エマ   作:篠原えれの

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第四十八話『昔の弟子』

 

 夕食を終えた後の城は、昼間とは違った静けさに包まれていた。

 

 もちろん完全に静かなわけではない。廊下を歩けば夜番の兵士とすれ違うし、遅くまで仕事をしている者もいる。少し前まではリリーの声も聞こえていた。

 

 けれど、七歳の娘もさすがに一日中走り回れば疲れるらしい。今頃は自室に戻っているはずだ。

 

 レアも今日は朝から忙しかった。

 

 午前中はキリナからスフロン語を習い、午後はギルと剣術の稽古。それが終わればミカエルのところへ行って、今度は無詠唱術について聞いていた。

 

 四歳児の予定ではない気がする。

 

 そんなことを考えながら、コウヤはギルの部屋で茶を飲んでいた。

 

 何か用事があったわけではない。

 

 仕事が早く片付いたから寄っただけだ。

 

 こういう時間も、昔と比べれば随分減った。

 

 コウヤ自身が家庭を持ったこともあるし、ギルにも仕事がある。毎日のように顔は合わせているのに、父と息子だけで何をするでもなく過ごす機会は、意外と少ない。

 

「父さん」

 

「なんだ?」

 

 ギルは手元の資料から顔を上げなかった。

 

「俺ってさ」

 

「ああ」

 

「小さい頃、どんな子供だった?」

 

 そこで。

 

 ようやく。

 

 ギルが顔を上げた。

 

「……急にどうした」

 

「いや、なんとなく」

 

「お前の『なんとなく』は昔から信用できん」

 

「なんでだよ」

 

「何かある時ほどそう言う」

 

「別に何もないって」

 

 コウヤは苦笑して、椅子の背へ身体を預けた。

 

「今日、レアに剣教えてたんだよ」

 

「お前が?」

 

「ちょっとだけな。持ち替える時に手元見すぎてたから、それ直したくらい。あとは父さんに聞けって言っといた」

 

「そうか」

 

「リリーにも少し教えた」

 

「どうだった?」

 

「…………」

 

 コウヤは一瞬だけ黙った。

 

「元気だった」

 

「そうか」

 

「なんだよ」

 

「何も言っていない」

 

「今絶対分かっただろ」

 

「何がだ」

 

「リリーがあんまり上手くなかったって」

 

「お前がそう言ったんだろう」

 

「言ってない。元気だったって言っただけ」

 

「なら、それでいい」

 

 口元だけで、ギルが少し笑う。

 

「父さん、孫には甘いよな」

 

「お前も娘には甘いだろう」

 

「俺はちゃんと怒ってる」

 

「そうか?」

 

「怒ってるって。今日だってリリーに――」

 

 そこまで言って。

 

 コウヤは、今日の出来事を思い出した。

 

「……魔道具壊したから怒った」

 

「何をした?」

 

「スフロン語」

 

「…………」

 

「子供用の魔道具に術式流して、もっと光らせようとしたらしい」

 

「何故そんなことを」

 

「綺麗かなって」

 

「…………」

 

「その顔やめろよ。俺も聞いた時そうなったから」

 

 ギルは何も言わなかった。

 

 ただ、少し考えるように息子を見る。

 

「何」

 

「いや」

 

「なんだよ」

 

「お前も似たようなことをしていたと思ってな」

 

「俺が?」

 

「ああ」

 

「魔道具壊した?」

 

「それは知らん。お前は魔道具を使えんからな」

 

「だよな」

 

「だが錬金術を覚え始めた頃は、似たようなものだった」

 

「…………マジ?」

 

「興味を持ったものには、とにかく自分で触りたがった」

 

「それ普通じゃない?」

 

「止められてもやった」

 

「…………」

 

「説明を聞く前にもやった」

 

「…………」

 

「失敗してもやった」

 

「父さん」

 

「なんだ」

 

「俺、そんな面倒臭い子供だった?」

 

「そこまでは言っていない」

 

「今の説明で十分言ってるよ!」

 

 思わず身を乗り出したコウヤに、ギルは肩を竦めるだけだった。

 

「でも俺、誰に錬金術教えてもらってたっけ。父さん?」

 

「俺も多少は教えたが」

 

「うん」

 

「主に教えていたのは俺じゃない」

 

「…………」

 

 言われて。

 

 記憶の奥にあるものが。

 

 ほんの少しだけ浮かんだ。

 

「……ミカエル?」

 

「ああ」

 

「そうだったっけ」

 

「忘れたのか?」

 

「全部は覚えてないよ。何歳の頃だよ」

 

「六つか七つくらいだったか」

 

「リリーと同じくらいじゃん」

 

「そうだな」

 

 七歳。

 

 今のリリーを見る限り、その年頃の子供というものがどんなものかは嫌というほど分かる。

 

 好奇心が先に走る。

 

 できると思ったらやる。

 

 失敗してから考える。

 

「……俺、リリーに怒れない気がしてきた」

 

「何故だ」

 

「同じことやってたんだろ?」

 

「だからこそ怒れるんじゃないのか」

 

「え?」

 

「自分が失敗したのなら、何が危険なのかも分かるだろう」

 

「…………」

 

「ただ禁止するだけではなく、何故駄目なのかを教えてやればいい」

 

「……父さん、たまにすごい父親っぽいこと言うよな」

 

「たまにとは何だ」

 

「いや、父さんなんだけど」

 

「お前は俺を何だと思っている」

 

「父さん」

 

「ならいい」

 

「いいんだ」

 

 思わず笑ってしまう。

 

 その時だった。

 

「何の話だ?」

 

 背後から声がした。

 

「うわっ」

 

 コウヤが振り返る。

 

 扉のところに、ミカエルが立っていた。

 

「何故、私の顔を見て『うわ』と言う」

 

「急にいるからだよ!」

 

「今来たところだ」

 

「ノックしろよ」

 

「した」

 

「聞こえなかった」

 

「お前が騒いでいたからだ」

 

「俺のせい!?」

 

 ミカエルは気にする様子もなく部屋へ入ってくると、ギルの向かいにある空席へ腰を下ろした。

 

「それで?」

 

「何が?」

 

「私の名前が聞こえた」

 

「聞こえてるじゃん」

 

「名前だけだ。何の話をしていた?」

 

「……俺の昔の話」

 

「昔?」

 

「小さい頃」

 

「…………」

 

 ほんの一瞬。

 

 ミカエルが黙った。

 

「その顔!」

 

「何だ」

 

「父さんもさっき同じ顔した!」

 

「私は何もしていない」

 

「絶対なんか思い出しただろ!」

 

「いくつか」

 

「いくつかあるの!?」

 

「かなりある」

 

「増えた!」

 

 ギルが静かに茶を飲んでいる。

 

 助けてくれる気はないらしい。

 

「俺、そんなに問題児だった?」

 

「問題児というほどではない」

 

「ほら!」

 

「話を聞かなかっただけだ」

 

「それ問題児寄りじゃん!」

 

「好奇心は強かった」

 

「それはいいことだろ」

 

「強すぎた」

 

「…………」

 

「一つ教えると、三つ先まで勝手に試した」

 

「…………」

 

「止めると、『できる』と言った」

 

「…………」

 

「失敗すると、『今のなし』と言った」

 

「…………」

 

「コウヤ」

 

「ちょっと待って」

 

「なんだ」

 

「なんか記憶戻ってきた」

 

「そうか」

 

「やめて。恥ずかしい」

 

「何故だ」

 

「子供の頃の話って恥ずかしいだろ!」

 

 けれど。

 

 思い出してしまった。

 

 ◇

 

 まだ。

 

 今よりずっと世界が大きく見えていた頃。

 

 椅子に座れば足が床まで届かず、机の上に置かれた道具一つ一つが妙に大きく見えた。

 

『コウヤ』

 

『なに?』

 

『触るな』

 

『触ってない』

 

『今、触ろうとした』

 

『触ってないよ』

 

『手を戻せ』

 

『…………』

 

 小さな手が。

 

 渋々。

 

 机の下へ引っ込む。

 

 その目の前には、いくつかの金属片が並んでいた。

 

 形も。

 

 大きさも。

 

 色も違う。

 

 幼いコウヤには、それが何に使うものなのかさえ分からなかった。

 

『今日はこれを使う』

 

『剣作る?』

 

『作らない』

 

『なんで?』

 

『お前にはまだ早い』

 

『できるよ』

 

『できない』

 

『できる!』

 

『なら』

 

 ミカエルが。

 

 一つの金属片を持ち上げた。

 

『これは何だ』

 

『鉄』

 

『それだけか?』

 

『鉄だよ』

 

『何が含まれている』

 

『…………』

 

『答えろ』

 

『…………鉄』

 

『分からないんだろう』

 

『分かる』

 

『では答えろ』

 

『…………』

 

 しばらく。

 

 沈黙。

 

『ミカエル』

 

『なんだ』

 

『教えて』

 

『最初からそう言え』

 

『だって分かると思ったんだもん』

 

『思うことと、理解することは違う』

 

『難しい』

 

『だから教えている』

 

 ミカエルは。

 

 金属片を机へ戻した。

 

『錬金術は、何もないところから好きなものを作る術ではない』

 

『知ってる』

 

『最後まで聞け』

 

『はい』

 

『まず、そこに何があるのかを理解する』

 

 指先で。

 

 金属を示す。

 

『何で出来ている。どんな性質を持っている。何を残し、何を取り除く。形を変えれば、どこに負荷がかかる』

 

『…………』

 

『理解してから錬成する』

 

『全部?』

 

『全部だ』

 

『めんどくさい』

 

『ならやめるか』

 

『やる!』

 

『では覚えろ』

 

『はい』

 

 しばらくは。

 

 ちゃんと聞いていた。

 

 少なくとも。

 

 本人はそのつもりだった。

 

『ここが不純物だ』

 

『これ?』

 

『そうだ』

 

『取るの?』

 

『今回はな』

 

『取ったらできる?』

 

『まだだ』

 

『でも分かった』

 

『まだ錬成するな』

 

『できるよ』

 

『コウヤ』

 

『見てて!』

 

『待て』

 

 小さな手が。

 

 金属へ伸びる。

 

 錬成。

 

 光が走った。

 

 次の瞬間。

 

 ぱきん。

 

『…………』

 

 出来上がったものは。

 

 見事に。

 

 真ん中から割れた。

 

『…………』

 

『…………』

 

 沈黙。

 

『ミカエル』

 

『なんだ』

 

『今のなし』

 

『なしにはならない』

 

『もう一回』

 

『駄目だ』

 

『今度できる!』

 

『先ほどもそう言った』

 

『今度はほんと!』

 

『駄目だ』

 

『お願い!』

 

『駄目だ』

 

『一回だけ!』

 

『話を聞け』

 

『聞く!』

 

『本当か?』

 

『聞くから!』

 

『…………』

 

 長い沈黙。

 

『一回だ』

 

『やった!』

 

『その代わり、最初から説明する』

 

『うん!』

 

『途中で触るな』

 

『うん!』

 

『勝手に錬成するな』

 

『うん!』

 

『返事だけはいいな』

 

『早くやろ!』

 

『…………』

 

『ミカエル?』

 

『ギル』

 

 少し離れたところで見ていたギルへ。

 

 ミカエルが顔を向けた。

 

『何だ』

 

『返していいか』

 

『駄目だ』

 

『父さん!?』

 

『自分でミカエルに教わると言ったんだろう』

 

『言ったけど!』

 

『最後までやりなさい』

 

『…………はい』

 

 ◇

 

「…………」

 

 現在。

 

 コウヤは両手で顔を覆っていた。

 

「思い出した」

 

「そうか」

 

「なんで父さんあの時助けてくれなかったんだよ」

 

「お前が自分で言い出したからだ」

 

「子供だぞ!?」

 

「だからこそだ」

 

「厳しくない!?」

 

「途中で投げ出す癖をつけるよりいい」

 

「…………」

 

 反論できない。

 

「でも」

 

 コウヤは手を下ろして、ミカエルを見る。

 

「よく教えてたな、お前」

 

「何がだ」

 

「俺、めちゃくちゃ面倒じゃん」

 

「面倒だった」

 

「そこは否定しろよ!」

 

「何度かギルに返そうとした」

 

「さっき思い出したよ!」

 

「だが、次の日になるとまた来た」

 

「俺が?」

 

「ああ」

 

「自分から?」

 

「朝から」

 

「…………」

 

「『昨日の続き』と言ってな」

 

「…………」

 

 それは。

 

 何となく。

 

 覚えている。

 

 失敗したことよりも。

 

 できなかったことよりも。

 

 昨日より少しだけ分かるようになることが。

 

 楽しかった。

 

『ミカエル!』

 

『走るな』

 

『昨日のやつ!』

 

『まず挨拶をしろ』

 

『おはよう! 昨日の続き!』

 

『…………』

 

『今日はできるから!』

 

『昨日も聞いた』

 

『今日はほんと!』

 

 毎日のように。

 

 そんなことを言っていた気がする。

 

「俺、お前のこと好きだったんだな」

 

「何だ、急に」

 

「いや。錬金術だけだったら、別の奴に教えてもらってもよかっただろ?」

 

「…………」

 

「それでも毎日ミカエルのとこ行ってたんだろ?」

 

「そうだな」

 

「父さん」

 

「なんだ」

 

「俺、そんなにミカエルに懐いてた?」

 

「かなりな」

 

「かなり!?」

 

「ミカエルがいないと探しに来た」

 

「嘘だろ」

 

「本当だ」

 

「どこに行ったって?」

 

「ああ」

 

「…………」

 

「見つけると、そのままついていった」

 

「…………」

 

「仕事中でも」

 

「父さんもういい」

 

「そうか」

 

「恥ずかしくなってきた」

 

 ミカエルは。

 

 そんなコウヤを見ながら。

 

 昔を思い出すように言った。

 

「質問が多かった」

 

「俺?」

 

「ああ」

 

「どんな?」

 

「『これは何』『何故こうなる』『自分でもできるか』」

 

「…………」

 

「大抵その三つだった」

 

「今も変わらんな」

 

 ギルが言う。

 

「父さん?」

 

「アージェリカ」

 

「…………」

 

「エレノアにも似たようなことを聞いていただろう」

 

「なんで知ってんの」

 

「ソーサリーから聞いた」

 

「あいつ何でも喋るな!?」

 

「違うのか?」

 

「違わないけど!」

 

 否定できない。

 

 アージェリカの構造を見た時もそうだった。

 

 これは何だ。

 

 どうやって動いている。

 

 何故この機構が必要なのか。

 

 エルサイアの技術で代用できるのか。

 

 自分でも作れるか。

 

 気になった。

 

 知りたかった。

 

 できるなら。

 

 自分でも触ってみたかった。

 

「……変わってないじゃん、俺」

 

「そう言っただろう」

 

「ミカエル、もっと早く教えてくれよ」

 

「聞かれなかった」

 

「確かに」

 

 コウヤは苦笑した。

 

 そして。

 

 少ししてから。

 

「じゃあ」

 

 ふと。

 

 思う。

 

「俺が今、錬金術できるのって」

 

「?」

 

「結構、お前のおかげなんだな」

 

「…………」

 

 ミカエルが。

 

 少しだけ黙った。

 

「何だよ」

 

「いや」

 

「そこで黙るなよ」

 

「教えたのは私だけではない」

 

「それは分かってる。父さんにも教えてもらったし、他にも色んな奴から習ったし」

 

「ああ」

 

「でも」

 

 コウヤは。

 

 自分の手を見る。

 

 今日。

 

 リリーが壊した魔道具を。

 

 この手で直した。

 

 自分では起動することすらできない魔道具。

 

 それでも構造を理解して。

 

 壊れた箇所を探して。

 

 必要なものを錬成して。

 

 娘へ返した。

 

「最初にちゃんと教えてくれたの、お前だったんだろ?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、お前のおかげでもあるじゃん」

 

「…………」

 

「ありがとな」

 

「…………」

 

「何」

 

「珍しいと思ってな」

 

「何が?」

 

「お前が素直に礼を言うのが」

 

「言うわ!」

 

「そうだったか?」

 

「父さん!」

 

「俺に聞くな」

 

「なんだよ二人とも!」

 

 コウヤは笑った。

 

 ミカエルも。

 

 ほんの僅かに。

 

 口元を緩める。

 

「でも」

 

 ミカエルが言った。

 

「教えてよかったとは思っている」

 

「…………」

 

「お前は失敗が多かった」

 

「そこ要る?」

 

「話を最後まで聞かなかった」

 

「それも要る?」

 

「勝手に試した」

 

「もういいって!」

 

「だが」

 

 そこで。

 

 ミカエルは言葉を切った。

 

「覚えるのは早かった」

 

「…………」

 

「一度、自分で理解したことは忘れなかった。失敗したことも、次には直そうとした」

 

「…………」

 

「だから教えていた」

 

「そっか」

 

「ああ」

 

 それだけだった。

 

 けれど。

 

 コウヤには十分だった。

 

「じゃあさ」

 

「なんだ」

 

「今度も教えてよ」

 

「何を」

 

「アージェリカ」

 

「エレノアに聞け」

 

「そこをなんとか!」

 

「専門外だ」

 

「錬成部分だけ!」

 

「ソーサリーがいる」

 

「昔の先生にも教えてほしいんだよ」

 

「…………」

 

「な?」

 

「…………仕方ないな」

 

「やった!」

 

「ただし」

 

「何?」

 

「昔と同じだ」

 

「…………嫌な予感する」

 

「説明は最後まで聞け」

 

「聞くよ!」

 

「勝手に錬成するな」

 

「しない!」

 

「材料を無駄にするな」

 

「もう子供じゃないんだけど!」

 

「失敗した時に『今のなし』と言うな」

 

「それはもう忘れろ!!」

 

 ギルが。

 

 とうとう声を出して笑った。

 

「父さんまで笑うなよ!」

 

「いや、すまん」

 

「絶対すまんと思ってないだろ!」

 

「懐かしくてな」

 

「俺だけ恥ずかしいじゃん!」

 

 文句を言いながらも。

 

 コウヤ自身。

 

 笑っていた。

 

 父親になった。

 

 夫になった。

 

 昔とは比べものにならないくらい、背負うものも増えた。

 

 娘に物を教える立場になって。

 

 駄目なものは駄目だと叱るようにもなった。

 

 けれど。

 

 父さんの前では。

 

 今でも息子で。

 

 ミカエルの前では。

 

 今でも少しくらい。

 

 昔の弟子でいられる。

 

「父さんも来る?」

 

「どこへだ」

 

「アージェリカ作る時」

 

「俺は錬金術師ではないぞ」

 

「見てればいいじゃん」

 

「何故」

 

「なんとなく」

 

「またそれか」

 

「いいだろ」

 

 コウヤが。

 

 笑う。

 

「昔みたいでさ」

 

 その言葉に。

 

 ギルは。

 

 少しだけ目を細めた。

 

「……そうだな」

 

「だろ?」

 

「邪魔にならないならな」

 

「ならないって」

 

「私はまだ作るとは言っていない」

 

「ミカエル!」

 

「錬成部分を教えると言っただけだ」

 

「同じようなもんじゃん!」

 

「違う」

 

「いいじゃん、三人でやろうぜ」

 

「お前は昔から勝手に話を進めるな」

 

「じゃあ四人! ソーサリーも!」

 

「増やすな」

 

「エレノアも必要だな」

 

「コウヤ」

 

「何?」

 

「まず」

 

 ミカエルが。

 

 昔と。

 

 全く同じ顔をして。

 

 言った。

 

「話を最後まで聞け」

 

「…………」

 

 コウヤが黙る。

 

 ギルを見る。

 

 助けはない。

 

「……はい」

 

「よろしい」

 

「…………」

 

 数秒。

 

「やっぱ昔と同じじゃん!」

 

 今度は。

 

 三人の笑い声が。

 

 静かな夜の部屋に響いた。

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