

その直後、グレースたちの前で瓦礫が吹き飛んだ。

 

これまでの個体より明らかに大きなエーテリアスが姿を現す。

 

ツイッギーは2本の短刀を構え直したものの、今度は踏み込まなかった。通常の個体ならぴょこと連携して隙を作れば急所を狙えるが、目の前の相手は体格も装甲も違う。

 

「……あれは相手にしない。あかり、ぴょこも戻して。守りを固めるわよ」

 

「うん! ぴょこ、戻って!」

 

「ンナ!」

 

ぴょこが素早く後退し、冷却を終えたのそのそも再びあかりたちの前へ出る。

 

大型エーテリアスが踏み込むと、のそのそがシールドを展開し、真正面から受け止めるのを避けながら攻撃の軌道をずらした。ツイッギーも無理に攻撃へ転じず、抜けてくる敵だけを短刀で牽制しながら、あかりとグレースの前を維持する。

 

彼女たちの役目は大型個体を倒すことではない。救援が到着するまで、グレースと発信機を守り抜けばいい。

 

そして、その時間は長く続かなかった。

 

大型エーテリアスの側面へ強烈な一撃が飛び込み、巨体が大きくよろめく。

 

「待たせたな!」

 

クレタが駆け込んでくる。

 

アンドーとベンも続き、別方向からはイアスとユウトが合流した。

 

「ンナ!」

 

『みんな無事!?』

 

アキラの声が響く。

 

ユウトはグレース、あかり、ツイッギー、そして2体のボンプへ素早く視線を走らせた。

 

「全員いるな。怪我は?」

 

「こっちは平気よ」

 

ツイッギーの返答を聞き、ユウトは忍者刀を抜く。

 

「よし。なら後は任せろ」

 

戦力が揃ってからは早かった。

 

クレタたち白祇重工の面々にユウトまで加わり、残っていたエーテリアスを次々と排除していく。

 

ほどなくして、周囲から敵影が消えた。

 

◇

 

「グレース!」

 

クレタが真っ先に駆け寄った。

 

「大丈夫か!?」

 

「安心して。プロトタイプからのデータは――」

 

「誰がそっちの心配してんだ!」

 

「え?」

 

次の瞬間、クレタが勢いよく跳び上がり、そのままグレースへ一撃を見舞った。

 

「痛っ!?」

 

「何するんだい、おチビちゃん!?」

 

「それはこっちの台詞だ! 社長の命令を無視して、勝手に危険な場所へ残りやがって!」

 

「いや、でもプロトタイプの――」

 

「だから! 会社のためだからって、何やってもいいわけじゃねえだろ!」

 

クレタの怒りは収まらない。

 

「あたしは、お前が無事かどうかって聞いてんだよ! プロトタイプを見つけたって、お前が戻ってこなかったら意味ねえだろ!」

 

グレースがようやく黙った。

 

その様子を見ていたアキラが、イアス越しに声をかける。

 

『グレースさん。探索を続けたかった理由は僕も分かる。でも、だからって自分の命まで危険に晒していい理由にはならないよ』

 

「……そうだね」

 

『それとクレタ。君の言ってることは間違ってない。でも、グレースさんも何も考えずに残ったわけじゃないと思う。周囲の状況はずっと確認してたし、僕たちが救援に向かってることも分かってた。そのうえで、僕たちが着くまでは持ち堪えられると判断したんじゃないかな』

 

グレースは少し困ったように笑った。

 

「さすがプロキシ。よく見てるね」

 

『だからって、無茶していいってことじゃないけどね』

 

「それもその通りだ」

 

リンもようやく緊張を解いたように息を吐く。

 

『でも、本当にみんな無事でよかったよ』

 

「ンナァ」

 

イアスも大きく頷いた。

 

グレースは少し黙ったあと、改めてクレタへ向き直る。

 

「……ごめん。心配させてしまったね、おチビちゃん」

 

「ったく……」

 

クレタは顔を背ける。

 

しばらくして、ぼそりと呟いた。

 

「……お前が無事だったなら、それで充分だ」

 

グレースの表情が柔らかくなる。

 

それから彼女は、少し離れたところでぴょことのそのその状態を確認しているあかりと、その隣で短刀を鞘へ戻したツイッギーへ視線を向けた。

 

「それと……2人にも謝らないとね」

 

いつもの軽い調子が、少しだけ鳴りを潜める。

 

「探索を続けると決めたのは私だ。なのに、技術支援で来てもらった君たちまで危険に巻き込んでしまった。ごめんよ」

 

あかりはグレースを見上げた。

 

「ボクは大丈夫だよ! ぴょことのそのそも一緒だったし!」

 

「それでもだよ。君たちは戦うためについてきたわけじゃないからね」

 

ツイッギーは少しだけ黙ってから、ため息をついた。

 

「……分かっているならいいわ。次はちゃんと相談しなさい」

 

「ああ。約束するよ」

 

「グレースおねい、次はちゃんと一緒に逃げようね!」

 

「もちろんさ」

 

「ならよし!」

 

あかりが笑う。

 

ユウトもそのやり取りを見届けてから近づいてきた。

 

「まあ、今回は2人ともよくやったよ。あの状況でグレース置いて逃げろってのも無理な話だしな」

 

「でしょう?」

 

あかりが胸を張る。

 

「だからって調子乗んなよ」

 

「乗ってないよー!」

 

「はいはい」

 

ユウトは笑いながら、あかりの頭へ軽く手を置いた。

 

その横では、ぴょことのそのそが揃って胸を張る。

 

「ンナッ!」

 

「ンナァ!」

 

あかりが端末で2体の状態を確認すると、どちらも機能に異常はない。のそのそのシールド発生器に一時的な負荷が残っている程度で、それもすでに正常範囲へ戻りつつあった。

 

「2体とも大丈夫そう!」

 

「ンナンナ!」

 

「ンナ~!」

 

ツイッギーもそれを確認すると、ようやく肩の力を抜いた。

 

しばらくして、アキラがRandom Play側へ確認を取る。

 

『リン、受信データは?』

 

『ちょっと待って……うん、3台分とも全部残ってるよ、お兄ちゃん。これなら次の捕捉に進めると思う』

 

『よし。じゃあ一度データを整理しよう』

 

アキラはグレースへ向き直った。

 

『グレースさん。必要な受信データは取れてる。ここからは僕たちに任せて』

 

「頼りにしてるよ、プロキシ」

 

「ンナ!」

 

イアスが胸を張った。

 

◇

 

周囲の安全を確認したところで、ユウトは流したままになっていた掲示板の共有映像へ意識を戻した。

 

【転生者掲示板】

「シーホースCEO」

とりあえず全員無事ね

ーーーーーーーーーー

「半々医者」

怪我人がいないなら

それが一番だ

ーーーーーーーーーー

「おっとり師範」

本当によかったです~

見ているだけでもひやひやしましたよ~

ーーーーーーーーーー

「機械執事」

護衛の2体も問題なさそうだ

あの連携はなかなか面白い

ーーーーーーーーーー

「ちびリス博士」

でしょー!

ツイッギーもぴょこものそのそもすごかったんだよ!

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

お前いつの間に書き込んでんだ

ーーーーーーーーーー

「ちびリス博士」

もう戦闘終わったもん!

ーーーーーーーーーー

「機械執事」

それは間違ってない

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

そこは乗っかるなよ

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

まあグレース本人も反省してるみたいだし

今回は無事で何よりね

ーーーーーーーーーー

「半々医者」

副店長

帰還したら念のため全員確認しておけ

ーーーーーーーーーー

「ビデオ屋副店長(仮)」

了解、先生

ーーーーーーーーーー

「シーホースCEO」

で

次はいよいよ場所の特定か

 

その書き込みを、ユウトはしばらく見つめた。

 

【転生者掲示板】

「ビデオ屋副店長(仮)」

だな

詳しいのはデータ解析してからだ

 

そこでユウトは共有を終了した。

 

一方、あかりもぴょことのそのそに残った実働データを保存すると、端末を閉じる。

 

「あかり、戻るわよ」

 

「はーい! ぴょこ、のそのそも行こ!」

 

「ンナッ!」

 

「ンナ~!」

 

ツイッギーを追いかけるあかりの後ろを、2体のボンプがそれぞれの速度でついていく。

 

ユウトもその様子を確認してから帰路へついた。

 

3地点から得られた返信信号は、すでにパエトーンの手元にある。

 

次にやることは決まっていた。

 

プロトタイプが待つ場所を、突き止めることだ。

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