魔法 : 【選択肢】 作:ゴリラの右地区美
メトロイドヴァニアを漁っていたので初投稿。
ミリアに引き摺られて医務室で治療を受けた翌日、何か色々あった。
俺の次はアンアンが運ばれて来たし、ヒロとノアが喧嘩してるし、寝てる間にココがトレデキシムGETの配信をしてたり。
後者は先に聞いてたし、思う存分掻き乱してくれれば良いナーと思う。ココは俺の事情を知ってるから親しげだけど、俺はココについて何も知らないから……まあ、やっぱ今日明日の内に黒幕に殺されたとしても、何も思わないワケでして。てか真っ先に殺されるヤツの動きじゃんネ。
「……で、ノアは何で喧嘩したの?」
現在、医務室には俺の他にノアとアンアンが居る。アンアンは布団に潜って寝てるし、ノアは俺とアンアンのベッドの間で椅子に座りながら脚をぶらぶらとさせていた。
さっきまではミリアが俺の監視をしてたりケド、流石にシャワーを浴びに出て行った。てかミリアも昨日俺を連行してから一晩中医務室に居たから、流石に疲れてそうだった。
「………ヒロちゃんが、のあを叩いたからだもん」
「うへぇ。そりゃあヒロが悪いナァ〜……ワルモノだネ」
「でも、のあがヒロちゃんとの約束を破ったから。夜にね、我慢できなくて……壁とか床に絵を描いちゃった」
「むむむ。なるほどにゃー、じゃあノアも悪いね。やるじゃんワルモノ。ワルモノ同士、仲直りしたら?」
「のあ、謝ったもん。でもヒロちゃん、許してくれなかったし……」
「そりゃあヒロに謝ってもナァ。ちゃんとアンアンに謝って、償って許してもらって。信頼を得てからダヨ、ヒロがノアを大義名分を得て許せるのは」
「………むぅ…がんばる」
人間性とか感情論のハナシなら俺には理解出来ないケド、ヒロは実際、堅苦しくて説明書すら作れそうな人柄だ。今回の件もヒロの行動は何も間違ってないし、手を上げたのは、何十回と忠告して絵を描く部屋も与えて、それでもノアが自分勝手に振舞ってアンアンという被害者が出てしまったからだろーね――なんて、考察は出来る。
と、何かの漫画と同じ励まし方をしてみたり。俺に人生相談したって漫画かゲームの引用しか返ってこないゾ。
「さて、じゃあ俺はミリアが帰ってこない内にトンズラするね」
「……カエデくんも怒られるよ?」
「たはは」
いつも通り、空虚な笑い声を上げる。ノアは訝しむ様子もなく、ただスンと在るが儘を、形作られた【立花カエデ】を見詰めていた。画材に向けるような、好奇と親しみだけを宿して。
――俺はそのまま医務室のドアを開けて廊下に出た。
ミリアと入れ替わってから、妙に彼女が過保護気味なのだ。一日中傍に居続けて、シャワーを浴びてる今を除けば片時も離れようとしない始末。
人柄、と言うには異常な行動。こーゆー異質な行動をする人物は、余程のトラウマ由来の感情を腹を抱えてるか……
よく分からない。よく分からないからこそ、距離を置きたい。ヒロの執着心は分かる。以前の世界線で、一言も会話はなかったケド、一応彼女の死に際に手を伸ばしていたのは俺だから。
ココの仲間意識も理解は出来る。ココが【魔女化】した世界線で、少なくとも俺はココが死ぬまでは味方だった。余程【選択肢】で都合の良い答えを出し続けていたのだろうけど、彼女の瞳の奥に絡み付く執着心、或いは依存心はある程度の想定は可能。
シェリーの仲間意識だって同様。彼女と俺は酷く醜く悍ましく、似通っている。だから友情でも愛情でもない、拙い筈の仲間意識に金よりも名誉よりも価値を感じてしまう。
――でも、ミリアだけは分からない。まともに話した回数は片手で数えれる程度で、身体接触は昨日が初。
「ん〜、わっかんねぇーや」
こちとら返事一つ取っても【選択肢】に委ねてんだし、他所様の変貌なんて知る由もない。知らんやつが知らん奴になった、だから何ダ?
他人様の真似事で空虚なため息を一つ。
行き先も決めずに廊下に出たけど、行くなら俺が普段過ごしているサンルームと図書室以外の場所だ。ミリアに見つかりそうだし。
さーて、外の花畑で昼寝でもするか。土精の間もありか……あ、いっそ逆転の発想でヒロのベッドを借りても良いカモ。お願いしたら、自由時間中は貸してくれる可能性が無きにしも非ず。
聞き馴染んだRPGのBGMを口笛で吹きながら階段を降りていると――
「……何してるの?カエデくん」
「あ、やっほー。ミリアじゃん、奇遇だね。じゃあお互いに忙しいだろーし、じゃーね」
「何処に行くの?おじさんもついて行こうかな……なんちゃって…あはは」
「ダイジョブやよー、たはは。遠慮の方のダイジョブね、遠慮遠慮」
さっそくミリアに見つかった件について。
おっかしぃなぁ……シャワーを浴びに行ったのは十分程度前だから、髪の長さだったりを考慮したらもっと時間はかかるハズなのに。俺も同じくらいの長さだけど、普通に洗って20分、乾かすなら倍以上。
てか、よく見ればまだ髪が濡れているし。ろくに乾かしていないっぽいゾ。まるで……てか、普通に急いで出てきたみたいやね。
余程俺を見張りたいのかな。モテ期じゃないのは確実なんだよネ。カナシイ。泣き真似をしてみたケド、乾いた笑いで返された。たはは。
「ミリア、手分けをしよう。俺はあっちに行くから、ミリアはそっち。夜の自由時間でまた集合ネ、じゃあナ〜」
「な、何で逃げるの!?お、おじさん何か怖がらせるようなことしちゃった……?」
「急に引っ付いてくるからかナァ…」
「案外正当の理由だった!?」
「や、普段からウィットに飛び抜けた返答を期待されても。俺、金とか持ってないヨ?」
「えっと……その、ね?カエデくん、そういうの気にしないタイプだと思ってたって言うか…」
「あーね」
それはそう。俺は別に、ミリアが公認ストーキングしてるから離れたいんじゃなくて、その行為が【魔女因子】に起因してる可能性があるから警戒してるだけでして。
怖いぞー、魔女化って。目立ちたがり屋のレイアとヒッキーのアンアンが手ェ組んで俺を殺しに来るし、真面目委員長なヒロが高笑いしながら火かき棒で看守に殴り掛かる。
「あー……俺、何か殺されるようなことしたっけ?」
「こ、殺さないよ!?」
「あ、そう。ならいいや。んじゃ今からテキトーな場所で昼寝するんやけど、ミリアも来る?」
「………えぇ…キミは、なんて言うか…簡単に信じるんだね、おじさんのこと。ゴクチョーが言ってた【魔女化】の殺人衝動について…だよね?」
自らの行動を反芻したのか、ミリアの言葉の端は若干早口だ。彼女の本心なんてわからんケド、疑いを晴らそうとしているのは見て取れる。
「ふぇぇん、ミリアおじさんコワイよぉ………で、あってる?普通の反応って」
「どうだろう、ね……あはは…」
また誤魔化すように、ミリアは浅く短く笑う。見に染み付いた愛想笑いは外見が派手な彼女には不似合いなのに、やっぱり馴染んでいる。こーゆーヒト、クラスにもいたナァ〜と懐かしくなった。
――兎も角として、信用云々は最初から皆無なんだケド、少なくとも【魔女化】はしてないカナーと思う。俺の見てきた【魔女化】は抑えきれない殺人衝動によって、過度な害意や敵愾心を持って外面を変貌させていた。火かき棒で暴れたヒロ、狂って笑いながら俺を殺したレイアとアンアン。
親しくもないケド、彼女達らしくない立ち振る舞いだったナァー、とはやっぱり思うワケでしてネ。
端的に換言すると、【魔女化】したらこんなに腑抜けてないダローなーって。知らんけど。まあ、殺されたならここまで。前回と同じく、ゲームの攻略に失敗したってだけ。
「細かいことは気にしなーい、気にしなーい。じゃあ俺は湖んトコでお昼寝してくるネ」
「ま、待ってよ!おじさんもついて行くから〜!」
過保護は続行らしい。なら膝でも貸してもらおうか……そんな事を企みながら、俺とミリアは連れ添って外に出た。
――起きたら、殺人事件が起きていた。
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『はぁ……報せが入りました。痛ましい殺人事件が発生したようですね』
『一体どういうことなのか……』
『ともかく皆さん、今すぐラウンジに集合してください。従わなければ看守が連行しちゃうので……』
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スマホにゴクチョーからのメッセージが届き、急遽ラウンジに集められた。
俺とミリアが着いた頃には、既に殆ど全員が集まっていた……一人を除いて。確定した情報だけど、一応入口近くの壁に寄りかかっていたアリサに声をかけてみる。
「よっすアリサ、誰が殺されたの?」
「チッ……呑気な野郎だな…氷上だよ」
「め、メルルちゃんが…!?なんで、どうして……」
「うっへぇ……一応聞くけど、誰が殺したん?」
「ウチだって詳しくは知らねぇよ。ただ……氷上の遺体の横で、二階堂がぶっ倒れてた。そんだけで明白だろ……チッ、クソ…ッ」
胸糞の悪そうなアリサの視線を追うと、部屋の中で孤立したヒロが立ち尽くしている。ただでさえ陶器のように白い肌が、なんか青くなってるネ。
誰もが批難するような目を向けている。何の情報も持ってない俺とミリアに、この場の空気だけが言外に二階堂ヒロが氷上メルルを殺したのだと物語る。
この空気が、ミリアには酷く不快そうだ。嫌な思い出でもあるのカナー。尤もこの場で元気いっぱい興味津々なのは青髪くらいだけど。
「か、カエデくん…?」
「ちょっとオハナシしてくるネ」
ミリアの傍から離れ、ヒロの元に向かう。多数の【選択肢】から、俺は
「よっす」
「………カエデ、か…」
「殺したの?」
「…相変わらず、キミにはデリカシーがないな……私じゃない。信じて欲しい…」
「疑ってはないヨ」
「……そう、か…」
誰も疑ってないし、全員平等に信じてない。事が起こってミリアに起こされるまで、俺はガチで寝てたわけでして。イイネ、膝枕。また頼もう。
どんだけ言葉を交わしても、あまり意味はない。答えが出るのはメルルの死んだ時間と現場を調べて、全員の行動とアリバイをまとめて、ついでに【魔法】の絡みも考察して。
そーゆー工程を挟んで初めて犯人が判明する。間違っても、今この場で断定して裁判に臨む事は出来ない。これは
あ、そっか。
「いやぁ、ついに起こりましたね!殺人事件!!」
「起こりましたね!じゃねぇですわよ!?」
「ふふっ……でも、本当に起きちゃったわね♪」
「みんな、騒がずに落ち着こう!」
皆が口々に言葉を発するケド、やっぱ異色なのはシェリーだ。俺の価値観が【ゲーム的】であるように、シェリーの価値観、或いは世界観は【物語】だ。【そうあるべき】立ち位置に依存して、猿真似をする。
俺は世界観を【広げてる】、シェリーは世界観に【当てはまってる】。根本、大した違いなんてない。理解出来ないモノに、勝手な価値観を付与してるダケ。
現状、シェリーにとっては【推理小説】において無数に存在する【起承転結】の【起】だ。読み始めて一番最初にワクワクする部分。
そんで俺にとっては【アドベンチャー】における【推理パート】の開始だ。どちらにせよ、こっから証拠を集めて真実を導き出す【流れ】が共通認識。読書を、Playerを、観測者を満足させる終点への道の模索。
………なーんてテキトウ言ってみたり。
「えーっと、【魔女図鑑】のルールによると……裁判?ってのするんだっけ。やってるコトは裁判ってか魔女狩りに近いケド」
【裁判の開廷条件】
・監獄島の中で殺人が起こった場合、危険な魔女を処刑するため魔女裁判を行う。
・囚人同士で議論、投票を行い、魔女と判断された者は即時処刑される。
改めて規則IVを見る。記されている内容は何処までも、殺人事件が起こる前提だ。察してはいたし、寧ろ体験もシタけど、殺人は確定事項。
この後の調査に思考を割いていると、ラウンジに羽ばたき音が響く。軽い騒めきを孕んでいた部屋からは一切の会話が消え、一羽の怪鳥に視線が集まった。
「はぁ………殺人事件……怒っちゃいましたね……仕方ないので、今夜【魔女裁判】を開廷します」
酷く憂鬱そうに、面倒臭そうに、ゴクチョーは慣れた言葉を事務的に吐き捨てる。果たしてこのセリフを何百回繰り返したのか。想像するだけで辟易とするモノだ。
「今いる囚人の中から必ず殺人犯を特定してください。その者は、【魔女】として処刑するので……やすやすと死なない魔女の活動を確実に沈黙させる方法での処刑です……かなり酷いこととか……しちゃうので。また、囚人全員への告知ですが、特定出来なかった場合は全員処刑とします」
脅す、というよりは後処理が面倒臭いから間違えるな、との念押しに近しい気がする。他人について詳しくは分からないけど、どうにもこの生き物が人間的であるように感じる。
感性の干からびたソレは只々淡々と告げて、同時に彼女たちは騒ぎ出した。
「全員処刑なんてめちゃくちゃですわ……!」
「おいふざけんな鳥!」
でも一方、ゴクチョーもいつも以上に首を傾げて、変わらない表情で懸命に困惑を表現している。
「私は
「………………あー、
ゴクチョーの告げる事実――ココの零した情報の欠片、【黒幕】の存在。つまり牢屋敷の管理者側の存在は、氷上メルルだった。
俺としては、実質二択だった。最初に【魔法】を見せて非日常を受け入れやすくしたメルルか、今現在も【魔法】について何一つも情報を落とさないエマか。
うーん、実に惜しい。どうせなら当ててから死んで欲しかった。でもアレだ、ゲームの最終目標だと思ってた事柄が序盤中盤で消費される感覚だ。そこで世界観が広がるか、ストーリーのピークを過ぎるだけなのかはゲームの最終評価に関わる重要な点ダヨね。
「メルル様がいなくなっても牢屋敷の取り決めが消えたわけではないですし……大体よく考えたら、取り仕切ってたのほぼ私なんですよね。なんなら鳥使いの荒いご主人様が消えて、やりやすくなったまでありますね…」
聞こえるか否かの声でボソボソと喋り、そして唐突に、何かを思い付いたかのように翼を大きく広げた。
「良い機会です。前々から準備していた【事前投票】を導入しましょう!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
何か色々あって、【事前投票】で犯人(仮)に指定されたヒロが懲罰房に捕まった。上司が居なくなったからゴクチョーが好き勝手に、仕事を早く終わらせる為だけの規則だネ。
とどのつまり、俺たちは事前投票で選ばれた二階堂ヒロが犯人である証拠を探せという事だろう。違ったなら相応の証拠が見つかるだろうし、そーゆーのは要は丸投げだ。
皆が散り散りに調査に向かった中、俺は【選択肢】を発動させようとして――
ん、【強制選択肢】さん?任意発動じゃなくて、必ず大きな分岐点で強制される【強制選択肢】が発動した……が、様子がおかしい。
「………なんぞ?」
いつもと表示される内容が異なる。俺の【選択肢】は俺自身の行動を選択する【魔法】だった。故に酷く曖昧で不明瞭な表現……【ジャンルの変更】なんてのは初めてだ。
「………とりま、【はい】っと…」
あー、なるほどネ。ココが言ってた【魔法】の強化ってこーゆーコトね。明らかに選んだら死にそうなジャンルも混じってるケド……アレだ、【魔法】の解釈がちょっと変わってくるカモ。
RPGの【※選択済み】ってのは、今の【選択肢】がRPGってコトなのかな。或いは生き方、【立花カエデの行動の選択肢】だネ。
……どれにしよーかなー………何でもいいか。とりま【アドベンチャー】を【選択】する。
刹那、明滅して現実世界に色と音が戻った。
「……ふむ。アドベンチャーかぁ……なるほど。こりゃあアレだ、分かりやすいネ」
――視界にアイコンが表示される。視界というか、至る物、人、場所に【調べる】という【選択肢】が表示されている。任意の【選択肢】は表示されない……ロールプレイングじゃなくて、自主的な探索をしろってハナシね。
試しに手元のスマホを【選択】すると、頭の中に【情報】として記録される。
「うっへぇ……なるほどにゃ?」
つまり、【アドベンチャー】は情報収集に使えるってコトか。てか他の【ジャンル】の使い道がわからんのだが。
裁判までの時間、これで情報を集めて犯人を導き出そう。ちな鏡に映る自分を【選択】したら罵詈雑言の説明文を叩き付けられた。ぴえん、だね。
あと多分【魔女化】が進んでるネ。