「彩葉!当選した!SAOのβテストっ!!」「………は?」   作:未完成な人

2 / 5
ちょっとずつでも書けるように頑張ります。


2話

当選の興奮冷めやらぬまま迎えた、クローズドβテスト開始の当日。

 

「彩葉ー! 準備OK!? もうすぐ時間だよ!」

「ちょっと、室内で大声出さないで……。ナーブギアのセッティング、ちゃんと合ってる?」

 

狭いアパートの一人部屋。ベッドの上に横並びで横たわる二人。

頭部を覆う重厚なヘルメット——ナーブギアの暗闇の視界内には、カウントダウンのタイマーが淡く青い光を放ちながら秒数を刻んでいた。

「よしっ……それじゃあ彩葉、次は仮想世界で会おうね!」

「はいはい。迷子にならないでよ。」

タイマーがゼロを示した瞬間、二人は息を合わせて叫んだ。

「『リンク・スタート』!」

——五感が一度遮断され、眩い光のトンネルを駆け抜ける感覚。

視界にネットワークのシリアルコードが怒涛のように走り、全身を温かい光の粒子が包み込んでいく。

次の瞬間。

 

「……うっわぁぁぁぁぁぁ……っ!!」

 

頬を撫でる心地よい風の感触。肌に当たる暖かな陽光。どこからか漂う香辛料と焼き立てのパンの香ばしい匂い。

視界いっぱいに広がる雲一つない青空と、中世ヨーロッパを思わせる重厚な石造りの街並みに、かぐやは「はじまりの街」の広場中央で、くるくると楽しそうに跳ねて回って踊り狂っていた。

 

「なにこれ! なになにこれ!? 本物じゃん! 息もできるし、地面の感触もあるよ彩葉! あ、床も冷たくて気持ちいい!」

「……本当に、すごいわね……ってレンガに倒れないでよ!邪魔でしょ!」

 

遅れてログインしてきた彩葉も、自分の両手を握ったり開いたりしながら、言葉を失っていた。

石畳を踏みしめる感触も、身につけている布服の質感も、現実とまったく見分けがつかない。今まで触れてきたどのVR技術とも一線を画す、圧倒的な没入感。これなら確かに、ヤチヨが配信で「最高の世界が生まれる」と自信満々に宣伝していたのも頷ける。

 

「ねえ彩葉、これ見て! 右手の人差し指を上から下におろすと……じゃーん! メニューが出た!」

 

「ちょっと、あんたチュートリアル読まない派でしょ。よく知ってたわね」

 

「勘だよ勘! ほら、ここ押すと服替えたりアイテム出したりできるっぽい! スゴすぎ!」

 

かぐやは浮遊するパーソナル・メニューウィンドウをポチポチと手当たり次第に押し、アイコンがポップアップするたびに目を輝かせている。

 

「ねえ彩葉! 街の外行ってみようよ! 戦闘! バトルしよ!!」

「ちょっと待ちなさいってば! まだ武器の装備の仕方も分かってないでしょ!」

 

駆け出していくかぐやの服の裾を慌てて掴み、彩葉は溜め息をつきながらインベントリから初期装備を出現させた。光の粒子が集まり、彩葉の手元には一本の細身の剣——レイピアが現れる。かぐやにも同じように初期装備の片手直剣を渡した。

 

「うおっ、重っ! ちゃんと重さもあるんだ!?」

「手抜きがないのよこのシステム……。よし、じゃあ行くわよ」

 

二人ははじまりの街の西側に広がる、緑豊かな広い草原地帯へと足を踏み入れた。

広大な草原のそこかしこには、丸っこいイノシシのようなモンスター——《フレンジー・ボア》が歩き回っている。

「うわ、なんか出た! かわいくない豚!」

「豚じゃなくてイノシシでしょ。……ほら、ちゃんと構えて」

「よーし、かぐや様の一撃をお見舞いして……えいっ!」

かぐやが適当に大振りで剣を振り下ろす。しかし、ボアは素早く横にステップしてそれをかわすと、そのまま低い姿勢からかぐやの足元へ突進(タックル)をかました。

 

「きゃわっ!?」

「ちょっと、大丈夫!?」

 

お尻から派手に転げ倒れたかぐやだったが、視界の隅のHPゲージがほんのわずかに削れただけだった。痛覚刺激も危険がないようマイルドに抑制されているため、痛みというよりは「ポコンと押された」ような感覚だ。

 

「痛くないけど……なによアイツ! ウチの攻撃避けたんだけど!?」

「当たり前でしょ、ただ振り回すだけじゃダメなのよ。チュートリアルにも書いてあったでしょ? このゲーム、魔法のかわりの『ソードスキル』も使わないとまともにダメージが入らない仕組みになってるの」

「そーどすきる?」

 

彩葉は腰のレイピアを抜き、フレンジー・ボアに向かってスッと姿勢を低く構えた。

深呼吸をし、意識を「技の始動モーション」へと集中させる。すると、彼女のレイピアの刀身が淡い赤色の光を帯び始めた。

システムによる運動補助(システム・アシスト)が働き、彩葉の身体が自身の意志を超えた速度で前方に滑るように踏み出す。

——シュンッ!

鋭い風切り音とともに、一閃。

美しい突き技《リニアー》がボアの胴体を正確に穿ち、赤く輝くエフェクトの傷跡を刻み込んだ。

ボアは短い悲鳴を上げ、ポリゴンの光の破片となって弾け飛ぶ。

直後、パラパラという効果音とともに、彩葉の視界に『Exp』と『Col』の入手ログが踊った。

 

「……すごっ! 今のなに彩葉!? カッコいい!!」

「システムが勝手に身体を動かしてくれる感じ……すごく不思議な感覚。構えを正しく取れば、技が発動するみたい」

「なるほどね……構えて、キュインって光ったら撃つ! よーし、かぐやもやる!!」

 

コツを速攻で掴んだかぐやは、近くにいた別のボアに向かって猛ダッシュした。

右足を大きく引き、剣を右後ろに引き構える。刀身が鮮やかな青色の光を帯びると同時に、かぐやの口元がニヤリと上がった。

「喰らいなさーいッ! かぐや様特製、超ハッピー斬り——!!」

——ズバァンッ!!

単発攻撃スキル《スラント》がボアを一刀両断し、豪快な重低音とともにポリゴンの光の塵へと変えた。

 

「やったーーーッ! 斬れた! 超気持ちいい!!」

「『超ハッピー斬り』って何よ……ただのスラントでしょ。でも……ふふ、本当にすごい世界ね」

 

「こんなことも知ってるなんて…さては彩葉結構楽しみにしてたぁ〜??」

「え!?べ、別に少し気になって調べてただけだしッ」

「少しねぇ〜?」

「あーもう〜っっこの話し終わり!!」

 

青空の下、はじけ飛び散るポリゴンの光を浴びながら、かぐやと彩葉は顔を見合わせて笑い合った。

目の前に広がる圧倒的なグラフィック、本当に自分が異世界に入り込んだかのような感覚。

現実の煩わしいルールも、逃れられない宿命もここにはない。ただ純粋に、五感すべてで体験する「新しい世界」の刺激が、二人の胸を熱く躍らせていた。

「ねえ彩葉! かぐや、もっと強いやつ倒したい! この先のあの洞窟行こうダンジョン、ダンジョン!!」

 

「ちょっと、調子に乗らないの! まだレベル1なんだから、普通まずは安全なところでレベル上げでしょ!?」

 

「えーっ! 大丈夫だって! かぐやの超強運があればボスだってイチコロだから!」

 

「根拠がない!!」

呆れながらツッコミを入れる彩葉と、全速力でさらに奥のフィールドへと走っていくかぐや。

こうして、二人にとっての『ソードアート・オンライン』βテストでの大冒険が、賑やかに幕を開けたのだった。




SAOと超かぐや姫の親和性は抜群なので誰かホントにもっともっと書いて欲しいものです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。