つまり、パーカーを着せたのはその為だと?
念のために急いでポッケに手鏡を仕舞い込む。
トイレの中に入ると、すぐさま個室のドアを開けて私はその中へと押し込められた。
気配を読むと、個室の前に男がずっと居るらしい。これは由々しき事態だ。この男に変態の罪を重ねてしまう。
......いやもう変態でいっか。
「音聞かれるの嫌」
「我慢しろ」
「おじちゃん変態」
「うるせぇ黙ってしろ」
会話をするフリをして、隠の準備をする。
「おじちゃん_____」
気配を消すと、呪詛師は慌て始めた。
それが狙い目だった。
人は見ていた物が突然消えると正常な判断を揺らして探し出す。ドアを開けてきた瞬間、隠を解いてタン、と一歩前に出た。
即座に右足全体にドス黒いオーラを纏い、床に手をついて足を引っかける。ひっかけるとき、上を見たらパパ黒が顔にパンチを入れていた。
そこで目が合った。
「「あ」」
声が重なったとき、ドサッと音を立てて呪詛師が倒れる。
ノックダウンした呪詛師を境に芋虫を乗っけてないパパ黒と対峙してしまった。
パーカーを着ているので、私の顔を正確には判断していないだろう。
「お前、普通のガキじゃねーな」
その言葉で心臓が荒く波打つ。
パパ黒は天与呪縛によって、呪力が無い代わりに身体能力がサイヤ人っていう超人だったりする。
だから戦うとすればだいぶ危険な行為だ。
しかしパパ黒はジーッと見て「どうでもいいか」と自分で納得したかのように言ってきた。
どうでもいい存在。すなわち戦わなくていいと言ってくれている。
だから、そのままで良かった筈なんだ。
私は何故か、犯人を担ごうとするパパ黒の前に立ってしまった。
両手を広げて呪詛師を匿うように前に立った。
自分でもよく分からないまま出た言葉は「この人殺しませんよね?」だった。
パパ黒の目的は生け捕り。
けれども本当に? 本当にパパ黒がそう言ったのか?
もし生け捕りじゃなかった場合は私が殺人の手助けをしたのではないか?
どんどん嫌な想像をしては、突きつけてくる現実に胸が痛みだす。
パパ黒はそんな私を見透かしたように鼻で笑った。
「殺しはしねぇよ」
パパ黒は少し優しめにそれだけを言った。
少し経って出た言葉にホッとする。パパ黒は殺す人は殺すと言うはず。
「ほんとに?」ともう一度言うと「しつこい」と圧を出されながら睨まれた。
渋々と呪詛師の前から退けば、パパ黒はぐったりした呪詛師をひょいっと俵担ぎにした。
「置いてくぞ」
そして何故かゴツゴツした手のひらを出してきた。
理由が分からず首を傾げていると、不思議そうな顔が伝わったのか、はぁ、とため息をつかれた。
「ガキ1人で男トイレから出るつもりか? 趣味なら構わん」とパパ黒の言葉が上から降ってくる。
パパ黒なりの気遣いだったことに気付いて、トテトテと小走りでパパ黒の手を掴む。
上を向くと、またもや目を見開かれた。
えっ、繋ぐために手を出してたんじゃないの!?
「......子守りの手じゃねぇ」
......あっ。呪詛師のパーカーの回収か!!