――コウヤがクイントを殺した。
その事実を、ミカエルはまだ受け入れられずにいた。
受け入れられないまま、それでも彼はコウヤを止めた。
止めるしかなかった。
クイントを殺し、ギルを殺し、リリーにまで重傷を負わせたコウヤは、一度だけ正気を取り戻した。
ほんの僅かな時間だった。
自分が何をしたのかを理解するには、十分すぎるほどの時間だった。
『ミカエル』
あの声が、まだ耳に残っている。
『頼む』
血に濡れた手で、それでもコウヤはミカエルの腕を掴んだ。
『俺を、止めてくれ』
殺してくれとは言わなかった。
けれど、意味は同じだった。
自分ではもう、自分を止められない。
また正気を失う。
次は誰を殺すか分からない。
レアかもしれない。
生まれたばかりのレオナかもしれない。
あるいは、名前も知らない誰かかもしれない。
そして実際に。
コウヤは再び狂った。
だから。
ミカエルは、その命を絶った。
◇
「…………」
腕の中から力が抜けていく。
つい先ほどまで暴れていた身体が、嘘のように静かになっていた。
ミカエルはコウヤを床へ横たえた。
乱れた衣服を直し、開いたままになっていた瞼を閉じる。
「……これで」
声が出ない。
一度、息を吸う。
「これで、よかったのですか」
返事はなかった。
当然だった。
「貴方に頼まれたからといって……」
自分の手を見る。
「私が貴方を殺した事実は、変わりません」
もっと早く気づいていれば。
もっと早く来ていれば。
何か違ったのだろうか。
「…………」
考えたところで、答えなど出ない。
ミカエルは立ち上がった。
その先に。
ギルがいた。
「…………」
倒れた聖騎士は、もう動かなかった。
最後まで戦った痕跡だけが残っている。
近距離であれば、誰よりも恐ろしい男だった。
僅かな間合いを取られただけで、相手はサバイバルナイフの殺傷圏内へ入る。
体術。
関節技。
精霊弾。
必要なら銃器による精密射撃。
積み重ねてきた技術だけなら、怪物と呼んでも差し支えないほどの男だった。
それでも。
死んだ。
「……ギル」
ミカエルはその傍へ膝をついた。
首筋へ指を当てる。
分かっている。
それでも。
確かめずにはいられなかった。
「…………」
何もない。
「貴方まで……」
それ以上は言えなかった。
ギルが守ろうとしたものを思えば。
その先にいる者を、見ないわけにはいかなかった。
けれど。
ミカエルの足は、すぐには動かなかった。
「…………」
視線の先。
クイントがいる。
血の中に。
横たわっている。
「…………クイント」
呼んだ。
返事はない。
もう一度呼ぶ勇気が出なかった。
一歩。
それでも進む。
また一歩。
やがて。
クイントの傍へ膝をついた。
「…………」
手を取る。
冷たい。
握り返してはくれない。
「……貴女は」
声が掠れた。
「何をしているんですか」
返事はない。
「起きてください」
分かっている。
起きない。
「貴女なら……何か言うでしょう」
それでも話しかける。
「いつまで寝ているんだと私が言えば、余計なお世話だとでも言うのでしょう」
何も。
返ってこない。
「……言ってください」
握った手に、少しだけ力が入った。
「何でもいい」
叱られてもいい。
呆れられてもいい。
くだらないことでもいい。
「貴女の声で……何か」
静寂だけが返ってくる。
「…………」
十五歳で王になった。
若すぎる王だった。
最初から何もかも完璧だったわけではない。
迷って。
悩んで。
それでも少しずつ、クイントは王になっていった。
コウヤと出会った。
家族になった。
リリーが生まれた。
レアが生まれた。
そして。
レオナが生まれた。
「……レオナは」
まだ赤子だ。
「貴女の顔すら……覚えられないでしょう」
口にして。
初めて、その意味が胸へ落ちてきた。
「リリーは……行方さえ分からない」
爆発の混乱の中。
重傷を負っていたはずのリリーは姿を消した。
「レアも」
まだ。
母を失っていい年齢ではない。
「三人を残して」
握った手は。
もう温かくならない。
「コウヤまで、あんなことになって」
そして。
「私たちまで残して」
そこで。
とうとう言葉が詰まった。
「……何をしているんですか」
返事はない。
「貴女は……こんなところで死ぬ人ではなかったでしょう」
国王だからではない。
ただ。
クイントだから。
「まだ、やることがあったでしょう」
国のこと。
子供たちのこと。
家族のこと。
これから先の。
何でもない日々のこと。
「クイント」
王とは呼ばなかった。
「起きてください」
もう一度。
「……お願いします」
それでも。
奇跡は起きなかった。
「…………っ」
頬を何かが伝った。
クイントの手の甲へ落ちる。
ミカエルは、それを拭わなかった。
ただ。
しばらく。
彼女の手を握っていた。
◇
どれほど時間が経ったのか。
やがて。
「…………?」
ミカエルが顔を上げた。
違和感があった。
血と。
人工精霊と。
いくつもの力が入り混じった王宮の中。
その中に。
覚えのあるものがある。
「…………」
コウヤを見る。
近づく。
そして。
残された気配へ触れる。
「……まさか」
知っている。
この力を。
「…………貴女ですか」
悲しみは消えなかった。
絶望も。
何一つ。
消えてはいない。
ただ。
その奥から。
静かに。
殺意だけが浮かび上がった。
◇
星魅の巫女を見つけるまでに、それほど時間はかからなかった。
「…………」
女が振り返る。
「ミカエル」
「…………」
「随分な顔ね」
「そうですか」
「何かあった?」
ミカエルは答えなかった。
ただ。
彼女を見た。
「コウヤに何をしました」
「…………」
僅かな沈黙。
それだけで。
十分だった。
「……そうですか」
ミカエルが一歩近づく。
「やはり、貴女だったのですね」
「待って」
「何をです?」
「話くらい――」
「黙りなさい」
星魅の巫女の表情が変わった。
「クイントが死にました」
「…………」
「ギルも」
一歩。
「コウヤも」
さらに。
一歩。
「リリーは行方が分からない」
「…………」
「レアは母親を失った」
もう一歩。
「レオナは」
声が詰まる。
「……母親の顔を覚えることすらできない」
「ミカエル」
「貴女がやったのですか」
「殺したのは私じゃない」
「ええ」
ミカエルは否定しなかった。
「クイントを殺したのはコウヤです」
「なら――」
「ギルを殺したのも、コウヤです」
「だったら」
「そして」
自分の手を見る。
「コウヤを殺したのは、私です」
「…………」
「私が殺しました」
まだ。
感触が残っている。
「彼に頼まれたから」
止めてくれと。
「これ以上、誰かを殺す前に」
だから。
「私が殺した」
「…………」
「ですが」
ミカエルが顔を上げる。
「そうさせたのは」
星魅の巫女を見据えた。
「貴女でしょう」
「…………」
「貴女がコウヤを狂わせた」
一歩。
「貴女がクイントを殺させた」
一歩。
「ギルを殺させた」
一歩。
「リリーまで傷つけさせた」
「ミカエル、私は――」
「もういい」
「…………」
「貴女の言葉を聞くつもりはありません」
「待って」
「嫌です」
「ミカエル!」
星魅の巫女が力を放つ。
ミカエルも動いた。
衝突。
人工精霊が弾け飛び、床が砕ける。
けれど。
ミカエルは止まらない。
「何故!」
「分かりませんか」
攻撃を弾く。
「貴女は」
一撃。
「私から」
もう一撃。
「奪いすぎた」
「――っ!」
星魅の巫女がよろめく。
「やめ――」
「嫌です」
「話を――!」
「聞きません」
「ミカエル!」
「その名前を」
初めて。
声が荒れた。
「貴女が呼ばないでください!」
最後の一撃だった。
「――――っ」
星魅の巫女の身体から。
力が抜ける。
床へ。
崩れ落ちる。
「…………」
ミカエルは受け止めなかった。
星魅の巫女は。
死んだ。
◇
終わった。
これで。
終わった。
そう思った。
「…………」
だが。
何も戻らなかった。
「……当然、ですか」
クイントは生き返らない。
ギルも。
コウヤも。
リリーが戻ってくるわけでもない。
「…………」
それでも。
もう同じことは起きない。
少なくとも。
そう思った。
――その直後だった。
『ミカエル様!』
通信が鳴った。
「何です」
『緊急事態です! 各地で――』
轟音。
悲鳴。
通信の向こうが騒がしい。
『――黄の雨を確認!』
「……黄の雨?」
『はい! 大罪シリーズです!』
「…………」
『複数の大罪シリーズが、世界各地で同時に活動を開始しています!』
映像が開く。
黄の雨。
その下で。
少女が笑っていた。
『色欲――ミミを確認!』
別の映像。
『暴食です!』
黄色いコートを纏った少女が。
ただ。
歩いている。
少女が進んだ場所から。
次々と。
何かが消えていく。
食べる。
喰らう。
満たされないまま。
また次へ向かう。
『嫉妬も出現!』
画面が切り替わる。
そこに映っていたものを。
一人の人間と呼ぶことはできなかった。
恨み。
妬み。
憎悪。
いくつもの感情が集まり。
念仏のように。
延々と。
恨み言を唱えている。
『傲慢――アラジンを確認!』
さらに。
『強欲です!』
茶髪の少女が。
街を歩いている。
『あれが欲しいのじゃ』
一つ。
手に入れる。
すぐ。
別のものを見る。
『……あれも欲しいのじゃ』
また。
『これも』
手に入れても。
満たされない。
『全部、妾のものにするのじゃ』
そして。
「怠惰は?」
『確認しています! ですが――』
「何です」
『何もしていません』
「…………?」
『動くことすら面倒なのか……ほとんどその場から動いていません。ただ』
通信員が息を呑む。
『排除できません』
「…………」
『攻撃が通らない。何をしても倒れません!』
「……大罪シリーズが」
ミカエルが呟く。
「すべて?」
『それだけではありません!』
「何ですって?」
『――紫の雨を確認!』
「…………!」
『星座シリーズです!』
また。
映像が切り替わる。
『獅子座、出現!』
別の地域。
『双子座を確認!』
さらに。
『天秤座!』
『蠍座も活動を開始!』
『魚座を確認しました!』
「待ちなさい」
ミカエルの表情が強張る。
「何故、同時に」
『分かりません!』
通信が。
また重なる。
『ミカエル様!』
「今度は何です!」
『緑の雨です!』
「…………」
『童話シリーズが活動を開始しました!』
灰の中から。
一人の少女が姿を現す。
『灰かぶり――シンデレラです!』
森では。
赤い頭巾。
『赤ずきんを確認!』
そして。
海では。
『人魚姫です!』
「…………」
ミカエルは。
言葉を失った。
黄の雨。
大罪シリーズ。
紫の雨。
星座シリーズ。
緑の雨。
童話シリーズ。
それまで。
それぞれの場所で。
それぞれに存在していた災厄が。
今。
一斉に。
動き始めている。
『大罪シリーズへの抑制が効きません!』
『星座シリーズ、交戦開始!』
『童話シリーズが市街地へ――!』
『ミカエル様!』
『指示を!』
『ミカエル様!』
声が。
重なる。
「…………」
偶然ではない。
星魅の巫女を殺した。
その直後だ。
ミカエルは。
ゆっくりと。
振り返った。
そこには。
自分が殺した女がいる。
「…………まさか」
ようやく。
気づいた。
「貴女……」
星魅の巫女は。
災厄を生み出すだけの存在ではなかった。
「統べていたのですか」
黄の雨。
大罪シリーズ。
「貴女が」
紫の雨。
星座シリーズ。
「この者たちを」
緑の雨。
童話シリーズ。
「…………」
星魅の巫女が。
いたから。
彼らは完全には自由ではなかった。
彼女が王として存在していたから。
その下にいた。
そして。
その王を。
「私が……殺した」
枷を。
外したのは。
自分だ。
『ミカエル様!』
通信の向こうから悲鳴が聞こえる。
『このままでは――!』
「…………」
分かっている。
このままなら。
国一つでは済まない。
エルサイアどころではない。
世界そのものが。
壊れる。
「…………」
ミカエルは目を閉じた。
クイントを思い出した。
『貴女は、こんなところで死ぬ人ではなかったでしょう』
自分が言った。
『まだ、やることがあったでしょう』
「…………」
なら。
自分は。
まだ生きている。
「……そうですか」
小さく。
息を吐いた。
「私には、まだあるのですね」
やるべきことが。
クイントはいない。
ギルもいない。
コウヤもいない。
リリーもいない。
赤子のレオナを王に据え。
レアが国を支えようとしている。
生きている者たちは。
もう。
次へ進もうとしている。
「…………」
なら。
自分だけが。
ここで終わるわけにはいかない。
ミカエルは。
星魅の巫女へ歩み寄った。
自ら殺した女の傍へ。
もう一度。
膝をつく。
「……皮肉ですね」
死者へ語りかける。
「私は貴女を憎んだ」
返事はない。
「貴女さえいなければと」
心の底から。
そう思った。
「だから、殺した」
けれど。
「今度は」
世界が。
星魅の巫女を必要としている。
「貴女がいなければ」
大罪シリーズを。
星座シリーズを。
童話シリーズを。
止める者がいない。
「…………」
ミカエルは手を伸ばした。
「なら」
誰かが。
代わらなければならない。
「私が」
その手が。
星魅の巫女へ触れた。
「貴女に代わります」
瞬間。
力が。
流れ込んだ。
「――っ!」
身体が軋む。
拒絶したくなる。
当然だった。
これは。
自分が。
心の底から憎んだ者の力だ。
クイントを奪った。
ギルを奪った。
コウヤを奪った。
その力を。
今。
自ら受け入れている。
「……私は」
身体が震える。
それでも。
手を離さない。
「貴女にはなりません」
星魅の巫女へ。
言う。
「貴女と同じ者にもならない」
それでも。
「ですが」
その役目だけは。
「貰います」
力が。
ミカエルの中へ。
流れ込む。
星魅の巫女と。
ミカエルが。
重なっていく。
「…………っ」
世界が。
見えた。
黄。
紫。
緑。
雨の中にいる者たち。
それらすべてが。
繋がっている。
「…………」
ミカエルは。
目を開いた。
◇
その瞬間。
世界のどこかで。
色欲――ミミが。
足を止めた。
「…………?」
黄色いコートを纏った暴食が。
顔を上げた。
念仏のように恨みを唱え続けていた嫉妬が。
不意に。
静かになった。
傲慢――アラジンが。
空を見る。
「…………」
茶髪の少女が。
手に入れたばかりのものを抱えたまま。
動きを止める。
「……なんじゃ?」
強欲。
そして。
何をすることも面倒がっていた怠惰が。
ゆっくりと。
顔を上げた。
黄の雨。
大罪シリーズ。
そのすべてが。
同じものを感じ取った。
紫の雨。
獅子座が。
動きを止める。
双子座が。
振り返る。
天秤座が。
蠍座が。
魚座が。
一斉に。
同じ方向を見る。
星座シリーズ。
そして。
緑の雨。
灰かぶりが。
赤ずきんが。
人魚姫が。
何かに呼ばれたように。
空を見上げる。
童話シリーズ。
誰も。
名前を聞いたわけではない。
姿を見たわけでもない。
それでも。
分かった。
自分たちの上に。
何かが。
現れた。
◇
「――聞きなさい」
ミカエルの声が。
届く。
「黄の雨――大罪シリーズ」
ミミが。
笑みを消す。
「紫の雨――星座シリーズ」
獅子座が。
頭を上げる。
「緑の雨――童話シリーズ」
灰かぶりが。
静かに目を閉じる。
「そして」
まだ。
そこに名を連ねていない者たち。
星魅の巫女が。
これまで束ねてきたすべてへ。
「星魅の巫女に連なる者たち」
ミカエルは。
命じた。
「好き勝手にするのは」
世界中で。
彼らが。
新たな王の声を聞く。
「――そこまでです」
雨が。
弱まった。
黄の雨の中。
大罪シリーズが。
一人。
また一人。
動きを止める。
紫の雨。
星座シリーズも。
緑の雨。
童話シリーズも。
戦いを止めていく。
それは。
忠誠ではなかった。
彼らはまだ。
ミカエルを慕ってなどいない。
服従を誓ったわけでもない。
ただ。
本能で。
理解した。
星魅の巫女が死んだ。
王が消えた。
だから。
自由になった。
そのはずだった。
けれど。
もう。
次がいる。
自分たちを統べる。
新たな王が。
◇
『……ミカエル様?』
通信から。
恐る恐る声が聞こえた。
「…………」
『いま……何を』
「必要なことを」
『…………』
「それだけです」
通信を切る。
静かになった。
「…………」
ミカエルは。
自分の手を見る。
何も変わっていない。
同じ手だ。
クイントの手を握った。
ギルの死を確かめた。
コウヤを殺した。
星魅の巫女を殺した。
そして今。
その女の力を。
自ら受け入れた。
「…………クイント」
名前を呼ぶ。
「貴女なら」
こんな自分を見て。
「何と言うのでしょうね」
返事はない。
「怒りますか」
少し考える。
「……怒るでしょうね」
僅かに。
笑った。
「ですが」
すぐに。
その笑みは消える。
「私には」
まだ。
やることがある。
「もう少しだけ」
だから。
「待っていてください」
いつか。
全部が終わったら。
その時は。
また。
貴女に会えるのだろうか。
「…………」
ミカエルは。
立ち上がった。
◇
この日。
エルサイアは。
一人の王を失った。
クイントが死んだ。
聖騎士ギルが死んだ。
コウヤが死んだ。
リリーが消えた。
そして。
生まれたばかりのレオナが。
新たな王となった。
幼すぎる王に代わり。
レアが。
国を支えることになった。
同じ日。
世界から。
一人の星魅の巫女が消えた。
その瞬間。
黄の雨――大罪シリーズ。
紫の雨――星座シリーズ。
緑の雨――童話シリーズ。
それまで星魅の巫女によって統べられていた者たちは。
王を失い。
枷を失い。
世界各地で。
一斉に牙を剥いた。
世界は。
そこで初めて知った。
星魅の巫女とは。
災厄を生み出すだけの存在ではない。
災厄を束ね。
その上に君臨する。
王でもあったのだと。
そして。
その王を殺した男は。
自ら。
空席となった座へ上った。
憎んだ者の力を受け入れ。
大罪を。
星座を。
童話を。
雨より生まれた者たちを。
その身一つで。
統べることを選んだ。
この時はまだ。
誰も。
彼を恐れてはいなかった。
ミカエルという名に。
畏怖の意味などなかった。
けれど。
それは。
この日から。
少しずつ変わっていく。
人々はやがて。
雨が降るたび。
その名を思い出すようになる。
災厄たちは。
その声一つで。
動きを止めるようになる。
そして。
数多の異形を従え。
世界すら敵に回しかねないほどの力を持つに至った彼を。
人々は。
畏れとともに。
一つの名で呼ぶようになる。
星魅の巫女――ミカエル。
それは。
彼が世界を救った日だった。
同時に。
後に世界から畏怖される存在となる男が。
初めて。
雨を統べる王となった日でもあった。