この世界の長い戦争の歴史を語るなら。
まず。
一つの惑星について話さなければならない。
――**惑星ルゥ**
◇
惑星ルゥには。
**《エルネアの民》**と呼ばれる種族が暮らしていた。
吸血鬼の性質を持ち。
強靭な肉体と。
長い寿命を持つ者たち。
そして。
彼らには。
他の多くの種族にはない特徴があった。
**宇宙空間を、自らの力で移動することができる。**
宇宙船に乗る必要はない。
星と星の間に広がる宇宙を渡り。
別の惑星へ辿り着くことのできる種族だった。
そして。
惑星ルゥには。
もう一人。
同じように星々の間を渡ることのできる存在がいた。
――**星魅の巫女《パヌト》**。
◇
惑星ルゥの周辺には。
巨大な宇宙生物が生息している。
長い身体をうねらせ。
真空の宇宙を泳ぐ。
地上に生きる者から見れば。
宇宙怪獣とでも呼ぶべき異形の生物たち。
そんな環境の中で。
エルネアの民は。
長い歴史を築いてきた。
しかし。
ある時から。
彼らは。
自分たちの故郷だけで生き続けることが難しくなっていった。
このまま。
惑星ルゥだけに留まり続けるのか。
それとも。
新たな土地を探すのか。
エルネアの民は。
後者を選んだ。
◇
幸いにも。
彼らには。
宇宙を渡る力がある。
ならば。
次に自分たちが暮らせる星を探せばいい。
そうして。
エルネアの民は。
新たな生存圏を求め。
星々を渡った。
そして。
二つの惑星を見つける。
――**惑星ストリジア**。
そして。
――**地球**。
◇
どちらも。
生命が生きていくことのできる惑星だった。
大地がある。
水がある。
文明がある。
エルネアの民が。
新たに暮らしていくことのできる環境が存在している。
ただし。
一つ。
大きな問題があった。
**既に、そこには別の者たちが暮らしていた。**
◇
惑星ストリジアには。
神。
天使。
竜人。
魔族。
精霊。
獣人。
エルフ。
ドワーフ。
ヒューマン。
様々な種族が。
国を築いていた。
一方。
地球では。
人間が文明を築いている。
当然。
そこは。
誰もいない土地ではない。
誰かの故郷だった。
だが。
エルネアの民にも。
次に生きる場所が必要だった。
話し合いだけで。
すべてが解決することはなかった。
やがて。
土地を守る者と。
土地を求める者は。
敵となった。
◇
こうして。
惑星ルゥは。
**惑星ストリジアと地球。**
二つの惑星を相手に。
戦争を始めることになる。
そして。
エルネアの民が。
侵略のために用意したもの。
それは。
巨大な戦艦でもなければ。
惑星を破壊する兵器でもなかった。
もっと。
静かで。
もっと。
恐ろしいものだった。
――**《PNTウイルス》**。
生物兵器である。
◇
それは。
雨となって。
空から降った。
雨粒は。
青かった。
だから。
人々は。
その災厄を。
こう呼んだ。
――**《青い雨》**。
◇
青い雨によって。
PNTウイルスは。
広大な土地へ拡散される。
人へ。
動物へ。
そして。
この世界を支える。
目に見えない存在にまで。
感染していった。
感染者が死ねば。
その死体が。
再び動き始める。
――**《屍》**。
屍は。
青い雨によって狂暴化し。
生きている者を襲う。
元に戻す方法は。
存在しない。
家族であろうと。
友人であろうと。
愛した者であろうと。
一度屍となれば。
その生を完全に終わらせることだけが。
唯一の救済だった。
◇
だが。
PNTウイルスが感染したのは。
生物だけではない。
――**《人工精霊》**。
惑星ストリジアの能力と文明を支える。
目には見えない精霊。
その人工精霊にまで。
PNTウイルスは感染した。
感染した人工精霊は。
変質する。
一つ。
また一つ。
互いに集まり。
増殖し。
やがて。
形を得る。
そして。
生物のように。
動き始める。
人工精霊から生まれた異形。
それを。
人々は――
**《ピリット》**と呼んだ。
◇
人間を。
《屍》へ。
人工精霊を。
《ピリット》へ。
世界を支えていた生命と力そのものを。
敵へと変える。
それが。
惑星ルゥが。
地球と惑星ストリジアを侵略するために使用した生物兵器。
**《青い雨》だった。**
◇
そして。
この戦争を語るためには。
もう一つ。
知っておかなければならないものがある。
惑星ストリジアという星が。
**どのような世界だったのか。**
惑星ストリジアは。
地球とは違う。
ただ人々が集まり。
土地を支配すれば。
国を名乗れる世界ではない。
そこには。
《屍》が現れる遥か以前から存在する。
古い。
古いルールがあった。
――**《神精霊》**。
神系宇宙に所属する星々が。
国を得るために必要とする存在。
神精霊が。
王を選ぶ。
神精霊が。
国を認める。
そして。
王が。
神精霊の定めた約束を破れば。
神精霊は消滅し。
**その国さえ、滅びる。**
そんな世界へ。
青い雨は降った。
そして。
惑星ルゥ。
惑星ストリジア。
地球。
三つの星を巻き込む戦争が。
世界《エマ》の歴史を。
大きく変えていくことになる。